都市計画法では、様々な土地利用に対するルール(法令上の制限)を定められていますが、その中でも非常に重要なものとなってくるのが地域地区と呼ばれる制度です。

但し、地域地区には20以上の種類が存在していますから、これらをすべて頭に入れておくのは「至難の業」と言わざるを得ません。

ただ、不動産の取引においては何らかの形で必ず係わってくる重要な制限となりますから、覚えておいて絶対に損はないはずです。

そこで本日は「地域地区とは?わかりやすく解説いたします!」と題して、この法令上の制限についてご説明をしてまいりたいと思います。

地域地区

 

地域地区って何?

ではまず最初に、「そもそも地域地区とは何なのか?」という点から話を始めていきたいと思います。

我が国には都市計画法という法律があり、その目的に掲げられているのが「国土の無秩序な開発を抑制し、効率的な街づくりを行うこと」です。

但し、漠然とこうしたスローガンを掲げても、目的を達成できるはずもありませんから、都市計画法では地区計画や市街地開発事業等の様々な「土地利用を制限する制度」を定めています。

そして、こうした制限の中でも代表的なものとなるのが地域地区であり、「理想の街並みを実現するために指定される、利用制限付きのエリア」ともいうべきものとなりますから、不動産の取引においては説明を欠かすことのできない事項となっているのです。

なお、地区計画は原則として『都市計画区域内のみに定められるルール』となっている点にも是非ご注意ください。

 

地域地区の概要

前項にて地区計画の意義についてはザックリとご理解いただけたことと思いますので、本項ではより具体的に「地区計画の種類や概要」についてご説明をしてまいりましょう。

用途地域

用途地域とは文字通り、土地利用の用途を制限する目的で行われるエリア指定であり、

  • 第一種低層住居専用地域
  • 第二種低層住居専用地域
  • 第一種中高層住居専用地域
  • 第二種中高層住居専用地域
  • 第一種住居地域
  • 第二種住居地域
  • 準住居地域
  • 田園住居地域
  • 近隣商業地域
  • 商業地域
  • 準工業地域
  • 工業地域
  • 工業専用地域

以上13種類があります。

そして、それぞれの地域によって建築可能な建物の用途が定められることになります。

なお、用途地域に関する詳細は別記事「不動産の用途地域と種類、注意すべき点などについて解説」をご参照ください。

特別用途地区

特別用途地区は、前項にてご紹介した「用途地域による制限」を補う目的で指定される地区であり、下記の11種類が存在します。

  • 中高層階住居専用地区
  • 商業専用地区
  • 特別工業地区
  • 文教地区
  • 小売店舗地区
  • 事務所地区
  • 厚生地区
  • 観光地区
  • 娯楽・レクリエーション地区
  • 特別業務地区
  • 研究開発地区

なお、各々の地区における制限の内容については、地方自治体が独自に定めるルールになっています。

また用途地域と合わせて設定することも可能ですから、例えば「工業地域(用途地域)」であり、且つ「研究開発地区(特別用途地区)」という地域も存在し得ることになるでしょう。

特例容積率適用地区

こちらの特例容積率適用地区は、建物同士での容積率の売買や移転が可能なエリアとなります。

例えば建物を建築する際に、近くにある他の建物で「使われていない容積率」があれば、これを購入することによって『本来は許可が下りない規模の建物が建築可能となる地域』なのです。(「空中権」と呼ばれることもあります)

高層住居誘導地区

用途地域が「第一種住居地域」「第二種住居地域」「準住居地域」「近隣商業地域」「準工業地域」であり、容積率400%・500%の地域にて指定可能なのが高層住居誘導地区となります。

この地区指定を受けると、マンション等の住居系の建物の建設にあたり「日影規制を適用除外」「容積率や斜線制限の緩和」などの優遇を受けることができます。

なお、「オフィス街に住居を増やすこと」が本地区設定の主な目的となります。

高度地区

高度地区は建物の高さを制限する地区となります。

なお、一口に高さと言っても「最高限度」から「最低限度」まで様々な制限が可能となりますし、制限の内容についても地方自治体が独自に定めることが可能です。(自治体が「高度地区は定めない」とすることもできます)

ちなみに、最もよく見かける制限のタイプとしては「建物建設に際して、北側の敷地境界線から垂直ラインを立ち上げ、そのラインの先端から一定角度の斜線を引き、斜線から建物がはみ出してはならない」という形式【斜線制限型】です。(地域によっては単なる高さ制限の場合もあります【絶対高さ制限型】)

※垂直ラインの高さについては「5m・10m・15m」などとされていることが多く、斜線の角度は「0.6/1(約59度)」「1/1.25(約51度)」といった制限の地域が多いでしょう。

高度地域の詳細は別記事「建物の高さ制限と日当たりに関する制限について」をご参照ください。

高度利用地区

高度利用地区に指定されたエリアでは「建ぺい率の最高限度」「容積率の最高限度と最低限度」「建築面積の最低限度」などが定められることとなり、結果的に『一定規模を確保した建築物しか建てることができない地域』となります。

