不動産を取引する際の諸経費の中で、大きなウエイトを占めているのが仲介手数料です。

この仲介手数料、当然のことながら売買・賃貸共に必要となって来る上、売買に至っては「取引を行う上で必要となる諸費用の大半を仲介手数料が締めている」のが現実ですから、取引の当事者にとっては非常に大きな負担と言えますよね。

また「仲介手数料は支払うのが当たり前・・・」という時代が長く続いておりましたが、近年では「手数料半額!」などといった宣伝文句もよく耳に致しますから、これから不動産の取引に臨む方にとっては『非常に気になるポイント』となっているはずです。

そこで本日は「仲介手数料の値引き、安くする方法を大研究!」と題して、売買の取引において手数料を値引きする方法や値段交渉のポイントを解説してみたいと思います。

仲介手数料の値引き

 

仲介手数料とは

では早速、仲介手数料値引きのコツについてお話ししたいところではありますが、まずは「仲介手数料とはそもそも何なんだろう?」という点から解説を始めましょう。

過去記事「不動産媒介契約の種類と運用について解説!」でもお話しいたしましたが、売主(貸主)と買主(借主)の間を不動産屋さんが取り持つ行為を「仲介」と称しており、その業務内容や報酬額に関する定めを行う契約を「媒介契約」と呼んでいます。

そしてこの媒介契約は法律上「準委任契約」と解釈されており、依頼者の代わりに物件の買主や売主を探し、成約のあかつきには仲介手数料として報酬を得ることができる旨が定められているのです。

但し、報酬額を無制限とする訳には行きませんから、売買であれば、

  • 売買価格200万円以下      ・・・売買価格×5%
  • 売買価格200万円超~400万円以下・・・売買価格×4%+2万円
  • 売買価格400万円超       ・・・売買価格×3%+6万円

という上限額が宅地建物取引業法により定められています。(売主・買主双方からの受取りが可能、また仲介手数料には別途消費税が掛かります)

さて、ここまでの解説をお読みになり、『あれ?』と思われた方も多いことでしょう。

そうです、法律が定めているのは「あくまでも不動産業者が受け取れる仲介手数料の上限」であって、「報酬が表記の金額以下であってはならない」などという決まりは何処にも書かれていません。

但し、不動産業者も事業を行っている訳ですから「最大限の報酬を得たい」という願望は当然持っており、その結果「どこの会社に行っても手数料は一律」という状況が発生していました。

ところが近年になり、市場に不動産屋さんが増え過ぎてしまうと「他社よりも有利な条件を提示しなければならない」という競争意識が芽生え、現在では「手数料半額」などを謳い文句とする不動産業者が出現し始めたという訳なのです。

 

仲介手数料の値引き方法

さて、仲介手数料の仕組みや概要をおおよそご理解いただけたところで、いよいよ実際の値引き交渉の方法などについてお話ししてまいりましょう。

仲介業者の気持ちを理解する

仲介手数料の値引きテクニックをご紹介する前に一つ念頭に置いておいていただきたいのが、「仲介業者は取引について非常に大きな責任を負っている」という事実です。

前項の解説では、仲介手数料を上限額まで貰いたいのは「商売だから」とお話ししましたが、売買仲介においては「仲介業者が負うリスクを軽減するための担保として、高額な報酬を頂く」という側面も存在しています。

例えば、仲介した物件について後から大きな問題が発覚し、その原因が仲介業者の調査ミスだった場合には、当然その業者は「買主に対して損害賠償責任を負う」ことになるでしょう。

もちろん、調査ミスはあってはならないことですが、あくまで人間がやることですし、中古住宅の場合などには壁を壊したり、敷地を掘ってみない限りは「発見することができない欠陥」だって多数存在します。

また、不動産は大きな金額の買い物だけに請求される賠償金額も高額なものとなりますから、手数料を半額などにしてしまうと、1件のトラブルの発生によって複数の取引きで得た利益が消滅してしまうことだってあり得るでしょう。

