近年、我が国は実に多くの自然災害に見舞われています。

こうした状況を考えれば、私たち一般の国民も災害に対して万全の備えを行っておくべきですが、『具体的には何をすれば良いのだろう?』と頭を抱えてしまう方も多いことと思います。

そこで本日は「ハザードマップとは?わかりやすく解説いたします!」と題して、災害対策の基本となるハザードマップに関する知識やその活用法についてご説明させていただきたいと思います。

ハザードマップとは

 

ハザードマップって何だろう?

では最初に、「そもそもハザードマップとは如何なるものか?」という点からご説明を始めていきましょう。

ハザードマップを一言でご説明するならば『災害による被害の予想地図』ということになります。

なお、ここまで簡潔にご説明してしまうと「何やら拍子抜けした感」もあるかもしれませんが、これまで多くの命がこのハザードマップによって救われて来たのです。

さて、我が国でハザードマップが作成され始めたのは1990年代に入ってからと言われています。

ちなみに、ハザードマップには「民間団体が作成したもの」から「町内会レベルで作られたもの」、そして「地方自治体が過去の災害事例などをとりまとめたもの」まで様々ですが、本記事では「自治体レベルのもの」を前提にお話を進めていきましょう。

そして、ハザードマップが作られ始めたことによって、「災害発生の危険性が高い地域住民の防災意識」は自ずと高まって行く結果となり、ひと昔前であれば甚大な人的被害をもたらしたであろう状況においても、『ダメージを最小限に止めることができた事例』が数多く報告されているのです。

但し、未だにハザードマップが備えられていない地域も存在していますし、東日本大震災をはじめとする近年の災害では「マップの想定を上回る被害の発生」も相次いでいますから、私たちは常にハザードマップの変化に注意しながら生活を送る必要があります。

また、一口に災害と言っても「火山噴火」から「洪水」、「地震による液状化」まで様々な種類がありますし、ハザードマップが個々の災害に対して『どのように危険を警告しているのか』という点も気になるところですよね。

そこで次項では、より具体的にハザードマップの内容を解説して行くことにいたしましょう。

 

ハザードマップの種類と掲載情報

前項でもお話しした通り、一口にハザードマップと言っても様々な種類があります。

そこでまずは、主だったハザードマップの種類を挙げてみましょう。

  • 洪水被害
  • 内水の氾濫被害
  • ため池の氾濫被害
  • 高潮被害
  • 津波被害
  • 土砂災害
  • 火山噴火

以上が基本的なハザードマップの種類となりますが、その他にも「液状化の被害」「地震での揺れやすさ」など、各地方自治体が独自のマップを作成しているケースも珍しくありません。

また、こうした各災害ごとのマップ内に「災害時の避難先や避難経路」が盛り込まれている場合もありますし、『避難に関しては独自のハザードマップ』を作っている地域もあります。

さて、ハザードマップの種類がお判りいただけたところで、各ハザードマップの掲載情報についてお話ししていきましょう。

洪水被害

洪水被害のハザードマップは「72時間に632mmの雨が降ったと仮定して」など、一定規模の大雨が降った際の浸水状況を表した地図となります。

そして想定される被害に応じてエリアの色分けがされており、例えば「緑色は0.5m以上~1m未満の浸水」「青は1m以上~2m未満の浸水」といった具合に、洪水のリスクを示しているものが多いでしょう。

内水氾濫被害

「内水」という言葉は聞き慣れないかと思いますが、これは『ないすい』と読み、ハザードマップにおいては「水路や下水道」のことを指します。

ゲリラ豪雨が降った際などには、下水道が逆流しているシーンを見掛けることがありますが、これこそが「内水の氾濫」です。

この内水氾濫についても、一定規模の雨量を想定して浸水の度合いをマップ上に表示することになります。

ため池の氾濫被害

「ため池」は存在するエリアが限られるものとなりますから、全ての地方自治体にマップが備えられているとは限りません。

なおこちらも、一定の雨量があった際のため池の氾濫状況を予測した地図となります。

高潮被害

高潮と聞くと、『津波と何が違うの?』と思われる方も多いことと思いますが、「津波は押し寄せた海水が海底の地形によって大きく盛り上がった状態」を指すのに対して、「高潮は台風などの影響により波自体が巨大化したもの」となります。

そして、この高潮についてもハザードマップが作られるケースが多く、水防法という法律に基づいて「想定できる最も大きな高潮が発生した際に、どれくらいの被害が生じるか」を表した地図となるのです。

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津波被害

さて、高潮に続いては「津波」の被害に対するハザードマップの解説となります。

前提となる津波の規模については地域によって違いがありますが、太平洋側であれば「南海トラフ地震が発生した際に予想される最大級の津波が到来した場合」などを想定して、被害の発生するエリアを示したマップとなるでしょう。

