不動産の役所調査とは?調査項目・回り方・注意点を実務経験をもとに解説

不動産売買の物件調査には、物件の所在地で行う「現地調査」と、市区町村などの行政機関や法務局で行う「役所調査(行政調査)」があります。

現地調査では、建物や境界、周辺環境などを自分の目で確認しますが、役所調査では都市計画・道路・建築確認・上下水道・法令上の制限など、現地を見ただけでは分からない情報を確認していきます。

不動産取引では、こうした調査結果の多くが重要事項説明書の作成に関係します。

そのため役所調査で一つ見落としがあるだけでも、「予定していた建物が建てられない」「道路だと思っていた場所が建築基準法上の道路ではなかった」といった重大なトラブルにつながることがあります。

この記事では、不動産会社として実際に物件調査を行ってきた経験をもとに、役所調査で確認しておきたい項目や調査の進め方について解説していきます。

なお、現地で行う調査については、こちらの記事で詳しく解説しています。

▶ 不動産の現地調査とは?確認項目や注意点を実務経験をもとに解説

不動産の役所調査とは?

目次

役所調査へ行く前に準備しておきたいもの

役所調査は、何も準備せずに役所へ行って窓口を順番に回ればよいというものではありません。

あらかじめ物件に関する資料を揃え、何を確認する必要があるのか整理しておいた方が効率的です。

主に準備しておきたい資料は次のようなものです。

  • 対象物件の住所
  • 土地の地番
  • 登記事項証明書
  • 公図
  • 地積測量図
  • 現地で撮影した写真
  • 住宅地図
  • 作成途中の重要事項説明書

特に注意したいのが、「住所」と「地番」は別のものであるという点です。

役所の部署によっては住所では検索できず、地番が必要になるケースもありますので、法務局関係の資料は事前に準備しておきましょう。

現場メモ

私が役所調査をするときは、作成途中の重要事項説明書を持参するようにしていました。

担当者に重説の該当箇所を見てもらいながら「この物件について他に該当する制限はありませんか?」と確認すると、調査漏れを防ぎやすくなります。

特に初めて調査する自治体では、この方法が非常に有効です。

法務局で確認する登記・公図・測量図

役所調査の第一歩となるのが、土地や建物の権利関係を確認するための登記調査です。

現在では「登記情報提供サービス」を利用することで、登記情報だけでなく、公図や地積測量図、建物図面などもオンラインで確認できるようになっています。

そのため、以前のように必ず法務局へ出向かなければ調査できないわけではありません。

しかし、オンラインで取得した資料だけを眺めて役所調査を終わらせるのではなく、登記資料・現地の状況・役所に残る資料を突き合わせることが重要です。

法務局関係で主に確認する資料は次のとおりです。

  • 登記事項証明書:所有者や抵当権などの権利関係を確認
  • 公図:土地の位置関係や地番を確認
  • 地積測量図:土地の形状・寸法・面積などを確認
  • 建物図面・各階平面図:登記された建物の位置や形状を確認

