マイホームを探している際などに、時折見掛けるのが販売図面の備考欄に「都市計画道路あり」という表示がされている物件です。

また、こうした物件は「販売価格が通常より安めの設定」となっていることも多いのですが、果たして「買って良いものやら、ダメなものなのやら」と頭を悩ませてしまいますよね。

そこで本日は、「都市計画道路の土地売買について解説いたします!」と題して、道路計画物件の売買におけるポイントや注意点についてお話しさせていただきたいと思います!

都市計画道路の土地売買

 

都市計画道路ってどんなもの?

「都市計画道路」という言葉を聞いて、一体何のことだろうと思われた方も多いのではないでしょうか。

そして、この計画道路を一言で説明するとするならば行政が行う既存の道路の拡張や、新たな路線を作る際に設定される「道路の事業計画」ということになります。

※都市計画においては、道路の他にも公園・学校・病院などを造る計画を立てることがあり、既に計画が決定しているものを「都市計画施設」と呼びますので、道路計画は都市計画施設の一種ということになります。

ちなみに、街を歩いていると時折「家が道路からセットバックしており、空き地となった道沿いの土地が鉄パイプなどで囲われている光景」を目にすることがあるかと思いますが、それこそが都市計画道路による拡張計画が行われている最中の姿になります。

今の時代ですから、既に各地の道路は整備されているでしょうが、時と共に人や自動車の流れも変わってくるものですから、これに合わせて「道幅を広げたり、新しい道路を作りたいという要望」が出て来るのも無理はありません。

しかしながら、現在の住宅事情では道路が造れるような広大な空き地は存在しませんし、住人も黙って土地を提供してくれる訳がありませんよね。

そこで行政は都市計画道路(道路計画)というプランを立ち上げ、何年、何十年という時間を掛けながら、周辺住民の説得や土地の買収、道路の工事などを進めて行くこととなるのです。

都市計画道路の計画決定と事業決定(事業認可)

ではここで、都市計画道路がどのように進められて行くかについて、お話ししてみることにいたしましょう。

都市計画道路の計画決定

道路を拡張するにせよ、新設するにしろ、まずは「行政から計画が打ち出され、その内容が正式に決定する」ことから、都市計画道路の事業はスタートします。

そして、このスタートの状態を「計画決定」と呼んでいるのですが、この段階では未だ計画が立案されただけで、具体的な工事予定の決定や、土地買収が始まることはありません。

よって計画決定の段階では、一定の建築制限こそあるものの家の新築や建替えが可能ですし、建売屋さんが土地を購入して建売物件として販売をするケースさえあるのです。

さて、ここで皆さんが気になるのが、計画決定を受けた土地に一体どのような建築制限が課せられるかという点かと思いますので、以下にその一覧を記しておきます。

  • 建築には都道府県知事などの許可が必要(都市計画法第53条の許可)
  • 木造、鉄骨造、コンクリートブロック造であること【鉄筋コンクリート造(RC造)や鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)は建設不可】
  • 2階建て以下、地下室は設置できない(3階建て不可)

さてこのように、都市計画道路の計画決定段階においては「それなりに厳しい建築制限」が定められていますが、実は近年このルールに様々な変化が生じているのです。

バブル崩壊以降、我が国の経済状態は決して健全とは言えない状態が続いており、未だにデフレの脱却もできずにいます。

そして景気の良い頃はどんどん道路が造られていましたが、バブル崩壊後は「計画が決まりながらも、実際の工事が始まらない道路が殆どという状態」が続いていました。

なお、こうした時期が長く続くと「始まらない工事のために建築を制限し続けるのは意味がない」という世論が高まり始め、その声に応えるべく地方自治体単位で建築制限を緩和する(3階の建築を許可するなど)ケースが続出したのです。

ちなみに地方自治体ごとに条例で建築制限を緩和している状態ですから場所によって若干ルールも異なりますが、多くの地域で採用されているのが、

  • 事業開始の目途が立っておらず、区画整理・再開発等の支障にならない場所であること
  • 3階建て以下、高さ10m以下であること
  • 地下室(地階)が存在しないこと
  • 木造、鉄骨造、コンクリートブロック造であること(主要構造部)
  • 建物が計画区域をまたぐ場合は、部分的な解体ができるように設計上の配慮がされていること

という緩和のルールとなります。

このような経緯から計画決定の段階では「かなり自由な土地利用が許されている地域」が多いため、個人間での土地売買はもちろん、不動産業者による建売住宅の分譲なども比較的活発に行われているという訳なのです。

都市計画道路の事業決定(事業認可)

さてここまで、都市計画道路の計画決定についてお話ししてまいりましたが、これが「事業決定」へと移行した際には状況は大きく変わることとなります。

「事業決定」とは道路を作る計画を具体的に進める段階となりますので、土地の買収なども始まり、建物の新築・増改築、工作物の建設及び5トンを超える物件の設置、開発行為等を行うには知事の許可が必要となります。

※許可制とはなっていますが、マイホームを建てるなどの通常の理由では許可が下りません。

また先程も申し上げた通り、自治体による土地の買収もスタートしますので、事業決定後の土地は売買自体が不可能となってしまいますのでご注意ください。

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都市計画道路の計画がある土地の売買について

これまでの解説にて道路計画がどのように進行していくかがお解りいただけたことと思いますので、本項では「都市計画道路の指定を受けている土地や建売の売買」における注意点などについてお話ししていきましょう。

