長年住み慣れたマイホームを手放すのは、誰にとってもなかなか勇気のいる行為ですよね。

居住期間が長ければ、家には多くの思い出が詰まっているものですし、新たに移り住む物件の問題に、売却手続きの進め方など、気になる点は目白押しのはずです。

そして、このようなお悩みを解消するには「売却の流れを把握してしまう」のが一番なのですが、ネットなどを検索しても「いまいち理解ができない」というご意見もよく耳にいたします。

そこで本日は、「不動産売却の流れについてご説明!」と題して、自宅を売却する際のイベントの詳細や注意点について解説してまいりましょう。

不動産売却の流れ

 

「売却の流れ」は売主の状況によって大きく変わる

では早速、マイホーム売却の流れについてご説明を始めたいところですが、実は「物件の売主が置かれた状況」によって、売却の手順が大きく変わる可能性があります。

例えば、「マイホームを手放して実家にいる両親と同居する」「既に新たな物件を購入済みである」といった場合には、ただ単に不動産業者に自宅の売却を依頼するだけのこととなります。

一方、「現在の自宅を売却した資金で新たな物件を購入する」という買い替えのパターンでは、新物件引渡しのタイムラグを埋めるために仮住まいを用意したり、現在の自宅の引渡しを猶予してもらい、新たな物件に引っ越すなど、様々な手段を駆使して売却を行わなければならないのです。

 

売却の流れを解説

本項ではいよいよ具体的にマイホーム売却の流れを解説してまいりますが、前項でのお話を踏まえて、最も手間の掛かる「買い換えありのパターン」をベースにご説明をさせていただくこととします。

不動産業者の選定

不動産の売却を考えた際に、まず起こすべきアクションは「売却依頼をする不動産業者(仲介業者)」を選定することです。

但し、街を歩いているだけでも多くの不動産業者の看板を目にしますし、ネットを開けばたくさんの不動産業者が「売物件募集」などの広告活動を行っていますので、「如何なる業者に依頼するべきか」で頭を悩ませる方も多いでしょう。

また、過去記事「不動産会社の選び方(購入時)について」でもお話しした通り、一口に不動産業者といってもその業態は様々となりますから、各業者の特色をしっかりと把握した上で依頼を行うべきです。

なお、不動産業者に「売却をしたい」との意思を伝えれば、『まずは売却価格査定報告書の作成から・・・』となるのが通常ですので、複数の業者に査定を依頼して「自分の物件売却に最も適していると思われる会社」を選ぶようにしましょう。

ちなみに、複数の業者の査定を受けた場合には「最も高額査定の会社を選ぶ」という方が多いようですが、これは少々危険な判断方法であるかと思います。

不動産業者の中には「とりあえず高額査定をすることで売却依頼を確保し、後から様々な理由を付けて価格を下げさせる」といった手法で業績を伸ばしている会社もありますから、『査定報告書の内容』や『担当者の不動産に対する知識の深さ』などを基準に選定を行うべきです。

※査定報告書の作成については、過去記事「不動産の査定方法について!」にて詳細な解説を行っております。

また、「複数の不動産業者に声を掛けるのは面倒」という方には今流行りの不動産売却一括査定サイトの利用がおすすめとなりますが、中には「利用すべきではないサイト」もありますので、サイト選びに迷った際には別記事「不動産一括査定のメリット・デメリットを解説いたします!」をご参考にしていただければ幸いです。

媒介契約の締結

売却依頼をする業者の選定が完了したら、次は不動産業者と売主の間で媒介契約を締結しなければなりません。

媒介契約とは「物件の売却(または購入)について、不動産業者が成約に向けて活動を行う旨」を定めた準委任契約であり、この契約こそが「仲介手数料発生の根拠」となりますから、売却依頼時には必ず取り交わされるものとなります。

なお、媒介契約には「一般媒介」「専任媒介」「専属専任媒介」の3種がありますが、売却依頼の場合には「専任媒介」または「専属専任媒介」となるはずです。(媒介契約の詳細については別記事「不動産媒介契約の種類と運用について解説!」をご参照ください)

そして、媒介契約の締結が完了すれば、いよいよ本格的な販売活動が開始されることになります。

買取業者への物件紹介

さて、本格的に販売活動が開始されるとなれば「購入を希望者する一般の方が物件を見に来る」というイメージが涌きますが、余程高額な売却希望価格を提示しない限り、まずは「建売分譲業者やマンション買取業者からの購入申し込みが入って来るパターン」が多いはずです。

このようなお話をすると、「えっ?一般のお客には物件を紹介しないの?」というお声も聞えて来そうですが、近年の建売業者やマンション買取業者の物件購入価格は、一般ユーザーの価格に迫るものがありますから、不動産業者が買うこと自体を問題視する必要はありません。

