物件資料に書かれているのが「第一種低層住居専用地域」や「準工業地域」などの用途地域の表示です。そして、この用途地域なるもの、何となく見覚えはあるものの、購入前にどこまで確認すればよいのか、分かりにくい項目だと思います。
用途地域は、その土地に建てられる建物の種類や、街並みの方向性を知るための手掛かりです。ただし、物件そのものの用途地域だけを見て調査を終えてはいけません。隣地や道路の向かい側では、違う建物が建てられる場合もあるからです。
この記事では、用途地域の13種類を整理したうえで、不動産調査の際に確認したい順番と、見落としたくないポイントを解説します。

用途地域とは
用途地域とは、住宅・店舗・工場などを適切に配置するため、都市計画で定める地域の区分です。現在は13種類あり、それぞれ建てられる建物の用途が異なります。
例えば、静かな住宅地を守る地域と、店舗や事務所が集まる地域では、将来建てられる建物が違います。現在の街並みが似ていても、用途地域が違えば、数年後の景色は変わるかもしれません。
そこで物件調査では、次の二つの視点を持つことが大切です。
- 対象地に何を建てられるか
- 周囲の土地に何が建つ可能性があるか
前者は建築や建て替えの計画に、後者は購入後の住環境に関わります。
用途地域はどこで調べる?
まず、物件所在地の自治体が公開する都市計画図・都市計画情報の地図を確認します。「市区町村名 用途地域 地図」などで探すと見つけやすいでしょう。
調査する際は、住所から大まかな場所を探した後、地番や公図、住宅地図なども照らし合わせて対象地を特定します。住居表示だけを見て、隣の敷地を調べていたという間違いは避けたいところです。
地図上では、少なくとも次の項目を控えておきます。
| 確認項目 | 見る理由 |
|---|---|
| 用途地域 | 建てられる建物の用途を確認する |
| 建ぺい率・容積率 | 建物の規模を検討する |
| 防火地域・準防火地域 | 建築費や建物の仕様に関わる |
| 高度地区・高さの制限 | 建物の高さや形状に関わる |
| 地区計画など | 用途地域より細かな地域のルールを確認する |
自治体の地図は調査の入口として便利ですが、境界付近や建築計画に関わる案件では、地図の表示だけで判断せず、担当部署への確認も必要です。
【実務ではここを見る】
対象地の色だけをメモして終わりにしません。隣地、道路の向かい側、周辺の大きな空地まで地図を広げて確認します。用途地域の境界が近い物件ほど、この作業が重要です。
用途地域13種類の見方
13種類の名称をすべて暗記する必要はありません。最初は、住居系・商業系・工業系という三つのまとまりで街並みをイメージすると分かりやすくなります。
| 区分 | 用途地域 | 街並みを考える際の目安 |
|---|---|---|
| 住居系 | 第一種低層住居専用地域 | 低層住宅を中心とした地域 |
| 住居系 | 第二種低層住居専用地域 | 低層住宅を中心に、一定の小規模店舗も想定する地域 |
| 住居系 | 第一種中高層住居専用地域 | 中高層住宅を中心とした地域 |
| 住居系 | 第二種中高層住居専用地域 | 中高層住宅に加え、一定規模の店舗なども想定する地域 |
| 住居系 | 第一種住居地域 | 住宅の環境を守りながら、店舗なども立地する地域 |
| 住居系 | 第二種住居地域 | 第一種住居地域より幅広い施設を想定する地域 |
| 住居系 | 準住居地域 | 幹線道路沿いなどで、住宅と道路関連施設の調和を図る地域 |
| 住居系 | 田園住居地域 | 農業と調和した低層住宅の環境を守る地域 |
| 商業系 | 近隣商業地域 | 近隣住民の買い物などに使う店舗が集まる地域 |
| 商業系 | 商業地域 | 店舗・事務所などの商業活動を中心とする地域 |
| 工業系 | 準工業地域 | 住宅や店舗、一定の工場が混在し得る地域 |
| 工業系 | 工業地域 | 工業の利便を図る地域。住宅も建てられる |
| 工業系 | 工業専用地域 | 工業の利便を重視し、住宅の建築はできない地域 |
これは街並みをつかむための概要です。特定の店舗や施設を建てられるかどうかは、その種類・規模などによって判断が変わります。事業用物件を購入する場合は、表の印象だけで決めず、具体的な計画を示して確認しましょう。
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「住宅地に見えるから安心」とは限らない
用途地域を調べる価値が分かりやすいのは、現況の街並みと、法令上建てられる建物に差がある場所です。
