不動産の売買調査を行っていると、「確認済証はありますか?」「検査済証は取得していますか?」といった確認をする場面が頻繁にあります。新しい建物であれば所有者が書類を保管していることも多いのですが、築年数が経過した物件では、確認済証や検査済証が紛失しているケースも決して珍しくありません。
しかし、不動産取引では「書類がないから分からない」で済ませるわけにはいきません。そこで今回は、建築確認や確認済証・検査済証の基本的な意味から、書類を紛失している場合の役所での調査方法まで、不動産実務の目線から詳しく解説していきます。
- 確認済証は「工事を始めてよい」という段階の書類
- 検査済証は「完成した建物について完了検査を受けた」ことを示す書類
- 書類を紛失していても、役所の台帳などから交付履歴を確認できる場合がある
- 不動産調査では「建築計画概要書」と「台帳記載事項証明書」を組み合わせて確認するのが基本

建築確認とは?
建物を新築したり、一定の増築・改築などを行ったりする場合には、計画している建築物が建築基準関係規定に適合しているかについて、工事着手前に審査を受ける必要があります。この手続きが「建築確認」です。
建築確認では、例えば次のような内容について審査が行われます。
- 用途地域などによる建築物の用途制限
- 建ぺい率・容積率
- 道路への接道状況
- 道路斜線・北側斜線などの高さ制限
- 防火地域・準防火地域などの制限
- 建物の構造や安全性
審査の結果、計画が建築基準関係規定に適合していることが確認されると「確認済証」が交付され、原則としてその後に工事へ着手することになります。なお、現在では自治体だけではなく、民間の指定確認検査機関が建築確認や完了検査を行っているケースも非常に多くなっています。
確認済証と検査済証の違い
不動産調査では「確認済証」と「検査済証」を混同しないことが重要です。
| 書類 | 意味 | 交付される時期 |
|---|---|---|
| 確認済証 | 建築計画が建築基準関係規定に適合していることを確認したもの | 原則として工事着手前 |
| 中間検査合格証 | 対象となる建築物について、工事途中の所定工程で検査に合格したもの | 工事途中 |
| 検査済証 | 工事完了後の検査により建築基準関係規定への適合が確認されたもの | 建物完成後 |
非常に簡単にいえば、次のような違いになります。
確認済証=この計画で工事を進めてよい
検査済証=完成した建物について完了検査を受け、適合が確認された
そのため、不動産調査では「確認済証があるか」だけではなく、検査済証まで交付されているかを確認することが重要なのです。
建築確認から検査済証までの基本的な流れ
建物が建築される際の一般的な流れを整理すると、次のようになります。
- 建築確認申請
- 確認済証の交付
- 工事着手
- 必要な建物では中間検査
- 工事完成
- 完了検査
- 検査済証の交付
ここで注意したいのが、確認済証を取得しているからといって、必ず検査済証も取得しているとは限らないという点です。特に築年数の古い建物では、建築確認を受けて工事を開始しているものの、完成後の完了検査を受けていなかったり、検査済証の交付記録を確認できなかったりするケースがあります。
建築確認・検査済証は不動産取引でなぜ重要?
確認済証や検査済証は、単に建築時の古い書類というわけではありません。中古住宅や収益物件などの売買では、建物の建築経緯を確認するための重要な資料になります。
例えば、次のような点を確認する材料になります。
- 建築確認を受けて建築された建物なのか
- 完了検査を受けているのか
- 建築確認上の用途は何か
- 確認申請時の建築面積や延べ面積はいくらか
- 現在の建物と確認申請時の内容に大きな違いがないか
また、増築などが行われている物件では、登記簿や現況の面積と建築確認時の面積を比較することで、後から増築された可能性に気付くこともあります。
確認済証・検査済証の有無だけを確認して調査を終えるのではなく、「確認申請時の建物」と「現在の建物」が同じ状態なのかを見ることが重要です。
確認済証・検査済証がある場合の調査方法
まずは売主や所有者に、建築関係書類が保管されていないか確認します。特に確認しておきたいのは、次のような書類です。
- 確認済証
- 検査済証
- 建築確認申請書
- 確認申請時の図面
- 中間検査合格証
- 設計図書
確認済証や検査済証には、通常確認番号・交付年月日・建築主などの情報が記載されています。これらが分かれば、役所で建築計画概要書や台帳を探す際にも物件を特定しやすくなります。
確認済証・検査済証を紛失している場合はどうする?
