賃貸物件を管理していると、入居者から「エアコンが動かない」「お湯が出ない」「トイレから水が漏れている」といった設備故障の連絡が入ることがあります。
設備故障への対応は、単に修理業者を手配すれば終わりというものではありません。
故障状況の確認、緊急性の判断、貸主への報告、修理業者の手配、修理と交換の判断、入居者との日程調整、修繕後の確認など、管理会社が行う仕事は意外に多くあります。
また、水漏れや電気設備の不具合など、対応が遅れることで被害が拡大するケースでは、通常とは異なる判断が必要になることもあります。
この記事では、賃貸管理の実務経験をもとに、賃貸設備が故障した際に管理会社がどのような流れで対応するのかを詳しく解説します。
現場を知るから、本当に役立つ。
設備故障では「誰が払うのか」を最初に決めるよりも、まず原因と被害状況を確認することが重要です。

賃貸設備が故障したときの基本的な対応の流れ
一般的な設備故障であれば、管理会社ではおおむね次のような流れで対応します。
- 入居者から故障の連絡を受ける
- 故障状況や症状を確認する
- 緊急性を判断する
- 貸主へ報告する
- 修理業者を手配する
- 現地調査や見積りを行う
- 修理するか交換するかを判断する
- 入居者と工事日程を調整する
- 修繕完了を確認する
- 修理費用の負担を整理する
ただし、すべての故障をこの順番どおりに処理するわけではありません。
特に漏水や漏電のおそれがある場合などは、貸主への報告より先に応急処置や業者手配を行わなければならないケースもあります。
① 入居者から設備故障の連絡を受ける
設備故障への対応は、入居者からの連絡から始まります。
代表的なものとしては、次のような故障があります。
- エアコンが冷えない・動かない
- 給湯器からお湯が出ない
- トイレの水が流れない
- 蛇口や配管から水が漏れている
- 換気扇が動かない
- インターホンが鳴らない
- 照明器具やスイッチが故障した
- 浴室や洗面設備に不具合がある
ここで重要なのは、入居者から「壊れました」と言われただけで、すぐに故障と決めつけないことです。
実際には、設定ミス、ブレーカー、リモコンの電池切れ、フィルターの目詰まりなど、簡単な確認で復旧するケースもあります。
② 故障状況をできるだけ詳しく確認する
業者を手配する前に、管理会社では症状をできるだけ具体的に確認します。
たとえばエアコンであれば、
- 電源そのものが入らないのか
- 風は出るがお部屋が冷えないのか
- 室内機から水が漏れているのか
- 異音がするのか
- エラー表示が出ているのか
によって、考えられる原因や手配する業者が変わります。
給湯器についても同様で、「完全にお湯が出ない」のか、「追い焚きだけできない」のか、「特定の蛇口だけお湯が出ない」のかで対応が異なります。
写真や動画を送ってもらうと判断しやすい
故障箇所やエラー表示、漏水状況などは、スマートフォンで写真や動画を撮影して管理会社へ送ってもらうだけでも、状況把握がかなり早くなります。
最近は、業者へ電話一本で「○○号室の設備が壊れたようなので見てください」と丸投げするよりも、写真や動画、型番、症状などを先に伝えておいた方が、その後の対応もスムーズです。
③ 緊急性を判断する
設備故障で特に重要なのが、緊急性の判断です。
たとえば、エアコンが故障している場合と、天井から大量に水が落ちている場合とでは、当然ながら対応の優先順位が異なります。
緊急性が高いものとしては、次のようなケースがあります。
- 大量の漏水が発生している
- 階下への漏水のおそれがある
- 漏電や感電のおそれがある
- ガス臭がする
- 玄関ドアや鍵の故障で施錠できない
- 真冬に給湯設備が完全に使用できない
特に漏水事故では、原因確認よりも先に止水が必要になる場合があります。
被害を放置すると、床や壁だけでなく階下住戸まで被害が広がり、結果的に修繕費が大きくなることもあります。
緊急時は通常の承認手順にこだわりすぎない
本来であれば貸主へ修理内容や費用を確認してから業者を手配するのが基本ですが、漏水など被害拡大のおそれが高い場合には、まず応急対応を行い、その後に報告することもあります。
④ 貸主へ状況を報告する
緊急対応が必要なケースを除けば、管理会社は確認した内容を貸主へ報告します。
このとき単に「設備が壊れています」と伝えるだけではなく、
- どの設備が故障したのか
- 現在どのような症状が出ているのか
- 設備の設置時期や年式
- 修理可能と思われるのか
- 交換になる可能性があるのか
- 概算費用
- 緊急性
などを整理して報告すると、貸主も判断しやすくなります。
管理会社の役割は、故障連絡を右から左へ伝えるだけではありません。
入居者、修理業者、貸主の間に入り、必要な情報を整理して判断しやすい状態を作ることも重要な仕事だと考えています。
⑤ 修理業者を手配する
修理が必要と判断した場合は、専門業者を手配します。
設備によって手配先も異なります。
- エアコン:空調業者
- 給湯器:ガス会社・給湯器業者
- 水漏れ:水道設備業者
- 電気設備:電気工事業者
- 建具:建具業者・内装業者
管理会社が普段から付き合いのある業者であれば、物件の構造や設備を把握していることも多く、対応が早いというメリットがあります。
一方で、設備メーカーのサービスセンターへ直接修理を依頼した方がよいケースもあります。
⑥ 現地調査・見積りを行う
電話や写真だけでは原因が分からない場合は、業者が現地を確認します。
この段階で初めて、
- 部品交換で直る
- 設備本体を交換した方がよい
- 別の場所に原因がある
といったことが判明することも珍しくありません。
そのため、最初の入居者からの連絡だけで原因や費用負担を断定してしまうのはおすすめできません。