中古戸建てなどでは、建物図面と現在の建物形状が一致しないことがあります。

増築部分が未登記になっていたり、既に取り壊されている建物の登記が残っていたりすることもありますので、現地調査の結果と必ず照合しておきたいところです。

注意点

対象となる家屋番号だけを検索して安心してしまうと、同じ土地上に別の建物登記が残っていることを見落とす場合があります。

土地側から建物の登記状況を確認することも重要です。

また、必要に応じて隣接地の登記情報を確認すると、隣地所有者や私道の権利関係など、取引上重要な情報が判明することもあります。

費用との兼ね合いはありますが、少しでも気になる点があれば資料を追加取得して確認する姿勢が大切です。

都市計画・用途地域など法令上の制限を調査する

役所調査の中でも特にボリュームが大きいのが「法令上の制限」の調査です。

土地は所有していれば自由に使えるというものではありません。

都市計画法や建築基準法をはじめ、さまざまな法律によって建築できる建物の用途や大きさ、高さなどが制限されています。

まず確認するのは、対象地が次のどこに該当するかです。

  • 都市計画区域
  • 準都市計画区域
  • 都市計画区域外

都市計画区域の場合には、さらに次の区分を確認します。

  • 市街化区域
  • 市街化調整区域
  • 非線引き都市計画区域

市街化区域であれば、次のような事項を確認していきます。

  • 用途地域
  • 建ぺい率
  • 容積率
  • 高度地区
  • 地区計画
  • 都市計画道路などの都市計画施設
  • 市街地開発事業

近年は自治体のウェブサイトやGIS(地理情報システム)で都市計画情報を確認できる地域が増えており、事前調査は非常にしやすくなりました。

ただし、自治体の都市計画図にすべての法令上の制限が表示されているとは限りません。

自治体によって掲載されている情報の範囲も異なるため、オンライン調査だけで完結させるのは避けた方が安全です。

建築基準法上の制限を確認する

都市計画法とあわせて確認しなければならないのが建築基準法です。

都市計画法と建築基準法には関連する部分が非常に多く、役所調査では双方を行き来しながら確認することになります。

代表的な調査項目には、次のようなものがあります。

  • 用途地域による建築用途の制限
  • 建ぺい率
  • 容積率
  • 道路斜線・北側斜線など高さに関する制限
  • 日影規制
  • 外壁後退
  • 敷地面積の最低限度
  • 壁面線
  • 防火地域・準防火地域
  • 建築基準法上の道路種別

特に土地取引では、「どの程度の建物を建築できるのか」が購入判断に直結します。

建ぺい率や容積率だけを確認して終わるのではなく、地区計画や高度地区、道路幅員による容積率制限なども合わせて確認しておきましょう。

その他の法令上の制限も確認する

都市計画法や建築基準法以外にも、不動産取引に影響する法律は数多く存在します。

代表的なものとしては、次のような法律があります。

  • 宅地造成及び特定盛土等規制法(盛土規制法)
  • 土砂災害防止法
  • 砂防法
  • 地すべり等防止法
  • 急傾斜地法
  • 文化財保護法
  • 農地法
  • 国土利用計画法
  • 土壌汚染対策法