問題となるのが、所有者が確認済証や検査済証を紛失しているケースです。確認済証や検査済証そのものについては、紛失しても自治体から同じ書類を再発行してもらえるわけではありません。
そこで利用するのが、主に次の2つの資料です。
- 建築計画概要書
- 台帳記載事項証明書
建築計画概要書を確認する
建築計画概要書には、建築確認申請時の建物に関する概要が記録されています。自治体や年代によって記載内容は異なりますが、次のような情報を確認できる場合があります。
- 建築主
- 敷地の地名地番
- 用途
- 構造
- 階数
- 敷地面積
- 建築面積
- 延べ面積
- 確認済証の番号や交付年月日
- 検査済証に関する情報
また、概要書に配置図が残されている場合には、建物と道路の位置関係や建物配置なども確認でき、不動産調査では非常に有用な資料となります。
建築計画概要書については別の記事で詳しく解説していますので、こちらも参考にしてください。
→「建築計画概要書とは?閲覧方法や不動産調査での見方を実務目線で解説」
台帳記載事項証明書を取得する
もう一つ重要なのが台帳記載事項証明書です。自治体によって名称は多少異なりますが、建築確認や完了検査について行政が保有する台帳情報を証明するものです。
確認済証や検査済証そのものを紛失している場合でも、台帳が残っていれば、次のような情報を証明してもらえる場合があります。
- 確認済証の交付年月日
- 確認番号
- 検査済証の交付年月日
- 検査済証番号
台帳記載事項証明書は「確認済証・検査済証の再発行」ではありません。あくまで行政が保有している台帳に記録された内容を証明する書類です。
スポンサーリンク
役所で調査するときは「地番」を準備する
建築確認関係の調査で意外と重要なのが、物件所在地の地番です。建築確認の記録は、現在の住居表示ではなく、建築当時の地名地番を基準に管理されていることがあります。
そのため調査へ行く際には、少なくとも次の情報を準備しておくとよいでしょう。
- 土地の地番
- 建築当時の地番が分かればその情報
- 建築年月
- 建築主の氏名
- 建物の構造
- 階数
- 延べ面積
- 確認番号・検査済証番号(分かる場合)
特に古い物件では、地番だけで簡単に検索できるとは限らないため、できるだけ多くの情報を用意しておくのが実務上のコツです。
建築計画概要書や台帳が見つからないこともある
役所へ行けば必ず建築確認の記録が見つかる、というわけではありません。築年数の古い建物では、次のような理由によって調査できない場合があります。
- 当時の台帳が残っていない
- 建築計画概要書が保存されていない
- 古い地番が分からず建物を特定できない
- 当時と現在で行政の所管が変わっている
また、保存されている資料の年代や閲覧方法も自治体ごとに異なります。そのため、古い物件の調査では「記録がない=建築確認を受けていない」と即断しないことも大切です。
東京都では建築確認の所管にも注意
東京都内で建築確認関係を調査する場合には、東京都と各区のどちらが建築確認を行ったのかにも注意が必要です。建築物の年代や規模によって所管が異なるため、すべての建物を東京都庁だけで調べられるわけではありません。
また現在では、建築計画概要書の電子閲覧や台帳記載事項証明書の電子申請に対応しているケースもあります。ただし、対象となる年代・建築物・閲覧できる資料などには条件がありますので、実際の調査では対象物件を所管する行政庁の最新情報を確認する必要があります。
「東京都の物件だから都庁へ行けば全部分かる」というわけではありません。区扱いの建物なのか、東京都扱いなのか、まず所管を確認するのが近道です。
2025年4月から建築確認の対象が見直されている
建築確認制度については、2025年4月施行の建築基準法改正によって、小規模木造建築物に関する取扱いが大きく見直されています。特に従来「4号建築物」と呼ばれていた小規模な木造住宅などに対する審査省略制度、いわゆる4号特例の対象が縮小されました。
また、都市計画区域等の外についても、原則として階数2以上または延べ面積200㎡を超える建築物は建築確認の対象となっています。古い物件を調査する場合には「現在のルール」ではなく、その建物が建築された当時の法令や確認制度を踏まえて判断する必要があります。
検査済証がない=違反建築物とは限らない
ここは不動産調査で特に注意したいポイントです。検査済証が確認できないからといって、それだけで直ちに「違反建築物」と判断することはできません。
例えば、次のような複数の可能性が考えられます。
- 完了検査を受けていない
- 検査済証を紛失している
- 古い記録が行政に残っていない
一方で、検査済証がない建物については、その後に増築や改築が行われている可能性も含め、現在の建物の状態について慎重な確認が必要となります。特に融資、用途変更、大規模な改修、将来の建替えなどを予定している場合には、建築士などの専門家へ相談する必要が生じるケースもあります。
不動産調査では「建築当時」と「現在」を比較する
建築確認の調査で最も大切なのは、確認番号を調べることだけではありません。実務では、建築確認時の建物と現在存在している建物を比較することが重要です。
建築確認時の建物
↓
現在存在している建物
例えば、建築計画概要書では延べ面積100㎡となっているのに、登記簿では130㎡となっていれば、その後に増築が行われた可能性があります。また現地を見ると、概要書の配置図にはない車庫や物置が設置されていることもあります。
もちろん、数字が違うからといって直ちに違反建築ということではありませんが、「なぜ違うのか」を調べるきっかけになります。
役所調査は「書類を取得する作業」ではなく、登記・役所資料・現地の3つを照合して、食い違いを探す作業だと考えると調査精度が上がります。
スポンサーリンク
建築確認・検査済証の調査方法まとめ
建築確認や検査済証は、不動産取引における建物調査の基本資料です。所有者が確認済証・検査済証を保管していれば内容を確認し、紛失している場合には、役所などで建築計画概要書や台帳記載事項証明書を調査します。
ただし、古い建物では資料そのものが残っていないこともありますし、検査済証が確認できないからといって、それだけで違反建築物と判断できるわけでもありません。
そして実務上もっとも重要なのは、役所から取得した資料だけを見るのではなく、次の資料や現況を照合し、建築当時から変更された部分がないかを確認することです。
- 建築計画概要書
- 台帳記載事項証明書
- 建物登記簿
- 現況の建物
建築確認関係の調査は少々地味な作業ですが、増築や用途変更、融資などに関係する問題を発見するきっかけになることも多いため、不動産売買の物件調査ではしっかり確認しておきたい項目といえるでしょう。







