マイホームの選びに際して建売住宅や分譲マンションの購入と並んで、選択肢の一つに挙げられるのが「土地を購入して注文住宅を建てる」というものです。

また、不動産投資家様の中には土地を購入してアパートを建てたいという方も多いと思いますが、『土地購入のノウハウは十分に持っている!」という方は意外に少ないのではないでしょうか。

そこで本日は、「土地購入の注意点について解説します!」と題して、売地を購入する際のチェックポイントや注意点に関してお話をしていくことにいたしましょう。

土地購入の注意点

 

土地を買う際の注意点

では早速、売地を購入する際のポイントや注意点を見て行きましょう。

なお、分譲マンション購入については別記事「分譲マンションのメリット・デメリットを解説!」にて、建売住宅については「建売の後悔しない選び方を解説!」にて詳しい解説を行っておりますので、ご興味をお持ちの方は是非ご一読いただければ幸いです。

用途地域を確認

「土地を購入すれば自由に建物を建てられる」とお思いの方もおられるかもしれませんが、不動産の取引対象となる殆どの地域では、行政の定める建築制限に従って建物を建てなければならないのが現実です。

そして、多くの建築制限を定める建築基準法では用途地域という土地の利用方法のルールがあります。

用途地域は全部で13種類ありますが、第一種低層住居専用地域では店舗や共同住宅が建てられない、工業専用地域では住宅が建てられないなどの制限がありますので、土地選びに際しては充分に用途地域を確認する必要があるでしょう。

容積率や建ぺい率をチェック

容積率と建ぺい率も建築基準法に定めらてた制限の一種となります。

容積率・建ぺい率はどちらも60%、200%などのパーセンテージで表示されますが、その意味にはかなり大きな違いがあります。

建ぺい率は上空から土地を見た際に、建物を建てることができる面積(建築面積)の上限を表した制限であり、例えばその制限が50%なら土地の半分までしか、建物を建てられないことになるのです。

一方、容積率は床面積の限度を示しますから、容積率が100%なら「土地の大きさと同じ延べ床面積の建物が建築可能」ということになります。

よって、容積率や建ぺい率の考えずに土地を購入すると『思い描いていた大きさの家が建てられない』という状況に陥るのです。

道路の種類を確認

建築基準法は土地が面する道路についても、様々なルールを定めています。

通常、不動産が取引される地域においては建物を建てるのに建築確認という手続きが必要となりますが、この許可を受けるには土地が面する道路が「建築基準法上の道路」である必要がある上、その道路に土地が2m以上接していなければならないのです。

但し書き道路と呼ばれる、例外的に建築が許可される道路もあります。

また、建築基準法上の道路にはいくつかの種類がありますが、特に注意すべきなのが2項道路と呼ばれるものです。

この道路は法令で必要とされる4mの幅員が確保されていないため、道路中心線からの敷地後退(セットバック)が必要となり、「土地を購入したもののセットバックで多くの面積を取られ、希望の建物が建てられなかった」というトラブルが発生するケースが多々あります。

更に、道路の中には公道と私道という区別があり、私道については「道路を使用する権利を持っていない者は、通行や掘削工事ができない」という場合もありますから、充分な注意が必要となるでしょう。

日当たりや高さの制限をチェック

法令が定める建築制限は建物の用途や面積だけではなく、高さや日当たりについても細かいルールを定めています。

そして、高度地区、斜線制限、絶対高さの制限、日影規制という4種が日当たりや高さ制限の主なものとなりますが、こうしたルールによって建物の階数制限や屋根の形状の制約などが発生することになるのです。

防火地域等の確認

建物を建築する際には、火災の被害を最小限に抑えるための建築制限も守らなければなりません。

防火に関する建築制限については、防火地域・準防火地域・法22条区域における制限が代表的なものとなりますが、これらの地域においては建築する建物の規模に応じて「耐火建築物しか許可が下りない」などのルールが適用されることになるでしょう。

外壁後退の有無をチェック

土地の建築面積に関する制限については既に「容積率や建ぺい率」をご紹介いたしましたが、他にも「外壁後退」と呼ばれるものがあります。

外壁後退とは「建物を建てる際に前面道路から2m距離を空けること」、あるいは隣接する土地の境界線から1m後退して建築を行うこと」といったルールとなりますので、こちらも知らずに土地を購入すると大きな損害を被ることになるでしょう。

