中古マンションを探していると、管理形態の欄に「自主管理」と記載された物件を見かけることがあります。周辺の物件より価格が安い場合もあり、「購入しても大丈夫なのだろうか」と迷う方もいるでしょう。
自主管理とは、管理会社へ管理業務を一括して委託せず、区分所有者で構成する管理組合が主体となってマンションを管理する方法です。しっかり運営されているマンションもありますが、管理の担い手が不足し、会計や修繕が滞っている物件もあるため、購入前には実態を確認する必要があります。
私自身、以前勤めていた会社で、管理が事実上停止していたマンションの一部を購入し、その後の管理運営を立て直す仕事を担当したことがあります。物件の購入価格は破格でしたが、所有者への協力依頼から管理費の徴収、修繕資金の確保まで、購入後には大変な苦労が待っていました。
この記事では、自主管理マンションを購入する際の確認ポイントと、実際に管理運営を立て直した体験談をご紹介します。
自主管理マンションを購入する際に重要なのは、管理会社の有無だけで判断せず、会計・修繕・意思決定の仕組みが実際に動いているかを確認することです。価格が安くても、購入後に大きな費用負担や管理業務を引き受ける可能性がある点を踏まえて検討しましょう。

自主管理マンションとは?委託管理との違い
分譲マンションでは、各住戸の所有者が、自分の部屋だけでなく廊下や階段、屋上、外壁などの共用部分も共同で維持していく必要があります。そのための運営を担うのが管理組合です。
管理会社へ業務を委託するマンションでは、契約で定めた範囲に応じて、管理会社が会計、管理費等の収納、点検・清掃の手配、総会運営の補助などを行います。ただし、委託管理でも、管理方針や修繕などの重要事項を決める主体は管理組合です。
これに対して自主管理では、管理組合が自ら事務や業者の手配を行います。もっとも、すべての作業を所有者が直接行うとは限らず、清掃や設備点検、修繕工事などを、それぞれ専門業者へ依頼することもあります。
自主管理と管理が機能していない状態は分けて考える
自主管理という言葉だけで、管理状態の良し悪しは判断できません。総会が定期的に開催され、会計報告や必要な修繕が行われていれば、管理会社へ一括委託していなくても運営の仕組みは整っています。
一方で、役員が決まっていない、管理費を徴収していない、修繕の話し合いも行われていないという物件は、単に自主管理であるという以上の問題を抱えています。購入時には「自主管理かどうか」から一歩進んで、「誰が、何を、どのように管理しているのか」まで確認することが大切です。
自主管理マンションを購入するメリットと注意点
委託費用を抑えられる一方、必要な維持費はなくならない
自主管理には、管理会社への委託費用を抑え、所有者たちが物件の状況に合わせて管理方法を決めやすいという面があります。運営に詳しい方がいて、業務の分担や引継ぎができていれば、効率よく管理できる場合もあるでしょう。
ただし、管理会社への支払いがなくても、共用部分の電気代、清掃費、設備点検費、保険料、修繕費などは必要です。管理費や修繕積立金が安いという理由だけで、お得な物件とは判断できません。
本来必要な費用を徴収していなければ、購入後に値上げや一時金の負担が必要になることもあります。月々の負担額だけでなく、その金額でどこまで維持できているのかを確認しましょう。
購入後に管理業務を担う可能性がある
自主管理では、管理費の入金確認、帳簿の作成、総会の準備、工事業者との打ち合わせなどを、所有者自身が担うことがあります。購入後に役員となり、想定していなかった仕事を任される可能性もあるでしょう。
特に注意したいのは、長年一人の所有者だけが管理を支えているケースです。その方が高齢になったり、転居・売却したりすると、運営が続かなくなるおそれがあります。現在の担当者だけでなく、次の担い手や引継ぎ方法まで確認しておきたいところです。
売却や融資への影響も物件ごとに確認する
自主管理であっても、会計資料や修繕履歴が整い、適切に維持されている物件はあります。一律に「自主管理だから売れない」「必ず安くなる」とは言えません。
ただし、管理の実態が確認できない、修繕資金が不足している、共用部分の劣化が進んでいるといった事情は、買主の判断や金融機関の融資審査に影響することがあります。借入れを利用する場合には、購入申込みを進める段階で、管理形態や資料の有無も金融機関へ伝えて確認しておくとよいでしょう。
購入前に確認しておきたいポイント
管理規約・総会議事録・会計資料を確認する
まずは仲介会社を通じて、管理規約、直近の総会議事録、収支報告書、予算書などを確認します。資料があるかだけでなく、実際に更新され、所有者へ報告されているかを見ることが重要です。
- 総会が開催され、管理や修繕について話し合われているか
- 管理費と修繕積立金の収入・支出・残高が分かるか
- 会計の確認や監査が行われているか
- 管理を担当する役員と連絡先が明確になっているか
- 管理費等の値上げや一時金、借入れの予定がないか
