賃貸契約書の内容を解説!居住用の主な条項と注意点

アパートやマンションを借りるときに取り交わす賃貸借契約書には、家賃や契約期間だけでなく、修繕費の負担、禁止事項、解約の手続き、退去時の原状回復など、さまざまな取り決めが記載されています。

しかし、普段は使わない言葉も多く、「内容を十分に理解しないまま署名してしまった」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。一方、契約書を作成する大家さんや不動産会社にとっても、契約内容がその物件の設備や使用条件に合っているかを確認することは重要です。

今回は、長年賃貸管理の実務に携わってきた経験をもとに、居住用賃貸借契約書の主な条項と、確認しておきたいポイントを解説します。借主が個人の契約を中心に、借りる側・貸す側の双方が注意したい点を整理していきましょう。

居住用の賃貸契約書と虫眼鏡を描き、家賃・更新・修繕・退去に関する内容と注意点

目次

賃貸契約書の内容を確認する前に

賃貸借契約書は、不動産会社や契約の種類によって書式や条文の順番が異なります。まずは契約の種類と書類全体の構成を把握してから、個々の条項を確認すると分かりやすくなります。

普通借家契約と定期借家契約を確認する

居住用の賃貸借契約には、主に「普通借家契約」と「定期借家契約」があります。一般的なアパートやマンションで多く使われているのは普通借家契約ですが、すべての物件が同じ契約というわけではありません。

普通借家契約では、契約期間が満了しても、貸主が更新を拒絶するには正当事由などの要件が必要です。これに対し、定期借家契約は、法律上の要件を満たして成立している場合、更新がなく期間満了によって終了する契約です。

定期借家契約でも双方が合意して再契約することはありますが、再契約が当然に約束されているわけではありません。契約期間の長さだけでなく、更新のある契約なのか、再契約を前提としている場合にどのような条件があるのかも確認しておきましょう。

頭書・本文・特約事項・別表を一緒に確認する

契約書の冒頭にある「頭書」には、物件名、部屋番号、契約期間、賃料、敷金、貸主・借主などの個別条件が記載されます。その後に続く本文では、支払義務や禁止事項、解約などの基本的なルールを定めるのが一般的です。

さらに、物件ごとの条件を定めた「特約事項」や、設備表、原状回復に関する別表、使用細則などが添付されることもあります。本文だけを読んで終わりにせず、これらを一式で確認することが大切です。

重要事項説明書や募集時の説明と食い違いがある場合には、署名前に確認し、必要な修正をしてもらいましょう。設備や費用負担などの重要な条件は、口頭の説明だけで済ませず、書面にも反映されているか確認しておきたいところです。

賃貸契約書の主な条項と注意点

ここからは、居住用賃貸借契約書によく記載される条項を順番に見ていきます。条文の名称や配置は書式によって異なりますので、お手元の契約書ではどの部分に該当するのかを確認しながら読んでみてください。

使用目的に関する条項

物件をどのような目的で使用するかを定める条項です。居住用物件であれば、通常は住居として使用することが定められ、無断で店舗や事務所、宿泊施設などとして利用することを制限します。

ただし、自宅でパソコンを使って仕事をする場合と、不特定多数の来客がある店舗や事務所として使用する場合では、建物への影響も異なります。在宅勤務、法人登記、教室やサロンの営業などを考えている場合には、利用方法を具体的に説明して、許可の要否を確認しましょう。

貸す側も「居住用」と記載するだけでなく、想定される使用方法について、どこまで認めるのかを明確にしておくとトラブルを減らせます。

賃料・管理費・共益費に関する条項

毎月の賃料、管理費・共益費、支払期限、支払方法などを定めます。「翌月分を当月末日までに支払う」という契約であれば、例えば5月分の家賃は4月末日までに支払うことになります。

振込手数料や口座振替手数料の負担、駐車場などの使用料、毎月発生する付帯サービスの料金も確認しておきましょう。賃料だけでなく、毎月の支払総額を把握することが重要です。

