建物の高さ制限と日当たり

 

ひと昔前までは、マンションなどの建築計画が持ち上がると、日照権を巡って近隣住民と分譲会社の間で壮絶なバトルが繰り替えされていました。

ところが最近は、「その手のニュースをあまり耳にしないな・・・」という印象をお持ちの方も多いかもしれませんが、これは決して『気のせい』ではありません。

実は近年では、日照権に関して訴訟を起こしても、まず住民側に勝ち目がない状況となっており、争う者が殆ど居なくなっているというのが真相のようです。

そして、このようなお話をすると「でも、日当たりって凄く大切なのでは・・・」と思われる方も少なくないかもしれませんが、皆様の日照は既に充分な保護を受けている状態となりますので、心配は要りません。

実は我が国における「日照に関する法整備」は既に完了した状態にあり、『その制限の厳しさ故に、裁判所も法律さえ守ってもらえれば、そこ以上の文句は言えない状態になっている』というのが実情なのです。

ただ、「これから家を建てよう」とお考えの方がこの話を聞けば、『果たして自分の思い通りの家が建つのか?』と不安になってしまいますよね。

そこで本日は、これから家を買いたい方や、マイホームの建築を考えている方に向けて、都市計画法や建築基準法における建物の高さ制限と日照に関する知恵袋をお届けしてみたいと思います。

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こんなに多い!日照がらみの建築制限

日常生活を送っていると、建物の「日当たりや高さの制限」など全く意識しないのが通常であるとは思います。

しかしながら不動産取引の世界では、日照に関する制限は非常に大きなウェイトを占める事項となっており、不動産業者が売買契約に伴う重要事項説明を行う際などには『非常に神経をすり減らす分野』となっているのです。

そして、このようなお話をすると「プロなのだから、そこまで頭を悩ます必要はないのでは?」とのご意見も聞こえて来そうですが、

実は高さや日照の制限を完全に理解するには、建築に関する専門的な知識が不可欠であり、「不動産のプロ」であっても「建築のプロ」ではない不動産業者には『少々手に余る』というのが実情でしょう。

ましてや、土地を購入して「自由なプランで夢のマイホームを建てよう」とお考えのお客様と契約をするとなれば、『思い描いているプランが法規制によって実現できなかったらどうしよう・・・』とちょっとビビッてしまう不動産屋さんも多いものなのです。

このように「不動産屋さんにとっても少々厄介な高さ制限や日当たりのお話」ではありますが、本日は「解りやすさ重視」で、その種類や概要をご紹介して行きたいと思います。

よって「あまりに専門的な事柄」については解説を省略いたしますので、規制のイメージだけでも掴んでいただければ幸いです。

ではまず、主な規制の種類からご紹介してまいりましょう。

  • ①高度地区
  • ②斜線制限
  • ③絶対高さの制限
  • ④日影規制

以上が、建築に際して問題となってくる「高さと日照」に関する主な法律上の制限となります。

 

それぞれの規制に関する解説

では、先に挙げた制限の内容を詳しく見て行きたいと思います。

①高度地区

高度地区は、都市計画法第8条に規定されている地域地区の一種として、行政が任意で定めることができる「建築に関する規制」となります。

そして、「行政が任意で定める制限」であるが故に、エリアによってかなり規制の内容にバラ付きがある上に、そもそも『制限を行っていない』という区域も存在するのです。

但し、一般的に街や都会と言われる地域では「殆どのエリアで存在している制限」と考えてください。

具体的な規制内容につていは、大抵の地域において「建築を行う敷地の北側の敷地境界線から垂直に●m線を敷き、その線の先端から角度●度で斜め線を伸ばし、この斜め線に建物の屋根などが触れてはならない」という形式になります。

例としては、下記の図のように「境界線から5mの垂直線を立ち上げ、南側に向けて約51度(1/1.25)の斜線を引き、この斜線を建物がオーバーしてはならない」といった形式になります。

なお、高度地区の制限は用途地域ごとに、規制が段階的に厳しくなっていくのが通常です。

また、ここまでご紹介した「斜線型の制限」の他にも、「絶対高さ型の制限」も存在しており、こちらでは単に『20m以上の建物は建築不可』といったシンプルな規制が課せられることとなります。

更には、同じ高さの制限でも最高限度ではなく、「最低限度を定めたパターン」があり、高層ビル街などでは『20m以下の建物は建築不可』といったルールが定められるのです。

