土地を購入して注文住宅を建てようとしたところ、地面を少し掘っただけで地下水が湧き出してきた――。
土地の表面を見ただけでは想像しにくいことですが、地下には地下水が存在しており、その水位や地層の状態によっては、基礎工事や地盤改良工事などに影響が出ることがあります。さらに厄介なのは、土地を購入する前には特に異常が見られなかったにもかかわらず、建築工事を始めてから地下水の存在が分かるケースがあることです。
この記事では、土地と地下水の関係、建築工事への影響、土地購入前に確認しておきたいポイントについて、不動産取引の実務経験をもとに解説します。後半では、私が実際に仲介した土地で地面を30~40cmほど掘ったところ地下水が湧き出したというトラブル事例もご紹介します。
地下水がある土地だからといって、必ず建物を建てられないわけではありません。ただし、地下水位や地盤の状態によっては排水、防水、地盤改良などの追加対策が必要となり、工事費や工期に影響する可能性があります。

土地から地下水が出ることはある
雨として地表に降った水の一部は地中へ浸透し、地層の中を移動したり、地下にたまったりします。この地中に存在する水が地下水です。地下水は必ず深い場所にあるとは限らず、地形や地質、周囲の河川、降雨などの条件によっては、比較的浅い位置まで地下水位が上がることがあります。そのため、普段は普通の更地に見えていても、地面を掘削した際に穴の中へ水が染み出してくることがあります。
地下水位は一定とは限らない
地下水の問題を考えるうえで重要なのが、地下水位は常に同じ高さにあるとは限らないという点です。降雨量や季節、周辺の河川などの影響を受けて地下水位が変動することがあり、ある時期には地面を掘っても水が出なかった土地で、別の時期には比較的浅いところまで地下水位が上昇していることも考えられます。国土交通省でも、地下水の状況を把握するため地下水位観測所を設置し、継続的な観測を行っています。
不動産や建築の現場では、地下を水が流れる場所について「水みち」と表現することがあります。ただし、地中の水の動きは地層や地質などによって複雑に変化します。「この場所に一本の地下水の通り道がある」と単純に考えるのではなく、地下水位や地盤の状態を含めて判断することが重要です。
地下水がある土地で問題になりやすいこと
土地に地下水が存在しているだけで、直ちに問題のある土地ということにはなりません。しかし、地下水位が高い場合には、建築工事の方法や建物の計画に影響することがあります。
基礎工事や掘削工事に影響することがある
住宅を建築する際には、基礎を施工するために地面を掘削します。また、地盤の状況によっては地盤改良工事などが必要になることもあります。このとき掘削した部分へ地下水が流れ込むと、そのままでは作業を進めにくくなるため、工事中に排水を行ったり、施工方法を変更したりする必要が生じる場合があります。
ただし、地下水があるからといって地盤改良や基礎工事ができないわけではありません。実際に採用できる工法は、地下水位、地盤、建物の構造、施工深度などによって異なります。
排水や防水対策が必要になる場合がある
地下水位が高い土地では、建物の計画によって排水設備や防水対策などを検討することがあります。例えば工事中だけ地下水をポンプで排水する方法もあれば、完成後も水が集まる場所を設け、一定の水位になった場合にポンプで排水する設備を設けるケースもあります。一方で、建物の基礎や地下部分に防水対策を施す方法などもありますが、どの方法が適しているかは現場によって異なります。
地下水の存在だけで建築の可否や必要な工事を判断することはできません。地下水位、地盤の強さ、地層、建物の構造、基礎の計画などを踏まえ、地盤調査会社や設計者、施工会社などの専門家に判断してもらう必要があります。
工事費や工期が増える可能性がある
地下水への対策が必要になると、当初予定していなかった工事が追加されることがあります。
- 工事中の排水設備
- 排水ポンプや排水設備の設置
- 基礎や地下部分の防水対策
- 地盤改良方法の変更
- 設計や施工方法の見直し
対策の内容によっては追加費用が発生するだけでなく、設計変更や施工方法の検討によって工期が延びる可能性もあります。
土地購入前に地下水の可能性を調べる方法
地下水は地中にあるため、土地の表面を見るだけで正確に把握するのは簡単ではありません。しかし、土地を購入する前の調査によって、地下水や水に関係するリスクを考えるための手掛かりを得られることはあります。
現地の地形や周辺環境を見る
まず確認したいのが、対象地と周囲の地形です。河川や水路が近くにある土地、周囲より低い土地、昔から水が集まりやすい場所などでは、地下水を含めて水に関する状況を慎重に確認しておいたほうがよいでしょう。
もちろん、川の近くにあるから地下水トラブルが起きる、低地だから建築できない、と単純に判断することはできません。あくまで追加調査を検討する材料の一つとして考えます。
土地の過去の利用状況や地形を確認する
現在は住宅地になっていても、過去には田、湿地、水路などであった場所もあります。古い住宅地図や地形図、航空写真などを確認すると、現在の土地だけを見ていては分からない過去の利用状況や周辺環境が見えてくることがあります。また、国や自治体が公開している地形関係の資料、ハザードマップなども土地を理解するための参考資料になります。
