土地を購入して注文住宅を建てる場合、建売住宅とは違い「土地を買った後に建物を建てる」という工程が必要になります。そのため、価格や立地だけを見て土地を選んでしまうと、購入後になって「希望する家が建てられない」「予想外の工事費が掛かる」といった問題が発生することがあります。
更に、土地には用途地域や建ぺい率・容積率、道路・接道、擁壁、インフラ、境界、地盤、災害リスクなど、購入前に確認しておきたい項目が数多くあります。見た目には普通の土地でも、調査を進めると建築や工事に影響する条件が見つかることも珍しくありません。
そこでこの記事では、土地を購入する際に確認しておきたい注意点について、不動産取引の実務経験をもとに順番に解説していきます。
土地は単に「買えるかどうか」ではなく、「その土地に希望する建物を建てられるか」という視点で判断することが重要です。土地の契約前には、不動産会社による調査結果だけでなく、可能であれば建築を依頼するハウスメーカーや建築士にも土地を確認してもらいましょう。

土地購入で特に注意したいポイント
土地を購入する際には、まず次のような項目を確認していきます。
- 希望する用途・規模の建物を建てられるか
- 建築基準法上の道路に適切に接しているか
- セットバックや私道に問題がないか
- 土地の形状や高低差に問題がないか
- 水道・下水・ガスなどを利用できるか
- 擁壁や地盤、地中埋設物などの問題がないか
- 境界や越境について問題がないか
- 洪水・土砂災害などの災害リスクはどうか
- 騒音や臭気など周辺環境に問題がないか
- 建築以外に大きな追加費用が掛からないか
すべての土地に問題があるわけではありませんが、一つの条件が建築計画や費用を大きく左右することがあります。そのため、土地の価格だけで判断せず、購入後に必要となる建築・造成・インフラ工事などまで含めて検討することが大切です。
希望する建物を建てられる土地か確認する
土地購入で最初に確認したいのが、「その土地にどのような建物を建てることができるのか」という点です。
土地を所有しているからといって、好きな大きさや高さ、用途の建物を自由に建築できるわけではありません。都市計画法や建築基準法をはじめ、地域ごとにさまざまな建築制限が設けられています。
用途地域・建ぺい率・容積率を確認する
都市計画区域などでは、土地利用の方向性を定めるために用途地域が指定されています。用途地域によって建築できる建物の用途や規模などが異なるため、まずは購入予定地の用途地域を確認します。
さらに重要なのが建ぺい率と容積率です。建ぺい率は敷地面積に対する建築面積の割合、容積率は敷地面積に対する延べ面積の割合を制限するものです。
例えば100㎡の土地だからといって、100㎡の建物を自由に建てられるわけではありません。建ぺい率・容積率のほか、道路幅員による容積率制限などが影響し、実際に建築できる規模が小さくなることもあります。
販売図面に「建ぺい率60%・容積率200%」と記載されていても、必ずその上限まで建築できるとは限りません。前面道路の幅員、斜線制限、高度地区、日影規制、地区計画などを組み合わせて確認する必要があります。
高さ・日影・外壁後退などの制限も確認する
土地によっては、高度地区、道路斜線・隣地斜線などの斜線制限、絶対高さ制限、日影規制などによって建物の高さや形状が制限されます。
また、第一種・第二種低層住居専用地域などでは、都市計画によって外壁の後退距離が定められている場合があります。地区計画や建築協定などによって独自のルールが設けられている地域もあるため、「建ぺい率と容積率だけ確認すれば大丈夫」というわけではありません。
特に敷地面積が小さい土地では、外壁後退や高さ制限によって希望する間取りが入らないことがあります。
地区計画やその他の法令制限も確認する
土地には用途地域以外にも、地区計画、建築協定、防火地域・準防火地域、都市計画道路、埋蔵文化財包蔵地、市街化調整区域、農地法など、さまざまな法令や地域独自の制限が関係することがあります。
例えば地区計画では、建物用途、最低敷地面積、壁面の位置、高さ、外観などについて独自の制限が設けられている場合があります。詳しくは建築協定と地区計画の違いを解説した記事も参考にしてください。
