不動産売買契約では、売買代金や引渡し日、手付金などの基本条件だけでは処理できない事項を「特約」として定めることがあります。
たとえば、売主が引渡しまでに建物を解体する、確定測量を行う、相続登記を完了する、越境について隣地所有者と取り決めを行うなど、その物件や取引に固有の条件を契約書へ落とし込むのが特約の大きな役割です。
しかし、特約は単に「○○するものとする」と書けばよいわけではありません。誰が、いつまでに、何を、どの費用負担で行うのか、さらに予定どおり実行できなかった場合にどう処理するのかまで考えておかないと、かえってトラブルの原因になることがあります。
この記事では、不動産売買契約書における特約の考え方や書き方について、実際の取引で使われる特約条項の例文を交えながら解説します。
特約で大切なのは難しい法律用語を使うことではなく、「当事者が何を約束したのか」を具体的にすることです。特に、期限・費用負担・実行できなかった場合の処理まで決めておくことが、後々のトラブル防止につながります。

不動産売買契約書の特約とは
不動産売買契約書には、売買代金、手付金、所有権移転、引渡し、契約解除、契約不適合責任など、取引の基本となる条項があらかじめ設けられています。
しかし、不動産は一つとして同じものがありません。土地の境界が確定していない、古家が残っている、相続登記が終わっていない、越境物が存在するなど、物件ごとに個別の事情があります。また、売主と買主の間で通常の契約条項とは異なる条件を取り決めることもあります。
こうした個別の取引条件を補足したり、契約書本文の内容を一部変更したりするために設けるのが特約です。
たとえば契約書本文では「現状のまま引き渡す」となっていても、特約で「売主は引渡しまでに残置物を撤去する」と定めれば、その部分については特約で定めた具体的な合意を前提に契約を履行することになります。
特約は当事者間の重要な合意ですが、法律に反する内容まで自由に定められるわけではありません。強行法規や公序良俗に反する内容のほか、売主・買主の属性によっては宅地建物取引業法や消費者契約法などによる制限を受ける場合があります。
売買契約書そのものの構成や基本条項については、不動産売買契約書の作り方について解説した記事で詳しくご紹介しています。
特約を書くときに押さえておきたい5つのポイント
不動産売買契約の特約を作成するときには、単に約束した内容を書くのではなく、「実際にその契約を履行するときに迷わない文章になっているか」という視点が重要です。
誰が何をするのかを明確にする
まず明確にしたいのが、誰がどのような義務を負うのかという点です。
たとえば「引渡しまでに建物を解体する」という内容だけでは、売主と買主のどちらが行うのか分かりません。「売主は、その責任と負担において建物を解体する」とすれば、義務を負う者と費用負担が明確になります。
一方、特約で定める内容によっては、必ず結果を実現する義務ではなく、一定の対応を行うことを求める場合もあります。たとえば隣地所有者から承諾書や覚書を取得するようなケースでは、相手方の協力が必要になるため、「取得する」と断定するのではなく、「取得に努める」「協議を行う」などの表現が適切なこともあります。
特約を作成するときは、「必ず○○する」という結果まで義務付けるのか、それとも「○○するために協議・交渉する」という対応義務にとどめるのかを意識することが重要です。特に第三者の承諾が必要な事項では、この違いが契約上の責任に大きく影響します。
期限を明確にする
何らかの作業を条件とする特約では、期限も重要です。「速やかに」「なるべく早く」といった表現ではなく、「本物件の引渡しまでに」「令和○年○月○日までに」など、できるだけ判断に迷わない表現にしておきます。
特に測量、解体、登記、許認可などは一定の時間が必要になるため、売買スケジュールとの整合も確認しておかなければなりません。
費用を誰が負担するのかを決める
解体、測量、登記、越境物の撤去などには費用が発生します。そのため、「売主の責任と負担において」「買主の負担において」など、費用負担についても明確にしておくと安心です。
「売主が手続きをする」と書かれていても、費用まで売主が負担するとは限らないという解釈が生じる余地を残さないことがポイントです。
実行できなかった場合の処理を決める
私が特約を作成する際に特に注意しているのが、この部分です。
たとえば、「売主は引渡しまでに確定測量を完了する」と定めても、隣地所有者が境界確認に応じてくれず、予定どおり測量を完了できないことがあります。
その場合、引渡しを延期するのか、買主が現状を了承してそのまま取引を続けるのか、それとも契約を解除できるのか。この部分が決まっていなければ、問題が発生した時点で改めて交渉することになります。