売主から土地の状況を聞く
売主が長年その土地を所有・使用している場合には、過去の状況を聞いてみることも重要です。
- 大雨の後に地面へ水がたまることがあったか
- 過去に井戸があったか
- 建物を建てていた際に排水や湿気の問題がなかったか
- 過去の工事で地下水が出たことがないか
- 土地の造成や盛土などを行ったことがないか
売主自身が地下水の存在を知らない場合もあるため、聞き取りだけで判断することはできませんが、調査のきっかけになる情報が得られる場合があります。
近隣への聞き取りが役立つこともある
地下水に限らず、現地調査では近隣から得られる情報が非常に役立つことがあります。長くその地域に住んでいる方であれば、「大雨の後はこの辺りに水がたまりやすい」「昔はこの辺りに水路があった」「建築工事の際に水が出た」といった地域特有の事情を知っていることがあります。
もちろん近隣の話だけで事実を確定することはできませんが、追加調査を行うべきか判断する材料になります。不動産売買における現地調査については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
▶ 不動産の現地調査とは?売買仲介で確認すべき項目を実務目線で解説
必要に応じて専門調査を検討する
土地の利用目的が住宅建築であり、地下水位や地盤について懸念がある場合には、地盤調査会社や建築会社などへ相談する方法があります。一般的な地盤調査は、主として建物を支えられる地盤であるかを確認するために行うものであり、地下水を完全に調査することだけを目的としたものではありません。それでも調査時に水位や地層について参考になる情報が得られる場合があります。
地下水位は時期によって変化する可能性があります。そのため、一度調査して水が確認されなかったからといって、将来も地下水が現れないと断定することはできません。土地の立地や利用目的に応じて、どこまで調査するかを判断することが重要です。
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購入後に地下水が判明した場合の契約不適合責任
土地を購入した後に地下水が判明すると、「売主に責任を求めることができるのか」が問題になります。現在の民法では、引き渡された目的物が種類、品質または数量について契約の内容に適合していない場合、契約不適合責任が問題となります。ただし、土地から地下水が出たという事実だけで、直ちに売主の契約不適合責任が認められるわけではありません。
例えば住宅建築を目的として購入した土地について、地下水の影響によって予定していた建築に大きな支障が生じる場合には、契約内容との適合性が問題になる可能性があります。一方で、地下水の程度、予定していた土地の利用方法、売買契約時の説明、買主が把握していた事情などによって判断は変わります。
契約書の特約も確認する
不動産売買契約では、契約不適合責任について責任を負う期間や対象、責任の範囲を限定したり、一定の場合に責任を負わないとする特約が設けられていることがあります。そのため、地下水などの問題が購入後に判明した場合には、一般的な民法のルールだけで判断するのではなく、まず売買契約書や物件状況報告書などの内容を確認する必要があります。
民法第566条では、目的物の種類または品質について契約内容に適合しない場合、原則として買主がその不適合を知った時から1年以内に売主へ通知しなければならないと定められています。ただし、売主が引渡し時に不適合を知っていた場合などには例外があります。
また、実際の不動産売買契約では契約不適合責任について独自の特約が定められていることもあります。問題が判明した場合には、時間を置かずに契約書を確認し、必要に応じて弁護士などの専門家へ相談することが大切です。
土地から想定外のものが見つかった場合の契約不適合責任については、地中埋設物の記事でも詳しく解説しています。
▶ 地中埋設物とは?土地売買で注意する種類・調査方法・契約不適合責任を解説
実録|購入した土地を40cmほど掘ったら地下水が出た
ここからは、私が実際に仲介した土地で起きた地下水トラブルをご紹介します。この経験はかなり以前のものですが、土地を購入する際の現地調査や周辺への聞き取りがいかに重要であるかを考えるきっかけになった案件です。
注文住宅を建てるための土地探し
当時、私の店舗へ30代のご夫婦が来店されました。希望されていたのは建売住宅ではなく、土地を購入して自分たちの希望に合った注文住宅を建てることでした。
しかし、条件に合う売地は簡単には見つかりませんでした。当時も戸建分譲業者による土地の仕入れ競争があり、一般の方が注文住宅用地として購入できる土地は限られていたからです。それでもお客様は「多少相場より高くても、気に入った土地を購入したい」という強い希望をお持ちでしたので、物件探しを続けることになりました。
川沿いの40坪ほどの土地を購入
物件を探し始めて約1か月後、ようやくお客様が気に入る土地が見つかりました。駅から徒歩10分ほど、川の近くにある約40坪の整形地で、希望していた建物も十分に配置できそうな土地でした。
売主側の不動産会社とも話を進め、買主にも現地を確認していただいたところ非常に気に入っていただき、そのまま売買契約、決済、土地の引渡しまで無事に完了しました。この時点では、地下水について問題になるような兆候はありませんでした。