計画決定物件購入の注意点

都市計画道路の計画決定段階の物件を購入するに当たっては、「何時ごろ計画決定がなされ、現在どのような進捗業況にあり、どんな形状の道路ができるのか」などをよく調べた上で意思決定を行うことが重要です。

不動産業者の中には「まず事業決定することはありませんよ!」などといった無責任なことを言う者もいるようですが、こうした説明は全くアテにできません。

よって、計画道路の入った土地を買うならば、「何時事業決定しても文句はない!」という気持ちで購入の決断をするべきだと思います。

道路計画が入った物件の特典

さて、ここまでのお話を聞いていると「計画決定した物件を買う人なんているのだろうか?」とも思われるかもしれませんが、実はそれなりの魅力があることも確かです。

まず冒頭でも申し上げたように、物件の販売価格がお手頃なものとなっている(一般的な地域の相場よりも10%程度安価な価格設定が行われる)ことも多いですし、購入後何十年経っても一向に事業決定が行われないケースは山程あります。

また、不動産取得税固定資産税や都市計画税といった税金が割安になる点も見逃せませんし、事業が終了して道路が完成することで地価が上昇し、収用を逃れた土地を高値で売却できる可能性もあるでしょう。

計画道路の土地収用における補償

計画道路が事業決定すれば自治体との立退き交渉がスタートしますので、ここで上手く立ち回ることにより、ある程度の立退料が手に入る可能性もありますから、これを目当てに敢えて計画決定物件を購入する方もいらっしゃるようです。

ちなみに管理人が知る、道路計画に伴う土地買収を経験されたお客様の話によれば、立退料での儲けは「それなり」といったところである模様。

ただ「それなり」とは言うものの、立退料には「相当価格での土地の買取」や「諸経費」、その他諸々の補償が含まれることになりますから、動く金銭の額は『かなりのもの』となるはずです。

そこで以下では立退に際して補償の対象となる費用について確認しておきましょう。

  • 土地についての補償(適切な価格での買取)
  • 建物移転についての補償(建物付きの場合はその移転費用)
  • 工作物の移転補償(塀や庭石の移転費用)
  • 立竹木の補償(庭木の移転費用)
  • 動産の移転補償(家具や会社の備品等の移転費用)
  • 仮住居の補償(立退に際して仮住まいが必要な場合の費用)
  • 借家人に対する補償(賃貸物件を借りていた者への補償)
  • 家賃減収補償(大家に対する家賃収入への補償)
  • 営業補償(立退きにより店舗等の営業ができない期間の補償)
  • 移転雑費補償(引っ越し費用等)

都市計画道路物件の購入成功のポイント

では最後に、都市計画道路の入った物件の購入を成功させるポイントについてお話しさせていただきます。

「道路計画が入った物件の特典」の項でも解説した通り、都市計画道路が完成することにより地価が上昇する可能性は大いにありますから、 「購入を検討している土地のどの部分が計画区域になっているか」が非常に重要です。

※事業決定により収用されるのは「計画区域のみ」となりますので、残った土地は通常通りの売買が可能となります。

例えば、土地のど真ん中を帯状に計画区域が横断している物件を購入すれば、収用後は分断された離れ小島のような土地が残ってしまうことになるでしょう。

また、土地の一部のみが計画区域という物件であっても「収用後の残地面積が40㎡以下になってしまう」ようでは、戸建て用地としての価値が失われてしまいますので、こうした物件の購入には注意が必要となる訳です。

そこで以下では、注意すべき道路計画入り物件のパターンをまとめておきましょう。

  • 事業完了後に土地が分断されてしまう
  • 流通性の高い土地面積(残地面積)が確保できない(40㎡以下など)
  • 残地の接道間口が5m以下になってしまう(2m以下は再建築不可)
  • 残地が利用し辛い地形(縦長の三角形など)になってしまう
要注意の都市計画道路物件

 

収用完了後にこうした土地が残される物件の購入には十分にご注意ください。

なお、残地売買をより有利にする地形等の見分け方については、別記事「土地の形状について解説いたします!」「マイホームの土地の広さや面積について解説いたします!」をご参考にしていただければと思います。

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都市計画道路の土地売買まとめ

さてここまで都市計画道路の概要や、これに係わる物件購入時の注意点などを解説してまいりました。

売買物件の販売図面などには、備考欄に小さく「都市計画道路あり」なんて記載がされているだけですが、実は『物件の価値にかなり大きな影響を及ぼす事項』であることをご理解いただけたことと思います。

また、都市計画道路の区域内にある物件の売買には、ここまでご説明してきた様々なメリット・デメリットが存在していますから、ご購入の意思を決定する際には充分な注意が必要となるでしょう。

但し、正しい知識さえ持っていれば決して恐れることはありませんから、都市計画道路の区域にある物件が気に入った際には、思い切って購入してみるのも一興かもしれません。

ではこれにて、都市計画道路の土地売買に関する知恵袋を閉じさせていただきたいと思います!