特約を作成するときには、「○○する」という約束だけではなく、「○○できなかった場合にはどうするか」まで考えることが重要です。特に第三者の協力や行政の許可などが必要な条件は、売主や買主だけでは実現できないことがあります。
契約書本文との関係を確認する
特約を追加するときには、契約書本文との矛盾にも注意が必要です。
本文と異なる条件を定めるのであれば、「売買契約書第○条の定めにかかわらず」など、どの条項を変更する特約なのかを明確にする方法もあります。
また、同じ事項について契約書、重要事項説明書、物件状況報告書などで異なる説明がされていないかも確認しておきたいところです。
特約に書けば何でも有効になるわけではない
売主と買主が合意して契約書へ記載したとしても、その特約が必ず有効になるとは限りません。
不動産売買では民法だけでなく、取引の形態によって宅地建物取引業法や消費者契約法などの規定が関係することがあるためです。
宅建業者が売主の場合は特に注意する
代表的なものが、売主が宅地建物取引業者で、買主が宅地建物取引業者ではない場合の契約不適合責任です。
宅地建物取引業法第40条では、目的物が種類または品質に関して契約内容に適合しない場合の売主の責任について、民法より買主に不利となる特約をすることが制限されています。ただし、責任を負うための通知期間について、物件の引渡しの日から2年以上とする特約は認められています。
したがって、個人間売買では可能な場合がある契約不適合責任の免責を、そのまま宅建業者売主の契約へ流用することはできません。
契約不適合責任については、契約不適合責任について詳しく解説した記事も参考にしてください。
この記事でご紹介する文章は、あくまで特約を考えるための参考例です。売主・買主の属性や物件の状態、契約書本文との関係によって適切な文言は変わるため、実際の契約では個別の取引内容に合わせて調整する必要があります。
不動産売買契約で使われる特約条項の例文
ここからは、不動産売買の実務で想定される代表的なケースについて、特約条項の参考例をご紹介します。
以前のこの記事では特約の例文を並べる形でご紹介していましたが、今回は「なぜその特約が必要なのか」「何に注意すべきなのか」についても合わせて解説していきます。
登記を指定司法書士等へ依頼する場合
本物件の所有権移転等に関する権利登記手続きについては売主指定の司法書士に依頼するものとし、表示に関する登記手続きが必要となる場合には、売主指定の土地家屋調査士に依頼するものとします。
建売住宅などでは、売主が普段から取引している司法書士や土地家屋調査士を指定するケースがあります。関係者同士が普段から連携している場合には、必要書類の確認や決済日までの段取りを進めやすく、取引全体が円滑になるというメリットがあります。
また、継続的に依頼している専門家であれば、登記費用や手続きにかかるコストを抑えられる場合もあります。ただし、必ずしも指定された専門家の方が安いとは限らないため、費用負担や報酬額については事前に確認しておくと安心です。
なお、司法書士が行う所有権移転などの権利に関する登記と、土地家屋調査士が行う建物表題登記などの表示に関する登記では業務が異なるため、まとめて「登記は指定業者に依頼する」とするよりも、必要に応じて整理して記載した方が分かりやすいでしょう。
周辺環境について買主が確認して購入する場合
買主は、本物件周辺の交通量、騒音、臭気、近隣施設その他の周辺環境を現地にて確認した上で本契約を締結するものとします。
周辺環境について買主自身にも確認してもらったことを契約書に残しておくための特約です。
ただし、このような包括的な文章を書いたからといって、売主や仲介会社が説明すべき重要な事実まで説明不要になるわけではありません。
既に把握している騒音、臭気、越境、近隣施設など、購入判断に影響する可能性がある具体的な事項については、「周辺環境を確認済み」という一文だけで処理せず、内容を具体的に記載しておく方がトラブル防止には有効です。
未完成物件で工事が遅延する可能性がある場合
天候不順、行政機関による指導その他売主の責めに帰することのできない事情により建築工事に遅延が生じる場合、売主はその事情および変更後の引渡し予定日を速やかに買主へ通知し、売主・買主は引渡し時期について協議するものとします。
未完成物件では、天候や行政手続きなどにより予定していた工期が延びる可能性があります。
ただし、「事情があれば売主は無期限に引渡しを延期できる」という内容では買主の負担が大きくなるため、どのような場合に適用するのか、延期が長期化した場合をどうするのかまで検討しておくことが大切です。
