不動産売買の決済において登記を担当することになるのが、「司法書士」という資格を有する者です。

なお、一般の方はこうしたシーンでしか司法書士と対面する機会はないかと思いますが、地主さんやアパートオーナー様などの「不動産を扱う方々」にとって司法書士は様々なシーンにおいて非常に頼りになる存在なのです。

そこで本日は「不動産と司法書士について解説いたします!」と題して、不動産を扱う上で欠かせない司法書士という法律家に焦点を当ててみたいと思います。

不動産と司法書士

 

司法書士とは

ではまず最初に司法書士という資格と職業の概要からご説明してまいりましょう。

司法書士の資格と業務内容を一言で表すとすれば

司法書士法に基づく国家資格を有し、不動産登記や商業登記手続きなどの法律上の手続きを当事者に代わって行える法律家

ということなります。

なお、司法書士の資格を取得するためには合格率僅か5%程度の国家試験をパスする必要がありますから、合格への道は非常に狭き門と言えるでしょう。

また、法律家という「弁護士」という資格が頭に浮かぶことと思いますが、弁護士と比べて司法書士は行える業務に一定の制限が掛けられているものの、登記などの法律的な手続きに特化した資格と言えます。

ちなみに2002年の法改正により、登記手続き以外にも簡裁訴訟などにおいて代理人を務めることのできるようになるなど、その業務の範囲は大きく拡大していますので私たちの最も身近にいる、気軽なお付き合いが可能な法律家といった表現が適切であるかもしれません。

そして次項では、より深く司法書士の業務内容を堀下げて行くことにいたしましょう。

司法書士の業務

さて、司法書士の主な業務としては

  • 不動産登記他、各種登記に関する業務
  • 相続に関する業務
  • 簡易裁判における訴訟代理業務
  • 成年後見等に関する業務
  • 債権整理に関する業務
  • 裁判外の和解等、その他の法律的業務

以上のものが挙げられますので、以下で詳しく解説してまいりましょう。

※表記の全ての業務を行うには、同じ司法書士でも法務大臣の認定を受ける必要があります。

不動産登記他、各種登記に関する業務

司法書士がこなす業務の中で最も大きなウェイトを占めるものといえば、それはやはり「登記」に関するものとなるでしょう。

但し、「登記」といってもいま一つピンッと来ない方も多いかと思いますので、まずは登記制度についてお話しいたします。

例えば、ある人が土地を買いたいと物件を探していたところ、地主と称する者が売却に応じたとしましょう。

当然、土地を探している人からすれば、これは非常にありがたい申し出となりますが、ここで頭をよぎるのが「果たして、この地主は本物なのだろうか」という不安です。

当然ながら、土地に名前が書いてある訳もありませんし、近所の人に尋ねてみたとしても、「なりすまし」である可能性を完全に否定することはきませんよね。

ただ、このような不安が付きまとっているようでは、活発な経済活動など行えるはずありません。

そこで明治以降の我が国では、「登記」という『国家が国民の権利を証明する制度』を立ち上げたのです。

そして、この登記制度は

  • 不動産登記/不動産の所有権、抵当権などの権利関係を証明する制度
  • 商業登記・法人登記/会社や団体などの登録を行い、公示する制度

など様々な目的に利用されるようになっていったのです。

なお現在、この登記の制度を管轄するのは法務省となっており、その出先機関である法務局にて登記手続きを行うことになります。

この登記制度の確立によって、先程例に挙げたような「不動産の真の所有者が誰なのか」といった問題が発生した際にも、法務局にて登記情報を閲覧すれば何時でも確認を行うことができますし、

「取引する相手の企業が本当に実在するのか」などの疑問が生じた時には、商業登記における登記事項証明書を取得すれば、国が会社の存在を証明してくれる訳です。

ちなみに、証明の根拠となる登記は当事者(権利を持つ者)であれば、誰でも自分で行うことができますが、その手続きは非常に煩雑であるため「司法書士」という国家資格を持つ者に限り、登記手続きの代行が可能なルールとなっているのです。

相続に関する業務

人が亡くった際に発生するのが相続となりますが、この手続きにおいては

  • 遺言の作成
  • 遺産分割協議書の作成
  • 戸籍などによる相続人の調査
  • 相続登記

などの作業が必要となりますが、こうした相続関連業務は司法書士の得意とする分野となります。

そして相続は不動産と切っても切れない関係にありますから、土地の運用などに当たっては司法書士の協力が不可欠となってくる訳です。

簡易裁判における訴訟代理業務

既に解説した通り、2002年の法改正によって司法書士が簡易裁判においても代理人を務めることのできるようになりました。

なお、裁判と言えば「弁護士」というイメージが強いとは思いますが、弁護士への依頼は非常に高額な費用が発生する上、顧問料も決して安いものではありません。

これに対して司法書士は、弁護士程の権限は有していないものの

140万円以下の民事事件における代理人を務めることができる上、費用も弁護士よりリーズナブルなケースが多い

ようですから、日常的に発生するトラブルに対応するには、司法書士の方が使い勝手が良い場合も多いようです。

債権整理に関する業務

司法書士は前項でもお話しした訴訟の代理人以外にも、140万円以下の民事事件の和解や相談に関する業務を引き受けることができますから、この範囲内であれば破産手続きなどの債権整理を担当することも可能となります。

