日本は世界的に「水資源が豊富な国」とされており、近年では外国人による水源の地域の買い占めなどが社会問題となっています。

なお、建築や不動産の仕事をしていると、この水資源(地下水など)の問題で「頭を悩ませる事態」が時折発生するものですが、その実情が一般の方の耳に入ることは滅多にないはずです。

そこで本日は「土地と地下水の問題について解説いたします!」と題して、土地を購入して建築を開始したら「水が湧き出してきた」など、不動産取引における地下水トラブルについて体験記を交えながらお話しさせていただきたいと思います!

土地と地下水

 

「水脈」と「水みち」

冒頭にて「土地を掘削したら地下水が湧き出した」というトラブル事例があることをお話しいたしましたが、こうした現象が起こる原因としては、

  • 水脈
  • 水みち

という2つのパターンが考えられます。

水脈とは「地下水が存在する地層」を意味しますから、水脈のある土地では

一定の深度まで掘削すると、地中から湧き水のように水が染み出してくる状態

となってしまうでしょう。

一方、「水みち」とは水脈の中でも常に水に満たされている層ではなく、雨が降った際などに不定期に水が湧き出る場所となるため、この水みちを掘削すると

日(時期)によって地下水が湧き出すこともあれば、乾いたままになっている時もある

という非常に厄介な状態となるのです。

地下水への対策

さて、ここまでの解説において「土地を掘削した際に地下水が湧き出すという状況」についてはご理解いただけたことと思いますが、地下水の問題が発生した場合には、どのような対策が必要となってくるのでしょう。

建築工事に際しては、建物の不同沈下を防ぐための「地盤改良工事」や「基礎の施工」を行う必要がありますが、地下水が湧き出した状態ではこうした工事を行うことは不可能です。

よって、工事を進めるに当たっては

  • 地下水をポンプで排水する設備を設ける
  • 敷地に地下水が流れ込まない処置を行う

以上のどちらかの対策を講じて地下水の発生を食い止めなければなりません。

※現場の状況次第では「鋼管杭」「湿式柱状改良」などの工法で、地下水をそのままに地盤改良工事が行えるケースもあります。

地下水をポンプで排水する

地下水対策の最もオーソドックスな対策となるのが、ポンプを設置して水を汲み出す方法となります。

「地下水が湧き出してくる」とは言っても、無尽蔵に水が噴き出してくるケースは稀であり、一定の水位に達すると水の流出は収まるのが通常です。

そこで敷地内に水抜き用の井戸のような設備を設けて、

地下水が一定の水位に達した場合はポンプで地上への排水を行い、水の湧き出しが収まるとポンプも停止する

という仕組みで、地下水への対策を行うことになります。

ポンプで直接水を排出するという直接的な方法である上、対策にそれ程費用も要しないのが特徴ですが、常にポンプを稼働させておく必要がありますので、設備の維持にランニングコストが発生するという問題点があります。

敷地に地下水が流れ込まない処置

一方、こちらは「敷地内への地下水の侵入を防ぐ」という対処法となります。

このようなお話をすると「そもそも、そんなことが可能なの?」というお声も聞こえて来そうですが、技術的には不可能ではありません。

なお、工事の方法としては様々な種類があるようですが、薬剤を使用して敷地内に地下水が流れ込まないように土壌を改良する方法が一般的であるといいます。

但し、こうした工事が地下水の流れに影響を及ぼすことで「他の土地に地下水が流れ込む」「地下水の水位や場所が変化する」とった現象を引き起こすケースも多いため、あまり推奨されていない工法となっているようです。

地下水と不動産取引

このように建築工事における地下水の発生は、

  • 工期の遅れ
  • 対策工事が必要になる
  • 想定外の建築費用増加を招く

といった事態を引き起こしますから、施主にとっては非常に大きな負担を強いられることになります。

そして対象の土地が不動産取引によって取得したものであるならば、買主は売主に対して契約不適責任に基づく修補請求等を行うことが可能となるでしょう。

但し、地下水に関しては事前にそのリスクを察知することが非常に困難ですし、契約上で「契約不適合責任は免責」と定められていた場合には、売主へ責任の追及が行えないのが現実です。

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実録!地下水トラブル顛末記!

