不動産を扱う上で「永遠の課題」となっているのが、『マイホームを購入するのと、賃貸物件に住み続けるのではどちらがお得か』という問題です。
確かに賃貸物件を借りることによって発生する家賃は「大家さんの利益となるだけ」ですから非常に損をした気分になりますが、「長年、住宅ローンを返済し続ける」のもまた非常に困難な道のりであることは改めてご説明する必要もないでしょう。
そこで本日は「賃貸と購入!どちらが得かを検証いたします!」と題して、人生の大きな分かれ道となる「マイホーム購入」と「賃貸暮らし」のメリット・デメリットを比較検討してみたいと思います。
賃貸物件に住み続ける
ではまず、生涯賃貸物件に住み続けた場合のメリット・デメリットを見て行きましょう。
賃貸物件のメリット
さて、賃貸物件に住まうメリットとしては
- 固定資産税や都市計画税等の支払いがない
- 建物の修繕義務は大家が負う
- 解約するだけで簡単に住み替えが可能
- 相続発生時も手続きが手軽
以上の点を挙げることができ、これを端的にまとめるとすれば「生活面での気軽さ」とも言い換えることができるでしょう。
賃料の支払さえ怠らなければ固定資産税や都市計画税の支払いをする必要はありませんし、たとえ建物に不具合が生じれてもその修繕義務を負うのは大家さんとなりますからこれは実に気楽です。
また近隣とのトラブルが発生したり、仕事で転勤を命じられてたとしても1ヶ月前に予告するだけで解約が可能ですし、新たな物件を借りるのにもそれ程高額な資金が必要になることはありません。
更には、資産として不動産を持たないことにより相続などが発生した際にもその手続きは非常に簡単なものとなりますから、相続人同士の揉め事なども防ぐことができるでしょう。
賃貸物件のデメリット
一方、賃貸物件に住み続けるデメリットとしては
- 資産として不動産を保有することができない
- 高齢者となった際に入居審査に通り辛い
- 居住年数の経過と共に室内の設備等も古びてくる
以上の事項が挙げられます。
賃料を支払いながらも「しっかりと貯蓄ができている方」は良いでしょうが、そうでない方にとっては資産形成という意味で賃貸物件暮らしは人生に大きな影響を及ぼす可能性があります。
例えば、脱サラをして事業を始めるのに「まとまったお金」が必要になった場合などには、担保提供できる不動産があるのと無いのでは銀行から融資を受ける際などに大きな差が生じることは改めてご説明するまでもないでしょう。
また年齢を重ねて行けば、『住み替えたい』と思った先の物件で「年齢による審査落ち」という憂き目に遭う可能性もありますし、連帯保証人をお願いしていた方が亡くなり「新たな保証人」を擁立できずに頭を悩ませている方も多いはずです。(近年では賃貸保証会社を利用するという手もありますが)
更には、長年同じお部屋に住み続けたことにより「フローリングやクロス、ユニットバスなどの経年劣化」が進んでも、故障しない限りは交換等をしてくれる大家さんはまず居ないでしょうから、こちらも頭の痛い問題となるでしょう。
マイホームを購入する
さて続いては、マイホームを購入した場合のメリット・デメリットを見て行きましょう。
マイホーム購入のメリット
マイホームを購入するメリットとしては
- 自宅と言う資産を保有できる
- 土地を保有することで今後の資産運用が可能となる
- 社会的なステイタスが向上する
以上の点を挙げることができます。
さて、マイホーム購入の最大のメリットと言えば、何と言っても一国一城の主となり、自宅と言う資産を手に入れられることでしょう。
そして住宅ローンの返済は厳しくとも、これさえ乗り切れば「後は悠々自適な生活」が待っている訳ですから、これは人生を生きる上でも励みになるはずです。
また、早くにローンの返済を終えてしまえば自分は新たな物件に移り住み、現在の自宅を貸家として賃貸したり、アパートに建替えて不動産投資を始めるといった選択肢も出て来る訳ですから、これは非常に夢がありますよね。
なお、日本の社会には「マイホームを持ってこそ一人前」などという考え方が未だに根強く残っていますから、友人や職場の仲間からの見られ方も変わって来るはずですし、将来的には子供が結婚する際などにも「相手方の親御さんの心証」も良くなるはずです。
マイホーム購入のデメリット
一方、マイホームの購入に際してのデメリットとしては
- 長年に渡り住宅ローンを返済しなければならない
- 屋根や外壁などの修繕費が発生する
- 気軽な住み替えができなくなる
以上のものが想定できます。
まずデメリットとして真っ先に頭に浮かぶのが、やはり住宅ローンの問題です。
冒頭でもお話した通り、長期間で組まれた住宅ローンの金利は膨大な額に膨れ上がりますから、4000万円の物件をフルローン、金利1.5%・35年返済で購入した場合には、完済時の合計支払額は5200万円にも及ぶ計算となります。
また、先程例に挙げた「1.5%」という金利を『現在の相場よりも高過ぎる』と感じた方もおられるかもしれませんが、借入当初こそ「非常に良心的な金利」も時が過ぎる毎に上がって行くものですから、実際には先程の試算以上の金額を返済することになるケースも多いはずです。
ましてや、現在の日本はゼロ金利政策が行われている真っ最中ですから、これから景気が良くなり、利上げが行われれば「マイホームを手放さなければならないという憂き目」に遭う方も増えて来ることでしょう。
なお、たとえ毎月の住宅ローンの返済が滞ることがなくとも、家を持つということは多くの出費を伴うものです。
毎年の固定資産税等の支払はもちろんですが、新築から10年~20年が経過すれば屋根の葺き替えや外壁のメンテナンスを行わねばなりませんし、給湯器の故障や水道・下水などのトラブルも年々増加して行きます。
ちなみに分譲マンションの場合であれば、「メンテナンスをしなければならないのは専有部分だけ」となりますから気持ちの上ではかなり気楽ですが、その分毎月の管理費や修繕積立金の負担を避けることはできないでしょう。
更に持家となれば「簡単に引っ越しを行うこともできなくなる」のが当たり前ですが、隣近所のお宅がゴミ屋敷化してしまったり、騒音おばさんのような迷惑な住人が潜んでいる可能性もありますから、これは実に頭の痛い問題です。
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どちらがお得かは状況による!