不動産を取り扱っていると家賃の滞納者や、住宅ローンの返済が滞っている売主などに出会う機会が多いので、こうした際には非常に心強い存在となるでしょう。

成年後見等に関する業務

近年の不動産取引においては、認知症を患っている可能性が高い売主などと接しなければならないケースも少なくありません。

こうしたシーンにおいて司法書士は成年後見人等となることもできますし、その職業柄「相手が認知症であるか否か」を見極めるスキルも高いですから、高齢者との取引においては色々な意味で頼りになる存在です。

裁判外の和解等、その他の法律的業務

司法書士はここまでお話してきた以外にも

  • 裁判外の和解における代理人
  • 筆界特定における代理人
  • 支払督促手続きの代理人

などを務めることも可能です。

収益物件などを保有していると

  • 借主や近隣住民との紛争
  • 越境等の境界に関する問題
  • 賃料の滞納
  • 敷金返還を巡る紛争
  • 権利関係者との文書の取り交わし

といった面倒な事態に直面することも多いですから、こうしたシーンで司法書士は良き相談役となってくれるはずです。

スポンサーリンク

こんな場合は司法書士にお任せ!

ここまで司法書士が引き受けることができる業務の内容を解説してまいりましたが、ここからは「実際にどのような場面で司法書士の存在が役立つか」という点についてご説明してまいりましょう。

土地・建物の売買

地主さんともなれば、相続対策で土地を売買したり、借地権の買取や底地の売却などを行うこともあるはずです。

そして不動産の取引自体は不動産屋さんに任せるにしても、登記を行うのは司法書士となりますから、このようなシーンにおいて

リレーションの取れた司法書士に依頼を行うことができれば非常に心強いですし、顧問となっていれば登記に要する手数料も割安となる可能性が高い

でしょう。

賃料滞納等の法律トラブル

地代や賃料で生計を立てる「不動産賃貸業」を営む地主さんにとって、賃料等の滞納は正に死活問題です。

ライトな滞納者であれば、自分で督促を掛けることも可能でしょうが、質(たち)の悪い入居者やへヴィな滞納者は正直手に余りますよね。

こうした際も、司法書士に依頼すれば

内容証明の作成から、立退きに関する訴訟まで引き受けてもらうことができます

から、これは非常にありがたいはずです。(滞納者に対する法的手続きについては別記事「賃貸強制退去の流れを解説いたします!」をご参照ください)

また、滞納問題以外にも不動産の管理をしていると、様々な問題が発生して来るものです。

例えば、運営する月極め駐車場に無断で車を止めている者や、隣接する土地所有者との境界を巡る問題、そして新たに土地や部屋を貸す際の契約内容の検討等、その枚挙には暇がありません。

こんな際、気軽に契約書や覚書の内容を相談できる法律家の存在は非常に便利ですし、相手と直接話したくない時は代理人にもなってもらえるのは、正に「地獄に仏の存在」と言えるでしょう。

相続問題

多くの資産をお持ちの方にとって、最も気になるのが相続の問題なのではないでしょうか。

そして相続に関しては、遺言書の作成に、財産の配分方法など様々な問題が発生するものですが、こんな時に専門家のアドバイスがもらえるのは、非常に心強いですよね。

また実際に相続が発生した際には、戸籍から全ての相続人を辿り、遺産分割協議書等の作成もお願いすることができますから、この点も司法書士に任せておけば心配は無用となります。

様々な専門家の窓口として

このように様々な法律問題を扱う立場にある司法書士ですが、実は税理士や弁護士、土地家屋調査士などの他の専門家たちにも顔が広いという側面も持っています。

普段から相談に乗ってもらっている司法書士の紹介であれば、他の専門家たちにも相談しやすいものですし、司法書士に窓口となってもらうことで事情の説明などもスムーズに行えますから、こうしたシーンでもお役に立てる存在なのです。

スポンサーリンク

不動産と司法書士まとめ

さてここまで、不動産の管理・運用と司法書士というテーマで解説を行ってまいりました。

司法書士という職業は、一般の方にとって馴染みの薄い存在であるとは思いますが、不動産の維持管理において「彼らが如何に有益な存在であるか」を充分にご理解いただけたことと思います。

ただ気を付けたいのは、弁護士にも刑事、民事、離婚などの得意分野があるように、全ての司法書士がマルチな活躍をしている訳ではないという点です。

同じ司法書士でも、商業登記や債務整理などに力を入れておられる方も少なくありませんから、事前の確認を怠らないようにしましょう。

そして「不動産に係る業務に強く、親身になってくれる司法書士」と巡り会えれば、これまで解説して来た『多くのメリット』を得ることができるはずですから、この機会にパートナーとなれる司法書士探しを始めてみては如何でしょう。

ではこれにて、「不動産と司法書士について解説いたします!」の知恵袋を閉じさせていただきたいと思います。