高度地区

 

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②斜線制限

続いてご紹介する「斜線制限」は建築基準法第56条で定められる高さ制限であり、前項の①高度地区とは異なり全国で一律に適用される規制です。

そして具体的には、3種類の規制が存在しており、3つそれぞれに「一定の角度で建物に斜めの線を敷き、その線からはみ出してならない」というルールが定められています。

なお、「制限の内容が用途地域によって変わってくる」という点も高度地区の規制に似ています。

ではこの3つの制限を一つずつ解説してまいりましょう。

北側斜線制限

用途地域における第一種低層住居専用地域・第二種低層住居専用地域・第一種中高層住居専用地域・第二種中高層住居専用地域・田園住居地域のみに適用される制限となります。

これらの用途地域は閑静な住宅街であり、家と家の間が離れ、高い建物はあまり存在しない地域となりますので、規制の内容も非常に厳しいのが特徴です。

※但し、第一種・第二種中高層住居専用地域では、かなり緩和された制限となります。

実際の制限内容は、第一種、第二種低層住居専用地域・田園住居地域で5m、第一種、第二種中高層住居専用地域で10mの垂直線を立ち上げ、住居系の用途地域で約51度(1:1.25)、その他の地域で約56度(1:1.5)の斜線を引き、この斜線を超えて建物を建てることができないというルールです。

道路斜線制限

物件が面する「道路の反対側から一定角度の斜線を引き、建物がそのラインをオーバーしてはならない」という高さ制限となります。

なお、具体的な制限内容としては、住居系用途地域で斜線の角度が約51度(1:1.25)、その他の地域で約56度(1:1.5)です。

前項の北側斜線制限とは異なり、道路斜線制限はすべての用途地域で適用される規制となります。

隣地斜線制限

考え方は北側斜線制限と同様ですが、隣地斜線制限では境界を接するすべての方位から斜め線の建築規制線が引かれます。(但し、道路側は除外)

一見、非常に厳しい制限のように感じますが、北側斜線制限に比べればずいぶん緩いものです。

そして具体的な制限内容は、住居系の用途地域で20m、その他の地域で31mの垂直ラインを立ち上げ、住居系の用途地域で約51度(1:1.25)、その他の地域で約56度(1:1.5)の斜線が引かれることになります。

よって北側斜線制限で厳しい制限を受ける第一種低層住居専用地域・第二種低層住居専用地域・田園住居地域では適用されないルールとなっています。

斜線制限

 

 

③絶対高さの制限

こちらは建物に対して絶対的な高さの制限を加える制度となり、ここまでご紹介してきた「斜線型」の規制ではありません。

また、その内容は単純で10mまたは12m以上の建物を建ててはならないというものです。

非常に厳しい制限なので、第一種低層住居専用地域・第二種低層住居専用地域・田園住居地域でのみ適用されます。

④日影規制

これまでは高さに関する制限でしたが、日影規制は建物が他の敷地に落す影について、「何時間までなら落としてよいか」について定めた規制です。

他の規制と同様、用途地域の種類よって内容に違いがある上、行政ごとに独自の基準を定めることが可能となりますのでご注意ください。

なお、具体的な制限の内容としては「お隣の土地に落ちる影の長さが10m以上となる時間は2時間以内せよ、10m未満から5mの範囲については3時間までにせよ」など、時間による細かいルールが定められます。

絶対高さ・日影

 

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建物の高さ制限と日当たりに関する制限まとめ

ここまでお話してきた規制の数々が、建物に係る「高さ制限と日当たりに関する制限」の主なものとなります。

ザックリとした制限の概要については、ここまでのお話である程度はご理解いただけたことと思いますが、物件ごとの正確な制限の内容を知るためには設計用の専用ソフトを使用しなければなりませんので、重要事項の説明において不動産業者の頭を悩ますこととなる訳です。

ちなみに建売住宅では、こうした法規制を全てクリアーした上で建築が行われていますから、あまり神経質になる必要はありませんが、

「自分の思い描く通りの家を建てたい」という方については、『自身の希望がどの地域であれば実現可能なのか』『どの程度の土地面積地形の物件を選ぶべきなのか』等を、設計士などと打ち合わせした上で、物件探しを始める必要があるでしょう。

ではこれにて、建物の日照と高さに関する建築制限の知恵袋を閉じさせていただきたいと思います。