ではここからは、管理人が実際に経験した土地売買における地下水トラブルの体験記をお送りいたしましょう。

地下水事件勃発

この事件が勃発したのは、今から数年前の真冬のこととなります。

当時の私は、「建売用地の仕入れ」や「収益物件の買取りの仕事を」メインにしていたのですが、「マイホームを購入したい」というお客様がご来店されれば、客付けの業務も日常的にこなすのが常でした。

そんな毎日を送るある日、私の店舗にあるお客様がご来店されます。

お客様のスペックは、30代のご夫婦でご主人様のお勤め先は上場企業、そしてマイホームの建設を目的に土地売り物件をお探しとのことでした。

以前の記事「建売とは?戸建て分譲の仕組みや舞台裏を解説いたします!」でも申し上げましたが、現在の不動産業界は「建売屋さん」と呼ばれる戸建分譲業者同士が、土地の情報を巡って激しい争奪戦を繰り広げています。

こうした事情により土地の値段は現在も釣り上がる一方で、今や「一般のお客さんが購入する土地価格より、建売業者の土地買取り価格の方が高額である」という逆転現象が起こっている程なのです。

よって不動産市場では建売物件こそ多く流通しているものの、売地の情報は殆ど存在せず、たとえ物件があったとしても「売主の都合により売却希望価格が高過ぎて建売用地に向かない」など、何かしら問題があるものが殆どという状況となっています。

そして今回のお客様は「これまで何件も建売物件を見て来たものの、どうして自分の好みに合う家が見付からず、土地を購入して注文住宅を建てるのが希望」とのことでしたので、こうした業界の現状を包み隠さずにご説明することにしました。

なお通常であれば、この説明を聞いて土地購入を諦める方が殆どなのですが、このお客様は「相場以上の価格でも良いから、土地が欲しい」とその意志は非常に固いご様子です。

もちろん建売屋さん以上の金額で土地を購入する覚悟があるならば、物件が無いことはありませんので、最近ではすっかり珍しくなった土地購入希望のお客様との物件探しがスタートすることとなりました。

まず手始めに、レインズやアットホームといった不動産業者同士の売物件情報共有媒体に掲載された情報をご紹介してみますが、インターネットなどの情報には常にアンテナを張り巡らせておられるとのことで、どの物件もチェック済みであるご様子です。

そこで「情報が入り次第ご連絡いたします」と伝えて一旦仕切り直し、以降は建売用地仕入れのための営業活動で入手した情報の中から、一般の方でも買えそうな物件をご紹介する方向へと切り替えることにしました。

そして物件探しを始めること1ヶ月、遂に「是非現地を見に行ってみたい」という土地を見付け出すことがました。

気になる物件のスペックはといえば、駅から徒歩10分程の川沿いにある40坪の整形地であり、お客様が検討されている間取りもバッチリ収まりそうです。

なお、本来であれば建売が2棟建つ現場なのですが、やや売主の希望売却価格が高く、買い手が見付からずに苦戦している物件となっていました。

ちなみに物元(ぶつもと)と呼ばれる売主側の不動産業者も知り合いでしたので事情を話してみたところ、「一般のお客でも構わない」とのことでしたので早速お客様を現地にご案内してみることにします。

するとこのお客様、一目で物件を気に入り、契約・決済とお話はトントン拍子に進んで行くこととなり、無事に引渡しも完了することができました。

なお、決済の際には「来月から建築に取り掛かります!」と笑顔を見せていた買主様でしたが、程なくして怒りに震えた声でクレームの電話が入って来ます。

そこでとりあえずは「現地を確認させてください」と伝え、営業車で現場に急行することにしましたが、購入した時は雑草だらけの更地だった場所には、なかなかに立派な池が出来上がっていました。

解決に向けて

「更地に池が出現する」という衝撃の光景にしばらく放心状態となってしまった管理人でしたが、何とか平静を取り戻し、「まずは経緯を聞かせてください」と買主様と建築を請け負ったハウスメーカーの現場監督にお話を伺います。

その説明によれば、建築に先立ち地盤調査を行ったところ、調査を行った際の穴に水が溜まっているのを作業員が発見したとのことです。

そこで買主にその旨を報告した上、重機で地面を掘ってみたところ、40cmも土を掘り返すと地下水が湧き出して来るという状態であり、慌てて私に連絡を入れたとのことでした。