むしろ、一般の方が購入した場合には、後々「雨漏りした」「家が傾いている」などのクレーム(瑕疵の問題)に繋がるケースも少なくありませんので、価格的に納得がいくのであれば不動産業者に売ってしまうのも決して悪い話ではないのです。

そして、この段階で不動産業者への売却が不能であるとの判断になれば、いよいよ一般の方への販売活動が開始されることになります。

なお、「今住んでいる家が売れないと、新しい物件を買えない」という買い替えのお客様については、当然ながら入居を続けつつ購入希望者の内覧を受け付けるしかありませんので、その点は覚悟してください。

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一般の方に向けた販売活動の開始

一般の購入希望者から「物件を見たい」との反響があれば、売主は内覧に応じなければなりませんので、土日に外出するのであれば、なるべく留守番を残すようにしましょう。

また、お客さんを連れて来るのは「売却を依頼している業者」とは限りませんので、過度にお客に話しかけたり、物件に対するセールストークは控えるべきです。

そして、こうした案内を繰り返してお客が付けば、買付証明書(申込み書)が届けられ、具体的な売却条件等の打ち合わせに進んで行きます。

契 約

そして取引条件が整えば買い手と契約を締結することとなりますが、売買契約の詳細な流れのについては、以前に記した「売買契約の注意点」の記事をご参照いただければと思います。

なお、この段階で「自宅の引渡しの期限」が決まりますので、一刻も早く『購入物件を探す必要』が出てくる訳です。

購入物件発見

さて、自宅の引渡しの期限内に転居先の物件が見付かれば、今度は購入の売買契約に進むことになります。

但し、「自宅売却と物件購入のタイミングを合わせなければならない」ので、場合によっては欲しい物件を諦めざるを得ないケースもあります。

これは購入希望物件の引渡しが、自宅の引渡しより先行しなければならない際に見られる状況です。(例えば自宅の決済が3ヶ月後の予定なのに、購入物件側の売主が2ヶ月以内の決済を希望している場合など)

一方、これとは反対に「自宅売却の決済→新物件購入の決済」の順序であれば基本的には取引が可能となります。

ただ、自宅売却の決済を先行するということは、新たに購入する物件の決済が完了するまでの期間、住む場所がなくなってしまうことになりますので、場合によっては「仮住まい」が必要となる場合があるでしょう。

但し、その期間が「数日である」という場合には売却する住まいの買主との間で「物件の引渡し猶予の覚書」を交わして、自宅の引き渡しを待ってもらうという方法もあります。(引渡しを猶予してもらう場合でも、売買代金は先に受け取り、その資金で新たな物件の購入の決済を行います)

抵当権の抹消

前項にてお話した「売却物件と購入物件の引渡しスケジュール」がまとまれば、後は引渡しに向けての作業を淡々と進めて行きます。

まず最初にするべきは、現在住んでる家に抵当権の設定があるならば、これを抹消する手続きの依頼を「借入先の銀行」に対して行うことです。

住民票の移動と印鑑証明の取得

そして決済日が近付いて来たなら、新物件購入の際の登記費用の減税を受けるため、引っ越しに先行して住民票を移動しなければなりません。

但し、自宅売却の決済に際しては今の住所での印鑑証明が必要となりますので、住民票を移す前に必要な部数の印鑑証明を取得するようにしましょう。(印鑑証明の有効期限は3ヶ月となりますので、あまり早く取得するのはNGです)

住んでいる自宅の決済

自宅売却の決済日を迎えたなら、金融機関などに出向いて引渡しを行うこととなりますが、当日の流れの詳細については「決済の流れの記事」をご覧ください。

なお決済を行う場所については、原則、自宅の買い手がローンを利用する金融機関になるでしょう。

ちなみに本来であれば、この日に自宅の引渡しを終えるべきですが、購入物件の決済が後日である場合などには、「引渡し猶予の覚書」により得た猶予期間で、新居の決済日まで旧自宅にて生活を続けることになります。

新居の決済

そして購入先(新居)の決済が無事に完了すれば、ようやく引っ越しが可能となります。

但し、何かの事情で新居の決済・引渡しが予定通り行えない場合には、引渡し猶予を延長を依頼するしかありませんが、不可能な場合は仮住まいへと引っ越しをすることになるでしょう。

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売却の流れまとめ

さて以上が、物件売却時の流れとなります。

ここまでご説明してきた通り、「買い替えを伴うマイホームの売却」については複雑な手順を伴うため、トラブルが発生した場合にはかなり面倒な事態に発展する可能性がありますので、なるべくスケジュールに余裕を持った取引をするように心掛けましょう。

ではこれにて、「不動産売却の流れに関する知恵袋」を閉じさせていただきたいと思います。