マイホームの購入は結婚や出産と並んで、人生における一大イベントと言えますよね。
そして、その夢のを叶えるべく日々仕事を頑張っておられる方々も多いことと思いますが、不動産の購入には「とにかくお金が掛かる」ものです。
もちろん購入する地域にもよるでしょうが、何千万円という売買代金が必要となりますし、その資金の多くを住宅ローンで調達することとなれば、
返済時には実に借入額の1.2倍~1.5倍もの金額を支払うことになるのですから、これは非常に厳しいものがありますよね。
また、登記費用に住宅ローンの事務手数料、そして印紙代など、その他にも様々な経費が掛かって来ますので、これは益々頭の痛い問題でしょう。
なお、不動産購入時に掛かる諸費用の中で「最も高額なもの」と言えば、物件を仲介する不動産屋さんに支払う仲介手数料であることは明らかであり、その金額は物件価格の3%以上にも及ぶものとなります。
さて、このようなお話を聞くと「どうにか仲介手数料無しで物件を購入することができないものか・・・」と考えてしまうものですが、素人が不動産の売買を行うには様々なリスクを伴いますから『資金繰りは苦しくても、不動産業者に仲介してもらわざるを得ない』という結論に達する方も多いようです。
しかしながら、不動産屋さんの立場から申し上げれば「仲介なしの個人売買も、やり方次第では不可能ではない」というのが本音ですから、本日は「不動産の個人売買について」と題して、そのノウハウを伝授させていただきたいと思います。
個人売買のリスク
冒頭にて「個人間での不動産売買には様々な危険が潜んでいる」というお話を致しましたが、具体的にそのリスクとはどのようなものなのでしょうか。
そこでまずは、個人売買に潜むリスクについて解説させていただきたいと思います。
手続き面でのリスク
個人間売買の大きなリスクの1つに挙げられるのが、成約に至るまでの「手続き面」での問題です。
これまでも本ブログでは「不動産の売買は代金と引き換えに所有権を移転することだ」と申し上げて来ましたが、売買の手続きを全く知らない人同士が取引を行うとなると、『所有権を移転するのに何をして良いかわからない』といった事態にもなりかねませんよね。
また、売主・買主間で「取引が完了した!」と思っていても『実は完全に所有権の移転が完了していなかった・・・』『所有権を移転すべき対象に漏れがあった』などということになれば、後々トラブルになることは必至でしょう。
契約内容におけるリスク
さて、手続き面に続いて問題となるのが「契約内容について」となります。
何千万円ものお金と、不動産という価値の高い物をやり取りするのが不動産の取引ですから、売買の条件をしっかりと書面に残し、売主・買主共にこれを忠実に履行しなければなりません。
しかしながら、売買契約書の作成には「高度な法律知識」と「トラブルを未然に防ぐ経験値」が必要になりますから、ネット上で誰が作成したかもわからない雛形を使用するのは非常にリスキーです。
また、取引の相手方が信頼のおける者なら良いでしょうが、中には自分に有利な条件ばかりを契約書に盛り込んで利益を得ようとする不貞の輩もいますから、この点は大いに注意が必要でしょう。
物件に関するリスク
そして最後にご紹介するのが、取引する物件自体に潜んでいるリスクとなります。
「家や土地を売買する」となると取引対象が目に見える物であるだけに、『見たまんまでしょ・・』と単純に捉えてしまいがちですが、実は目には見えない多くのリスクが数多く潜んでいるものです。
例えば建物一つを取ってみても、「見えない箇所に雨漏りが隠れていないか?」「シロアリに蝕まれてはいないか?」といった問題が出て来ますし、土地についても「土壌汚染はないか?」「近隣との境界争いは大丈夫?」など、重要なチェックポイントが多数存在しています。
このように少し考えてみただけでも、様々な問題が山積しているのが個人間売買ですから、そのハードルが決して低くないことはご理解いただけますよね。
しかしながら、本ブログはそもそも「不動産のことを何も知らない方に、不動産屋さんレベルの知識を身に付けていただくこと」を目標に掲げて立ち上げたものですから、これまでお届けして来た記事でご紹介した知識を総動員すれば『安全に個人間取引を終えることも決して不可能ではない』はずなのです。
そこで次項では、過去に書いた記事をご参照いただきながら、個人売買を成功させるためのノウハウを伝授して行きたいと思います。
個人売買を成功させるために!
