不動産売買契約書の作り方

 

前回、「不動産契約書作成のポイントを解説!」という記事にて、売買契約書の作成ポイントや注意点をご紹介させていただきました。

しかしながらページの都合上、その全てを解説することなく一旦知恵袋を閉じさせていただいておりましたので、本日はその続きをお届けしたいと思います。

では「不動産売買契約書の作り方について」の解説を再開しましょう。

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売買契約書内容解説!

前回の記事においては、

  • ①売買対象・価格の表示
  • ②売買対象面積
  • ③売買代金の支払時期
  • ④手付金と手付解除
  • ⑤所有権の移転と引渡し
  • ⑥公租公課の精算について
  • ⑦住宅ローンによる解除

などについて解説を行ってまいりましたので、本記事では⑧からのスタートとなります。

⑧物件の滅失による解除

売主・買主、どちらの責任にもよらない火災や自然災害などにより、物件の引き渡しが困難になってしまった場合の解除条項となります。

この条項でのポイントは、売主・買主互いに損害賠償の請求ができないという点と、これに該当する事態が発生した場合には手付の即時返還が行われる点になるでしょう。

なお、契約書作成時には他の解除条項と同様、売主・買主共に解除権を設定しておくのが賢明です。

また建売屋さんが売主のケースでは、「修復可能であるならば、売主は修繕を行った上で物件を引き渡すものとし、この場合には買主からの契約解除はできない」などの文言を契約書に加えて欲しいとの要望が出ることもありますが、買主にとって不利な内容となりますから、条文の解釈を巡って訴訟などに発展した際には「無効」と判断される可能性が高いでしょう。

よって、このような条文の追加を求められた場合には、丁重にお断りするべきかと思います。

※この「物件の滅失による解除」の条項が契約書に組み込まれていない場合には、「買主からの契約解除は認められず、滅失した物件に対して予定通りの代金を売主に支払わねばならない」というのが民法上の解釈となりますから、この条文は契約上非常に大きな意味を持つことになります。

※放火などによって物件が滅失した場合には、この条項が適用されますが、売主の煙草の不始末などが原因の場合には後述する債務不履行解除が適用されるケースもあります。

⑨債務不履行による解除

解除に関する条項が続きますが、こちらは「債務不履行」、つまり契約上の約束違反があった場合の解約条項となります。

契約を締結したにも係らず、「買主が期日までに残代金を支払わない」「売主が物件を約束通りの状態で引き渡さない」といった事態が発生した際には、この条項が適用されることになるでしょう。

ちなみにこの条項では「違約金の額」を定めることになりますが、ひと昔前なら売買代金の20%、最近では10%という違約金の額が相場となりつつあるようです。

※「不動産売買における20%の違約金の正当性」について争われた裁判において、裁判所が「10%が妥当である」との判断を下したため、この判例の影響により違約金を10%とするケースが増えています。

また、この違約金を請求するには「催告(契約を守りなさいという催促)」をした上、それでも約束を守らない時に違約金の請求ができることなります。(民法上、催告なしでの違約金の請求は認められないのが原則であるため)

なお、違約金については「損害の大小に係らず●●%を違約金の額とする」という文言も入れておくべきでしょう。

トラブルがあった場合に「私の損害は●●%などでは収まらない!」などと主張されると後々面倒なことになりますから、売主・買主双方を保護するためにも違約金の上限は定めておくべきです。

※売買契約書における解除条項については、別記事「不動産売買契約解除に関する事項をご説明!」にて詳細な解説を行っております。

⑩瑕疵担保責任

ご存じの方が多いと思いますが、瑕疵とは「物件の隠れたキズ(欠陥)」を指す言葉になります。

こうしたキズに関して、引渡し後も売主が責任を負うという意味で、瑕疵担保責任という名称が付けられているのです。

この瑕疵担保に係わる条文を作成する際に、まず問題となるのは「売主が責任を負う期間」ということになりますが、一般の方が売主の場合には半年程度が通常となります。(3ヶ月間という契約もあります)

※一般の方が売主の場合には「瑕疵担保免責」という契約にすることも可能です。

また売主が不動産業者の場合で、売買対象が中古物件のケースでは「引渡しから2年間責任を負う」となるのが一般的でしょう。

実は、売主が不動産業者の場合には「引渡しから2年間」との特約を明記しなければ、発見から1年(たとえ引渡しから何年経っても、見つけてから1年間)という半永久的な瑕疵担保責任を負わされてしまうのがルールとなっており、2年間とせざるを得ないのが現実です。

ちなみに2年間より短い期間を設定した場合には、法律上は「発見から1年」と解釈されてしまうので、お気を付けください。

※瑕疵担保責任の時効は10年となりますので、「発見から1年」の場合でも引き渡しから10年が経過しているケースにおいては、責任を逃れることが可能です。

なお近年の法改正により建売(業者売主の新築物件)の場合には、「構造耐力上主要な部分と雨水の侵入を防止する部分」、つまり建物の骨組みや基礎、雨漏りに関する部分については10年間の瑕疵担保責任を負うこととなっています。

