建物付きの不動産売買などを行うと、必ず耳にするのが「建築確認」や「確認済証」といったワードであるかと思います。

「えっ!?家を買ったけどそんな言葉を聞いた憶えはない!」と言う方もおられるかもしれませんが、それは仲介をした不動産屋さんが説明を省いたか、あなたの聞き逃しである可能性が高いはずです。

また、実際に売買を経験していなくとも、新聞折り込み広告やネットの物件情報には「建築確認」等の文字がしばしば登場しますから、「見覚えがある!」という方も少なくないかもしれません。

このように「建築確認」等の用語は、不動産に係れば必ず目にするワードとなりますから、『これらが如何に重要なものであるか』は容易に想像が付きますが、

既にお話した通り、たとえ不動産の取引を経験していても「あまり詳しくは説明されていないケース」ことも多いですから、これは何だか納得がいかないものがありますよね。

そこで本日は、不動産を売買するなら絶対に知っておくべき建築確認・確認済証等について解説をしてみたいと思います。

建築確認・確認済証

 

建築確認とは一体?

さて、まずは建築確認とは一体何か?というところから、お話を始めてまいりましょう。

一般的な定義を申し上げれば、建築確認とは「建物の建築計画が、法令等に適合しているか否かを着工前に審査する行為」ということになります。

また、もう少し解り易く説明するとすれば「これから建てる建物が法律違反となっていないかを審査する行為」ということにでしょう。

ご存じの方も多いかもしれませんが、我が国には「建築基準法」という法律があり、建築する建物に関して様々な制限が設けられています。

実は以前に別の記事にてご説明した用途地域高さ制限なども建築基準法による制限の一部なのですが、実際にはまだまだ多くのルールが定められており、その全ての基準をクリアーしなければ建物は適法とは認められません。

よって、これから家を建てるとなれば、行政による「建築予定の建物がこれらの規制に違反していないかの審査」を受けなければならず、これを「建築確認」と呼んでいるのです。

但し、審査を受けて建築が行われたからといって、必ず申請通りの建物が作られる保証はありません。

そこで建築が開始された以降も、行政は建築途中の検査(中間検査)に、完成後の最終チェック(完了検査)を実施して、違反建築の防止に取り組むこととなったのです。

そして最終的に「建築確認」通りの建物が完成していれば『確認済証』という合格証をもらうことができるというのが、我が国の建築に係わるルールとなっています。

なお、こんなお話をすると「制度は理解できたけど、あまり自分には関係ないのでは・・・」と思われる方も多いかもしれません。

しかしながら、確認済証が無ければ、その建物に対して住宅ローンを組むことはできないケースがありますし、売却する際にも大幅な値引きが必要となる場合が考えられますから、これは決して軽視できる問題ではないのです。

※建物を建築する際に建築確認等が必要となるのは、原則として都市計画区域及び準都市計画区域となり、それ以外のエリアでは建築確認は不要ですが、一般的に不動産が売買される地域は殆ど全てが「建築確認の必要なエリア」となります。

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様々なシーンで係ってくる建築確認

ここまでの解説をお読みになり、「建築確認の申請は新築の時のみに必要」と解釈されている方もおられるかもしれませんが、残念ながらその認識は『誤り』となるでしょう。

例えば、既に確認済証を取得している建物であっても、10㎡以上の床面積の増加を伴う工事を行う際には、事前に建築確認の取得が必要となります。

※建物の一部を解体する「減築」については、建築確認は不要です。

また、駐車場などでよく見掛ける柱の付いた「車庫屋根」を設置する場合でさえ、建築確認は必須となりますから注意が必要です。

なお、ビルなどを建築する際にエレベーターを設置するならば、ビル本体とは別にエレベーター用の建築確認の取得が必須となりますし、

建築確認は『建物の用途』によって許可基準が異なるため、「住居」として確認を取得していた建物を「店舗」として使用する場合などには、確認用途の変更申請を要することになります。

