多くの土地や賃貸物件をお持ちの地主さんの元には、日々様々な問題やトラブルが降り懸かってくるものです。
一般の方からすれば「地主は親から相続した土地で、悠々自適な生活を送っている!」などと思われがちですが、普段から彼らと接して私からすれば、「決してそのような気楽な立場ではない」というのが率直な印象です。
先祖から受け継いだ財産を極力減らさずに次の代まで継承していくことは、現在の相続税制などから考えれば非常に困難なことですし、不動産を管理していくにしても賃借人の賃料滞納やクレーム処理など、ストレスが溜まる場面も多いことでしょう。
そして、「こうした面倒事を少しでも減らしたい」とお考えの方に是非おすすめしたいのが、 信頼のおける司法書士を身近に置くという方法です。
そこで本日は、不動産の維持・管理とは、切っても切れない関係にある身近な法律家・司法書士についてお話ししてみたいと思います。
では、不動産と司法書士に関する知恵袋を開いてみましょう!
司法書士ってどんな仕事
司法書士という職業を聞いて、直ぐにその仕事内容が頭に浮かぶ方は非常に少ないのではないかと思います。
しかしながら、私のように不動産関係の仕事に就く者にとっては、司法書士は非常に身近であり、且つとても頼りになる存在なのです。
なお、この資格の概要を簡単にご説明するとすれば「司法書士法に基づく国家資格を有し、不動産登記や商業・法人登記手続きを当事者に代わって行える者」ということになるでしょう。
こんなお話をすると「何だ、登記をする人ってことか・・・」と思われるかもしれませんが、平成14年の法改正により、現在では簡裁訴訟などにおいても代理人を務めることのできる「法律家」としての性質が強まっている職業なのです。
※表記の代理人を勤めるためには、同じ司法書士でも法務大臣の認定を受けなければなりません。
裁判なら「弁護士」というイメージが強いとは思いますが、弁護士への依頼は非常に高額な費用が発生する上、顧問料も決して安いものではありません。
これに対して司法書士は、弁護士程の権限は有していないものの、不動産登記や商業登記の専門家である上、扱う金額が140万円に満たない民事訴訟については代理人にもなれますから、日常的に発生するトラブルには充分に対応が可能となります。
また、相続問題の処理に関しては弁護士以上の実務経験を持つ方も多く、「不動産の管理・運営には正にもってこいの存在」と言えるでしょう。
ちなみに、弁護士と比べ依頼料が割安なのもありがたいポイントであり、私の知り合いの地主さんの中には司法書士を顧問として迎えている方も数多くいらっしゃいます。
登記と司法書士
前項にて、司法書士の仕事内容について解説をいたしましたが、彼らがこなす業務の中で最も大きなウェイトを占めるものといえば、それはやはり「登記」に関するものとなるでしょう。
但し、「登記」といってもいま一つピンッと来ない方も多いかと思いますので、本項では登記と司法書士の関係についてお話しいたします。
例えば、ある人が土地を買いたいと物件を探していたところ、地主と称する者が「売って上げよう」と申し出たとしましょう。
当然、土地を探している人からすれば、これは非常にありがたい申し出となりますが、ここで頭をよぎるのが「果たして、この地主は本物なのだろうか」という不安です。
当然ながら、土地に名前が書いてある訳もありませんし、近所の人に尋ねても「なりすまし」である可能性は否定できませんよね。
ただ、このような不安が付きまとっているようでは、活発な経済活動など行えるはずありません。
そこで明治以降の我が国では、「登記」という『国家が国民の権利を証明する制度』を立ち上げたのです。
なお現在、この登記の制度を管轄するのは法務省となっており、その出先機関である法務局にて登記手続きを行うことになります。
この登記制度の確立によって、先程例に挙げたような「不動産の真の所有者が誰なのか」といった問題が発生した際にも、法務局にて登記情報を確認することで何時でもその確認を行うことができますし、
「取引する相手の企業が本当に実在するのか」などの疑問が生じた時には、法人登記における登記事項証明書を取得すれば、国が会社の存在を証明してくれる訳です。
ちなみに、証明の根拠となる登記は当事者(権利を持つ者)であれば、誰でも自分で行うことができますが、その手続きは非常に煩雑であるため「司法書士」という国家資格を持つ者に限り、登記手続きの代行が可能なルールとなっているのです。
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こんな場合は司法書士にお任せ!