建築前の地盤調査で異変が見つかった
ところが、土地の引渡しからしばらくすると、買主から連絡が入りました。建築に先立って地盤調査を行ったところ、調査で開けた穴に水がたまっていることに作業員が気付いたというのです。そこで建築会社が重機を使って地面を掘って確認したところ、地表から40cmほど掘っただけで水が出てくる状態だったとのことでした。
現地へ行くと更地に水がたまっていた
私はすぐに現地へ向かいました。土地を購入した際には雑草が生えた普通の更地だったのですが、現地では掘削した部分に水がたまり、ちょっとした池のような状態になっていました。私も別の場所をスコップで掘らせてもらいましたが、30~40cmほど掘ると土が湿り始め、しばらくすると掘った穴へ水がたまってきました。
当初は「近くの水道管から漏水しているのではないか」とも疑いましたが、それらしい状況は確認できませんでした。
近隣への聞き取りで分かったこと
そこで隣接する住宅に事情を聞いてみることにしました。すると、近隣の方から「この辺りでは以前から、時期によって地面から水が出ることがある」という話を聞くことができました。土地を購入する前には得られていなかった情報です。
この案件では、契約前に近隣へもう少し踏み込んで聞き取りをしていれば、地下水の可能性に気付けたかもしれません。それ以降、現地調査では敷地そのものを見るだけではなく、必要に応じて周辺の方から過去の状況を聞くことも意識するようになりました。
売主は「地下水が出たことはない」と主張
私は売主側の不動産会社へ連絡し、一緒に現地を確認したうえで売主とも今後の対応を協議することにしました。しかし売主は、以前この土地で畑をしていたものの、「地下水が出てきたことなど一度もない」と話します。現地では実際に水が出ていますから、最初は双方の主張が大きく食い違う状態となりました。
そこで、その場ですぐに結論を出すのではなく、一度持ち帰って建築会社や地盤関係の業者などへ相談することにしました。
地下水位が変動すれば双方の話が成り立つ
専門家へ相談していく中で、地下水位は常に一定ではなく、時期や周囲の状況などによって変化する可能性があることが分かりました。つまり、売主が畑として利用していた当時には問題になるほど地下水位が高くなかった一方、買主が建築を始めた時期には地下水位が上昇していた可能性も考えられます。
そう考えれば、「以前は水が出なかった」という売主の話と、「現在は40cmほど掘ると水が出る」という現地の状況が必ずしも矛盾するわけではありません。
建築会社と地下水対策を検討
その後、建築会社や関係業者と相談しながら、地下水への対策方法を検討することになりました。この案件では、建物下部に水を集めるスペースを設け、一定量の水がたまった場合にポンプで排水する方法などが検討されました。
なお、これは当時この現場について検討された方法であり、地下水のある土地すべてに同じ工法が適しているという意味ではありません。実際の対応は地盤や建物の計画などによって異なります。
対策費用を売主が負担することで解決
建築会社や関係業者から得た意見を整理し、改めて売主と話し合いを行いました。買主としても土地自体は非常に気に入っており、地下水対策を行ったうえで予定どおり住宅を建築したいという意向でした。
最終的には、必要となる地下水対策の費用を売主が負担することで話がまとまり、土地の売買を解除することなく建築を進めることになりました。工法や費用の調整には多少時間が掛かりましたが、最終的には売主・買主双方が納得する形で解決することができました。
この取引から学んだ地下水調査の教訓
この案件で最も印象に残ったのは、土地の表面だけを見ても地下の状況までは分からないということです。契約時には普通の更地であり、売主自身も過去に地下水の問題を経験していませんでした。それでも建築を始める段階になって、地表から30~40cmという非常に浅い位置で水が確認されました。
もちろん、不動産会社がすべての土地について地下水調査を行うことは現実的ではありません。しかし、川や水路が近い、周囲より土地が低い、昔の地形や土地利用に水との関係がありそうだ、といった事情がある場合には、通常より一歩踏み込んで調べる価値があります。
- 対象地と周辺の高低差を見る
- 河川・水路など周辺の水環境を確認する
- 古い地図や航空写真などで過去の土地利用を確認する
- 売主から過去の土地の状況を聞く
- 必要に応じて近隣から昔の状況を聞く
- 気になる点があれば建築会社や地盤の専門家へ相談する
特に今回のケースでは、近隣の方が地域の地下水について知っていました。この経験以来、私は不動産の現地調査において、土地や建物だけを見るのではなく、必要に応じて周辺の状況や近隣から得られる情報も重要な判断材料として考えるようになりました。
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まとめ|地下水は見えないからこそ周辺調査が重要
地下水は土地の表面から確認できないことが多く、土地を購入した後や建築工事を始めてから存在が分かることがあります。地下水があるからといって直ちに建築できないわけではありませんが、地下水位や地盤、建築計画によっては排水や防水、地盤改良などの追加対策が必要となり、工事費や工期へ影響する可能性があります。