もちろん、すべての物件がこれら全部の法律に該当するわけではありません。

所在地や土地の利用状況などから、対象となる可能性のある法令を絞り込んで確認していきます。

盛土規制法は現在の指定区域を確認する

従来の「宅地造成等規制法」は改正され、現在は宅地造成及び特定盛土等規制法(盛土規制法)となっています。

盛土規制法では、宅地だけではなく農地や森林なども含め、危険な盛土等を幅広く規制する仕組みとなりました。

実際の調査では、次のような点を確認します。

  • 対象地が規制区域に入っているか
  • 過去に造成工事などの許可を受けているか
  • 擁壁などに関する記録が残っているか

注意点

盛土規制法は、法律が施行された時点で全国すべての土地に同じ規制区域が設定されたわけではありません。

実際の規制区域は都道府県などが指定しますので、取引時点における最新の区域指定を確認する必要があります。

道路に関する役所調査

不動産取引では、道路の調査が極めて重要です。

道路は単に「車が通れるかどうか」を調べるものではありません。

建物を建築するためには、原則として建築基準法上の道路に一定以上接している必要があるためです。

建築基準法上の道路種別を確認する

まず確認したいのが、「対象地の前面道路が建築基準法上の道路に該当するか」という点です。

該当する場合には、さらに道路種別を確認します。

  • 建築基準法42条1項1号道路
  • 42条1項2号道路
  • 42条1項3号道路
  • 42条1項5号道路(位置指定道路)
  • 42条2項道路

見た目がきれいに舗装されている道路でも、建築基準法上の道路ではないことがあります。

反対に、私道であっても建築基準法上の道路として扱われているケースがあります。

つまり、公道・私道という区分と、建築基準法上の道路かどうかは別問題なのです。

2項道路ではセットバックを確認する

前面道路が建築基準法42条2項道路、いわゆる「2項道路」であった場合には、再建築の際にセットバックが必要となる可能性があります。

この場合には、次のような事項を確認します。

  • 道路中心線
  • 道路の現況幅員
  • セットバックライン
  • 後退面積

道路の反対側が河川や崖などの場合には、通常とは異なる後退方法となるケースもあるため注意が必要です。

▶ 2項道路とセットバックについて解説

▶ 道路中心線とは?決め方や調査方法を解説

道路区域線図・道路査定図を確認する

公道に面している土地では、道路管理部署に道路区域線図や道路査定図が残されている場合があります。

これは、公道と民有地との境界を確認する上で重要な資料です。

ただし、道路台帳上の線が存在するからといって、必ずしも現在の境界が完全に確定しているとは限りません。

売買条件として境界確定を行う場合には、土地家屋調査士などによる現地測量との照合も必要になります。

道路の舗装・掘削制限も確認する

給排水管などを新たに引き込む可能性がある土地では、道路の舗装状況や掘削制限も確認しておきましょう。

道路が舗装された直後などは、一定期間掘削が制限されていることがあります。

建築に伴う工事で例外的に許可される場合もありますが、通常より工事費が高くなる可能性があります。

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上水道・下水道・ガスなどインフラを調査する

道路と並んで重要なのがインフラ調査です。

建物が建てられる土地であっても、水道・下水道などの引込み状況によっては多額の工事費が発生することがあります。

上水道

上水道では主に次のような内容を確認します。

  • 前面道路にある本管の位置
  • 本管の口径
  • 宅地への引込管の有無
  • 引込管の口径
  • 管の材質
  • メーター口径

既存建物があるからといって、現在の利用計画に十分な口径の水道管が引き込まれているとは限りません。

建替えや共同住宅への建築を予定している場合には、新しい計画に対して必要な水量を確保できるかも確認しておく必要があります。

また、私道内にある水道管については、自治体が管理する本管ではなく私設管である場合があります。

私設管から新たに分岐する際には、管の所有者などから承諾を求められる場合がありますので注意しましょう。

下水道

下水道では次のような内容を確認します。

  • 前面道路の下水本管
  • 管径
  • 公共桝の位置
  • 宅地内の排水経路

自治体によっては宅地内の配管状況まで詳細な記録が残っていない場合があります。

そのような場合には、現地で桝を開け、配管方向を確認する必要が生じることもあります。

特に古い住宅地や私道では、隣地を経由して排水されているなど、配管越境が発覚することもあります。

都市ガス

都市ガス地域では、次のような内容を確認します。

  • 前面道路のガス本管
  • 宅地への引込管
  • 管径

前面道路が私道の場合には、将来の引込工事や配管工事で私道所有者の承諾が必要になる可能性もあります。

電気・電柱

電気は道路埋設ではなく架空線で供給されている地域も多いですが、こちらも現地調査と合わせて確認します。

特に次のような事項には注意が必要です。

  • 敷地内の電柱
  • 支線
  • 他人地上空を通る引込線

敷地内に電柱がある場合には、電力会社所有なのか、NTTなど他事業者の設備なのかも確認しておきましょう。

建築確認・検査済証を調査する

中古建物の取引では、建築確認関係の調査も重要です。

建物について、次のような事項を確認します。

  • 確認済証が交付されているか
  • 検査済証が交付されているか
  • 建築確認時の内容と現在の建物が一致しているか

売主が確認済証や検査済証を保管していれば資料を確認できますが、築年数の古い建物では紛失していることも珍しくありません。

その場合には自治体で、次のような資料を取得できる場合があります。

  • 建築計画概要書
  • 建築確認台帳記載事項証明など

「確認済証あり=現在も適法」とは限りません

建築確認取得後に無許可で増築されているケースなどもあります。

そのため、建築確認関係の資料と登記資料、さらに現況の建物を照合することが重要です。

また、「建築確認は取得しているものの完了検査を受けておらず、検査済証がない」という建物も存在します。

融資や将来の増改築などに影響する可能性がありますので、買主には事前に説明しておく必要があります。

▶ 建築確認・確認済証等についてわかりやすく解説

擁壁・地下車庫など工作物の許可も確認する

土地や建物だけではなく、敷地内にある工作物についても役所調査が必要になる場合があります。

例えば次のようなものです。

  • 大きな擁壁
  • 地下車庫
  • 造成された高低差のある土地

こうした工作物について、建築確認、開発許可、造成に関する許可などの記録が残っているケースがあります。

高低差の大きな土地では、擁壁の安全性が将来の建替えに大きく影響することもありますので、可能な限り資料を確認しておきましょう。

水害・土砂災害などハザード情報を確認する

現在の不動産取引では、災害リスクに関する調査も重要な項目です。

自治体などが公開しているハザードマップを利用して、次のような情報を確認します。

  • 洪水
  • 雨水出水(内水)
  • 高潮
  • 土砂災害
  • 津波
  • 液状化

このうち宅地建物取引業法上の重要事項説明では、水防法に基づいて作成された洪水・雨水出水・高潮の水害ハザードマップについて、対象物件のおおむねの位置を示して説明することとされています。

