収益物件の運用や、アパート経営は「非常に安定感のある投資である」と言われています。

確かに株の運用などに比べれば、海外の経済情勢にも左右され辛く、「住宅」という決して無くなることのない需要に根差した投資となりますから、このように評されるのも当然かもしれません。

しかしながら、「入居者とのトラブル」や「賃料未払い」など、それなりのリスクがあるものですし、その中でも最も注意すべきなのが『火災などによって建物が損害を受けてしまうケース』です。

自分の大切な資産であるアパートが入居者の過失により燃えてしまい、多額の借入れが残っているにも係わらず「賃料収入が0」となってしまう状況は、正に「悪夢」としか言いようがありません。

もちろん、このようなケースでは失火の原因となった入居者に対して損害賠償の請求が可能となりますが、相手に資産がない場合には「無いものは払えない」ということになってしまうパターンも珍しくはないのです。

なお、このよう状況に陥った際に役に立つのが借家人賠償保険であり、賃貸借契約を締結する際には必ず加入しておくべき保険商品となります。

そこで本日は、この借家人賠償保険について解説してみたいと思います。

借家人賠償保険

 

借家人賠償保険とは

賃貸契約の締結に際しては、入居前に様々な審査が行われるものですが、一度借主が入居してしまえば「お部屋の中でどのような暮らしをしているか」など、確認のしようもないのが現実です。

そして入居者の中には「タバコに火を点けたまま寝てしまう」「火元を確認せずに外出してしまう」など、不用心な生活を送っている者も少なくはありません。

もちろん、火災が発生して建物が焼失すれば、オーナー様は自らが加入する火災保険によって保険金を受け取ることができますし、「火元である賃借人」に過失がある場合には「借主の注意義務違反」を理由に損害賠償請求を行うことも可能です。

但し、建物に与えた損害を賠償するには相当な資力が必要となるはずですから、賃貸で部屋を借りている人間がこれを支払うのは「少々荷が重い」というのも事実でしょう。

そこで賃貸物件への入居に際して、賃借人が加入を義務付けられているのが借家人賠償保険という保険です。

入居者がこの保険にさえ加入していれば、火災を起して建物に被害を与えた際にも保険金が支払われます(入居者に対して)から、大家さんの損害賠償請求に対して「支払いが不能」といった事態を防ぐことができるでしょう。

また一口に借家人賠償保険といっても、これを取り扱う保険会社は相当数存在しますし、同じ住居用物件を対象とした保険でも「保険料や補償内容が異なる様々なプラン」が用意されています。

なお、殆どの借家人賠償共通しているのは賃貸借契約の期間(居住用の場合は通常2年間)に合わせた保険期間となっており、契約更新に合わせて再加入、そして掛け捨てタイプであるという点になるでしょう。

ちなみに「どこの会社の如何なる保険を利用しているか」については、物件の管理をしている不動産業者さん任せというオーナー様が殆どとなるはずです。

しかしながら、借家人賠償保険には加入しているものの、実際に問題が発生した際に支払われる保険金が微々たるものであったり、「漏水は保証対象外」といった守備範囲の狭い保険であった場合には、結局被害を被るのはオーナー様ということになりかねませんから、「保険選びは管理会社に任せておけば安心」とはいきませんよね。

そこで次項では、「一体どんな借家人賠償保険に入居者を加入させるべきなのか」について考えてみましょう。

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借家人賠償保険の内容について

借家人賠償保険の保険内容を見てみると、大きく分けて二つの保証内容が組み込まれていることが判ります。

損害賠償に係る保険

「火災」や「水漏れ」などが原因で、入居者が物件に損害を与えてしまった際に支払われる保険内容となっており、その名の通り借家人賠償保険の骨子となる部分になります。

支払額の上限は加入する保険のプランによって異なりますが、最低でも1000万円、贅沢をいえば2000万円くらいは保証される保険を選びたいところです。

家財保険

借家人賠償保険の本来の主旨とは異なりますが、入居者が泥棒に入られた場合や、雨漏り等によってパソコンなどの家具に被害が出たケースにおいて支払われる保険となります。

借家人賠償保険の保険料を支払うのはあくまで入居者ですが、この家財保険を付加することで「賠償に係る保険だけではなく、入居者自身にもメリットがある保険」とすることができる訳です。

なお本来は、入居者の所有する家財の価値に合わせて保険額を取り決めるべきですが、多くの入居者は「安ければそれで良い」という判断をしているのが現実でしょう。

 

そして、ここまで解説してきた2種の保険を組み合わせて、1本の借家人賠償保険が構成されることになります。

 

保険会社も色々

こうした仕組みとなっている借家人賠償保険ですが、保険商品を扱う会社や組織は様々であり、大手の保険会社から、賃貸保証会社が運営する会社、また保険ではなく共済で保証を行う組織もあります。

そして運営会社によって「保険料が高い・安い」「保険金が出やすい・出辛い」など様々な違いがありますが、総じていえるのは大手の保険会社が提供する商品は保険料も安く、保証も手厚い傾向にあるということでしょう。

なお保険会社によっては、入居者とその同居人の自転車事故等に対しても上限1億もの保険金(個人賠償保険付き)が支払われる上、掛け金も非常にお手頃という商品もありますから、こうした保険商品を用意していることを募集時のPRに利用すれば、物件自体に付加価値を与えることにもなるはずです。

但し、借家人賠償保険は管理会社が保険代理店の資格を取得して、加入者の募集を行うのが通常ですから、選べる保険会社の種類はかなり限定さることになるのが現実しょう。

更に、大手保険会社の代理店資格を維持して行くためには厳しい契約ノルマをクリアーし、頻繁に行われる研修・テストを受けなければならないなど、代理店側の負担も大きいですから、

オーナー様が自由に保険会社を選びたいのであれば、物件管理を任せる段階から扱える保険会社の種類を確認しておくか、管理会社とは別の保険代理店を利用することをお勧めいたします。(契約等の手続きは管理会社に任せるが、保険契約については指定の代理店にて行う等)

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賠償保険まとめ

これまで見て来たように、管理会社に任せきりだった借家人賠償保険も、じっくりとその内容を比較してみると様々な違いが見えて来るものです。

万が一火災などが発生した際には、オーナー様にも深く関わってくるのが借家人賠償保険ですから、少しでも自分にとって有利な保険会社を選びたいところでしょう。

また、これは実務上のテクニックとなりますが、大家さんが加入する火災保険では、建物の老朽化が原因で発生したの漏水等(下水管が腐食して発生する水漏れ等)の被害には、保険金が支払われないのが通常です。

よって、こうした漏水等で入居者の家財が被害を受けた場合には、大家さんが自腹で賠償を行わなければならないことになります。

ただ、こうした際には被害に遭ったお部屋の上階の入居者にお願いして、借家人賠償保険を適用してもらうことにより、保険金の支払いを受けることもできるのです。(本来は配管の老朽化による漏水だが、保険会社に対しては上階の住人が水をこぼしたことにする等)

もちろん、保険を利用するか否かは「上階の入居者の腹づもり一つ」となりますから、あくまでも『お願いする』というスタンスにはなりますが、こうしたテクニックを知っておくのも重要である思います。

ではこれにて、借家人賠償保険について解説する知恵袋を閉じさせていただきたいと思います。