では早速、個人間売買成功の秘訣をお話しして行きたいと思いますが『取引のターゲットとなる物件によっても注意すべき点は変わって来るもの』ですから、「全ての物件に共通の事項」「中古分譲マンション用」「中古戸建て用」という3つのパターンに分類しながらご説明を進めて行きたいと思います。
※新築戸建て、新築分譲マンションについては売主が不動産業者となるため、個人間売買はが行われることはありませんので解説を省略させていただきます。
全ての物件に共通の事項
個人間取引を行う前にまず頭に入れておきたいのが、不動産売買の手続きの流れを知ることです。
基本的には売買契約を締結した上で引渡し期日を決め、時期が到来したならば「残代金の受け渡し」と「物件の引き渡し及び所有権の移転登記」を同時に行うことになります。
但し、この一連の作業には様々な注意点がありますから、詳細については過去記事「不動産売買の仕事内容・流れを知ろう」、「不動産決済日の流れについて」をご参照ください。
なお、これらの記事は不動産屋さん向けのものとなりますが売買初心者でも流れが理解できるように書いてありますので、全く予備知識のない方にもご参考にしていただけるはずです。
また、所有権移転登記は売主・買主が個人で行うことも可能ですが、自信がないという方には司法書士に登記の代行をしてもらうのが良いでしょう。
ちなみに自力で所有権が無事に移転できたとしても、前所有者の「抵当権」が物件に設定されたままになっていたり、「差押え」や「仮登記」などの権利が付けられたままの状態であると後々非常に面倒なことになりますから、こうしたトラブルを避ける意味でも取引に司法書士を介入させておくべきです。
※抵当権や仮登記についての詳細については別記事「不動産の登記簿謄本とは?という疑問を解決!」をご参照ください。
そして取引の流れに次いで把握しておくべきが、売買契約書の作り方となります。
こちらも慣れない方には非常にハードルの高い作業となりますが、過去記事「不動産売買契約書の作り方について解説いたします!」をご参照いただければ、『如何なる条項を盛り込まなければならないか』をご理解いただけることでしょう。
なお、不動産の契約は物件ごとに内容が全く異なるものと思われがちですが、実は全体の90%以上は全ての物件において共通のものとなります。(定型の文言が用いられる)
但し、契約書の末尾に記載される特約については『物件によって大きくカスタマイズされる部分』となりますから、特約の書き方については「不動産契約書特約条項の書き方、参考例をご紹介!」の記事を参考に内容をご検討ください。
さて、ここまでのお話にて前項の「個人売買のリスク」の内、手続き面と契約内容に関するリスクはクリアーできたことになりますが、最後に残されたのが『物件に関するリスク』です。
こちらのリスクに関しては過去記事「不動産の現地調査について解説いたします!」及び「不動産の役所調査(行政調査)について解説いたします!」をお読みくだされば『どのよう事柄に注意すべきか』をおおよそご理解いただけるはずですが、
これだけは少々不足な点もありますので、以下の「物件ごとのポイント解説」にて更に詳しく掘り下げて行きましょう。
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中古分譲マンションでのポイント
不動産売買の中でも最もリスクが少ないとされるのが、分譲マンションの取引です。
分譲マンションにおいては、「敷地の維持管理」から「建物の全体のメンテナンス」までを管理組合が行うのがルールですから、たとえ雨漏りが発生したり、建物が傾いているなどという事実が発覚しても、これに対処するのは管理組合の仕事となるでしょう。
よって、個人間売買をして後々問題が発生したとしても、それは「お部屋の内部(床や天井、システムキッチンやユニットバス)に関する事項」がメインとなりますから、それ程大きなトラブルには発展し辛い訳です。
但し、取引をする前からマンション自体に大きな問題(分譲会社との訴訟や建物の大きな欠陥等)が発生していたり、管理組合において「管理費・修繕費の値上げ」や「大規模修繕・建替え」などが協議されているようなら、買主は事前にこれを知っておくべきでしょう。
そしてこうした情報を得るためには様々な調査を行う必要がありますが、そのノウハウについては別記事「マンション調査の注意点をご紹介いたします!」にて詳しく解説しておりますので、是非そちらをご参考にしていただければと思います。
中古戸建てでのポイント