建物仕様の変更が生じる可能性がある場合
売主は仕様書および図面に基づき本物件を完成させるものとします。ただし、施工上やむを得ない事情等により軽微な変更を行う場合があります。なお、建物の利用または価値に重要な影響を及ぼす変更を行う場合には、売主は事前に買主へその内容を説明するものとします。
未完成住宅では、資材の供給状況や施工上の事情、近隣との調整などにより、当初の計画から変更が必要になる場合があります。
一方で「売主は自由に仕様を変更できる」と読める特約ではトラブルになりかねません。「軽微な変更」と「重要な変更」を分けて考えておく方が安全でしょう。
買主による仕様変更を受け付けない場合
本物件は未完成ですが、外壁材、内装材、設備機器、壁紙、外構その他の仕様について、買主による変更または指定を行うことはできないものとします。
完成前の建売住宅を販売すると、「まだ工事前なら壁紙を変えてほしい」「設備を別の商品にしてほしい」といった要望が出ることがあります。
注文住宅ではなく、あらかじめ仕様を決めた建売住宅として販売するのであれば、仕様変更ができないことを契約時に明確にしておく方法があります。
テレビアンテナ等を売買対象設備に含めない場合
本物件にはテレビアンテナおよびその設置工事は含まれておらず、テレビ視聴に必要となる設備の設置およびこれに要する費用は買主の負担とします。
建物の販売価格に含まれると思っていた設備が、実際には含まれていなかったというトラブルを防ぐための特約です。
テレビアンテナに限らず、照明器具、カーテンレール、エアコン、網戸などについても、物件ごとに「付いていると思っていた」という認識違いが起きやすいため、売買対象となる設備を明確にしておくことが大切です。
境界付近へ工作物を設置しない取り決めがある場合
本物件と隣接地との境界付近については、双方の駐車車両の乗降等に配慮する目的から工作物を設置しない旨の取り決めがあります。買主は当該内容を確認し、本物件を購入するものとします。
分譲地などでは、隣り合う駐車スペースを使いやすくするため、境界部分にブロック塀などを設けない取り決めがされているケースがあります。
ただし、元の所有者同士の合意が当然に将来の所有者へ引き継がれるとは限りません。既存の覚書等がある場合には、その内容、承継条項の有無、現在の隣地所有者との関係なども確認した上で特約へ反映させる必要があります。
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買主が建物を解体し滅失登記を行う場合
本物件上に存する建物については、買主が引渡し後に解体する予定であるため、当該建物の所有権移転登記は行わず、解体後に建物滅失登記を行うものとします。建物滅失登記その他これに必要となる手続きについて、売主の書類提出または協力が必要となる場合には、売主はこれに協力するものとします。
古家付き土地などでは、土地と建物を売買の対象としながら、買主が引渡し後すぐに建物を解体する予定となっているケースがあります。
この場合、建物について一度買主名義へ所有権移転登記を行った後に滅失登記をするのではなく、所有権移転登記を行わず、解体後に滅失登記を行う取り扱いとすることがあります。
そのため、売買契約の段階で建物の所有権移転登記を行わないこと、買主が解体を行うこと、滅失登記に必要な書類や手続きについて売主が協力することなどを整理しておくことが重要です。
なお、建物の所有権そのものがいつ買主へ移転するのかという問題と、所有権移転登記を行わないことは別の問題です。契約書本文に定める所有権移転時期や引渡しに関する条項と矛盾しないよう、特約との整合を確認しておく必要があります。
建物の登記が残っている場合の対応については、建物滅失登記をしていない土地取引について解説した記事も参考にしてください。
売主が古家を解体して更地で引き渡す場合
売主は、自己の責任と負担において本物件上に存する建物を引渡しまでに解体・撤去し、更地の状態で買主へ引き渡すものとします。また、売主は建物滅失登記に必要な手続きを行うものとします。
いわゆる「更地渡し」の特約です。
ただし、「建物を解体する」という一文だけでは、物置、庭石、植栽、ブロック、地中基礎などをどこまで撤去するのかが曖昧になる場合があります。
残してよい物と撤去する物がある場合には、その範囲も具体的に定めておくと安心です。
農地法上の手続きが必要な場合
本件売買について農地法上の許可、届出その他必要な手続きがある場合、売主・買主はこれに必要な手続きへ協力するものとします。なお、所定の期日までに本件売買に必要となる手続きを完了できず、本契約の履行ができないことが確定した場合の取り扱いについては、売主・買主協議の上、本契約を解除できるものとします。