そして、この地区指定によって『大小の建物が混在する雑多な街並みを避け、統一感の都市づくりが可能となる』のです。

特定街区

特定街区はその名の通り、「街区(ブロック)単位での自由な街づくり」を行うために指定されるエリアとなります。

このエリア指定を受けると、容積率や高さ制限が排除した「独自ルールによる街づくり」が可能となるのです。

なお特定街区は、「高層ビル街づくり」などに用いられることが多い地域地区となります。

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防火地域・準防火地域

火災の防止は街づくりを行う上での大きな課題となりますが、こうした問題を解決するべく指定されるのが防火地域および準防火地域です。

この地域に指定されると、建物の規模や階数に応じて「耐火建築物とせよ」「準耐火建築物にせよ」などの制限が課せられることになります。

なお、防火地域・準防火地域の詳細については別記事「防火地域・準防火地域とは?わかりやすく解説いたします!」をご参照ください。

風致地区

風致地区は自然環境を守るべく設定される地域となっており、この区域内での建築や開発行為は厳しい制限を受けることとなります。

制限の内容は地域によって異なりますが、建物の高さや大きさばかりか、樹木の伐採などにまで規制がかかるケースもありますので注意が必要です。

景観地区

景観地区は地域の景観を守るべく指定されるエリアとなっており、建物を建てる際にその外観等に関して制限が加えられることになる地域です。

また、景観地区は「都市計画区域のみに指定されるもの」となりますが、都市計画区域外では『準景観地区(建物への制限)』の設定が可能であり、景観地区と同様に建物への制限が発生しますのでご注意ください。

都市再生特別地区

都市再生特別地区においては、本来定められている用途地域・高さ制限・容積率に囚われない土地利用が可能となります。

その名が示すとおり、「都市の再生を行うために、既存のルールを打ち破った高度な土地利用を実現する」ことが目的です。

特定防災街区整備地区

建物同士の間が狭く、火災に弱い木造家屋が集中したエリアに指定されるのが特定防災街区整備地区であり、火災などに際しての延焼防止が主な目的です。

なお、このエリアで建物の建設を行う際には、外壁後退・開口率の制限・高さ制限等を強いられることになるでしょう。

臨港地区

臨港地区は、港の円滑な管理を目的に指定されるエリアであり、建物の建築や増改築などに際して制限が課させられます。

なお臨港地区においては、港の利用目的に合わせて商港区・マリーナ港区・工業港区・漁港区・商港区など多種多様な区分が行われ、区分の違いによって制限の内容も変わってくる点に注意が必要です。

駐車場整備地区

駐車スペースの問題は、街づくりにおいて非常に重要な事項となります。

そして、駐車場整備地区に指定されたエリアでは、一定規模を超える建物に対して「駐車場の付置義務」を課することとなります。

また、規制の対象の建物の大きさについては各地の条例によりますので、その内容をしっかりと確認しておく必要があるでしょう。

歴史的風土特別保存地区

古都の町並みを保存するべく指定されるのが歴史的風土特別保存地区となります。

この地区では、一定の開発行為や建物の新築・増改築、樹木・石の採集などに加えて、看板の設置にまで制限がなされ、「知事の許可」を得た上でならければこれらの行為が行えません。

伝統的建造物群保存地区

歴史的な価値の高い建物群(周辺環境も含む)を守るべき指定されるのが伝統的建造物群保存地区であり、建物の解体・新築・増改築、開発行為等の周囲環境に影響を及ぼす行為について、知事の許可が必要となります。

特別緑地保全地区

街の緑化推進を目的となる特別緑地保全地区では、新築工事や開発行為(池の埋め立てや樹木の伐採を含む)について知事の許可が必要です。

生産緑地地区

都市の環境保全と災害対策を目的に指定されるのが生産緑地地区であり、その多くが農地の形態をとっているはずです。

生産緑地地区の所有者は「税制の優遇措置等を受けることが可能」ですが、売却に際しての制限や、開発・建築についての規制を課せられることになります。

流通業務地区

倉庫や物流基地などを誘致するために指定されるのが流通業務地区です。

こうした目的で設定されるエリアであるが故に、通常の住居等の建設については知事の許可が必要になります。

航空機騒音障害防止地区

航空機騒音障害防止地区は「航空機の騒音被害を減少し、空港運営の円滑化を図るために指定されるエリア」です。

対象エリアにおいて住居・学校・病院の建設などに際して、防音対策を行う義務が生じます。

第1種歴史的風土保存地区・第2種歴史的風土保存地区

奈良県の明日香村限定の地域地区となります。

このエリアにおいては、建物の新築・増改築、一定の開発行為、樹木・石の採集、看板の設置について知事の許可が必要です。

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地域地区まとめ

さてここまで、都市計画法に定められた地域地区について解説を行ってまいりました。

地域地区には多くの種類がありますので、その数の多さに圧倒されてしまった方もおられるかもしれませんが、いずれも不動産取引においては重要な事項となりますから是非記憶に留めておいていただければ幸いです。

なお地域地区の多くは、基本的な事項は都市計画法に定められていながら、実際の運用については各法令(建築基準法など)によるといったものも少なくありません。

よって、地域地区について学べば「一気に多くの法令についても知識を深めることができます」から、スキルアップを目指す方にとっては『非常にやりがいのある分野』となるはずです。

法令の勉強は心身ともに辛いものですが、本記事を機会に是非ご興味をお持ちいただければ幸いです。

ではこれにて、「地域地区とは?わかりやすく解説いたします!」の記事を締め括らせていただきたいと思います。