また、入居月や退去月の賃料をどのように計算するかも確認します。日割り計算でも、1か月を30日として計算する契約と、実際の月の日数で計算する契約があり、退去月については日割り精算をしない取り決めが設けられていることもあります。

契約期間・更新・更新料に関する条項

居住用物件では契約期間を2年間とする例が多く見られますが、期間は契約によって異なります。契約の開始日・終了日に加え、更新手続きや更新に伴う費用を確認しましょう。

更新料は、法律によって一律に支払義務が定められているものではなく、契約上の取り決めが基本となります。金額だけでなく、いつ、どのような更新の場合に支払うのかも確認する必要があります。

更新料を設ける場合、賃料の1か月分とする例がよく見られます。この程度の更新料は、契約書に支払条件が明確に定められていれば、有効と認められることが多いものです。ただし、1か月分を超えれば直ちに無効になるわけではなく、賃料や更新期間との関係で高額に過ぎる場合には、条項の有効性が問題となることもあります。

また、更新契約書を取り交わさずに法定更新となった場合の更新料については、条文の内容や契約の解釈が重要です。貸す側は合意更新・法定更新の扱いを明確にし、借りる側も「更新書類に署名しなければ更新料は不要」と自己判断しないようにしましょう。

更新料とは別に、更新事務手数料、保証会社の更新保証料、保険料などが発生することもあります。それぞれの支払先と契約上の根拠を分けて確認しておきたいところです。

敷金の扱いに関する条項

敷金は、未払賃料や借主が負担すべき原状回復費用など、賃貸借契約から生じる債務を担保するために預ける金銭です。契約書では、預ける金額、返還・精算の方法、利息の有無などを確認します。

基本的には、契約が終了して物件を明け渡した後、借主が負担すべき未払債務などを差し引いた残額を返還します。差し引く費用がある場合には、その内容や計算根拠が分かる精算明細を示すことが大切です。

また、借主は、敷金を預けていることを理由に、明渡し前の賃料について「敷金から差し引いてほしい」と一方的に求めることはできません。これは民法にも定められている考え方です。

現場メモ:敷金と毎月の家賃は分けて考える

私も以前、入居者から「来月の家賃は敷金から差し引いておいてほしい」と言われたことがあります。しかし、敷金は退去時の未払金や原状回復費用などにも備えるためのものです。契約書にも明確に記載し、日々の家賃支払いと退去時の精算を混同しないようにしておきたいところです。

なお、敷引きや償却の特約がある場合には、通常の敷金精算とは別に、その金額や条件、条項の有効性を確認する必要があります。

修繕費の負担に関する条項

建物や設備に不具合が生じた場合、誰が修繕を行い、費用を負担するかを定めます。民法上、貸主は原則として、借主が物件を使用するために必要な修繕を行う義務を負いますが、借主の責任によって必要となった修繕については扱いが異なります。

例えば、備付けの給湯器が経年劣化で故障した場合と、借主が誤った使い方をして破損させた場合では、同じ設備の修理でも負担の判断が変わります。電球交換などの軽微な修繕については、契約で借主負担とする場合もあります。

そのため、「建物本体は貸主、消耗品は借主」とだけ覚えるのではなく、不具合の原因、契約内容、修繕の範囲、貸主の設備に該当するかを確認することが重要です。前の入居者が残したエアコンなどについても、設備として貸すものなのか、残置品として扱うものなのかを契約時に整理しておきましょう。

借主が不具合を見つけた場合には、まず貸主や管理会社へ連絡します。通知を受けた貸主が相当の期間内に必要な修繕をしない場合や、急迫の事情がある場合には、民法上、借主が修繕できることもありますが、どのような工事費用でも無条件に請求できるわけではありません。

通常は、故障状況や連絡履歴を残し、修理方法や費用負担を確認してから手配するのが基本です。漏水などの緊急時に備え、夜間・休日の連絡先も確認しておきましょう。

光熱費・諸費用の負担に関する条項

室内で使用する電気・ガス・水道・インターネットなどの料金は、通常、借主が負担します。一方、土地・建物の固定資産税などは、通常、貸主が負担するものとして整理されます。

