越境問題

 

マイホームや投資用アパートなどの不動産を持っている方には、「土地を所有しているが故に降り懸かってくる揉め事や厄介ごと」があるものです。

そして、そんな困り事の中でも非常に発生件数が多く、トラブルに発展しやすいのが敷地境界と越境についての問題となるでしょう。

当ブログでも過去に境界に関する記事を書かせていただき、境界線を示すための「↓」や「+」等の記号が刻まれた石杭や鉄鋲などの『境界標』の存在について説明をいたしましたが、

『建替えやリフォームなどで境界標が紛失してしまうケース』もありますし、古くから代々受け継いで来た土地などでは『そもそも最初から境界標が設置されていないというパターン』も少なくありません。

なお、境界標が失われているケース(または、そもそも設置されていないケース)では、法務局に備えられた測量図(地積測量図)等を元に、土地家屋調査士などに依頼して境界標の復元や新設を行うのが通常ですが、この段階で『何処のラインを境界に定めるかについて、隣家とトラブルになる』ことも少なくありません。

また、しっかりと境界標が設置されているにも係らず、隣地のブロック塀や屋根の軒などが、隣りの土地に飛び出した状態(越境状態)となっているというトラブルも数多く見受けられます。

そこで本日は、「不動産・境界越境問題について」と題して、この厄介な越境トラブルの解決方法等を解説してみたいと思います。

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民法における越境問題

さて冒頭でもお話した通り、私たちの身の周りには「土地の境界」というものが存在しており、しばしば「境界の越境に関するトラブル」等が発生しているのですから、法律上(民法上)にも『しっかりとした決め事』があっても良さそうなものですよね。

しかしながら、明治時代に作られた日本の民法には越境問題について「これと言ったルールが記されていない」のが現実なのです。

ちなみに、民法第233条には「境界を越えて伸びて来た木の枝は、隣家に切るように請求することができる」といった定めは一応存在しています。

また「地境を超えてきた木の根に関しては勝手にこちらで切って構わないが、それにより木が枯れるような時には、切ってはならない」とも記されているのですが、越境に関する民法の文言はなんと『たったこれだけ』なのです。

なお、このようなお話を聞くと「えっ!?これしか書いて無いってどういうこと?」というお声が聞こえて来そうですが、シビアな住宅事情を抱える現代とは異なり、明治の世の中では『この程度のルールで充分に用が足りていた』ということなのでしょう。

但し、民法上に特段の定めがないからといって「飛び出しているブロック塀や屋根の軒などを勝手にカット」すれば、相手の所有物を無断で破壊したことになりますから、揉め事に発展するのは必至ですし、場合によっては損害賠償を請求される可能性だってあるのです。

越境状態

 

越境物には様々な種類がある

さて、一口に越境物といっても、その種類には実に様々なものが考えられます。

ここまでのお話で登場した「ブロック塀」や「建物の本体」や「軒」などに加えて、地中を走る水道や下水、ガスの配管などがお隣の土地に越境してケース(地中越境)もあるでしょう。

また、空中を通過している電線についても越境物として問題となる(空中越境)ことがありますから、決して油断はできません。

引込み越境

 

なお、様々な越境物の種類ごとに解説を行っていくと、記事が非常に長文となってしまいますし、問題解決の方法は「越境物の種類を問わず共通しているケースが殆ど」となりますので、当記事では『越境物がブロック塀や建物の軒である』ことを前提に解説を進めさせていただきます。

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現実のトラブル解決法

自分の土地が隣家などから越境の被害を受けていることを知れば、「越境している相手に直談判しよう!」となるのが当然であり、確かにこれが最もストレートな解決法には違いありません。

しかしながら、木の枝とは異なりブロック塀や屋根の軒は、専門の技術や道具がないと切断するのは困難ですし、建物の一部となれば補修作業も必須となります。

また、専門の職人に依頼するとなれば、それなりの費用負担が発生することにもなるのが当然でしょう。

よって、いくら迷惑を被っているとしても、突然隣りのお宅に押し掛け「越境しているから業者に依頼してカットしろ」とは、流石に言い辛いものがありますよね。

なお、このようなケースで非常に便利なのが「越境についての覚書」を取り交わすという方法です。

覚書については別記事「念書と覚書について解説致します!」にて詳細な解説を行っておりますが、簡単にご説明すれば『覚書とは関係権利者が合意した事項を記載し、各々が署名捺印を行う確認書類』ということになるでしょう。

そして、「越境に関する覚書」に記すべき要点は以下の通りとなります。

越境物の特定と認識の確認

まず最初に行うべきは、対象の越境物(ブロック等)が誰のもの(所有物)であるかの確認と、設置されている場所を正確に特定することです。

私の経験上でも「お宅のブロック塀が越境していますよ」と隣地の方に伝えたら、「あのブロック塀は、あんたの土地のものだよ!」と言い返されてしまったケースも少なくありません。