また「瑕疵があった場合でも、修復可能な場合は売主がこれを修復し、買主の損害賠償や解除は認めない」というタイプの契約書のひな形も存在しますが、消費者保護の視点から無効と判断される可能性が濃厚です。

さて、ここまで様々なタイプの瑕疵担保責任に関する条項を解説してまいりましたが、本項の最後に簡単な整理をしておきましょう。

  • 一般の方が売主の物件・・・瑕疵担保免責の契約が有効、期間を定める場合は3~6ヶ月とするものが多い。
  • 不動産業者売主の中古物件・・・引き渡しから2年以上の瑕疵担保責任を負う期間を定める必要あり。
  • 不動産業者売主の新築物件・・・建物の主要な部分は10年以上、その他の部分については2年以上の期間、瑕疵担保責任を負う必要がある。(但し、消耗品などについては2年以下とすることも可能)

※瑕疵担保責任の詳細については別記事「瑕疵担保責任について考えてみます!」をご参照ください。

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⑪瑕疵担保保険

建売住宅などでは買主保護の観点から、前項で解説した売主の負う「10年間の瑕疵担保責任」に対して、売主自ら保険に加入することを義務付けられています。(瑕疵保険に加入しない場合には、所定の供託金を納める必要があります)

また、このルールが定められたことに伴い、売買契約書においても「売主の加入する瑕疵保険の内容を明記すること」が義務付けられることになりましたので、この条項では売主が加入する保険内容の説明がメインとなります。

但し、ここで注意すべきは「売主が倒産した等の事情」がない限り、瑕疵保険によって保険金が支払われる相手はあくまでも売主であるという点です。

よって、「瑕疵が発見されも、売主の会社が健全な状態である場合には、買主に保険金が入ることはなく、売主が自己の責任と負担で瑕疵担保責任の補償にあたること」を誤解が生じないように伝えましょう。

⑫契約書作成費用

契約書には売買価格が記載されているため、印紙税の課税対象となります。

よって通常は、「契約書は2通作成し、売主・買主はこれを一部ずつ保有し、各々印紙代を負担する」という条項が必要となるはずです。

但し、売主が建売屋さんである場合には、原本はお客様のみ、売主はコピーを保有することにして、契約書を一通しか作成しないケースもあります。(印紙を貼付しなければならないのは原本のみ)

よって、「契約書の原本を何通作るか」によって文言の内容は変わって来ますので、この点には注意が必要です。

なお、1通作成なら原本を持つ者が印紙代を負担、2通以上作成なら印紙代を各々負担するのが通常となります。

⑬暴力団関係の条項

売主・買主が暴力団の構成人、またはそれに類する団体に所属、あるいは物件を暴力団事務所として使用した場合の解除条項となります。

反社会勢力の問題が何かとクローズアップされる昨今ですから、必ず入れておくべき条項となりますが、違約金の額などについては契約書の作成者によりかなりバラ付があるようです。

なるべく厳しいペナルティーを課しておいて、損はない条項であるかと思います。

⑭その他の条項

「管轄裁判所の取り決め」「諸規定の継承」「信義則」などの条項がこれにあたりますので、以下で簡潔に解説してまいります。

管轄裁判所の取り決め

物件の売買を巡って紛争となった場合に「事件を管轄する裁判所を定める条項」であり、通常は『物件所在地を管轄する裁判所とする』と記することになります。

諸規定の継承

不動産を購入するということは、物件に課せられる「法令上の制限(国や自治体などが定める建築や土地利用に関するルール)」や「近隣との打ち合わせ事項」なども受け継ぐことになりますので、契約書においては「買主は諸規定を継承するものとする」という条項が必要となります。

信義則

「売主・買主お互いに誠意を持って取引に臨む」という、契約の基本ルールを定めた条項となります。

⑮特約事項

そして契約書の最後に記されるのが特約事項(それぞれの取引に個別に設定される約束事)となります。

なお特約事項に関しては、説明にかなりの文章的なボリュームが必要となりますので、別記事「不動産契約書特約条項の書き方」にて、改めて解説をさせていただきます。

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売買契約書の作り方まとめ

さて以上が、不動産売買契約書を作成する際のポイントとなります。

ひな形をベースに契約書を作っていると何気なくスルーしてしまいがちな条文も、このように要点をまとめることで「改めて気付かされる点」が多かったのではないしょうか。

また、一般の方にとっても、契約時にサラリと読み流されていく条項にどのような意味があるかを知ることは非常に重要なことかと思いますので、不動産の取引に際しては是非とも本記事をご活用いただければと思います。

不適切な内容で契約を取り交わしてしまうと、後々とんでもないトラブルに発展するケースもありますから、じっくりと練り込まれた売買契約書で失敗の無い取引を目指していただきたいものです。

ではこれにて、不動産売買契約書の作り方についての知恵袋を閉じさせていただきたいと思います!