その他の法令上の制限を確認

ここまで様々な建築等のルールをご紹介してきましたが、ここで一気に他の法令上の制限をまとめておきましょう。

土地の形状をチェック

土地を購入するに当たっては、土地形状の確認も欠かせません。

三角形や歪な形をした土地は、建物の形状が大きく制限されることになりますし、四角形の整形地でも間口が5m以下の場合には間取りを入れるのに苦労させられるはずです。

※間口2m未満の土地はそもそも建築許可が下りません。

※外壁後退等の制限がなくとも、民法では隣地境界線から50cm以上建物を後退させる必要があります。

なお、専用通路物件(旗竿地)においては、通路の幅を少なくとも2.3m以上確保すべきでしょう。

土地の面積を確認

土地の形状に続いては、その面積についてもチェックしておく必要があります。

法令上の制限の中には、「土地が一定の面積を確保していなければ建物の建築を認めない」という敷地面積の制限が定められている地域も存在しているのです。

こうした制限を知らずに土地を購入すればトラブルに発展するのは必至でしょう。

宅地造成と擁壁について

土地を選ぶのに当たっては、周辺の地形についても十分に注意を払う必要があります。

そして地形において問題となりやすいのが、隣接地との高低差です。

お隣の土地が、自分の家よりも高い位置にある場合には、土の流出を防ぐための土留め(擁壁)が必要となりますし、逆に自分の土地が高い場合にも同様の処置が必要となりますよね。

こうした擁壁工事などを宅地造成と呼んでいますが、宅地造成を行う当たっては殆どのケースで 「宅地造成及び特定盛土等規制法(旧・宅地造成規制法)」という法律の許可等が必要となりますので注意が必要です。

また、敷地内や隣接地に既に擁壁が存在している場合にもチェックしておくべき点があります。

こうした擁壁は、その大半が土に埋もれてはいますが全体像は「L字形」などをしているのが通常です。

よって、地表に顕になっている擁壁の地下には、地表と平行に伸びる部分(底盤)が隠れているのですが、この底盤の上に建物の基礎が重なる場合にはトラブルが発生する可能性があります。

これは「擁壁を作った業者」と「建物を建設するハウスメーカー」が異なる場合に起こる問題であり、建築を請け負うハウスメーカーから『既存擁壁の底盤に穴を空けた上での地盤改良を要求されるケース』があるのです。

更に高さが2m以上の既存擁壁がある土地については、『如何なる基準に基づいて作られた擁壁であるか』を確認することも重要です。

高さが2m以上の擁壁を作る場合には、殆どの地域で「建築確認」や「宅地造成及び特定盛土等規制法の許可」、または「開発許可」などに基づいて工事が行われているはずですが、中にはこうした手続きを踏まずに作られた代物も存在しますので注意が必要でしょう。

更に、建築確認や各種許可の手続きはしているが、最終的な検査(申請した通りの内容で工事が完了しているかの検査)を受けていないものも多いですから、「検査済みを受けているか」まで確認をするべきです。(検査済みを受けていれば、構造上問題のない擁壁という判断ができます)

なお、適切な手続きを踏んで建てられた擁壁でも、劣化によってひび割れなどを起こしている場合には非常に危険な代物となりますので、購入を検討している土地の敷地内はもちろんのこと、その隣接地にこうした危険な擁壁が存在する場合には十分にご注意ください。

※既存の地下車庫がある物件でも同様の問題が発生しますが、こちらについては「地下車庫の建築確認や費用、注意点等について解説いたします!」の記事をご参照ください。

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道下(みちした)の物件の注意点

前項では土地の高低差のお話をしましたが、物件によっては土地よりも道路の位置が高いという状況もあり得ます。

こうした物件を「道下(みちした)物件」と呼んでいますが、こうした土地においては高い位置にある道路による日照への影響や騒音の問題、また下水に関しては道路の本管までポンプアップして排水を行わねばならない等、様々なトラブルが発生する可能性があるでしょう。

インフラ設備についての確認

土地の購入に当たっては、インフラ設備の整備状況も重要なチェックポイントとなります。

そしてまずチェックすべきは、水道下水、ガスなどの本管が前面道路まで到達しているかという点となります。

自然豊かな立地の物件においては本管が整備されておらず、配管の延長に膨大な費用を要するケースも珍しくありませんし、街中においても何故が本管が到達していないエリアがありますから、油断は禁物です。