ここまで賃貸物件を借り続けた場合と、マイホームを購入したケースでのメリット・デメリットを比較してまいりましたが、解説全体を見渡せば「賃貸・購入どちらにも、良い点と悪い点がある」というのが結論でしょう。
しかしこれでは「どちらがお得か」という皆様の疑問にお答えしたことにはなりませんので、ここでは賃貸と購入それぞれの選択を成功に導く方法をご紹介してみたいと思います。
一生涯賃貸物件居住を成功させるために
一生涯を賃貸物件で過して満足の行く人生を送るためには、何よりも潤沢な資産を築くことが必要となるでしょう。
マイホームを購入すれば、ローンの返済はかなりの負担とはなるものの「完済した暁には土地と建物という資産」が手元に残ります。
これに対して賃貸暮らしは、いくら家賃を払い続けて入居者の手元には1円も残らない訳ですから、預金や金融資産という形で「資産」を作れなければ将来的に非常に困った事態に陥るのは確実でしょう。
今は元気に働くことができても、将来的に介護施設に入所することにでもなれば、その際に掛かる費用は莫大なものとなるはずです。
よって、一生涯賃貸物件居住を続けるのであれば、
自分が定年を迎える時期までに「マイホームをキャッシュで買えるくらいの貯蓄」を行うべきであり、これが不可能であればなるべく早めにマイホーム購入派へと転身するべき
であるかと思います。
マイホーム購入を成功させるために
続いては、マイホーム購入派の方が人生の勝者となる方法をご紹介いたします。
「マイホーム購入のデメリット」の項でもお話した通り、マイホーム派の最大のネックとなるのが住宅ローンの問題です。
「ローンが完済すれば楽になる!」いう希望的観測から、毎月ギリギリの生活を送っている方も少なくないことと思いますが、これは非常に危険な行為と言えるでしょう。
また利上げが行われ、返済額が増額されれば日常生活に深刻な影響が出ることになりますし、今の世の中では年齢と共に順調に給料が上がって行くとは限りませんから、
身の丈にあった(自分の所得に見合った)物件を選ぶことが何よりも重要
な事項となります。
また、もう一点注意するべきは購入に際して資産価値の高い物件を選ぶことでしょう。
既にお話しした通り、住宅ローン完済時には借り入れた金額の1.2倍~1.5倍を返済している計算になりますが、いざ物件を売りに出そうとしたら「買った値段の半額以下であった」などというオチだけは絶対に避けねばなりません。
なお、失敗しない建売住宅の購入方法については別記事「建売の後悔しない選び方を解説いたします!」にて詳しくご説明しておりますので、そちらを是非ご参考になさってください。
ちなみに、「中古マンション」をマイホームとして選択する方には、建売以上に注意しなければならない点があります。
分譲マンションの管理費・修繕積立金は、組合の運営方針や建物の老朽化具合によって金額が変動するものですから、住宅ローン返済額の変動と合わせて「二重のリスクがある」と言えるでしょう。
また、築年数の古いマンションでは大規模修繕に際して「組合員が新たに修繕費用のローンを組まされる場合」もありますし、マンション自体の建替えともなれば「現在抱えている住宅ローン以上の返済を負担しなければならないケース」も出て来ます。
もちろん、物件購入時に管理組合の議事録にしっかり目を通しておけば買って直ぐにこうした憂き目に遭うことはないでしょうが、10年先、20年先のことは誰にもわかりませんから、マンション購入希望者は充分にご注意ください。
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賃貸と購入!どちらが得か?まとめ
さてここまで、「マイホームを購入する」のと「生涯を賃貸物件で過す」のでは、どちらがお得であるかというテーマで解説を行ってまいりました。
不動産屋さんの営業マン的には頂ける報酬の問題で『買った方がお得ですよ!』と言いたいところですが、前項でご紹介した正しい買い方、借り方をしていただく分には「正直、甲・乙付け難い」というのが結論となります。
そして最終的に「どちらがお得か?」を決めるのは、住む方の価値観次第となりますから、自分のライフスタイルに合った人生設計を描いていただければと思います。
ではこれにて、「賃貸と購入!どちらが得かを検証いたします!」の知恵袋を閉じさせていただきたと思います。