現在、不動産業界では「空前の投資ブームが到来している」と言われています。
不動産業者の中には、かなり以前から利回りの高い投資物件を購入し、保有または転売するというビジネスを行っている者も少なくありませんでしたが、今日では一般の方も積極的に投資物件を探す時代となっているのです。
また、こうした一般投資家の収益物件購入意欲は非常に強く、最近では「一般の方に押されて、不動産屋さんが収益物件を買えない」という状況にさえなっています。
しかしながら、「これから不動産投資を始めよう」とお考えの方にとっては、その購入の流れは正に未知の世界でしょうし、如何なるリスクが隠れていかという点も気になるところですよね。
そこで今回は、不動産業者である私が初めて投資用物件を購入した際の体験を記し、皆さんのご参考にしていただければと考えております。
では、投資物件購入流れに関する体験記を見て行きましょう!

アパートを買う!
都内の片隅(かなりの辺境)に店を構える某不動産業者に勤務している管理人。
会社の方針で、お金になることは仲介から建売まで「何でもやるスタイル」なのですが、この当時(今から数年前)は特に収益物件の買取を強化している時期でした。
それ以前は、物件をお探しのお客様に向けて未公開の建売物件の情報を集めたり、建売用地の情報を漁ることをメインにしていましたが、『収益物件情報を集めよ』との会社の方針に従い、「買えそうな収益物件ないっすか?」と聞きながら営業先を回ることが多くなっていました。
そして、こうした営業活動の中、ある賃貸管理専門の不動産屋さんより「購入を検討して欲しい」というアパートの案件が浮上します。
対象となる物件のスペックは最寄駅まで徒歩10分、土地の大きさは40坪弱で、軽量鉄骨造の築22年という建物に2Kのお部屋が8戸備えられた小規模な物件です。
お話を持って来てくれた不動産屋さんは、長年に渡ってこの物件の賃貸管理を任されていたそうなのですが、大家さんの家計が苦しくなり、この度売却をする運びとなったといいます。
こうした売却の経緯であるため、入居者から預かっている「敷金の受け渡しは無し」というのが売買条件となるそうですが、その分の価格の相談ができるとのことなので、決して悪い話ではないでしょう。
早速、我が社の社長に物件の概要を説明した上で、共に下見へと出発します。
実は管理人、これまでそれなりの不動産取引の経験は積んで来たものの、投資物件の買取りを行うのは初めてのことでした。
生来の「トラブルに巻き込まれやすい体質」と「うっかり気質」の持ち主であるため、この時は『慣れない収益物件の売買で失敗をしてはならない・・・』とかなり緊張していたのを憶えています。
なお、会社から車で1時間ほどの場所にある物件までは道に迷うこともなく、スムーズに到着することができましたが、問題は物件に空室が無いという点になります。
事前に建築図面などの資料は頂いていましたが、お部屋の中身を見ずに購入の意思決定をしなければならないため、これは少々ハードルの高い作業となりそうです。
とりあえずは、社長と共にウロウロと物件の周りをうろついてみますが、これといった情報は得られそうにありません。
『困ったものだ・・・』と内心悩んでいると、社長の口から「これは外壁がかなり傷んでいるから、近い内に修繕工事が必要だな・・・」とのお言葉が漏れます。
言われて初めて気付いたのですが、確かに外壁の塗装は「かなりくたびれて」おり、そんなに長持ちはしそうにない雰囲気です。
またこれに加え、社長から「入居者もあまり属性(勤め先などのプロフィール)が良くなさそうだなぁ」との指摘も受けます。
改めて物件の様子を観察してみると、共用部分には入居者のものと思われる備品が雑多に放置されており、バルコニーの洗濯ものを見ても、作業服やニッカポッカなどが目に付きます。
更に自転車置き場を見れば、子供用の自転車や三輪車などが多数置かれていますから、30㎡そこそこの部屋に夫婦と子供数人で住んでいる世帯が多い様子であり、こうした状況を見た上での社長お言葉だったのでしょう。
『なるほど、なるほど、こういう感じで内部が見られない物件でも、読み取れる情報はかなりあるものなのだな・・・』と、社長の洞察力に思わず感心させられます。
そして下見を終えた帰り道の車内で改めて価格の相談をしますが、外壁工事の費用や購入後の滞納リスクなどを考え、現在提示されている売却希望価格から値引き交渉を行うことに決まりました。
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大切なのは物件調査