つまり仲介業者は、「できる限り仲介手数料を稼いでおいて、万が一の事態に備えたい」と考えている訳です。

そして、こうした「仲介業者の想い」を理解して上げることこそが、値引き交渉を有利に進める第一のポイントとなるでしょう。

狙い目は建売物件

そして前項のお話を踏まえた上で、不動産業者が「最も安心してお客様にご紹介できる(取引上のトラブルに発展するリスクの低い)物件は何か?」ということになれば、これは間違いなく建売物件ということになります。

建売物件は「建売屋さん」と呼ばれるプロの戸建て分譲業者が販売する物件となりますから、後々建物に問題が発生する可能性は極めて低い上、瑕疵(建物の欠陥)に備えた保険にまで加入していますから、その安心感は正に盤石と言えるでしょう。

また、建売屋さんが商品化を進める過程で近隣のお宅との権利関係の調整は済んでいるはずですし、同じ理由で重要事項の説明書を作成するための調査も殆ど必要ありませんから、建売物件での仲介業者の手間は極端に少ないものとなります。

こうした裏の事情を知っていれば、仲介手数料の交渉も行いやすいのではないでしょうか。

建売物件を卸した業者を狙う

建売物件を購入する場合には、仲介手数料の値引き交渉がしやすいというお話をいたしましたが、更に値引きのハードルを下げるのが「建売物件を卸した業者が販売活動を行っている物件を狙う」という方法です。

別記事「不動産営業の仕事内容!建売屋さん編」にて詳細な説明を行っていますが、建売屋さんの建売用地仕入れ先は仲介業者(仲介業者に建売用地を買わせてもらう)であることが殆どとなります。

そして、仕入れをさせてくれた仲介業者には、お礼の意味を込めて優先的に商品化後の販売活動を任せるものです。

こうした状況におかれた仲介業者は

  • 自分が卸した物件だけに、早くお客様を付けたい
  • 土地を卸した段階で、既に仲介手数料を稼いでいる
  • 建売の販売においては、再び建売屋さんから仲介手数料が貰える

という「ホクホクの状態」となっていますから、買い手からの手数料交渉にも非常に応じやすい状況となっているはずです。

よって現地販売会などに足を運んだ際には、営業マンに「この物件を建売屋さんに卸したのは、あなたの会社なの?」などという質問をした上で、仲介手数料の値引き交渉を行えば成功率は飛躍的に高まることでしょう。

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自分で見付けた来た物件の仲介

こちらも建売物件が前提のお話となりますが、仲介業者もお客様が自分で発見して来た物件(自己発見物件)に対して満額の手数料を請求するのは、なかなか心苦しいものです。

よって仲介業者に物件探しの依頼を行いつつも、常に街並みに目を配るなどして、建売の雰囲気がある建築現場などを見付けたら、すかさずその情報を仲介業者に提供して調査をさせてみましょう。

なお、不動産業者であれば登記簿謄本などで所有者の情報を割り出すのは容易ですから、これが未公開の建売物件であれば、仲介手数料の交渉を行う余地は充分過ぎる程にあるはずです。

また新聞折り込み広告などで入って来る情報は、不動産業者同士が売り物件情報を共有するレインズなどの媒体に掲載されていない物件であるケースも多いですから、仲介業者にこうした情報を提供して売主を探ってもらう方法も有効でしょう。

ちなみに、お客様が自分自身で広告を掲載した会社に問い合わせをした場合には満額の仲介手数料を請求されますので、既に付き合いのある業者(物件探しを依頼している業者)に物件情報を提供し、あくまでも自己発見物件として仲介手数料の値引き交渉を行うことが重要です。

建売屋さんから直接購入する

一方、こちらは最早、仲介手数料の値引き術とは言えないかもしませんが建売屋さんから直接分譲物件を購入してしまえば、仲介手数料は0円になります。

但し既にお話しした通り、建売屋さんの建売用地の仕入れには仲介業者が係っているケースが殆どですから、売主と直接契約をするのは少々しんどい作業となるでしょう。(建売用地を卸した仲介業者に優先的な販売権を与えているため、直接問い合わせをしても「仲介業者を通して欲しい」と言われてしまう)