登記上の地目が農地となっている土地などでは、売買や宅地利用に際して農地法上の許可・届出等が必要になることがあります。
農地については、市街化区域かどうか、所有権移転なのか転用なのかなどによって必要な手続きが異なります。そのため、「必ず農地転用をして宅地へ地目変更する」と一律に決めるのではなく、対象物件に必要な手続きを確認した上で特約を作成する必要があります。
詳しくは農地転用について解説した記事をご覧ください。
相続登記が終わっていない場合
本物件について必要な相続登記が未了であるため、売主は自己の責任と負担において、残代金支払いおよび所有権移転までに買主への所有権移転登記に必要となる相続登記その他の手続きを完了するものとします。
相続した不動産を売却する場合、登記名義が亡くなった所有者のままになっていることがあります。
この状態のままでは買主への所有権移転登記を行うことができませんので、決済までに必要な相続登記を完了できるか確認しておかなければなりません。
また、遺産分割協議が整っていないなど、予定していた相続登記を完了できない可能性がある場合には、期限までに完了しなかったときの契約の取り扱いも定めておくとよいでしょう。
確定測量を行って引き渡す場合
売主は、自己の責任と負担において本物件の確定測量を行い、引渡しまでに買主へ確定測量図および境界確認に関する書類を交付するものとします。
土地売買では、売主が引渡しまでに確定測量を行うことを条件とするケースがあります。
ただし、測量は売主だけで完結するものではありません。隣地所有者などの立会いや確認が必要となる場合があり、相手方の協力が得られず予定していた期日までに完了できないこともあります。
そのため、測量完了を売買条件とするのであれば、「引渡日を延期する」「一定の期限までに完了しなければ解除できる」など、完了できなかった場合についても検討しておくことが重要です。
測量で越境物や共有物が確認された場合
確定測量その他の調査により本物件と隣接地との間に越境物または共有物が確認された場合、売主はその内容を買主へ説明するとともに、必要に応じて隣地所有者との間でその取り扱いに関する書面を取り交わし、買主へ交付するものとします。
ブロック塀、軒、雨樋、配管、樹木などが境界を越えているケースは珍しくありません。
その場合、引渡しまでに撤去するのか、将来建替えを行う際に是正するのか、現在の状態を維持するのかなど、実際の状況に応じた取り決めが必要になります。
なお、覚書を作成すれば越境問題そのものが解消するわけではありません。覚書は現在の状態や当事者間の取り決めを確認する手段ですので、将来の所有者への承継も含めて内容を検討する必要があります。
念書や覚書の考え方については、念書と覚書について解説した記事も参考になります。
私道や近隣との覚書を買主へ承継する場合
本物件については、近隣所有者、私道所有者その他の関係者との間で別紙記載の覚書・合意書等が存在します。買主はその内容について説明を受け、承継が必要となる事項については、売主の地位を承継するものとします。
私道の通行・掘削、越境、共有塀、排水管などについて、現在の所有者と近隣所有者との間で覚書や合意書が交わされている場合があります。
このような書面がある場合には、単に「覚書があります」と説明するだけではなく、原本または写しを買主へ提示し、どの内容を引き継ぐ必要があるのかを確認しておくことが重要です。
ただし、覚書に「第三者へ承継する」と記載されているからといって、すべての内容が当然に次の所有者へ引き継がれるとは限りません。合意の内容や当事者、権利・義務の性質によって扱いが異なるため、必要に応じて近隣所有者や私道所有者と改めて確認することも検討します。
重要事項説明書等に記載した容認事項がある場合
買主は、重要事項説明書、物件状況報告書および本契約書に記載された本物件の現況その他の容認事項について説明を受け、その内容を確認した上で本契約を締結するものとします。
従来は、「重要事項説明書備考欄に記載された事項について買主は承諾する」といった包括的な特約もよく使われてきました。
しかし、重要な問題ほど「備考欄の内容をすべて了承した」という一文だけで済ませるのではなく、できるだけ具体的に内容を記載しておく方がよいでしょう。
たとえば、「隣地建物の軒が本物件へ約○cm越境している」「本物件前面に地域のゴミ集積所が設置されている」など、買主の購入判断に影響する可能性がある事項は、対象を特定して説明しておく方が後日の認識違いを防ぎやすくなります。