では実際、どのような場面で司法書士の存在が役立つのでしょうか。
土地・建物の売買
地主さんともなれば、相続対策で土地を売買したり、借地権の買取や底地の売却などを行うことも時にはあるはずです。
そして不動産の取引自体は不動産屋さんに任せるにしても、登記を行うのは司法書士となりますから、こんな時にリレーションの取れた司法書士がいてくれたら非常に心強いですし、顧問となっていれば登記に要する手数料も安くしてもらえることでしょう。
賃料滞納等の法律トラブル
地代や賃料で生計を立てる「不動産管理業」を営む地主さんにとって、賃料等の滞納は正に死活問題です。
ライトな滞納者であれば、自分で督促を掛けることも可能でしょうが、質(たち)の悪い入居者やへヴィな滞納者は正直手に余りますよね。
こうした際も、司法書士に依頼すれば内容証明の送付から、立退きに関する訴訟まで引き受けてもらうことができますから、これは非常にありがたいはずです。
また、滞納問題以外にも不動産の管理をしていると、様々な問題が発生して来るものです。
例えば、運営する月極め駐車場に無断で車を止めている者や、隣接する土地所有者との境界を巡る問題、そして新たに土地や部屋を貸す際の契約内容の検討等、その枚挙には暇がありません。
こんな際、気軽に契約書や覚書の内容を相談できる法律家の存在は非常に便利ですし、相手と直接話したくない時は代理人にもなってもらえるのは、正に「地獄に仏の存在」と言えるでしょう。
相続問題
多くの資産をお持ちの方にとって、最も気になるのが相続の問題なのではないでしょうか。
そして相続に関しては、遺言書の作成に、財産の配分方法など様々な問題が発生するものですが、こんな時に専門家のアドバイスがもらえるのは、非常に心強いですよね。
また実際に相続が発生した際には、戸籍から全ての相続人を辿り、遺産分割協議書等の作成もお願いすることができますから、この点も司法書士に任せておけば心配は無用となります。
様々な専門家の窓口として
このように様々な法律問題を扱う立場にある司法書士ですが、実は税理士や弁護士、土地家屋調査士などの他の専門家たちにも顔が広いという側面も持っています。
普段から相談に乗ってもらっている司法書士の紹介であれば、他の専門家たちにも相談しやすいものですし、司法書士に窓口となってもらうことで事情の説明などもスムーズに行えますから、こうしたシーンでもお役に立てる存在なのです。
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不動産と司法書士まとめ
さてここまで、不動産の管理・運用と司法書士というテーマで解説を行ってまいりました。
司法書士という職業は、一般の方にとって馴染みの薄い存在であるとは思いますが、不動産の維持管理において「彼らが如何に有益な存在であるか」を充分にご理解いただけたことと思います。
ただ気を付けたいのは、弁護士にも刑事、民事、離婚などの得意分野があるように、全ての司法書士がマルチな活躍をしている訳ではないという点です。
同じ司法書士でも、法人登記や債務整理などに力を入れておられる方も少なくありませんから、事前の確認を怠らないようにしましょう。
そして「不動産に係る業務に強く、親身になってくれる司法書士」と巡り会えれば、これまで解説して来た『多くのメリット』を得ることができるはずですから、この機会にパートナーとなれる司法書士探しを始めてみては如何でしょう。
ではこれにて、不動産と司法書士に関する知恵袋を閉じさせていただきたいと思います。