また、土地の一部が都市計画道路の予定区域に入っているケースもあります。都市計画道路については都市計画道路の土地売買について解説した記事で詳しく説明しています。
道路と接道条件を確認する
土地に建物を建築するためには、道路の確認が非常に重要です。現地で道路のように見えていても、その道が建築基準法上どのように扱われているかによって建築の可否が変わることがあります。
建築基準法上の道路か確認する
建築基準法では、原則として建築物の敷地は建築基準法上の道路に2m以上接している必要があります。これがいわゆる接道義務です。
ただし、道路には42条1項道路、2項道路、位置指定道路など複数の種類があり、見た目だけで判断することはできません。また、建築基準法上の道路に該当しない場合でも、建築基準法第43条による認定・許可などによって建築できる場合があります。
道路調査の基本については不動産の道路調査について解説した記事で詳しく紹介しています。
「すでに家が建っている土地だから、建替えもできるだろう」とは限りません。過去の建築時と現在では条件が異なる場合もあるため、購入前に現在の道路種別や接道条件を確認することが重要です。
2項道路ではセットバックを確認する
前面道路が建築基準法第42条第2項の道路、いわゆる2項道路である場合には、建替えなどの際にセットバックが必要になることがあります。
セットバック部分は建築敷地として利用できないため、販売図面上の土地面積と、実際に建物を計画できる有効宅地面積が異なる場合があります。
さらに注意したいのが道路中心線です。現在見えている道路の中央が必ずしも建築基準法上の道路中心線とは限りません。2項道路については2項道路とセットバックを解説した記事、中心線については道路中心線の決め方や調査方法を解説した記事も参考にしてください。
私道では権利関係も確認する
前面道路が私道の場合には、建築基準法上の道路種別だけでなく、道路の所有者や持分、通行、掘削、地中配管などについても確認する必要があります。
例えば新築に伴って水道管やガス管を引き込む際には、私道を掘削する必要が生じることがあります。私道持分がない場合や権利関係が整理されていない場合には、工事の際に問題となる可能性があります。
私道にはさまざまな権利関係が絡むため、詳しくは不動産の私道トラブルについて解説した記事も確認しておきましょう。
電柱・標識・歩道なども確認する
道路そのものに問題がなくても、建築計画に影響することがあります。特に確認したいのが、敷地前の電柱、支線、道路標識、ガードレール、街路樹、消火栓、ゴミ集積所などです。
例えば駐車場を予定している位置の前に電柱がある場合、移設を希望しても必ず希望する場所へ動かせるとは限りません。また歩道がある土地では、車両の出入り口を作るために歩道の切り下げ工事が必要となる場合があります。
土地を見る際には敷地の中だけでなく、前面道路側からも建築後の利用方法をイメージすることが大切です。
土地の形・面積・高低差を確認する
間口や土地形状を確認する
同じ100㎡の土地でも、形状によって建物の建てやすさは大きく異なります。整形地であれば比較的自由に建物を配置できますが、三角形や細長い土地、不整形地などでは建物や駐車場の配置が制限されることがあります。
特に旗竿地などの路地状敷地では、道路への接道だけでなく、路地状部分の幅や長さについて自治体の条例などによる制限が設けられていることがあります。
また、最低敷地面積が定められている地域では、土地を分割した結果、建築できない土地となる場合もあります。面積だけを見るのではなく、土地の形状と建築制限を合わせて確認しましょう。
擁壁や高低差を確認する
敷地と道路、あるいは隣地との間に高低差がある土地では、擁壁や造成工事についても確認が必要です。
既存擁壁がある場合には、どのような手続きによって築造されたものか、図面や検査済証などの資料が残っているか、ひび割れや膨らみ、傾き、排水不良などがないかを確認します。
ただし、過去に検査済証が交付されているからといって、現在の擁壁の状態まで保証されるわけではありません。築造から時間が経過している場合には、劣化状況についても確認する必要があります。
また擁壁の底盤が地中で敷地側へ伸びている場合など、建物の基礎や地盤改良工事に影響することもあります。高低差の大きい土地を購入する場合には、建築会社にも現地を確認してもらうと安心です。
