賃貸物件を借りた経験のある方は多いと思いますが、物件を内見してから実際に鍵を受け取るまでの間に、不動産会社がどのような業務を行っているのかをご存じの方は意外に少ないのではないでしょうか。
賃貸契約では、入居希望者が申込書を提出した後も、入居審査、保証会社への審査依頼、大家さんへの確認、契約条件の調整、重要事項説明書や賃貸借契約書の作成、入金確認など、様々な手続きが進められています。
また近年では、オンラインによる入居申込みやIT重説、書面の電子化なども普及し、以前とは契約の進め方も大きく変わってきました。
そこで今回は、「賃貸契約の流れとは?内見・申込み・入居審査・契約・鍵渡しまで実務経験をもとに解説」と題して、借主側から見える手続きだけではなく、不動産会社や管理会社が裏側で何をしているのかについても詳しく解説していきたいと思います。
賃貸契約は、大きく分けると「物件探し・内見 → 入居申込み → 入居審査 → 契約条件の確定 → 重要事項説明・契約 → 初期費用の支払い → 鍵渡し」という流れで進みます。

賃貸契約から入居までの流れ
まずは賃貸契約から入居までの大まかな流れを確認しておきましょう。
- 物件を探す
- 内見する
- 入居申込みを行う
- 入居審査を受ける
- 契約条件・初期費用を確認する
- 重要事項説明を受ける
- 賃貸借契約を締結する
- 初期費用を支払う
- 鍵を受け取る
- 入居開始
入居希望者から見れば比較的シンプルな流れですが、その裏側では客付け業者・管理会社・大家さん・保証会社などが連携して手続きを進めているケースも少なくありません。
賃貸契約では2社の不動産会社が関わることがある
賃貸契約の流れを理解する上で知っておきたいのが、賃貸仲介では「元付け業者」と「客付け業者」という2つの立場が存在することです。
簡単に説明すれば、
- 元付け業者……大家さん側の不動産会社。管理会社が兼ねていることが多い
- 客付け業者……入居希望者に物件を紹介し、内見や申込みをサポートする不動産会社
という関係になります。
もちろん、管理会社が自社で入居希望者を見つけた場合には1社だけで契約が完結することもあります。
一方、他社が入居希望者を連れてきた場合には、客付け業者と管理会社が連携して契約を進めることになります。
この仕組みについては、こちらの記事でも詳しく解説しています。
①物件探しと内見
現在のお部屋探しは、SUUMOやHOME’S、at homeなどの不動産ポータルサイトを利用して、インターネット上で物件を探すところから始まるケースが一般的でしょう。
気になる物件が見つかったら、不動産会社へ問い合わせを行い、空室状況や内見可能日などを確認します。
ここで客付け業者は、物件を管理している会社などに連絡し、
- 現在も募集中であるか
- 既に申込みが入っていないか
- 内見が可能か
- 鍵をどのように手配するか
などを確認します。
鍵の手配方法も変わってきた
以前は管理会社に電話を掛け、名刺をFAXで送信して鍵の所在を教えてもらうという方法もよく使われていました。
もちろん現在でも、このような方法で内見を受け付けている管理会社は存在します。
一方で近年では、業者専用の内見予約システムから予約を行い、オンライン上で鍵の場所やキーボックスの暗証番号を確認できるケースも増えています。
客付け業者にとって「内見しやすい物件」であることは意外に重要です。鍵が現地にある物件と、管理会社まで鍵を取りに行かなければならない物件とでは、案内のしやすさが大きく異なります。
②入居申込み
内見した物件を気に入ったら、次は入居申込みへ進みます。
申込みの際には、一般的に次のような情報を求められます。
- 氏名・生年月日・住所
- 勤務先
- 勤続年数
- 年収
- 入居予定者
- 緊急連絡先
- 連帯保証人を立てる場合はその情報
また、運転免許証やマイナンバーカードなどの本人確認書類を求められることも一般的です。
現在はオンライン申込みも増えている
以前は、管理会社ごとに異なる申込書をFAXやメールで取り寄せ、紙に記入して返送する方法が一般的でした。
現在でも紙やPDFを利用する会社はありますが、オンライン上のフォームへ直接入力するWeb入居申込みを導入している不動産会社も増えています。
スマートフォンから本人情報や勤務先、緊急連絡先などを入力し、そのまま保証会社の審査へデータを連携できる仕組みもあります。
入居申込みは、通常「賃貸借契約の締結」とは別の手続きです。ただし、申込後のキャンセルを巡ってトラブルになることもありますので、申込み前に契約条件や初期費用、キャンセル時の取扱いなどを確認しておくと安心です。
③入居審査
申込みが入ると、管理会社側では入居審査を開始します。
実務では、
- 申込内容の確認
- 本人確認
- 勤務先・収入等の確認
- 保証会社への審査依頼
- 大家さんへの報告・承認
などを並行して進めていきます。
どの項目を重視するかは、大家さんや管理会社、保証会社などによって異なります。
また現在では、契約条件として家賃保証会社への加入を必須としている物件も珍しくありません。
保証会社についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
賃貸保証会社とは?仕組みや保証内容を管理会社の実務目線で解説