説明を求めても資料が出てこない場合には、単なる保管の問題なのか、会計や運営そのものが整理されていないのかを確認する必要があります。「昔からこのやり方だから大丈夫」という説明だけで判断しないようにしましょう。
修繕積立金の残高と滞納状況を確認する
修繕積立金は、月々の徴収額だけでなく、現在の残高と今後必要になる工事費を合わせて確認します。毎月積み立てていても、近いうちに大きな工事が必要であれば、資金が不足する可能性があります。
また、購入する住戸の滞納の有無に加え、マンション全体でどの程度の滞納があるのかも確認したいところです。予算上は収入が見込まれていても、実際に入金されていなければ、そのお金を工事に使うことはできません。
購入する住戸に未払いがある場合には、その金額や内容を明らかにし、売主・買主の間でどのように清算するのかを契約前に整理しておきましょう。
長期修繕計画と実際の工事履歴を照らし合わせる
長期修繕計画では、外壁、屋上防水、給排水設備などについて、どのような工事を、いつ、いくら程度で行う予定なのかを確認します。その上で、計画どおりに積み立てられているか、必要な見直しが行われているかを確認しましょう。
過去の工事履歴も重要です。「大規模修繕済み」と説明されていても、実施した範囲は物件によって異なります。外壁塗装や屋上防水だけなのか、配管やその他の設備も更新しているのか、工事の内容と時期まで確認した方が判断しやすくなります。
室内だけでなく共用部分を見る
室内がきれいにリフォームされていても、建物全体の管理状態まで良好とは限りません。廊下や階段の清掃状況、照明の不点灯、放置物、雨漏りの跡、外壁や天井のひび割れ・剥がれなども確認しましょう。
ただし、見た目だけで建物の安全性や必要な修繕費を判断することはできません。劣化が目立つ場合や過去の調査資料がない場合には、建築士などの専門家による確認が必要か、仲介会社と相談して検討することになります。
管理に関する資料を確認できなければ、購入後の負担も見積もりにくくなります。価格を少し下げてもらえば解決する問題なのか、それとも管理運営の立て直しまで必要なのかを分けて考えることが重要です。
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実録|管理が機能していないマンションを購入した話
紹介されたのは想定表面利回り30%超の物件
私がこのマンションの話を初めて聞いたのは、以前勤めていた会社で収益物件の購入に力を入れていた頃のことです。取引のあった建売業者から、「かなり利回りの高い投資物件がある」と紹介を受けました。
物件は築30年以上、全体で20戸ほどの小規模な分譲マンションです。その業者が所有していた5部屋を、まとめて売却したいという話でした。
驚いたのは、その価格です。対象の5部屋はすべて空室でしたが、想定した賃料で計算すると、表面利回りは30%を超える水準でした。ただし、これは実際の家賃収入による数字ではなく、修繕費や管理費等を差し引く前の想定値です。
さすがに何か事情があるだろうと詳しく聞いてみると、売主は競売で取得したものの、管理状態の悪さなどから転売先を見つけられずにいるとのことでした。管理会社への委託はなく、管理組合の活動も事実上止まっているというのです。
会社へ戻って社長に報告したところ、返ってきた言葉は「よし、買おう!」でした。こちらとしては、まず現地を見てから考えてほしいというのが正直な気持ちです。
現地で目にしたのは共用部分まで荒れた建物
社長と一緒に現地へ行くと、廊下にはごみが目立ち、壁にはコンクリートの剥がれや鉄筋の腐食を疑わせる箇所も見られました。室内も長期間使われていなかった様子で、そのまま貸せる状態ではありません。
室内だけなら、費用をかけて修繕することはできます。しかし、屋上や外壁などの共用部分は、所有する5部屋だけの判断で自由に直せるものではありません。建物全体を維持するには、他の所有者にも協力してもらう必要があります。
その点を社長に説明したのですが、返ってきたのは「お前が管理組合を立て直せばいいだろう」という言葉でした。こうして、物件購入の担当だったはずの私が、購入後の管理運営まで引き受けることになったのです。
所有者への働きかけと管理運営の立て直し
まずは管理会社への委託を検討した
購入と引渡しを終えた後、最初に取り組んだのは管理会社探しでした。専門の会社に管理を任せられれば、会計や日常業務を継続する仕組みを作りやすいと考えたからです。
例えば月額10万円で委託できるなら、単純に20戸で割ると1戸当たり月額5,000円です。当初は、その程度なら所有者の理解を得られるのではないかと考えていました。
しかし、実際に提示された見積額は、こちらの想定を大きく上回るものでした。なお、委託費だけで建物の維持費すべてを賄えるわけでもありません。共用部分の電気代や修繕費なども含めて考えると、当時の条件では委託管理の実現は難しい状況でした。
管理費と修繕積立金の案を作る