擁壁については宅地造成と擁壁について解説した記事で詳しく紹介しています。
敷地が道路より低い、いわゆる道下の土地では、雨水の流入や日照、騒音、排水方法などについて確認が必要です。特に下水を自然勾配で道路本管へ流せない場合には、ポンプ設備などが必要になることもあります。
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水道・下水・ガスなどのインフラを確認する
建物を建築するためには、水道、下水、ガス、電気などのインフラが必要です。市街地の土地であっても、すべての設備が問題なく利用できるとは限りません。
まず確認したいのは、前面道路に本管があるか、そこから敷地内まで引込管が入っているかという点です。さらに、既存の引込管があっても、管径が小さい、老朽化している、他人の土地や私道を経由しているといった問題が見つかる場合があります。
新たな引込みや本管延長が必要になれば、工事費が大きくなる可能性もあります。
水道については水道埋設管の調査方法を解説した記事、下水については下水道の埋設管調査について解説した記事も参考にしてください。
本管が道路に通っていても、敷地への引込みがなければ新設工事が必要です。また既存管が使えるかどうかは、管径や材質、経路などによっても変わります。土地購入時には本管と引込管を分けて確認することがポイントです。
地盤や地中のリスクを確認する
地盤改良が必要になる可能性を考える
土地を購入して建物を建てる場合、建築前に地盤調査を行い、その結果によっては地盤改良工事が必要となります。
「この地域は地盤が良い」と言われていても、地盤の状態は土地ごとに異なります。また、必要となる地盤補強の方法は建物の構造や重量、支持層の深さなどによっても変わります。
そのため土地の購入時点では、地盤改良が必要になる可能性も考えて資金計画を立てておいた方が安全です。
地中埋設物や地下水にも注意する
地上から土地を見ただけでは分からないのが地中の問題です。過去に建物があった土地では、古い基礎、コンクリートガラ、浄化槽、井戸、古い配管などが残されていることがあります。
こうした地中埋設物が建築工事中に発見されれば、撤去費用や工程の変更が必要になる場合があります。地中埋設物については土地売買における地中埋設物の注意点を解説した記事も参考にしてください。
また、私が実際に仲介した土地では、建築工事で地面を掘った際に地下水が湧き出してきたケースもありました。地下水は基礎工事や地盤改良工事などに影響することがあります。詳しくは土地と地下水の問題について解説した記事で紹介しています。
境界・越境を確認する
土地を購入する際には、隣接地との境界がどこにあるのかも重要な確認事項です。
現地に境界標があるか、測量図などと整合しているか、隣地所有者との間で境界について争いがないかなどを確認します。境界については土地の境界・境界標・確定測量について解説した記事で詳しく説明しています。
あわせて確認したいのが越境です。屋根や庇、雨樋、ブロック塀、樹木、配管などが境界線を越えている場合があります。
越境物を撤去できるのであれば引渡しまでに解消するのが分かりやすい方法ですが、建物の一部などすぐに解消できない場合には、将来の建替え時に撤去することなどを記載した覚書を取り交わす方法もあります。
ただし覚書を作成すればすべての問題がなくなるわけではありません。越境の内容、将来の解消方法、承継の可否などを確認した上で購入を判断する必要があります。詳しくは不動産の越境問題と覚書について解説した記事もご覧ください。
隣地所有者との間で境界そのものについて争いがある場合には、原則として売買前または引渡しまでに問題を整理してもらうことを検討します。未解決の境界問題を承知したまま購入する場合には、将来の建築や売却にも影響する可能性があるため、相当慎重な判断が必要です。
災害リスクを確認する
土地購入では、洪水、内水、高潮、津波、土砂災害などの災害リスクについても確認しておきましょう。
自治体などが公開しているハザードマップを確認すれば、想定浸水深や土砂災害警戒区域などを調べることができます。ただし、ハザードマップは「色が付いていないから絶対に安全」というものではありません。
