不動産の物件情報サイトや、新聞折り込みチラシを見ていると、隅の備考欄などに「用途地域/準住居地域」といった記載があるのを目にしますよね。

しかしながら、「物件を買いたい!」とお考えの方の関心は、物件の立地や価格、間取りなどに注がれてしまい、こうした表示に注目する方は殆どおられないのが現実でしょう。

ところが、こんな扱いを受けている用途地域には「物件購入の意思決定に役立つ情報が満載されている」です。

もちろん購入する物件を決めて、売買契約の段となれば、仲介業者から用途地域についての「それなりの説明」が行われるでしょうが、これだけでは『その本質を理解するのはなかなか難しい』というのが実情かと思います。

そこで本日は不動産の用途地域と種類、そして注意すべき点などについて解説させていただきたいと思います。

では用途地域の知恵袋を開いてみましょう。

不動産の用途地域と種類

 

用途地域とは何か

自動車や電車の窓から流れる景色を眺めていると、くるくると移り変わっていく街並みが目に入ってくるものですが、実はこうした何気ない風景の中にも、行政が作った「こういう街づくりをしていこう」というプラン(マスタープラン)がしっかりと組み込まれているものです。

そして、こうした行政による「街づくりプラン」の根幹をなしているのが『都市計画法』と言われる法律であり、この法律では、

  • 市街化区域・・・積極的に街づくりを行う区域
  • 市街化調整区域・・・原則、市街化をしない区域
  • 非線引き区域・・・特にプランが定まっていない区域

という3種類の区域を定めることとしています。

よって通常、私たちが家を建てたり、土地を購入したりする地域は、この都市計画法の線引きにおける積極的に街作りを行って行くべき地域、つまりは「市街化区域」に指定されているケースが殆どとなるはずです。

ただ、一口に『街づくりを進める』と言っても、街の中には「住宅地」や「工場地帯」、そして「商業地」など様々な地域が必要となりますし、閑静な住宅街に突然巨大な工場やデパートが建てば、街並みはグチャグチャになってしまいますよね。

そこで市街化区域に指定されたエリアについては、建築できる建物の種類や規模に、様々な縛り(規制)を加えることとなりました。

そして、この「縛り」こそが『用途地域』と呼ばれるものなのです。

※用途地域は都市計画法が定める地域地区の一つですが、具体的な運用のルールは建築基準法の規定によります。

つまり、用途地域とは「自治体が目指す街づくりの理想(マスタープラン)を実現するために定められた、土地の使い道(用途)の制限」ということになるのです。

 

そして行政が指定できる用途地域の種類は全部で13種類あり、以下がその一覧となります。

  • ①第一種低層住居専用地域
  • ②第二種低層住居専用地域
  • ③第一種中高層住居専用地域
  • ④第二種中高層住居専用地域
  • ⑤第一種住居地域
  • ⑥第二種住居地域
  • ⑦準住居地域
  • ⑧田園住居地域
  • ⑨近隣商業地域
  • ⑩商業地域
  • ⑪準工業地域
  • ⑫工業地域
  • ⑬工業専用地域

なお、こんな一覧を挙げても「そんなの憶えられないよ!」と思われるかもしれませんが、用途地域を知るのに丸暗記などする必要はありません。

必要なのは「自分がこれから物件を買おうと考えている地域に、どんな街並みが広がっていくのか?」というイメージを、指定された用途地域から思い描けるようなることのみです。

そこで次項では、各用途地域の「特性」と「思い描くべきイメージ」をご説明してまいります。

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用途を見れば、未来の街が予測できる

先程、ずらりと並べた用途地域の一覧ですが、ただ単に項目を書き連ねた訳ではありません。

実は①から⑬に数字が進むにつれて、市街化の度合いが増す(ガヤガヤした街並みになって行く)ことになります。

※⑧田園住居地域は最も閑静なエリアとなりますが、近年新たに加わった用途地域のため、便宜上⑧番に表示しています。

ではより細かく、各エリアの地域性を見て行きましょう。

①第一種低層住居専用地域・②第二種低層住居専用地域

「閑静な住宅街」という表現がピッタリの地域であり、家と家の間隔が離れ、3階建ての建物もあまり目にしないエリアです。

なお、規模の小さな店舗であれば営業は可能ですが、基本的に「住宅がメイン」のエリアとなります。

また、第二種低層住居専用地域ともなれば制限も多少はゆるくなりますが、それでも閑静な街並みであることに変わりないでしょう。

③第一種中高層住居専用地域・④第二種中高層住居専用地域

住宅街ではありますが、「マンション」や「3階建て住宅」、そして「ある程度の規模(150㎡以内)のスーパーや商店」も営業が可能なエリアとなりますので、かなり『街感』を感じられるはずです。