そして、このようなお話となれば「むしろ越境しているのは自分」ということになりますから、これは全く話が変わって来てしまいますよね。

また時には、「越境物がどちらの土地のものか判らない場合」もあるでしょうから、そんな時は覚書を交わす前に、改めて誰の所有物であるかをしっかり取り決める必要がある訳です。

こうした交渉の末「誰のブロックがどれだけ越境しているか」を互いに確認し、その旨を覚書に明記しておけば確認作業は終了となります。(覚書に図面などを添付しておくと更に便利でしょう)

何時、誰の負担で越境を解消するか

ある日突然に、「ブロックや屋根をカットしろ」と言われても、人はなかなか『うん』と頷けないものですが、これが『家の建替えなどのタイミングで、屋根の越境解消やブロック塀のカットを約束する』というのであれば、意外にすんなりと受け入れられるものですよね。

そして、こうした「越境解消のタイミング」や「負担の割合」を明記しておくのが越境の覚書作成のもう一つのポイントとなります。

具体的な書き方としては、「A所有の建物取り壊し時に、越境物をAの負担にて撤去するものとする」という形になるでしょう。

相続・売買等で所有者が変わっても覚書の内容を引き継ぐ

そして最後に記すべき内容となるのが「相続発生時や売却が行われた場合にも、次の所有者にこの覚書の内容を継承させる」という文言になります。

越境解消のタイミングを「建替え時」などに定めた場合には、その実現が遥か未来のお話となることもあり得ますから、覚書の取り交わしに際しては必ずこうした文言を加えておくべきでしょう。

話し合いではトラブルが解決できない場合

前項では「越境トラブルの解決法」についてご説明をしてまいりましたが、こうした手段を駆使しても問題が解決できないケースもあるでしょう。

そして、ここまでやっても「着地点が見えない」という場合には、『そもそも境界線の位置について争いがある』というパターンも多いはずです。

境界線については、原則としてお隣同士が合意することで「境界標」を設置することが可能となりますが、この点に争いがあり、話し合いによる解決が見込めない場合には「筆界確定訴訟という訴訟を起こす」というのが定石となります。

しかしながら、訴訟となれば裁判費用や弁護料などの負担が発生することになりますし、場合によっては非常に長い時間を要することにもなるでしょう。

そこで近年、脚光を浴びているのが「境界特定制度」や「境界問題相談センターの調停」などを利用するという方法となりますが、紛争が本格的なものとなっている場合には対応しきれないケースもあるのが現実です。

なお、本格的な境界トラブルの解決方法につきましては、別記事「境界問題の解決法について解説いたします!」にて詳細な解説を行っておりますので、ご興味がある方は是非ともご一読いただければと思います。

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境界越境まとめ

さてここまで、覚書の作成方法などを中心に、越境トラブルについての解説を行ってまいりました。

読者の方の中には、越境問題で頭を悩ませておられる人も多いかと思いますが、「現実のトラブル解決法」の項にてご紹介した3つのポイントを押さえた覚書を作成していただくことで、問題解決の糸口を見出していただければ望外の喜びです。

なお、「越境物の特定と認識の確認」の作業に当たっては、相手側と話し合う中でブロック塀などについて「どちらか一方の所有物と取り決めるのが難しい」という場合もあるでしょう。

そして、このようなケースでは『ブロック塀を共有物として扱おう』という結論に達することも珍しくありません。(そもそも、最初から共有物という認識の場合もあるとは思いますが)

もちろん、ブロック塀を共有物して扱うことも不可能ではありませんが、実は共有物の管理はなかなかに面倒なものとなります。

例えば、「ブロック塀が老朽化し、建て直しが必要な場合には誰がいくら費用を負担するのか」「ブロック塀が倒壊して、怪我人が出た場合には誰が責任を負うのか」「どちらか一方の都合で取り壊しができるのか」など、取り決めるべき内容は非常に多岐に及ぶことになるでしょう。

このような複雑な内容を覚書にまとめるのは非常に骨の折れる作業となりますし、むしろ覚書を交わしたが故に余計なトラブルを招き寄せる可能性もありますので、管理人個人としては『ブロック塀などを共有物として扱うのは、避けるのが得策である』というのが結論となります。

不動産は子供たちや孫たちにまで引き継がれていく資産となりますから、未来に心配ごとを残さないためにも、境界越境問題はスッキリ解決したいものです。

ではこれにて、不動産の境界越境問題の知恵袋を閉じさせていただきたいと思います!