一方、液状化や自治体独自の災害マップなどについても、購入判断に影響する可能性がありますので、実務上は幅広く確認しておいた方がよいでしょう。

現場メモ

ハザードマップは「色が付いていないから安全」と判断するものではありません。

想定条件を超える災害が発生する可能性もありますし、地図の作成条件によって表示されるリスクも異なります。

買主にはマップそのものを提示した上で説明するのが基本です。

▶ ハザードマップとは?わかりやすく解説

埋蔵文化財包蔵地を確認する

意外に忘れやすいのが、埋蔵文化財に関する調査です。

自治体の教育委員会や文化財担当部署などで、対象地が周知の埋蔵文化財包蔵地に該当しているか確認します。

対象区域内で建築などの工事を行う場合には、事前の届出や試掘調査が必要になるケースがあります。

工事開始後に遺跡などが発見されると、工事計画やスケジュールに影響する可能性もあります。

建築を目的として土地を購入する場合には、特に確認しておきたい項目です。

分譲マンションでは管理会社への調査も必要

分譲マンションの売買では、通常の役所調査とは別に、管理組合や管理会社から取得する情報も非常に重要です。

代表的な確認資料は次のとおりです。

  • 重要事項調査報告書
  • 管理規約
  • 使用細則
  • 長期修繕計画書
  • 総会議事録

確認すべき項目には、次のようなものがあります。

  • 管理費
  • 修繕積立金
  • 管理費等の滞納
  • 修繕積立金の残高
  • 大規模修繕計画
  • 管理費・修繕積立金の値上げ予定
  • 駐車場や駐輪場の利用条件
  • ペット飼育
  • 専有部分のリフォーム制限

特に総会議事録には、重要事項調査報告書だけでは分からない「現在検討中の問題」が記載されていることがあります。

例えば、近い将来の修繕積立金値上げや一時金徴収、大規模な設備改修などです。

そのため、できれば直近数年分の議事録にも目を通しておきたいところです。

役所調査で見落としを防ぐコツ

役所調査には、全国共通の完璧な「回る順番」はありません。

自治体によって担当部署の名称や場所、調査できる内容が異なるからです。

そこで重要になるのが、「どこの窓口へ行くか」ではなく「何を確認する必要があるのか」を理解しておくことです。

私が実務で特に意識しているのは次の点です。

  • 現地調査を先に行い、疑問点を洗い出しておく
  • 登記・公図・測量図を持参する
  • 作成途中の重要事項説明書を持参する
  • 担当者の回答だけでなく、可能な限り根拠資料を取得する
  • 口頭回答を受けた場合は、部署名・担当者・確認日を記録する
  • 「他にこの土地に関係する制限はありませんか」と最後に確認する

役所調査は「資料を集める作業」ではありません

登記、現地、道路、都市計画、インフラ、建築確認など、それぞれ別々に集めた情報を相互に照合して矛盾がないか確認する作業です。

一つの資料だけを信じて調査を終わらせないことが、トラブルを防ぐポイントだと思います。

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不動産の役所調査まとめ

今回は、不動産売買における役所調査(行政調査)について解説してきました。

役所調査で確認する内容を大きく整理すると、次のようになります。

  • 登記・公図・測量図
  • 都市計画・用途地域
  • 建築基準法上の制限
  • その他の法令上の制限
  • 道路
  • 上水道・下水道・ガス
  • 建築確認・検査済証
  • 盛土・擁壁など
  • ハザードマップ
  • 埋蔵文化財

一つ一つを見ると非常に項目が多く感じますが、実務では現地調査→登記調査→行政調査→各資料の照合→重要事項説明書への反映という流れで整理していくと分かりやすくなります。

そして役所調査で最も怖いのは、「調べた結果を間違えること」だけではありません。

調べるべき項目そのものに気付かず、調査から漏らしてしまうことです。

自治体によって調査方法や担当部署が異なることもありますので、手順だけを丸暗記するのではなく、「この物件について買主が知っておくべきことは何か」という視点で調査を進めることが重要でしょう。

また、重要事項説明書そのものの作成方法については、こちらの記事でも詳しく解説しています。

▶ 不動産重要事項説明書作成について解説

現場を知るから、本当に役立つ。

この記事が、不動産実務に携わる方の役所調査のお役に立てれば幸いです。

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