スポンサーリンク
⑦ 修理か交換かを判断する
設備が故障した場合、必ずしも修理することが最善とは限りません。
たとえば設置から長期間経過した給湯器やエアコンで、修理費が高額になる場合には、修理より新品へ交換した方が合理的なことがあります。
また、古い設備では交換部品そのものが製造終了となっていることもあります。
管理会社では、
- 設備の年式
- 修理費用
- 交換費用
- 部品供給の有無
- 今後の故障リスク
などを確認し、貸主へ修理と交換の選択肢を提示します。
安い修理が必ずしも得とは限らない
古い設備を数万円かけて修理しても、その後別の部品が故障して再び修理費が発生するケースがあります。設備の年式によっては、最初から交換した方が結果的に安くなることもあります。
⑧ 入居者と工事日程を調整する
修理内容が決まったら、入居者と業者の訪問日時を調整します。
賃貸住宅の場合、基本的には入居者が生活している専有部分へ業者が入室するため、勝手に工事を行うことはできません。
仕事などで平日在宅できない入居者もいるため、日程調整に時間がかかるケースもあります。
設備故障そのものより、この日程調整が意外に大変だったりします。
⑨ 修繕が完了したことを確認する
工事が終わったら、それで管理会社の仕事が終わりというわけではありません。
修理後に、
- 正常に設備が使用できるようになったか
- 水漏れが止まったか
- 別の不具合が発生していないか
- 追加工事が必要ではないか
などを確認します。
特に漏水事故では、原因箇所を直した後に、濡れた天井や壁、床などの復旧工事が必要になることがあります。
設備修理と内装復旧は別工事になることもあるため、最後まで状況を確認することが大切です。
⑩ 修理費は貸主と借主のどちらが負担する?
設備故障でトラブルになりやすいのが、修理費用の負担です。
一般的には、設備そのものの経年劣化や寿命による故障であれば、貸主側で修繕費を負担することになります。
一方、借主の故意・過失や、通常とは異なる使用方法によって設備を故障させた場合には、借主側の負担となる可能性があります。
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」でも、設備機器の寿命による故障・使用不能は貸主負担の例として挙げられています。
反対に、借主の日常の不適切な手入れや用法違反によって設備を壊した場合は、借主負担となる場合があります。
また民法では、賃貸人は原則として賃貸物の使用・収益に必要な修繕義務を負うとされています。ただし、借主の責任によって修繕が必要になった場合などは事情が異なります。
故障連絡を受けた段階で費用負担を決めつけない
「設備だから大家負担」「入居者が使っていたから入居者負担」と単純に判断するのではなく、まず故障原因を確認することが重要です。
入居者が勝手に修理業者を呼んでもよい?
設備が壊れたからといって、入居者が自由に設備を交換したり、高額な修理工事を依頼したりするのは避けた方がよいでしょう。
まず管理会社や貸主へ連絡し、対応方法を確認するのが基本です。
一方、民法では、修繕が必要であることを貸主へ通知したにもかかわらず相当期間内に必要な修繕が行われない場合や、急迫の事情がある場合には、借主が修繕できる旨も定められています。
ただし、「どこまでが必要な修繕なのか」「費用はいくらまで認められるのか」といった問題が生じる可能性があるため、緊急時を除いては事前に管理会社や貸主へ相談しておく方が安全です。
設備故障では記録を残しておくことも重要
管理会社としては、設備故障への対応記録を残しておくことも大切です。
たとえば、
- 入居者から連絡があった日時
- 入居者から聞いた症状
- 写真や動画
- 貸主へ報告した日時
- 業者を手配した日時
- 業者の診断内容
- 修理内容
- 費用
- 工事完了日
などを記録しておきます。
後になって「連絡したのに対応してもらえなかった」「入居者が壊した」「もともと壊れていた」といった話になった際にも、記録が残っていれば事実関係を確認しやすくなります。
設備故障対応で管理会社に求められるのは「調整力」
設備故障への対応というと、修理業者を手配することが管理会社の仕事だと思われがちです。
しかし実際には、
- 入居者から状況を聞く
- 緊急性を判断する
- 業者へ正確に状況を伝える
- 貸主へ修理内容と費用を説明する
- 修理か交換かを判断する材料をそろえる
- 入居者と工事日程を調整する
- 修繕完了まで確認する
といった調整業務が大きな割合を占めます。
特にトラブルが起きたときほど、「業者へ連絡したので、あとはお願いします」と丸投げしないことが重要です。
管理会社が状況を把握し、入居者・貸主・修理業者の間に入って調整することで、設備故障によるトラブルを最小限に抑えることができます。
スポンサーリンク
まとめ|設備故障は初動対応が重要
賃貸住宅では、どれだけ丁寧に建物を管理していても、設備の故障を完全になくすことはできません。
大切なのは、故障そのものを防ぐことだけではなく、故障が発生した際に適切な初動対応を行うことです。
設備故障の連絡を受けたら、まず状況を確認し、緊急性を判断します。
そのうえで貸主への報告、業者手配、修理・交換の判断、入居者との日程調整、修繕完了確認まで管理会社が間に入ることで、トラブルの拡大を防ぐことができます。
特に水漏れなどは対応が遅れるほど被害が大きくなるため、状況によっては通常の承認手順よりも応急対応を優先しなければなりません。
設備故障への対応は、賃貸管理会社の仕事の中でも、現場での判断力が求められる業務のひとつです。
管理会社の仕事内容について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。