ただし、水道代が定額の場合、貸主や管理会社が検針する場合、インターネット利用料が賃料などに含まれる場合もあります。誰と利用契約を結び、どこへ支払うのかを確認しましょう。

退去時の利用停止や最終精算についても、借主が行う手続きと管理会社が行う手続きを整理しておくと安心です。

賃料の増額・減額に関する条項

税負担や経済事情の変化、近隣の同種物件との比較などによって、賃料が不相当になった場合の見直しについて定める条項です。まずは貸主・借主が事情を確認し、協議することが基本となります。

普通借家契約では、借地借家法に基づく賃料増減額請求が問題となる場合があり、賃料の見直しが更新時に限られるわけではありません。一方、増額の通知を受けただけで、提示された金額に必ず従わなければならないというわけでもありません。

また、一定期間は増額しない特約や、定期借家契約における賃料改定の特約など、契約によって扱いが異なる場合があります。条文の記載と法律上のルールを合わせて確認する必要があります。

借主の義務・禁止事項に関する条項

借主が物件を使用する際に守るべきルールを定めます。建物を適切に管理して使用する義務に加え、他の入居者への迷惑行為や、建物に悪影響を与える行為などを具体的に記載します。

  • 無断での転貸や賃借権の譲渡
  • 騒音、悪臭、危険物の持込みなどの迷惑・危険行為
  • 共用廊下や避難経路への私物の放置
  • 無断での改造、設備工事、配管・電気設備の変更
  • ペット飼育や楽器使用など、条件が設けられている行為
  • 重量物の搬入など、建物への影響がある行為
  • 同居人の追加・変更や長期不在時の届出
  • 連絡先や保証人などの変更に関する届出
  • 分譲マンションの管理規約・使用細則の遵守

大切なのは、全面的に禁止する行為、事前承諾が必要な行為、届出でよい行為を分けることです。例えば、ペット可の物件であれば、飼育できる種類・頭数・条件などを実際の募集内容と一致させておく必要があります。

借りる側も「小動物なら大丈夫だろう」「一時的な同居なら連絡不要だろう」と判断せず、契約内容に沿って確認しましょう。

室内への立入りに関する条項

設備点検、修繕、防火などのために、貸主や管理会社が室内へ立ち入る場合のルールです。通常の点検や工事では、事前に目的と日程を伝え、借主の承諾を得て実施します。

借主の立会いが必要なのか、不在時の作業を認めるのかについても、個別に調整することが大切です。貸主が合鍵を持っていても、それだけで自由に入室できるわけではありません。

一方、火災や緊急の漏水など、承諾を待つことで被害が拡大する場合には、事前の承諾を得ずに立ち入ることがあります。その場合も、緊急性に応じて必要な範囲にとどめ、不在時に入室したときは事後に通知し、状況を記録しておきましょう。

反社会的勢力の排除に関する条項

貸主・借主の双方が、暴力団などの反社会的勢力に該当しないことを約束する条項です。反社会的勢力のために名義を貸して契約することや、借りた部屋を暴力団事務所などの活動拠点として使用することも禁止します。

また、借主が入居後に反社会的勢力へ部屋を又貸しすることなども禁止し、こうした約束に違反した場合には、契約を解除できる旨を定めます。「反社会的勢力ではないことの確認」「禁止する行為」「違反した場合の解除」を合わせて記載することがポイントです。

契約違反による解除に関する条項

賃料の滞納、無断転貸、重大な迷惑行為など、借主に契約違反があった場合の解除について定めます。一般的には、相当の期間を設けて義務の履行や改善を求め、それでも是正されない場合に解除を検討する仕組みとなります。