なお、第二種中高層住居専用地域ともなれば、更に大きな面積(500㎡以内)のスーパーなども営業が可能です。

⑤第一種住居地域・⑥第二種住居地域

戸建てやマンション以外にも、大型スーパーや事務所、ホテルなども出店が可能なエリアとなります。

特に第二種住居地域では、上記の施設に加えてパチンコ店やマージャン店、カラオケボックスなども営業することができます。

⑦準住居地域

国道や県道など、原則として「道幅の広い道路沿いに指定される地域」となります。

ファミレスや超大型スーパー、郊外型ドラッグストアーなど、ロードサイド店が並んでいるような地域です。

⑧田園住居地域

2018年から導入されることとなった「最も新しい用途地域」となります。 「田園」という名が示すとおり、畑や田んぼの中に住宅が点在する非常に長閑な街並みであることが多いエリアであり、第一種低層住居専用地域以上に閑静な地域となるでしょう。

 

さて、ここまでは住居系の用途地域でしたが、以下は商業系のエリアとなります。

⑧近隣商業地域

様々な店舗が並ぶエリアとなりますが、それ程「高いビル」は存在せず、『町の商店街』というイメージがぴったりな地域となります。

⑨商業地域

高層ビルがそびえ立つ、天下無敵の繁華街といったイメージのエリアとなります。

映画館やデパートが建ち並ぶ、ターミナル駅の周辺地域などを思い浮かべていただければ、イメージがしやすいかと思います。

また、こうした地域であるが故に、キャバクラや風俗店等の営業も可能となります。

 

そして以下は、工業系の用途地域となります。

⑩準工業地域

「工業系の用途地域」とは言うものの、危険性を伴う作業が行われる施設や極端に大きな工場は建築不可の地域となりますので、街並み的には「住居系にも見える地域」が少なくありません。

⑪工業地域

所謂、工場地帯となりますが、戸建てやアパートなども建築は可能ですし、病院や学校を見掛けることもあるでしょう。

但し、前項の準工業地域とは異なり、大規模な工場を建てることができるエリアですので、基本的に工業主体の街並みになるはずです。

⑫工業専用地域

完全なる工業地帯であり、住宅や商店は見掛けることさえないはずです。

広大な敷地を持つ工場が建ち並ぶ、湾岸の工業地帯などをイメージしていただければと思います。

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不動産の用途地域まとめ

ここまで各用途地域の特性について解説を行ってまいりました。

漠然と「用途地域の種類とその違いを頭に入れる作業」は非常に苦痛ですが、このように『街並みをイメージしながら学んでいく』ことで、地域性の違いや雰囲気の差も掴みやすくなったのではないでしょうか。

そして物件選びに際しても、「図面に書かれている用途地域の種類から、ある程度の街並みが想像できる」ようになれば、より効率的な物件探しが可能となるはずです。

なお、マイホームの購入に際して「物件の周辺環境」と「用途地域のイメージ」に差が生じている場合には、充分な注意が必要となります。

例えば、今はまだ「住宅街の雰囲気」を保っている地域でも、準工業地帯や工業地帯では「後から大きな工場や商業施設が建てられる可能性」が充分にありますし、第二種住居地域なら「隣の土地にパチンコ屋が開業する」ことも、『可能性がない訳ではない』のです。

このように用途地域を「単なる法令上の説明事項」と捉えるのではなく、「物件を選択する上での重要な検討材料」と考えることができるようになれば、マイホーム探しの大きなヒントとなるのではないでしょうか。

ではこれにて、不動産の用途地域と種類、注意すべき点などについての知恵袋を閉じさせていただききたいと思います。