この経緯を聞いて、私も試しに他の場所をスコップで掘らせてもらったのですが、確かに30cm~40cmも掘り始めると土は湿り始め、しばらく放置していると水たまりが出来上がってしまいます。

ちなみに、このような現象は私も初めての経験でしたので『見えない場所に水道管などがあり、漏水した水が染み出しているのでは』とも疑ってもみましたが、そのような気配はありません。

そこで隣接するお宅に聞き込みをしてみたところ、「以前からこの地域は、こうした現象が時折起こる地域である」との衝撃的な証言を聞かされてしまうのでした。

こうした状況を受け、流石に『これはマズイ』と考えた私は元付け業者(売主側の不動産業者)に連絡を入れ、共に現地を確認した上で売主様と今後の対応を協議することにします。

ちなみに、売主様はこの地域では少々名を知られた地主さんであり、かなりの資産をお持ちの方ですから、今回のトラブルで仮に賠償金が発生してもそれ程のダメージは受けないはずです。

しかし、こうした方に限って「お金の支払いは渋い傾向」にありますので慎重に説明を進めて行きますが、お話が核心へと近付くに連れて売主様の穏やかだった表情は「非常に険しいもの」へと変化して行きます。(当たり前でしょうが)

そして「自分は以前、この土地で畑をやっていたが地下水が出てきたことなど一度もない」「言い掛かりだ!」と話の流れは良くない方、良くない方へと流れて行くのでした。

なお、これ以上売主様と険悪な雰囲気になるのも不味いので、一旦その場をお開きにして専門家の意見を聞いてみることにします。

元付けの業者さんと手分けをして、建築屋さん、地盤改良屋さんなど、様々な方々にお話を聞いてみましたが「地下水でのトラブルは決して少なくない」のが実情のようです。

また、地下水の水位は数か月で変動することもあれば、数年のスパンで変わることもある上、川の近くともなれば干潮・満潮など時間帯によっても大きく水位が変わるらしく、これならば売主様の『以前は掘っても水が湧き出なかった』という主張とも矛盾しません。

更に、こうした土地に対して「通常の基礎」を設置して建築を行えば、建物の痛みは早く、後々大きな問題に発展することも少なくないようですから、やはりこれは由々しき問題です。

地下水への対策としては「建物の基礎を完全防水にするという方法」もあるようですが『防水に成功する確率はあまり高くない』とのことなので、「建物の基礎の下に空間(地下ピット)を設けて、そこが地下水で満たされれば自動で排水を行う装置(ポンプ)を取り付ける」のが一番確実な方法であるとのことでした。

そこで、こうした専門家からの意見やアドバイスを報告書にまとめ、再び売主様とのお話し合いに臨むことになりました。

お打合せ前には『前回みたいに激昂されたらどうしよう・・・』と大いに不安だったのですが、どうやら売主様自身もご自分で色々と調べていたらしく、今回は終始穏やかに建設的なお話し合いをすることに成功します。

一方、非常に気になるのは買主様側の反応なのですが、こちらも土地自体は非常に気に入っておらるとのことで、地下ピットやポンプの設置などに掛かる費用を売主様に負担してもらえれば、この件は不問に帰すとおっしゃっていただきました。

その後は工法などを巡って多少のゴタゴタはあったものの、どうにか着地点を見付け出すことに成功し、円満にトラブルを解決することができました。

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土地と地下水の問題について解説まとめ

さて、ここまで土地と地下水を巡るトラブルについて解説を行ってまいりました。

記事の中でもお話しした通り、こうした地下水のトラブルは一般の方が土地を購入した際にも起こり得ることですから、物件を買う際には是非ご注意いただければと思います。

ちなみに顛末記でお話しした事件については、近隣の方に事前のヒヤリング調査を行っていれば、トラブルの回避が可能であったかもしれませんので、この教訓を生かして取引の際の現地調査では近隣への聞き込みを強化することにしました。

こうしたトラブルを経験すると『不動産屋さんを続けるのが少々怖くなる』ものですが、これからも頑張って行きたいと思います。

ではこれにて、「土地と地下水の問題について解説いたします」の知恵袋を閉じさせていただきたいと思います。