ただし、継続的な関係である賃貸借契約では、違反の内容や程度、これまでの経緯などから、貸主・借主の信頼関係が破壊されたといえるかが重要です。契約書に「家賃を2か月滞納したら解除」と書いても、その月数だけで必ず解除が認められるわけではありません。

反社会的勢力に関する違反などについて、催告なしで解除できる条項を設けることはありますが、軽微な違反まで一律に即時解除できると考えるのは適切ではありません。申込書の虚偽記載についても、記載内容や契約への影響などを踏まえた判断が必要です。

契約解除と、強制的な退去は別の問題

解除の通知をした後でも、貸主が勝手に鍵を交換したり、室内の荷物を搬出したりしてよいわけではありません。任意の明渡しが得られない場合には、訴訟や強制執行などの法的手続きが必要になります。

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借主からの解約予告に関する条項

借主が契約期間の途中で退去する場合の、申入れ期限や手続きを定めます。「1か月前までに申し出る」という契約もあれば、2か月前などの予告期間を設けている契約もあるため、必ず個別に確認しましょう。

例えば、1か月前予告の契約では、申入れから1か月が経過する前に引っ越しても、原則として予告期間に対応する賃料などの負担が残ります。ただし、具体的な計算方法や早期解約の扱いは契約内容によります。

また、「1か月」と「30日」では日付の計算が異なることがあります。解約通知の提出方法、通知先、到達日を基準とするのかも確認し、受付の記録を残しておくと安心です。

短期解約違約金の特約がある場合には、予告期間に関する負担とは別に発生することもあります。適用期間、金額、両者の関係を確認しておきましょう。

契約終了・明渡しに関する条項

契約終了日までに荷物を搬出し、鍵を返還するなど、物件を明け渡す際の取り決めを定めます。引っ越しをしただけで明渡しが完了するとは限らないため、退去立会いや鍵の返却方法も事前に調整しておきましょう。

また、契約が終了しても借主が明け渡さない場合に備え、明渡しが完了するまで、賃料の2倍に相当する損害金を支払うという条項を設けることもあります。このような条項は、明渡しの遅れによって貸主に生じる損害を補い、期限どおりの明渡しを促すものとして、有効と認めた裁判例があります。

これは通常の賃料に加えて2倍の金額を支払うという意味ではなく、契約終了後の損害金を賃料の2倍相当額とする取り決めです。契約書では、損害金が発生する時期や、計算の基準に共益費などを含めるかも明確にしておきましょう。

なお、建物の全部が滅失するなどして使用できなくなった場合の契約終了と、貸主の都合で明渡しを求める場合では、適用されるルールが異なります。契約が終了する条件と、その際の明渡しや精算の扱いを分けて整理しておくことが大切です。

原状回復に関する条項

原状回復とは、借主が退去時に部屋をすべて新品に戻すことではありません。民法では、通常の使用による損耗や経年変化は、原則として借主が原状回復すべき範囲から除かれています。

一方、故意・過失や通常の使用を超える使い方によって生じた傷・汚れなどについては、借主の負担が問題になります。国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」も、こうした負担の考え方を整理したものです。

  • 日照による壁紙の変色や、通常使用による畳の擦り減りは、原則として貸主負担
  • 家具の設置による床のへこみや設置跡は、通常損耗に該当する場合がある
  • 物を落として生じた床の傷や、手入れ不足による汚損などは、借主負担となる場合がある
  • タバコのヤニ・臭い、ペットによる傷などは、汚損の状態や契約内容に応じて判断する

ただし、借主の責任で生じた汚損でも、常に交換費用の全額を負担するわけではありません。部位や工事内容に応じて、経過年数、補修する範囲、必要な作業などを確認します。

また、クリーニング費用などについて特約が設けられていることもあります。負担する内容や範囲、金額・算定方法が明確かを確認するとともに、特約そのものの有効性が問題になる場合があることにも注意しましょう。

貸す側は、原状回復の別表を添付するだけでなく、入居時の室内状況を写真や確認書で残しておくことが大切です。借りる側も、もともとの傷や不具合を早めに申告し、双方で記録を共有しておくと退去時の判断がしやすくなります。