また、本管から敷地への引込菅についても、配管の老朽化や管径の問題、そして「配管が他人の敷地を通過していないか」などの点についても確認を怠らないようにしましょう。

埋設物の問題

前項にて、水道などの配管が他人の敷地を通過しているケースについて触れましたが、このように土中に埋まっている埋設物についても、土地の売買では十分に注意を払う必要があります。

当たり前のことかもしれませんが、地面の中には様々なものが埋まっているものです。

そして、これが小さな石ころなどであれば特に問題はありませんが、大きな岩や、コンクリートの破片(ガラ)、時には汚染物質や不発弾などが埋まっているケースもありますから、土地を購入した後にこのような事実が判明した場合には非常に困ったことになるでしょう。

なお埋設物とは異なるかもしれませんが、私の取引した土地の中には、「地面を掘り起こしたら地下水が湧き出した」というケースまでありましたので、地中には潜むリスクは実に様々です。

地盤の問題について

地面に関してもう一点重要となるのが、地盤に関する問題となります。

建売物件の場合には、地盤調査や地盤改良を済ませてから建物の建築を開始しますので、地盤工事について買主は「何も心配する必要がない」のが実情です。

これに対して土地売り物件では、一般の方が売主の場合はもちろん、たとえ不動産業者が売主であっても、地盤調査は行っていないのが通常ですから、購入者自らの負担で地盤改良工事を行う必要があります。

世間ではよく「この辺の地域は地盤が良いから安心だ」なんて話を耳にいたしますが、建物一つ隔てれば地盤の強さ(地耐力)は全く異なるものとなりますし、

「どの程度の地盤改良が必要か」についても、建物の構造やハウスメーカーによって大きなバラ付きがありますので、土地売り物件を購入するならば「地盤改良に必要な費用」をしっかり確保しておく必要があるでしょう。

なお、別記事「地盤改良の工法と種類について解説いたします!」にて詳しくご説明していますが、施工する地盤改良の工法や支持層の深さによっては100万円以上の工事費が必要となることもありますので注意が必要です。

境界や越境に関する問題

インフラ設備の解説において、他人の土地を配管が通過しているお話をしましたが、こうした状況を「越境」と呼びます。

土地にはお隣との地境を示す境界が定められますが、この境界線をはみ出している状態が越境であり、これを放置したまま土地を購入すると、後々様々な問題が生じることになるので注意が必要です。

越境問題の解決には、物理的に越境物を排除するのが最も有効な方法ですが、越境物が屋根の一部であるといったケースでは、覚書等の書面を取り交わし「建替えのタイミングで越境を解消する」などの取り決めを行った上で売買を行うのが通常です。

一方、土地の中には「そもそも隣接地と境界線について争いがある」という物件も稀に存在しています。

境界争いは解決が非常に困難な問題となりますので、こうした物件には手を出さないのが懸命でしょう。

災害リスクの確認

土地の購入に際しては、災害リスクについてのチェックも欠かすことができません。

近年では自治体が様々なハザードマップを公開していますから、これらを確認すれば検討している物件にどのような災害リスクが潜んでいるかを一目で確認できるはずです。

なお、高低差のある地形の地域においては土砂災害に関連する様々な警戒区域の指定が行われていますので、特に注意が必要となるでしょう。

周辺環境のチェック

土地選びに当たっては周辺の住環境の確認も非常に重要です。

物件の周りに幹線道路や線路、工場などの騒音や振動を発生させる施設や、キャバクラやパチンコ店などの教育上問題のある店舗等が存在していないか。

また、火葬場や暴力団事務所などの心理的な問題が生じる可能性がある施設も見逃すことはできません。

なお、こうした施設の存在については仲介に入る不動産業者も見落とす可能性がありますから、購入する側も充分に注意を払う必要があるでしょう。

前面道路上の施設を確認

土地探しにおいては、道路上に存在する電柱や標識などの施設についても見逃すことができません。

例えば「駐車場にする予定の場所」の目の前に電柱があれば、これを移動させたいと思うでしょうが、電柱は電線を支えるための計算に基づいて設置されていますから、自由に位置の変更ができない場合があります。

更に道路標識では「動かすと見え辛いので移動不可」と判断されることもありますし、ゴミ捨て場などは少し位置を動かしただけで、近隣から「我が家にゴミ捨て場を近付けるな」なんてクレームが入ることも少なくありませんので注意が必要でしょう。

