賃貸物件の運用をする大家さんにとって、切っては切れないのが「不動産会社(管理会社)とのお付き合い」となります。

物件の管理業務を行い、空室にお客様を付けてくれる管理会社は非常に有り難い存在であるとは思いますが、実際に契約の段階になると、

お客様(入居希望者)との間にもう1社別の不動産会社が入っていたり、「礼金を1ヶ月分増やして欲しい」との要望を出して来たりと、大家さんの立場からすると『いま一つ理解できない部分』もあるはずです。

そこで本日は、一般の方々にはなかなか全貌が見えて来ない賃貸仲介の仕組みについてお話ししてみたいと思います。

では、不動産賃貸のシステムについての知恵袋を開いてみましょう。

賃貸仲介の仕組み

 

元付け業者・客付け業者

では早速、「賃貸仲介の仕組み」についてお話を始めたいところですが、これをご理解いただく上で欠かすことのできない「元付け業者」「客付け業者」という用語についてのご説明を先行させていただきたいと思います。

元付け業者

元付け業者とは、物件を所有するオーナー様側の不動産業者となります。

また、物件の管理(契約管理・入金管理等)を任されていることから、「管理会社」と呼ばれることも多いですから、『元付け業者=管理会社』と考えていただいて結構です。

さて、元付け業者が大家さんから入居者の新規募集の依頼を受けた場合には、自らの手持ちのお客様(現在お部屋を探しているお客様)へ物件を紹介することもありますが、「管理している全ての物件の空室を、自分のお客様だけで満室にする」のは流石に無理があります。

そこで、管理会社はレインズ・アットホームと呼ばれる情報媒体(不動産屋業者同士が物件情報を共有する媒体)に空室情報を掲載し、他の不動産業者から入居希望者を募ることになるのです。

なお、成約した際の報酬については『手持ちのお客様で決めた場合(管理会社が自力で決めた場合)』には入居者からの「仲介手数料」とオーナーさんからの「広告宣伝費」の計2ヶ月分(業者によっては広告宣伝費を受け取らないケースもあり)を得ることとなり、

『他の不動産業者がお客様を連れて来たケース(情報共有媒体にて他の不動産業者の力を借りた場合)』では、広告宣伝費のみ1ヶ月分のみを大家さんから頂くことになるのです。(お客様を連れてきた客付け業者は、お客様より1ヶ月分の仲介手数料を貰う)

ちなみに、元付け業者は「物件を管理している立場」ですので、契約の締結に当たっては賃貸借契約書や重要事項説明書の作成から、契約の締結、借家人賠償保険・賃貸保証会社への加入手続きまで、ほぼ全ての業務を行うこととなります。

客付け業者

これに対して客付け業者は、レインズやアットホームなどに掲載された空室情報を基に、お部屋探し中のお客様に対して物件を紹介する入居者側の不動産業者となります。

よって、元付け業者が自力でお客様を見付けて成約した場合には、客付け業者の出番はありません。

一方、元付け業者が入居希望者者を発見できず、客付け業者が介入することとなった賃貸借契約においては、元付け業者・客付け業者の2社による『共同仲介』という形式にはなりますが、お客様が借りる意思を固めた後は『殆ど行う業務がないのが客付け業者の特色』となります。

※この段階での客付け業者の業務といえば、元付け業者の指示に従って必要書類や契約金の金額をお客様に伝えた上、「契約日に管理会社に行って、手続きを済ませてください」とお知らせする程度です

ちなみに成約時の報酬については既にお話しした通り、入居者から頂く仲介手数料1ヶ月分となるのが通常でしょう。

 

このように、物件を管理する会社(元付け業者)と、お客様を連れて来る会社(客付け業者)が、時として立場を入替えながら、物件の成約を目指すのが賃貸仲介の大まかなシステムとなります。

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実務上の客付け業者・元付け業者の関係

ここまでの解説にて基本的な「元付け業者・客付け業者の関係性」については、ご理解をいただけたことと思いますが、実務となれば状況はもう少し複雑化するものです。

例えば不動産業者間でよく見られるやり取り一つに、客付け業者から元付け業者に対して、「本来の礼金に1ヶ月分上乗せして、お客様に物件を紹介してよいか?」という問い合わせとなります。

一般の方が聞くと「一体何のお話だろう?」と首を傾げてしまいそうですが、この『礼金積み増し』には以下のような意味があるのです。

本来であれば、客付け業者はお客様から頂く仲介手数料1ヶ月分のみが報酬となるのですが、中には「売り上げUPのために、大家さんからも広告宣伝費が欲しい」という業者が存在します。