さて続いてご紹介するのが、中古戸建てでの個人間売買のポイントとなりますが、まず前提として申し上げておきたいのは「分譲マンションとは比べ物にならない程に取引の難易度が高い」という点になります。
前項にて解説した分譲マンションとは異なり、戸建てにおいては建物から敷地の問題まで全ての事項について売主から買主にその責任が引き継がれることになる訳ですから、それだけ多くの注意が必要となる訳です。
まずは敷地についてですが、注意すべきは「近隣との権利関係の問題」や「地中埋設物」などに関する事項となります。
そして権利関係については「地境が接するお宅の建物やブロック塀などがこちらの敷地に越境していないか(反対に自分が買う物件が越境しているケースも)」という点や「敷地を跨いで作られているブロック塀がどちらの持ち物であるか?」などのポイントについて、売買前に明確にしておく必要があるでしょう。
また、目には見えない地面の中でも「水道管や下水管が越境している(越境されている)」「土壌汚染が隠されている」「古い建物の基礎が埋まっている」などという事態はよくあることです。
なお、こうした事実を知らずに物件を購入してしまうのを回避するためには「不動産・境界越境問題について」、「地中埋設物の瑕疵について考えてみます!」などの記事を参考に事前調査を行うことをお勧めいたします。
ちなみに、越境などの事実が判明した際には「権利関係者(お隣の住民)と文書」を交わし、今後の問題の扱いについて取り決めを行っておくのがベストですが、こうした際に便利な覚書や念書に書き方については「念書と覚書について解説致します!」の記事をご参照ください。
更に物件が私道に接している場合には、「不動産の私道トラブルについて考えてみます!」の記事にて知識を備えてから取引に臨むべきです。
※「築年数が古い戸建てを建替え前提に購入する場合」や「土地を購入するケース」では、建築基準法等の法令による土地利用や建築に関する制限(法令上の制限)をしっかりと把握しておく必要がありますので、必ず設計士などに事前相談をするべきです。
※法令上の制限については当ブログでも解説しておりますので、独学でこれを学びたいという方は「都市計画とは?わかりやすく解説いたします!」、「建築確認・確認済証等について知っておくべきこと」、「不動産の道路調査について!」などの記事を中心に記事内のリンクを辿っていただければ、おおよその知識が身に付くはずです。
さて、敷地の問題に続いては建物本体の問題となりますが、中古戸建ての売買で最も注意するべきは瑕疵担保責任(契約不適合責任)についてとなります。
なお、瑕疵とは物件の欠陥を指す言葉であり、購入した物件に雨漏りやシロアリの被害が発生してことが後に発覚した場合に、その責任を「誰がどうように負うか」を取り決めておくことは非常に重要なことですよね。
なお、瑕疵担保責任(契約不適合責任)については過去記事「瑕疵担保責任について考えてみます!」及び「契約不適合責任とは?民法改正と瑕疵担保について解説!」にて解説していますが、こうした欠陥が素で生じるトラブルを避けるためには中古住宅のインスペクションを受け、瑕疵保険に加入するのがお勧めの方法です。
インスペクションとは第三者機関によって行われる建物調査のことですが、これを受けることにより雨漏りなどの見えないリスクを事前に知ることができますし、
万が一インスペクションでの見落としがあっても瑕疵保険に加入することで修繕費用を捻出することができますから、売る側にも買う側にとっても安心感がありますよね。
※インスペクションと瑕疵保険については、過去記事「インスペクションと瑕疵保険について解説いたします!」をご参照ください。
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不動産の個人売買まとめ
さてここまで、個人間売買を安全に行う方法について解説してまいりました。
当ブログの記事をガッチリとお読みくだされば、個人間で不動産取引を行うことも決して不可能ではありませんので、ご興味がある方は是非とも挑戦していただければと思います。
なお、「単に仲介手数料を節約したい」というだけならば「仲介手数料の値引き、安くする方法を大研究!」の記事でご紹介した方法を実践すれば、相当な金額の圧縮が可能ですからこちらもご参考になさってください。
また、不動産に関する知識は人生を生きていく上で「持っていて絶対に損はないもの」であるかと思いますから、本ブログを通してそのスキルを身に付けていただければ幸いです。
ではこれにて、「不動産の個人売買について」の知恵袋を閉じさせていただきたいと思います。