重要事項説明書については、不動産重要事項説明書の作成について解説した記事も参考にしてください。
「容認事項」は具体的に書く
不動産売買契約の特約では、「買主はこれを了承する」「買主は現況を容認する」といった文章を使用することがあります。
こうした容認事項で最も重要なのは、買主が何を了承したのか分かるようにすることです。
たとえば雨漏りが発生している建物について、単に「買主は建物の現況を了承する」とするよりも、雨漏りが確認されている箇所や状況、売主が修理を行うのか現状のまま引き渡すのかなどを具体的に記載した方が、契約内容は明確になります。
これは越境、擁壁、地中埋設物、設備の故障、近隣との取り決めなどについても同じです。
問題点を具体的に説明した上で、その状態を前提として売買することと、「何が起きても売主は責任を負わない」と包括的に免責することは意味が異なります。特約を作るときには、何が契約の前提となっているのかをできるだけ具体的にすることが重要です。
実務では「履行できなかった場合」が重要
特約を作る際には、約束した内容そのものに目が向きがちですが、実務ではむしろ予定どおりに進まなかった場合の処理が重要になります。
たとえば次のようなケースです。
- 隣地所有者が境界確認に応じず、確定測量が完了しない
- 相続人の協議がまとまらず、相続登記が完了しない
- 行政上必要な許可を取得できない
- 越境物の撤去について隣地所有者の同意を得られない
- 解体工事が予定より遅れ、引渡日に間に合わない
こうした問題は、誰かが約束を破ったというより、第三者や行政手続きなどの事情によって発生することもあります。
そこで「できなければ違約」と単純に決めるのではなく、引渡し期限を延長するのか、条件を変更して契約を続けるのか、一定の場合には双方違約金なしで解除できるのかなど、その案件に合った出口を考えておく必要があります。
「売主は○○する」という文章を作ること自体はそれほど難しくありません。本当に悩むのは、それができなかった場合です。第三者の承諾が必要な条件については、最初から失敗した場合の処理までセットで考えておくと、契約後の調整がかなり楽になります。
特約の例文をそのままコピーしない
ここまで多くの特約例をご紹介しましたが、実際の契約書へそのままコピーして使用することはおすすめできません。
不動産売買では、同じ「古家付き土地」「越境のある土地」「相続物件」であっても、物件の状態や当事者の希望、契約書本文の内容が異なります。
特に確認したいのは次の点です。
- 売主・買主のどちらが義務を負うのか
- いつまでに履行するのか
- 費用は誰が負担するのか
- 何をもって履行完了とするのか
- 第三者の協力や行政手続きが必要か
- 履行できなかった場合にどうするのか
- 契約書本文や重要事項説明書と矛盾していないか
- 法律上制限される特約になっていないか
取引条件が複雑な場合や、特約の有効性・法律上の責任について判断が難しい場合には、不動産取引に詳しい弁護士などの専門家へ確認することも検討した方がよいでしょう。
第三者のためにする契約などには別の特約が必要になる
一般的な売買とは異なる取引方法を利用する場合には、それに合わせた特約が必要になることもあります。
たとえば、いわゆる「中間省略」と呼ばれる取引では、現在は第三者のためにする契約などを利用して、最初の売主から最終取得者へ直接所有権を移転する方法が用いられることがあります。
こうした取引では通常の売買とは契約関係が異なるため、一般的な特約例をそのまま利用することはできません。詳しくは不動産の中間省略について解説した記事をご覧ください。
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不動産売買契約書の特約まとめ
不動産売買契約書の特約は、基本となる契約条項だけでは処理できない、その物件や取引固有の条件を明文化するための重要な部分です。
特約を作る際には、誰が、何を、いつまでに、どの費用負担で行うのかを明確にし、さらに予定どおり履行できなかった場合の処理まで考えておくことが重要です。
また、「買主は了承する」「売主は責任を負わない」といった抽象的な文章だけに頼らず、問題となっている事項をできるだけ具体的に記載することで、売主・買主双方の認識を合わせやすくなります。
売買契約では全く同じ条件の取引はありません。ひな形や例文を出発点としながら、その物件の調査結果と当事者間で合意した内容を一つずつ契約書へ落とし込んでいくことが、特約作成の基本と言えるでしょう。
なお、契約締結までの全体的な流れや確認ポイントについては、不動産売買契約の注意点と流れを解説した記事も合わせてご覧ください。