そしてこうした業者は「本来の募集条件が礼金1ヶ月」の物件を、入居希望者には『礼金2ヶ月』として紹介し、成約後に「礼金1ヶ月分を広告費宣伝費」として頂いてしまうという訳です。

なお、このケースでは入居希望者から一度大家さんに2ヶ月分の礼金が振り込まれ、大家さんから客付け業者に1ヶ月が振込まれることになるでしょう。(振込みを元付け業者が代行する場合もありますが)

また近年増えているのが、オーナー様が自主的に広告宣伝費を客付け業者に支払うパターンです。

そしてこのケースにおいては、募集中の物件が成約となった際に「客付け業者・元付け業者」の両方へ大家さんが広告宣伝費を支払うこととなります。

ちなみに、このようなお話をすると「どうして、そんなもったいないことを?」と疑問に思われるかもしれませんが、

客付け業者の立場になってみれば「仲介手数料1ヶ月分しかもらえない物件」よりも、『仲介手数料と広告宣伝費の合計2ヶ月が貰える物件』を優先的にお客様へご紹介するのは当たり前のことですよね。

よって、「なかなか借り手が付かない物件」や「競合物件が多い地域」においては、元付け・客付け両社に広告費を支払うこの手法は、絶大な効果を上げる募集テク二ックとなっているのです。

なお、この手法を行う際に客付け業者に支払う広告宣伝費の金額は1ヶ月賃料の「50%」「100%」「200%」など物件により様々(当然、報酬が高い方が効果的)であり、報酬の呼び名も広告宣伝費ではなく「AD(エーディー)」と称されることが多いでしょう。

但し、宅地建物取引業法上では「オーナー様と入居者希望者の間に何社不動産業者が入ろうとも、トータルで1ヶ月分の仲介手数料しかもらってはいけない」というのが本来のルールです。(居住用物件の場合)

更に広告宣伝費に関しては「実際に掛かった実費(チラシを配布した費用等)のみが認められる」ことになっていますので、本来のルールと実務の間には「かなりの隔たり」が存在していることをご理解ください。

 

賃貸仲介の仕組みを不動産投資に活かす!

これまでの解説をお読みいただければ、賃貸仲介の仕組みについては「ほぼご理解いただいた」と考えてよろしいかと思います。

そして実際に収益物件の運用を行う際には、こうした賃貸仲介のシステムに関する知識をフルに活かすことが重要です。

例えば、なかなか空室が埋まらない際には「大家さんから積極的にADを出す提案をしてみる」という方法もありますし、管理会社に入居者募集の依頼をする段階から「礼金の積み増しは自由にやってよい」と伝えておけば、スムーズに募集業務を進めてもらうことができるでしょう。

更には「元付け業者の置かれた立場」を理解して上げることで、他の大家さんには難しい『管理会社との親密なリレーション作り』も可能となるはずですから、その良好な関係を維持していけば「実は所有する収益物件を売りたがっている大家さんがいる・・・」などの情報も優先的に流してもらえる可能性だってあるのです。

このように賃貸仲介の仕組みを理解しておくことは、不動産投資を成功に導くための常に重要な要素となりますので、この機会に是非知識としてインプットしておいていただくことをおすすめいたします。

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賃貸仲介まとめ

さて、ここまでが賃貸仲介の仕組みについてご説明してまいりました。

なお、解説をお読みいただければお解りのこととは思いますが、不動産業者同士の立場としては元付け業者よりも、客付け業者の方が圧倒的に有利な状況にあるものです。(「お客様を付けていただいている」訳ですから)

よって大家さんの中には、契約条件の交渉中などに『入居者側の味方ばかりして!』と元付け業者に不快感を持たれる方もおられるかもしれませんが、そのように見えるは「客付け業者への気遣い」であり、悪気のないケースが殆どであることが、ご理解いただけることでしょう。

このように『取引の相手(管理会社)がどのような状況に置かれており、何を考えて行動しているのか』を理解することができれば、管理会社は非常に仕事が進めやすいものですし、大家さんも無用なストレスを感じることなく、収益物件の運用に集中できるはずですから、これは正に良いこと尽くめなのではないでしょうか。

ではこれにて、不動産賃貸のシステムについての知恵袋を閉じさせていただきたいと思います!