社長のお蔭で、現地である程度の情報は得ることができましたが、購入の意思を決定する前に『まだまだ行っておくべきこと』が残っています。
まずは物件自体の調査をすることになりますが、こちらは通常の現地調査や行政調査で充分でしょう。
調査の結果、今回の物件にはそれ程のクセ(厳しい法令上の制限や近隣との紛争に発展しそうな問題等)は無いようでしたが、隣地との境界線上に跨る古いブロック塀がありましたので、土地境界の確定に加え、このブロック塀の所有権者を明らかにすることを契約条件に加えます。
なお、収益物件の購入において一番大切なのは「アパートの収益性をしっかりと検討すること」です。
現在この物件は満室であり、現在の賃料から計算すれば15%もの利回りが取れますが、部屋が空き、新たな入居者が入った際に同じレベルの賃料が確保できるとは限りません。
そこで物件周辺の不動産屋さんを巡って、賃料相場と2K間取りのニーズがどの程度をあるかを調べて行きます。
そして聞き込みの結果、実際の相場よりもかなり高額な賃料で部屋が貸し出されていることが発覚しました。(入居者の殆どが長年住んでいるため、「現行の賃料」と「賃料相場」の間に乖離が生じている)
よって、空室が発生した際には「今より一世帯あたり5000円以上は安い値段で募集を掛けなければならない状況」となりそうです。
さて、賃料相場の調査に続いては、物件情報を提供してくれた管理会社さんにお願いして、入居者全員の賃貸借契約書と重要事項説明書、そして判る範囲での建物の修繕記録を提出してもらいます。
契約書に関しては、たとえプロの不動産屋さんが作成したものでも、そのクオリティーはまちまちですから決して油断はできません。(通常、契約書に盛り込んでおくべき条項が記されていない場合などがあります)
ちなみに今回の案件でも、退去の際にクリーニング費用を敷金から差し引く特約は入っていませんでしたし、連帯保証人を擁立しておらず、賃貸保証会社にも加入していない入居者が存在する等の問題点が明らかになりました。
また賃料の入金記録を確認したところ、時折家賃の支払いが遅れる入居者がいるようです。
更に修繕記録を見て行くと、下水の詰まりに関する工事が異常に多いことにも気付かされます。
単に高圧洗浄をサボっているために生じた下水の詰まりであれば、それ程の問題ではありませんが、配管の勾配が取れていなかったりすると大問題なので、この辺りの事情についても詳細を管理会社に問い合わせをしなければなりません。
こうした慎重な調査を経て、ようやく購入希望価格を決定することができましたので、早速、相手方の不動産屋さんへ金額を打診してみると、後日「この価格でOK」とのお返事が返って来ます。
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引渡し、そしてまとめ
そして売買価格の合意が取れ、契約条件の擦り合わせが完了すれば、売買契約の日時を設定して、手付金の授受に、契約書の署名捺印等を行うことになります。
ちなみに私の会社は不動産業者ですが、物件を購入する以上は契約前に仲介業者から重要事項の説明を受けなければまりませんので、こちらもしっかりと済ませました。(平成29年の宅建業法改正により、現在では不動産屋さんが買主の場合は書面交付のみでOKです)
さて契約が完了したならば、決済日までに売主さんの名義で、入居者たちへ「オーナーが代わる旨の通知」を出していただき、「敷地の境界確定」や「持ち主不明のブロック塀について隣地と覚書を交わす」などの処理を終え、いよいよ引渡し(決済)の時を迎えます。
引渡しの当日は、通常の決済の流れに加え、「各部屋の鍵の引渡し」や「賃貸借契約書の原本の交付」を受けて取引は完了です。
本来であれば、敷金の精算を売買代金から差し引いて行うのが通常ですが、今回は『敷金の精算を行わないのが条件』なので、固定資産税・都市計画税、月額賃料の日割り精算のみを済ませます。
こうして私の初めての収益物件の購入作業(仕入れ)は無事に終了しましたが、最も大切なのは買った物件をしっかり運用していくことです。
次回の記事「投資物件購入後の注意点をレポート!(アパート編・後編)」では、購入後に私が如何なる動きをし、どのような問題に直面したかについてレポートしてみたいと思います。
取引すること自体は決して難しくない投資物件の売買ですが、不動産投資は正にここからが正念場となりますから、是非次回の記事もご一読いただければと思います。
私の経験が「これから投資を始める方」や「不動産投資家の皆様」のご参考になれば、望外の幸せです。
ではこれにて、投資物件購入流れをレポート(アパート編・前編)の知恵袋を閉じさせていただきます!