そこでお勧めしたい方法が、建売を主な事業としている不動産会社(建売屋さん)のホームページなどで、現在分譲中の物件をチェックするという方法です。

なお通常であれば、「物件を卸してくれた仲介業者のために情報の掲載を行わない」ものですが、ホームページに載せているということは「仕入れに仲介業者が係っていない」または「既に優先的な販売期間を超過している」などの理由が考えられますので、仲介手数料なしで契約に応じてもらえる可能性が高くなるでしょう。

また前項の自己発見の方法を応用して、街中で建築現場を見付けた際に建築確認の標識などから分譲主の名前を確認した上で、直接連絡を取ってみるという方法も有効かと思います。

ちなみに、この手法を用いた場合には「販売を任せている仲介業者に連絡してくれ」と言われてしまうケースが殆どとなるでしょうが、こうしたパターンにおいては、前項にてご紹介した「自己発見物件による手数料値引きのテクニック」をそのまま応用できるはずです。

 

物件を売る場合の交渉術

ここまで「物件を買う場合の交渉方法」ばかりをご紹介してまいりましたので、本項では売却依頼をする際の手数料の値切り方をご教授いたしましょう。

さて、仲介業者にとって自分の下に売却依頼が舞い込むのは、それだけでも大変に嬉しいものです。

購入希望のお客様の場合には、「他の業者にも声を掛けて物件を探しているケース」も多いですから、『どんなに頑張っても仲介手数料が頂けない可能性』が常に付きまといます。

これに対して売却案件では、専任媒介などの媒介契約を結んでおけば、少なくとも「手数料がもらえない」という事態は回避できますから、購入案件に比べて非常にありがたいものとなる訳です。

そして、こうした仲介業者の心理を巧みに突くことが、売却時に仲介手数料を減額させるためのポイントとなります。

例えば、「友達に不動産屋さんがいて売却を依頼しようとしたところ、手数料満額でなければ引き受けてくれないって言うのだけれど、おたくもそうなの?」と最初にカウンターを放ってみるとか、

「手数料20%オフって言っている会社があるのだけれど、あなたの会社は割引はないの?」などといった具合に交渉をしてみるのも一つの方法でしょう。(大手の仲介業者を相手にこうした交渉を行うのは困難ですが)

但し、あまりに強気な交渉は相手の気分を害させるだけですし、仲介業者に譲歩させる一方ではまとまる話もまとまりませんから、値引きと引き換えに「媒介契約を9ヶ月継続する(本来は3ヶ月ごとの見直し)」などのメリットを提供することも重要であるかと思います。

一方、売却依頼を行っている中で物件に極端な価格交渉が入って来た時なども仲介手数料の値引きのチャンスとなります。

つまり、大幅な値引きを容認することは「売主にとって身を切るのと同義」となりますから、仲介業者も手数料という身を切って「ドローの条件で契約をしよう」という訳です。

ただ、建売物件とは異なり、中古住宅の元付け(売主側の業者)は取引上のリスクも大きなものとなりますので、交渉に応じて貰いない可能性があることはご理解ください。

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仲介手数料の値引き、安くする方法まとめ

さてここまで、売買の取引における仲介手数料値引きの方法について解説を行ってまいりました。

現役の不動産屋さんである管理人が「仲介手数料の値引き交渉の説明」を行うのは実に奇妙な感覚でしたが、是非本記事をご参考にしてければ幸いです。

また、今回の記事を書いた背景にはお客様からの「楽して仲介手数料を稼いでいるのだから、まけてよ」というニュアンスの値引き交渉に対して反論したいという意図も隠されていたりします。

確かに建売物件などの仲介では、楽な取引もあるにはありますが中古物件で元付け(売主側の仲介業者)という立場になってしまった際などには、上限の手数料を頂いても「正直、不安!」と感じてしまう程に危険な取引もあるものです。

よって、少しでもこうした不動産屋さんの気持ちを「一般のユーザー様にご理解いただければ」との想いで記事をお届けいたしました。

ちなみに、今回ご紹介した方法でも「絶対にまけられない!」という時は『不動産屋さんにもそれなりの事情があるはず』ですから、そこはどうか気持ちを酌んでいただければありがたいです。

ではこれにて、「仲介手数料の値引き、安くする方法を大研究!」の知恵袋を閉じさせていただきたいと思います。