残置物の扱いに関する条項

退去後に家具や家電などが残されていると、次の募集や工事に支障が出るため、残置物の取扱いを定めておくことは重要です。ただし、「残した荷物は貸主が自由に処分できる」と書いておけば、どのような状況でも処分できるわけではありません。

単なる忘れ物なのか、借主が所有権を放棄して処分を依頼した物なのか、そもそも明渡しが完了しているのかによって、対応は異なります。貸主側で処分する場合には、対象物と借主の意思、費用負担などを具体的に確認しておく必要があります。

特に、借主と連絡が取れない場合や、借主が亡くなった場合は慎重な対応が必要です。通常の賃貸借契約では、死亡しただけで契約や家財の権利関係がすべて消滅するわけではなく、相続も関係します。

死亡後の契約終了や残置物処理に備える方法としては、国土交通省・法務省が示す「残置物の処理等に関するモデル契約条項」があります。一般の退去時の精算条項とは分けて、適切な委任契約や手続きを検討することが大切です。

連帯保証人に関する条項

借主が支払うべき賃料などについて、連帯保証人がどの範囲で責任を負うかを定めます。保証の対象となる債務や契約更新後の扱い、保証人に変更が生じた場合の連絡方法などを確認しましょう。

2020年4月1日以降に締結する、個人が保証人となる賃貸借に伴う根保証契約では、責任の上限である「極度額」の設定が必要です。極度額が定められていない場合、保証契約は効力を生じないため、古いひな形の流用や空欄には注意が必要です。

なお、連帯保証人であることと、借主の代理人であることは別です。保証人だから当然に借主の契約を解約できる、敷金を受け取れる、家財を処分できるというものではありません。代理権や処分の権限を設ける場合には、保証条項とは別の問題として、内容や有効性を慎重に検討する必要があります。

また、緊急連絡先として登録された人も、保証契約を締結していなければ、連絡先であるという理由だけで家賃などの支払義務を負うわけではありません。

賃貸保証会社に関する条項

賃貸保証会社を利用する場合には、利用する会社、保証委託契約の締結、保証料の負担などについて定めます。初回保証料に加え、年間保証料や月額保証料、収納に関する手数料なども確認しましょう。

借主が注意したいのは、保証会社が家賃を立て替えても、借主の支払義務がなくなるわけではないという点です。立替払いの後は、保証会社から借主へ請求されるのが基本となります。

貸す側は、滞納賃料だけでなく、原状回復費用、明渡しまでの費用など、何がどこまで保証されるかを別途確認する必要があります。事故報告の期限や免責事項も含め、保証会社との契約内容を把握しておきましょう。

また、保証会社を利用していても、貸主や保証会社が独自の判断で鍵を交換したり、室内の荷物を処分したりできるわけではありません。

免責に関する条項

災害や事故、設備の故障などによる損害について、貸主・借主がどのような責任を負うかを整理する条項です。ただし、「地震・火災・故障による損害はすべて免責」と書けば、それだけで一切の責任がなくなるものではありません。

例えば、貸主の修繕義務違反や管理上の問題が損害に関係している場合には、その責任が問題になります。また、借主の家財の損害、設備自体の修理費、使用できない期間の賃料などは、それぞれ分けて考える必要があります。

貸主の責任を広く免除する条項は、消費者契約法などによって無効となる場合もあります。責任の有無は、原因や対応状況、法令、契約内容に沿って判断することが大切です。

一部使用不能による賃料減額に関する条項

部屋の一部や設備が使えなくなった場合の賃料の取扱いです。民法では、借主の責任によらず物件の一部が使用できなくなった場合、賃料は使用できない部分の割合に応じて減額されると定められています。

これは、「貸主が承諾した場合だけ減額される」という仕組みではありません。一方で、実際にいくらを、どの期間減額するかについては、不具合の内容や生活への影響などを確認して協議する必要があります。