よって、これから中古住宅を購入する方や、既にマイホームをお持ちの方がリフォームなどを行う際にも、建築確認の申請が必要となる可能性があるのです。

※表記以外でも、地下車庫や2mを超える擁壁(土留め)の設置については建築確認が必要となります。

 

実際の運用

さて建築確認や確認済証について、おおよそのご理解をいただけたところで、本項では実際にこれらの制度が「どのように運用されているか」についてを見ていきましょう。

実際に皆さんが家を建てたり、増改築を行うということになれば、原則として建築確認の申請を行うのは建築士の仕事となります。

大抵の場合は、工事を担当するハウスメーカーやリフォーム会社にて設計士の手配もしてくれますから、施主である皆様は書類に印鑑を押して、お金を払うだけとなるのが通常です。

また一昔前までは、建築確認の申請を「市区町村」などの地方自治体に対して直接行うのが常でしたが、現在では委託を受けた民間企業が窓口になるケースが殆どですから、その制度も時代と共に大きな変化を遂げています。

なお制度の変化というお話になれば、最も顕著なのが建築基準法の違反に対する取締りの強化に関してということになるでしょう。

以前は、たとえ違法建築の建物であることが行政に知られても、それ程厳しく取締りを受けることはありませんでしたが、今や各地方自治体が「建築Gメン」等の部署を立ち上げており、通報があった際に厳しい対処を行うのはもちろんのこと、自主的にパトロールまで行っている地方自治体もあるです。

もちろんルールさえ守れば、何も恐れることはないのですが、むしろ問題は「過去の取り締まりが緩かった時代の建物が数多く残っている」という点でしょう。

実は20~30年前までは、建物を新築する際に建築確認の取得が必須ではあったものの、「完了検査を受けずに、確認の内容と異なる建物を建築する」といった行為が当たり前に行われていました。

当然こうした建物は確認済証を取得していません(完了検査を受けても不合格となる)ので、売却をする際に買い手が現れても、銀行の融資承認が下りないという理由でキャンセルされてしまうことも少なくありません。

また、極端に建築確認の内容から逸脱した違法建築物である場合には、購入した者が行政などから改善を求められることも無いとは言えないのです。

こうした事態に陥らないためにも、不動産取引を行う際には「自分には関係ない!」と決めつけることなく、建築確認・確認済証に関して正しい知識を身に付けておくべきでしょう。

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建築確認についてのまとめ

さてここまで、非常にザックリではありますが、建築確認等について知っておくべき知識をご説明してまいりました。

なお「更に突き詰めた知識を得よう」とすると、かなり専門的なお話になってしまいますので、マイホームの購入や売却、増改築を行うのであれば、この程度の内容を把握してれば充分であるかと思います。

また、不動産屋さん的に是非皆様にご注意を願いたいのが、これから購入される物件や、現在お住みの自宅の建築確認・確認済証等の資料を絶対に失くさないようにしていただきたいということです。

実は建築確認の関係書類は、申請こそ地方自治体に対して行われるものの、提出済みの書類を後から閲覧したり、コピーを取らせてもらうことは一切できません。(その上、申請後一定の期間保管された後に原本は破棄されます)

※近年では委託を受けた民間業者が建築確認の申請を受理していますが、最終的には地方自治体がこれらの情報を管理することになります。

よって申請者の手元に残される複本が唯一のものとなり、失くしてしえば「それで終了」となってしまうのです。

ちなみに原本破棄後も、行政には「建築確認・検査済証取得の有無の記録(台帳記載証明)」や「簡単な概要データ(建築概要書)」が残されることになり、自由に閲覧も可能ですが、売却やリフォームに際しては「原本があった方が確実に有利」ですから、お持ちの方は是非大切に保管なさってください。

ではこれにて、建築確認・確認済証についての知恵袋を閉じさせていただきたいと思います。