※道路上の施設については別記事「歩道切り下げ、電柱の移動などについて解説いたします!」にて詳細な解説を行っております。

古家付の売地では解体工事に注意

土地売り物件の中には、もはや生活をすることができない程の「朽ちた家」が付いたまま販売されているものもあります。

そして当然、新しい家を建てる時には建物の解体が必須となりますが、解体工事は『何かと問題が起こり易い作業』でもあります。

騒音や埃などの問題を始め、お隣の水道管を破壊してしまったり、振動によって隣家の外壁にヒビが入ったなど、実に様々なトラブルが予想されます。

なお解体工事が原因で、これから引っ越す先のお隣さんなどと初っ端からトラブルとなるのは何としても避けたいところですから、古屋の解体は売主さんの責任で施工していただくのが得策でしょう。

但し、費用的な問題で断られることもあるでしょうから、こうした場合には売主が施主となり、買主が費用を負担するという方法がスムーズです。

これならば解体業者も自分で選定することが可能ですし、何かトラブルがあっても「それはあくまでも発注者である売主の責任」となりますから、不要なトラブルを回避することができるでしょう。

土地売り物件の現状について

ここまで土地購入の注意点についてお話しして参りましたが、実は近年市場に出回る物件数が大幅に減少しているのがこの「土地売り物件」となります。

「建売物件があんなに数多く建築されているのに、どうして土地不足なの?」とお思いになる方も多いでしょうが、こうした現象の裏には「パワービルダー」と呼ばれる大手の建売屋さんが深く係っているのです。

一口に「建売屋さん」といっても、中小企業から大手企業まで様々な会社があることは別記事「建売とは?戸建て分譲の仕組みや舞台裏を解説いたします!」にてご説明いたしましたが、その中でも超大手と言われるのが『パワービルダー』と呼ばれる企業となります。

そして、こうした会社は海外に材木工場を立ち上げ、建築も自社施工するなどの方法で、建築に掛かる費用を極限まで抑えいますから、パワービルダーの土地買い取り価格は「一般の方の土地購入価格を上回る水準」となっているです。(建築コストが削減できれば、節約した資金で高額な土地の買い付けが行えるため)

また売地情報が最初に持ち込まれる不動産仲介業者(土地の売却依頼を受ける不動産業者)も、一般の購入者を見つけるより、建売屋さんに買ってもらった方が高い報酬を得られるなどの理由(詳しくは仲介業者の仕事内容の記事を参照)から、

「土地や築年数の古い戸建ての売却案件は、まず建売屋さんに持ち込む」のが当たり前の状況となっており、こうした不動産業界の事情が売地物件情報激減の理由となっているのです。

なお、市場にも少数ながら売地物件は流通していますが、不動産業者が転売目的で購入した土地(建築条件付き売地を含む)が大半を占めている上、残りは売主が値段を下げてくれず、一般の方にも、建売屋さんにも高額過ぎて買えない物件である場合が殆どとなっています。

ちなみに建築条件付き売地とは「土地売りの形態ではあるが、建物の建築は不動産業者指定のハウスメーカーによる」という、実質は建売状態の物件を指しますから、これも純粋な売地とは言えません。

さて、こんなお話を聞いてしまうと「もはや土地で物件を購入するのは、不可能な時代になってしまったの?」という気分にもなってしまいそうですが、そうとばかりも言い切れない面もあります。

例えば、不動産業者が売主の土地でも建築条件さえ付いていないけば、自分の好きな建物が建てられますし、近隣との権利関係の調整も済んでいるとなれば、多少値が張ったとしても決して敬遠すべき物件とはいえません。

また、瑕疵担保責任を負う期間(土地の隠れた欠陥について責任を期間)も、一般の売主の場合には引渡し後3~6ヶ月程度、場合によっては免責であるのに対して、不動産業者が売主ならば引渡しから2年となりますので、取引の安全性が確保されているという面もあるです。

よって、今売地物件が買いたいのであれば、不動産業者が転売目的で購入した、建築条件の付いていない土地が狙い目と言えるでしょう。

※建築条件が付いている売地でも、交渉によってこれを解除できるケースもあります。

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土地購入の注意点まとめ

さてここまで、マイホーム建築にあたって土地で物件を購入する際の注意点を解説してまいりました。

このように売地物件には、他の物件とは異なる様々な特徴・注意点がありますので、取引の際には是非お気を付けいただければと思います。

また既にお話した通り、今や売地物件は非常に希少なものとなりますし、マイホームの用地探しは一生に一度の大きな買い物となるはずですから、正しい知識を身に付けトラブルのない取引を目指していただきたいところです。

では、これにて「土地購入の注意」に関する知恵袋を閉じさせていただきたいと思います。