土砂災害

ゲリラ豪雨や強烈な台風が到来する昨今では、土砂災害に関しても厳しい警戒が必要となります。

なお、土砂災害のハザードマップについては砂防4法(砂防法・地すべり等防止法・土砂災害防止法・急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律)にて定められる災害の警戒地域を地図に反映させたものが用いられることになるでしょう。

※砂防4法の詳細については別記事「土砂災害対策の法律について解説します!」をご参照ください。

火山噴火

火山活動が活発な我が国では、噴火に備えたハザードマップも必要不可欠なものとなります。

なお、火山のハザードマップについては「地方自治体ごと」というよりは、「山ごと(浅間山や御嶽山など)」に地図が作成されるのが通常です。

また、被害の想定についても「小規模噴火」「最大規模噴火」など噴火のレベルに応じて、溶岩流や泥流、噴石の被害が及ぶ地域を示したマップとなります。

液状化の被害

東日本大震災においては液状化現象も大きな問題となりましたので、これについてもハザードマップを備えている地方自治体が少なくありません。

なお、マップの内容としては一定規模の地震が発生した際の「液状化リスクを高・中・低」などといった具合に評価したものが多いようです。

但し地域によっては、「南海トラフの場合」「関東大震災タイプの場合」など、発生する地震の震源地や規模ごとにマップを発行しているところもあります。

 

ハザードマップと不動産取引

さてここまで、ハザードマップの概要についてお話をしてまいりましたが、不動産の取引を行う場合にはこのマップが非常に大きな意味を持ってきます。

例えば「これからマイホームを手に入れよう」といったケースにおいては、『購入を考えている物件にどのような災害が降り懸かってくる可能性があるか』を知っておくことは非常に重要な問題となるでしょう。

なお、通常の不動産売買においては不動産業者が取引に介入することになりますから、重要事項の説明において「ハザードマップの内容」については必ず説明が行われるはずです。

但し、前項でもお話しした通り、ハザードマップは地方自治体ごとに備えている地図の種類が変わってきますし、同じ災害に対しても複数枚マップが用意されているケース(災害の規模ごとに地図が作られているなど)もありますから、時には「重要事項を説明する不動産業者が全てのマップの内容を把握していない」ことだってあり得ます。

そして当然ながら、売買完了後に「実は災害のリスクが高い場所である」ことが発覚すれば、これは取引上の大きな問題に発展しますよね。

もちろん、こうした「重要事項の不告知」は不動産業者が責任を負うべき問題となりますが、買主にしてみれば『折角購入した物件にケチが付く』ことに変わりはありませんから、「そもそも災害リスクの高い物件など買いたくない」というのが本音でしょう。

よって、不動産を購入する際には「決して不動産屋さん任せにすることなく、購入者自身も対象となる物件の災害リスクについて充分な調査を行っておく必要がある」のです。

 

ハザードマップの活用方法

前項でお話ししたように「マイホームを購入する前からハザードマップをしっかりと確認している」という方もおられるでしょうが、読者の方の中には『今まで災害のリスクなど考えたこともなかった・・・』という人もいらっしゃるはずです。

そこで本項では、ハザードマップの入手方法や便利な活用法についてお話ししていくことにいたしましょう。

まずマップの入手については、多くの地方自治体において「ネット上での閲覧やダウンロードが可能」となっています。

また、国土交通省では全国の地方自治体のハザードマップをまとめたポータルサイトも作成していますから、こうしたサイトを利用すれば更に便利にマップを利用できるはずです。

但し、大型の台風が接近している場合などには、いざハザードマップを閲覧しようとしても「アクセスが集中して見られない」 ということも多いので、事前にスマホなどに画像を保存しておくのが便利でしょう。

なお、ハザードマップを入手したら、各家庭ごとに災害発生時の対策マニュアルを作成しておくことも重要です。

例えば、洪水のハザードマップで0.5m以下の浸水が発生する可能性があることを知ったなら、非常時に備えて土嚢などを用意しておくべきですが、5m以上の浸水が発生するのであれば「屋根に避難するための方法」を検討したり、「避難場所へいち早く安全に移動するルートを確認する」といった対策を講じた方が合理的でしょう。

このようにハザードマップは、単に「自分が直面する災害のリスクを確認するため」だけに用いるのではなく、「来るべき日に備えて万全の対策を講じるための補助ツールとして活用する」ことこそが、最も有益な利用法となるのです。

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ハザードマップとは?まとめ

さてここまで、ハザードマップについての解説を行ってまいりました。

「ハザードマップの存在は知っていたが、気にも止めていなかった」という方も多いことと思いますが、その概要や活用方法を知れば『このマップが如何に画期的なものであるか』をご理解いただけたことと思います。

災害は「忘れた頃にやって来るもの」ですから、その日に備えて万全の対策をしておきたいものです。

ではこれにて、「ハザードマップとは?わかりやすく解説いたします!」の知恵袋を閉じさせていただきたいと思います。