土地の高さ、周辺道路との高低差、近隣の河川や崖、過去の浸水状況なども合わせて確認することが重要です。
ハザードマップの確認方法については不動産購入前のハザードマップの見方を解説した記事も参考にしてください。
周辺環境を現地で確認する
役所や法務局の資料だけでは分からないのが、実際の周辺環境です。
幹線道路や鉄道、工場、学校、店舗などによる騒音や振動、臭気のほか、交通量、通学路、夜間の明るさ、人通りなども現地で確認しておきたいポイントです。
また、墓地、火葬場、廃棄物処理施設、工場など、購入者によっては心理的・生活上の影響を感じる施設が周辺に存在する場合もあります。こうした施設については不動産の嫌悪施設について解説した記事も参考になります。
昼間は静かな住宅街でも、朝夕には抜け道として交通量が増えることがあります。反対に昼間は気にならなかった飲食店や工場の音・臭いが夜間に目立つケースもあります。可能であれば曜日や時間帯を変えて現地を確認してみましょう。
古家付き土地では解体費用と条件を確認する
古家付き土地を購入する場合には、土地の価格だけでなく解体工事についても確認する必要があります。
解体費用は建物の構造や大きさだけではなく、前面道路の広さ、重機を入れられるか、隣家との距離、残置物、地下埋設物などによって大きく変わります。また、古い建物ではアスベストを含む建材が使用されている可能性もあり、調査や除去費用が必要となるケースもあります。
さらに解体後に古い基礎や浄化槽などが見つかる場合もあるため、「解体費はいくらか」だけでなく、どこまでを解体・撤去する条件なのか確認しておきましょう。
解体工事については解体工事の流れや注意点を解説した記事も参考にしてください。
土地の契約前に必ず確認しておきたいこと
ここまで見てきたように、土地購入では非常に多くの確認項目があります。しかし、買主自身がすべての法令や建築条件を判断する必要はありません。
重要なのは、購入目的を不動産会社や建築会社へ具体的に伝えることです。
例えば「2階建ての家を建てたい」というだけではなく、「延床面積30坪程度」「駐車場2台」「このメーカーで建築予定」「二世帯住宅にしたい」など、できるだけ具体的に伝えておけば、土地選びの段階で問題を発見しやすくなります。
- 希望する建物の用途・大きさ・階数
- 必要な駐車台数
- 庭や自転車置場など必要な外構スペース
- 利用する予定のハウスメーカー
- 建物以外に掛かる造成・擁壁・インフラ工事
- 地盤改良費を含めた予備費
また土地によっては、調査しても契約前に完全には分からない事項があります。代表的なのが地盤や地中埋設物などです。その場合には、売買契約書や重要事項説明書でどのような条件になっているのか、契約不適合責任や特約の内容まで確認した上で契約することが重要です。
不動産会社は土地の権利関係や法令制限などを調査しますが、希望する建物が実際にどのように入るか、擁壁や地盤改良をどのように扱うか、建築費がどの程度増えるかなどは建築会社側の判断が必要になることがあります。建築する会社が決まっているのであれば、土地の契約前に資料や現地を確認してもらうことをおすすめします。
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土地購入の注意点まとめ
土地を購入する際には、立地や価格、広さだけではなく、「希望する建物を実際に建てられる土地なのか」を確認することが何より重要です。
用途地域や建ぺい率・容積率、道路・接道、土地形状、擁壁、インフラ、地盤、境界、越境、災害リスクなど、一つひとつは専門的な内容ですが、どれか一つを見落としただけでも建築計画や費用に大きな影響が出ることがあります。
また、土地の価格が安く見えても、擁壁工事、給排水管の引込み、地盤改良、解体などに多額の費用が必要であれば、結果として割高になることもあります。
土地購入では「土地代」だけを見るのではなく、建物を完成させて実際に生活を始めるまでに必要となる総額を意識して判断しましょう。
そして気になる土地が見つかったら、契約を急ぐ前に不動産会社による物件調査の内容を確認し、可能であれば建築を依頼するハウスメーカーや建築士にもチェックしてもらうことをおすすめします。