大家さん側から見た入居審査については、こちらの記事も参考にしてください。
連帯保証人を立てる場合
保証会社ではなく個人の連帯保証人を立てる契約や、保証会社と連帯保証人の双方を求める契約もあります。
連帯保証人を立てる場合には、保証意思の確認や必要書類の提出などを求められることがあります。
なお、2020年4月に施行された改正民法により、賃貸借契約などにおいて個人が根保証を行う場合には、保証する金額の上限である「極度額」を定める必要があります。
国土交通省の「賃貸住宅標準契約書」にも、連帯保証人型について極度額を記載する欄が設けられています。
昔の賃貸契約では「連帯保証人+実印+印鑑証明書」という形が非常に一般的でした。しかし現在は保証会社を利用する契約が増えており、保証の取り方も物件や管理会社によってかなり異なっています。
④審査通過後の契約準備
入居審査を通過すると、いよいよ契約の準備に入ります。
管理会社では主に、
- 契約開始日の確定
- 初期費用の計算
- 賃貸借契約書の作成
- 重要事項説明書の作成
- 保証会社との契約手続き
- 火災保険等の手配
- 鍵の準備
などを進めていきます。
そして客付け業者や入居者に対して、初期費用の明細や必要書類などを案内します。
契約時の必要書類は物件によって異なる
契約の際に必要となるものは管理会社や契約内容によって異なりますが、例えば次のようなものがあります。
- 本人確認書類
- 住民票
- 収入証明書類
- 勤務先を確認できる書類
- 口座振替に必要な情報
- 連帯保証人関係の書類
- その他、管理会社から指定された書類
最近では契約書への電子署名やWeb口座振替受付なども増えているため、必ずしも印鑑や通帳を持参するとは限りません。
必要書類については、管理会社から届いた案内を確認するのが確実です。
⑤初期費用を確認・支払う
契約前後には、敷金・礼金・前家賃・仲介手数料・保証会社の保証料・保険料などの初期費用を支払います。
一般的には管理会社などから精算書が発行され、指定された期日までに振込みを行う形となります。
この際に重要なのは、総額だけを見るのではなく、何の費用がいくら掛かっているのかを確認することです。
不明な項目があれば、支払う前に不動産会社へ確認しておきましょう。
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⑥重要事項説明を受ける
賃貸借契約を締結する前には、宅地建物取引士から重要事項説明を受けます。
重要事項説明では、物件そのものの内容だけではなく、
- 契約期間
- 賃料や共益費
- 敷金などの精算
- 契約解除に関する事項
- 設備の内容
- 管理会社
- その他、法令上説明が必要となる事項
などについて説明を受けます。
重要事項説明書について詳しく知りたい方はこちらもご覧ください。
IT重説にも対応できる
現在では、一定の要件を満たせば、パソコンやスマートフォンなどを使用してオンラインで重要事項説明を受ける「IT重説」も利用できます。
さらに2022年5月18日からは宅地建物取引業法の改正により、重要事項説明書や契約締結時書面などについて、相手方の承諾など所定の要件を満たした場合には電磁的方法による提供も可能となっています。
つまり現在では、物件探しから申込み、重要事項説明、契約までの多くをオンラインで進められるケースもあるということです。
国土交通省「ITを活用した重要事項説明及び書面の電子化について」
⑦賃貸借契約を締結する
重要事項説明を受け、契約条件に問題がなければ賃貸借契約を締結します。
契約書では特に、
- 賃料・共益費
- 契約期間
- 更新に関する条件
- 解約予告期間
- 禁止事項
- 修繕に関する負担
- 退去時の原状回復
- 特約事項
などをよく確認しておく必要があります。
賃貸借契約書についてはこちらの記事でも詳しく解説しています。
契約書や重要事項説明書に分からない内容があれば、そのまま署名・契約せず、不動産会社へ確認してください。特に退去時の費用負担や短期解約違約金などの特約は、後々のトラブルにつながりやすい部分です。
⑧火災保険や保証会社の手続きを行う
賃貸契約では、火災保険などへの加入を契約条件としている物件も多くあります。
賃貸住宅向けの保険には、自分の家財を補償する家財保険のほか、大家さんに対する損害賠償責任に備える「借家人賠償責任保険」などが含まれていることがあります。
借家人賠償保険についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
保証会社を利用する場合には、賃貸借契約とは別に保証委託契約を締結することもあります。
⑨鍵の引渡し
契約手続きや必要な支払いが完了すると、いよいよ鍵の引渡しです。
ただし、契約手続きをした日と鍵を受け取れる日は必ずしも同じではありません。
例えば10月1日から賃貸借契約が開始する物件について、9月25日に契約手続きを済ませたとしても、通常は契約開始日より前に自由に部屋を使用することはできません。
そのため、契約開始日や管理会社から指定された日以降に鍵を受け取ることになります。
なお、鍵の受取り方法についても、
- 管理会社の店舗で受け取る
- 仲介会社で受け取る
- 現地で受け取る
- スマートロック等を利用する
など、物件によって異なります。
管理会社では契約の裏側で何をしている?