また、減額割合は、使えなくなった床面積だけで決まるものではありません。給湯器やトイレなどの不具合では、設備の機能や代替手段の有無も重要になります。

借主は不具合を速やかに通知し、使えなくなった状況や期間を記録しておきましょう。貸主も、修繕の手配と賃料の取扱いを整理し、借主が自己判断で家賃を差し引く前に、精算方法まで具体的に話し合うことが大切です。

信義則・協議に関する条項

契約書に定めのない事項や、条文の解釈に疑問が生じた場合に、法令や慣行に従い、双方が誠実に協議することを定めます。契約書ですべての事態を細かく想定することは難しいため、こうした条項にも意味があります。

ただし、「誠実に協議する」と記載しているからといって、曖昧な費用負担や重要な条件を後回しにしてよいわけではありません。契約時に分かっている事項は、できるだけ具体的に取り決めておきましょう。

管轄裁判所に関する条項

契約に関して訴訟となった場合、どこの裁判所を利用するかについて定める条項です。物件所在地を管轄する地方裁判所や簡易裁判所を記載することがあります。

契約内容を確認する際には、対象となる紛争や裁判所がどのように定められているかも見ておきましょう。ただし、実際の管轄や移送などは、手続法上のルールも関係します。

特約事項・設備表・使用細則も確認する

基本条項を確認したら、最後に特約事項と添付書類を見ていきましょう。実際の費用負担や使用条件は、こちらに具体的に記載されていることも少なくありません。

  • 退去時のクリーニング費用やエアコン清掃費用
  • 短期解約違約金やフリーレント利用時の条件
  • ペット飼育・喫煙に関する条件
  • 設備と残置品の区分、故障時の対応
  • バルコニー・専用庭・駐輪場などの使用条件
  • 保険加入や保証会社利用に関する条件
  • 原状回復の負担区分を定めた別表
  • 分譲マンションの管理規約・使用細則

特約は物件の事情に合わせた取り決めに役立ちますが、本文と矛盾する記載や、法律上認められない内容を加えれば、かえってトラブルの原因になります。費用負担を設ける場合も、「何について、どの範囲を、どのように負担するのか」が分かるようにすることが大切です。

特約事項の考え方や記載内容については、賃貸契約書の特約事項の作り方を解説した記事も参考にしてください。

署名前に確認しておきたいこと
  • 募集時や重要事項説明時の説明と、契約書の内容が一致しているか
  • 毎月の支払総額と、更新・退去時に発生する費用を把握しているか
  • 解約予告の期限、通知方法、退去月の精算方法が分かるか
  • 設備故障時の連絡先と、修繕費の負担ルールを確認したか
  • 特約事項や別表も読み、不明点を確認したか
  • 説明を受けて変更した条件が、最終的な契約書へ反映されているか

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賃貸契約書の内容を理解してトラブルを防ごう

賃貸借契約書には、家賃の支払いだけでなく、入居中の使い方から修繕、更新、退去時の精算まで、生活に関わる多くの取り決めが記載されています。難しい言葉があっても、「誰が、どのような場合に、何をするのか」を意識すると、内容を整理しやすくなります。

借りる側は、費用や解約条件などの不明点を署名前に確認することが大切です。貸す側も、ひな形をそのまま使うのではなく、物件の設備や運用方法に合わせ、本文・特約・別表の整合を確認しておく必要があります。

私自身、賃貸管理の実務を通じて、契約時の説明や取り決めが、その後の対応を左右する場面を経験してきました。契約書を作成して署名をもらうところで終わらず、双方が内容を理解し、実際に運用できる形にしておくことが、賃貸トラブルの予防につながります。

なお、この記事は主に居住用・個人契約の一般的な考え方を説明したものです。個別の契約の有効性や費用負担は、契約時期、条文、事実関係などによって異なります。

参考資料:国土交通省「賃貸住宅標準契約書」、国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」、法務省「残置物の処理等に関するモデル契約条項」

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