例えば、いま隣地が平面駐車場なら、日当たりや見晴らしは良いかもしれません。しかし、その状態がずっと続くとは限りません。用途地域やその他の制限を調べれば、将来どの程度の建物が建つ可能性があるかを検討できます。
準工業地域でも、現地を歩くと落ち着いた住宅街に見えることがあります。反対に、住居系の用途地域だからといって、周辺に店舗や交通量の多い道路がないとは限りません。
用途地域は将来の建築可能性を見る資料であり、現在の騒音・臭い・交通量を教えてくれる資料ではありません。地図の確認と現地調査は、セットで行います。
建ぺい率・容積率も一緒に確認する
用途地域を確認したら、指定建ぺい率と指定容積率も見ます。
建ぺい率は、敷地面積に対する建築面積の割合です。容積率は、敷地面積に対する延べ面積の割合です。例えば、敷地100㎡で建ぺい率60%、容積率200%なら、単純計算では建築面積60㎡、延べ面積200㎡が一つの上限になります。
ただし、指定容積率の数字だけで建てられる床面積は確定しません。前面道路の幅員による制限なども関わります。土地の購入後に建築や建て替えを考えているなら、建築士や担当部署に具体的な計画を示して確認する必要があります。
既存建物がある場合には、「いま建っているのだから、同じ規模で建て替えられる」と決めつけないことも大切です。
用途地域の境界をまたぐ土地は要注意
敷地の途中を用途地域の境界線が通っている土地があります。この場合、対象地に二つの用途地域が表示されます。
ここで注意したいのは、すべての規制を同じ方法で判断できるわけではないという点です。建物の用途に関する制限、建ぺい率・容積率、高さや防火に関する制限は、それぞれ適用の考え方を確認する必要があります。
例えば、異なる容積率が指定された区域に敷地がまたがる場合には、各部分の面積に応じた計算が関係します。「敷地の大半がこちらだから、全部同じ制限になる」と考えることはできません。
また、自治体の公開地図には線の太さや表示上のずれがあります。境界が敷地にかかっているように見えるときは、画面上で「こちら側だろう」と決めず、境界の根拠と各区域に属する面積を確認しましょう。
【注意したいケース】
「敷地が二つの用途地域にまたがる土地」、あるいは「境界線が敷地のすぐ脇を通る土地」には注意が必要です。購入後の建築計画に影響し得るため、契約前に自治体の担当部署と建築士へ確認しておきたいところです。
隣地と道路の向かい側まで見る
購入する土地が第一種低層住居専用地域でも、道路を渡った先が商業地域や準工業地域ということがあります。物件資料に記載された用途地域だけでは、この違いは分かりません。
周辺を調べる際には、特に次のような土地に目を向けます。
- 隣接する広い駐車場や空地
- 古い工場、倉庫、店舗の跡地
- 複数の土地をまとめれば大きな建物を計画できそうな場所
- 用途地域の境界を挟んだ隣地や道路の向かい側
もちろん、建築できる可能性があることと、実際に建つことは別です。それでも、購入前に可能性を把握しておけば、「こんな建物が建つとは思わなかった」という後悔を減らせます。
現地では、平日と休日、昼と夜で雰囲気が変わることもあります。交通量や店舗の営業状況など、用途地域図からは読み取れない情報も確かめておきましょう。
用途地域が指定されていない土地もある
地図を調べても用途地域が表示されない土地があります。その場合、用途地域がないから自由に何でも建てられるという意味ではありません。
都市計画区域の区分や、用途地域以外の建築制限を確認する必要があります。また、市街化調整区域の土地であれば、建築や開発について別途慎重な確認が欠かせません。
特に郊外の土地を購入する場合は、用途地域の有無だけで判断せず、自治体の担当部署に「予定している使い方ができるか」を具体的に相談しましょう。
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用途地域の調査で確認したいこと
最後に、購入前の確認事項を整理します。
- 自治体の都市計画情報で、対象地の位置を正しく特定する
- 用途地域、建ぺい率、容積率を確認する
- 防火地域、高度地区、地区計画など、重ねて指定された制限を確認する
- 敷地が用途地域などの境界にかかっていないか確認する
- 隣地と道路の向かい側の用途地域を見る
- 現地で空地・駐車場・工場跡地や周辺環境を確認する
- 建築・建て替え・事業利用の予定がある場合は、具体的な計画を示して担当部署に確認する
用途地域の13種類を暗記することが、調査の目的ではありません。
「この土地で何ができるか」「周辺でどのような変化が起こり得るか」を考えるために使うことが大切です。物件資料に小さく書かれた用途地域の欄から、地図を広げ、現地へ足を運ぶ。そこまで行って初めて、購入判断に役立つ情報になると思います。