ここまで入居者から見た流れを中心に解説してきましたが、管理会社側ではその裏側でかなり多くの作業を行っています。
例えば申込みが入っただけでも、
- 申込書の内容確認
- 不足情報の確認
- 保証会社への審査依頼
- 大家さんへの申込み報告
- 入居開始日の調整
- 募集停止の手続き
などが必要になります。
さらに審査通過後には、
- 契約条件の最終確認
- 初期費用の精算
- 重要事項説明書の作成
- 賃貸借契約書の作成
- 保証会社との連携
- 保険手続き
- 契約金の入金確認
- 鍵の準備
- 大家さんへの契約報告
といった作業が一気に動き始めます。
入居者から見ると「申込みをして審査結果を待っているだけ」の数日間でも、管理会社側では保証会社・大家さん・仲介会社との間で様々な確認や調整を行っています。申込みから契約までにある程度の日数が必要になるのは、こうした裏側の作業があるためです。
賃貸契約は昔と比べてかなり変わった
私が不動産実務に携わり始めた頃と比べても、賃貸契約の進め方は大きく変化しています。
以前は、
- 電話で空室確認
- 名刺をFAX
- 紙の申込書をFAX
- 契約書に押印
- 店舗で重要事項説明
- 銀行の口座振替用紙へ記入・押印
といった手続きが当たり前でした。
もちろん現在でもこうした方法を利用している会社はありますが、一方では、
- Webによる内見予約
- オンライン入居申込み
- 保証会社へのデータ連携
- IT重説
- 契約書等の電子交付
- 電子署名
- Web口座振替登録
などを利用する不動産会社も増えています。
ただし、すべての不動産会社が同じ仕組みを導入しているわけではありません。
賃貸業界はデジタル化が進む一方で、紙・FAX・印鑑を使った従来型の業務もまだ残っており、新旧の手続きが混在しているのが現在の実務といえるでしょう。
賃貸契約前に借主が確認しておきたいこと
最後に、入居者の立場で契約前に確認しておきたい項目をまとめておきます。
- 毎月支払う賃料・共益費等の総額
- 初期費用の内訳
- 契約開始日
- 更新料・更新事務手数料
- 解約予告期間
- 短期解約違約金の有無
- 保証会社の初回保証料・更新料
- 火災保険等の費用
- 退去時の原状回復に関する特約
- 禁止事項
- 鍵の受取り方法
特に契約書の「特約」には、その物件独自のルールが記載されていることがあります。
本文だけではなく、特約部分までしっかり確認した上で契約することをおすすめします。
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賃貸契約の流れまとめ
今回は、賃貸契約の流れについて、不動産会社側の実務も交えながら解説してきました。
大まかな流れは、
物件探し・内見 → 入居申込み → 入居審査 → 契約準備 → 重要事項説明 → 賃貸借契約 → 初期費用の支払い → 鍵渡し → 入居
となります。
入居者から見ると比較的シンプルな手続きに見えますが、その裏側では客付け業者・管理会社・大家さん・保証会社などが連携しながら様々な作業を進めています。
また現在では、Web申込みやIT重説、電子契約なども普及し始めており、賃貸契約の形は以前よりかなり多様になりました。
だからこそ「一般的にはこうである」と決めつけず、申込みを行った物件について、いつまでに・何を用意し・どのような方法で契約するのかを担当する不動産会社に確認することが重要です。
これからお部屋を借りる方はもちろん、賃貸物件を所有する大家さんや、これから不動産業界で働こうと考えている方にも、本記事が賃貸契約の全体像を理解する参考になれば幸いです。







