近年、耳にする機会が多くなった言葉の中に「ゲリラ豪雨」や「爆弾低気圧」などのワードがあります。
ひと昔前までは、突然の雨を表現する言葉は「にわか雨」や「夕立」といった穏やかなものしか無かったはずなのですが、今ではこうした言葉がまるで死語のように扱われる時代となってしまいました。
そして、ゲリラ豪雨などが発生した後に耳に飛び込んでくるのが、河川の増水や土砂災害などの痛ましいニュースとなります。
もちろん、こうした災害の被害に遭わない為には「私たち1人1人が最大限の注意を払うこと」が最も大切なのですが、寝ている間に自宅ごと土砂に飲み込まれてしまっては最早どうすることもできませんよね。
そこで本日は「土砂災害対策の法律について解説します!」と題して、こうした土砂災害のリスクから私たちの生活を守る砂防4法についてお話をしてみたいと思います。

土砂災害対策の法律について
冒頭にて「砂防4法」なる用語が出てまいりましたが、『一体何のことだろう?』とお思いの方も多いはずです。
実は我が国では、国民を土砂災害の被害から守るべく「砂防法」「地すべり等防止法」「急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律」「急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律」という4つの法律が定められており、これらの法律を「砂防4法」と称しています。
また砂防4法は、マイホームを購入する場合などに行われる「重要事項説明」の中で必ず扱うべき事項と定められていますので、不動産の購入経験がある方なら『一度は耳にしたことがあるはずの法律』なのです。
しかしながら実際には、重要事項説明の中でサラリと流されてしまうことも多いですし、実は説明する業者も法律の内容をしっかりと把握していないといった事情から、「これらの法律の存在がまだまだ一般の方々の間に浸透しきれていない」というのが実情でしょう。
但し、これらの法令は自分や家族の生命、そして財産にも直接関わってくる内容となりますから、『知らなかった』では済まされませんよね。
そこで本項では、各法令の特徴や相違点などに着目しながら、砂防4法の概要をガッチリと解説して行きたいと思います。
砂防法
まず最初にご紹介するのが砂防法という法律です。
この法律は明治30年の施行という非常に古い法律となりますが、細かな改正を繰り返しながら未だに現役で私たちの生活を見守ってくれています。
そしてその内容はと言えば、国土交通大臣が「崩壊の危険あり」と判断した場所を区域指定(砂防指定地)することが可能であり、指定されたエリアでは建物・工作物の新築や開発行為等について知事の許可が必要となるのです。
さて、このようなお話をすると『それがどうしたの?』と思われるかもしれませんが、この砂防法の指定区域の周辺は「土砂災害のリスクが非常に高いエリア」となりますから、土地の購入などを考える際には基本的に避けるべき場所となります。
但し、砂防法の指定は規模の大きな渓谷や崖地がメインとなりますから、通常の不動産取引ではあまり縁のない法令と言えるかもしれません。
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地すべり等防止法
続いてご紹介するのが地すべり等防止法という法律です。
こちらは砂防法よりも若干新しい法律で昭和33年に施行されており、国土交通大臣及び農林水産大臣は「地すべり防止区域」や「ぼた山崩壊防止区域」といった区域の指定ができる旨を謳っています。
そして地すべり防止区域では、水道管等の敷設・一定規模以上の切土・地下水の汲み上げ行為等について知事の許可が必要です。
一方、ぼた山崩壊防止区域では樹木の伐採・一定規模以上の切土・土石の採集等の行為に関して、知事の許可が必要となります。
ちなみに「ぼた山」とは鉱石などの採掘に際して出てきた土や岩を積み上げた山のことを指す言葉となりますから、かなり限定された地域にのみ指定される区域となるでしょう。
急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律
さて次にご紹介するのが、急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律なるものとなります。
同じような法律が出て来るので混乱してしまいそうですが、この法律の特徴は「警戒区域を指定するのが都道府県知事である」という点です。
実は前項までにご紹介した2つの法律では、国土交通大臣や農林水産大臣が区域指定を行うルールでした。(一定の行為に許可を与えるのは知事ですが)
そしてここで注目すべきなのは、大臣と県知事では私たちから見た「身近さ」が全く異なるという点です。
つまり、急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律にて指定される「急傾斜地崩壊危険区域」は、私たちの極身近に存在する上、想定される災害の規模も小さなものとなります。
さて、このような言い方をすると「それなら安心だね」などと思われるかもしれませんが、たとえ家が一軒でも崖の上から流されてくれば大事件となりますし、そのような危険エリアが近所に何か所もあるというのは、むしろ非常に恐ろしいことですよね。
また、実際に市場で流通している物件の中にはこの「急傾斜地崩壊危険区域」の指定を受けているものも少なくありませんから、不動産の取引においては是非ご注意いただきたい思います。
なお、この区域に指定された土地を購入した場合には、土砂災害防止に必要な措置を行うことが所有者に義務付けられますし、工作物の設置や樹木の伐採、盛土・切土等を行う場合には知事の許可が必要です。
土砂災害防止法
そして最後にご紹介するのが、これまた都道府県知事が危険エリアの指定を行う土砂災害防止法(指定されるのは土砂災害警戒区域と土砂災害特別警戒区域)となります。
こちらも土砂災害の被害を防止するのが目的の法律となりますし、「知事が指定を行う」という点から私たちの身近に指定区域が存在していることをご理解いただけると思いますが、前項で取り扱った急傾斜地崩壊危険区域との違いは災害が発生する状況です。
急傾斜地崩壊危険区域は、指定された場所自体が災害時に崩れ落ちるリスクが高いエリアとなりますが、土砂災害警戒区域は崩れて来た土砂が降り注ぐ場所となります。
「自分の家が崩れる」のと「土砂が降り注ぐ」という2択で『どちらがましか?』と問われても非常に微妙でしょうが、降り注ぐ側になってしまうと自身で防衛策を講じることができませんので、実際にはこちらの区域の方が少々厄介かもしれません。
なお、土砂災害特別警戒区域においては住宅(自宅を除くアパート等)・学校・病院・介護施設等の建築に際して、知事の許可が必要となります。
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土砂災害対策の法律まとめ
さてここまで、土砂災害に関わる砂防4法について解説を行ってまいりました。
もちろん、海沿いの平坦な物件にお住いの方などについては、全く係わりのないお話でしょうが、高低差のある山間の地域にお住いの方にとっては「非常に重要な問題」となるはずです。
また、これらの法令により指定された地域から外れているからと言っても、決して安心はできません。
たとえ自分の家が指定対象外でも、通勤に使うルートやお子様の通学路上に「こうした指定区域がない」とは言い切れないはずです。
当然、まともな不動産業者であればこうした指定区域に関する説明はしっかりとしてくれるはずですが、物件周辺の状況まではその目が及ばないケースもあるでしょうから、
マイホームを購入される際にはハザードマップなどを活用して「購入者ご自身の目でも土砂災害の危険地帯が近隣にないかの確認をするべき」でしょう。
ではこれにて、「土砂災害対策の法律について解説します!」の知恵袋を閉じさせていただきたいと思います。