次に、清掃、共用部分の電気代、必要な補修、将来の外壁や屋上の工事などについて、見積もりを集めて支出を整理しました。その上で、所有者からどの程度の費用を徴収すれば運営を始められるのかを検討します。
十分な金額を集められればよいのですが、それまで負担していなかった所有者に、新たな支払いをお願いする必要があります。最初から大きな負担を求めても、協力を得ることは難しいだろうと考えました。
そこで当初は、1部屋当たり月額5,000円の管理費と、月額8,000円の修繕積立金を案として用意しました。これは当時の物件について運営開始のために考えた金額であり、現在のマンションにそのまま当てはめられる目安ではありません。
所有者を調べ、一人ずつ協力をお願いする
費用案を作っても、他の所有者に協力してもらえなければ運営は始まりません。登記事項証明書などで所有者と住所を調べ、まずは手紙を送り、購入した経緯と管理運営を立て直したい意向を伝えました。
当時の所有状況は、私の会社が5部屋、投資家Aさんが3部屋、投資家Bさんが5部屋、残り7部屋がそれぞれ自己居住の所有者というものでした。そこで、まずは複数の住戸を所有するAさんとBさんに相談することにします。
Aさんからは連絡をいただき、費用案にも賛同してもらえました。一方、Bさんとはなかなか連絡がつかず、何度か訪問した後にようやくお話しできましたが、管理費等の負担で家賃収入の手残りが減ることに難色を示されました。
自己居住の所有者についても反応はさまざまです。建物の将来を心配し、協力してくれる方がいる一方で、それまでなかった支払いが始まることに強く抵抗する方もいました。
こちらとしては必要な費用だと考えていても、相手にとっては毎月の支出が増える話です。建物の現状と必要な工事、放置した場合に困ることを説明しながら、一人ずつ理解を求めていきました。
総会を開き、継続して負担できる金額を話し合う
その後、私の会社が所有する部屋で総会を開き、建物の状態や運営に必要な費用について説明しました。事前の相談で賛同者は増えていましたが、反対する所有者も残っている状況です。
そこで、管理費と修繕積立金を当初案からそれぞれ1,000円ずつ下げ、月額4,000円の管理費と月額7,000円の修繕積立金とする案を調整しました。賛同していた方にも説明した上で話し合いを進め、最終的には全員の理解を得ることができました。
必要な費用を確保することは重要ですが、最初から対立が深まれば、その後の運営にも影響します。私がこのとき重視したのは、所有者が継続して支払い、管理に参加してくれる状態を作ることでした。
こうして管理規約などの運営の枠組みを整え、どうにか活動を始められるところまでたどり着きました。そして理事長については、他の所有者にお願いしたいという私の思いとは裏腹に、私自身が担当することになったのです。
ここでは、当時の合意形成の経緯を紹介しています。実際に管理規約の制定・変更や費用負担を決める際には、議案ごとに必要な招集手続きや決議要件を確認する必要があり、所有する部屋数だけで可決できるかを判断することはできません。
運営再開後も続いた資金不足と修繕の苦労
徴収を始めても、すぐに修繕できるわけではない
管理費と修繕積立金を徴収できるようになっても、それで問題が解決したわけではありません。それまで積み立ててきた資金がなかったため、大きな工事に使えるお金を貯めるところからのスタートでした。
実際には、管理費等を滞納する所有者も現れました。また、建物では雨漏りも発生し、資金が限られる中で応急処置を行う必要がありました。
建物に修繕が必要だと分かっていても、工事代金を支払えなければ着手できません。管理運営を再開することと、十分な修繕資金を確保することは、別の課題なのだと実感しました。
時間をかけて外壁塗装と屋上防水を進めた
その後は資金の状況を見ながら、外壁塗装や屋上防水などを順番に進めていきました。短期間で一気に改善できたわけではありませんが、長い時間をかけて、荒れていた頃とは見違える状態になっていきました。
会社が購入した5部屋についても賃貸収入を得られるようになり、収益面では救われました。ただし、その結果だけを見て「安く買えて成功した」と片付けることはできません。
他の所有者との交渉、会計、滞納への対応、工事の手配など、多くの時間と労力を費やしています。物件価格と想定家賃だけを見ていた段階では、その負担を十分に織り込めていなかったと思います。
自主管理マンションは買っても大丈夫?判断の考え方
自主管理でも、会計が明確で、必要な修繕を行い、所有者同士で運営を続けられているマンションはあります。管理会社へ委託していないことだけを理由に、購入候補から外す必要はないでしょう。
一方で、管理費を徴収していない、積立金がない、修繕履歴が不明、話し合いの窓口も分からないという物件は、慎重な判断が必要です。購入後に自分が働きかければ改善できると考えても、他の所有者が協力してくれるとは限りません。
私の経験でも、自分たちの部屋を修繕する以上に難しかったのは、建物全体を維持するための合意と資金を集めることでした。複数の部屋を所有していても、マンション全体を自分だけで動かせるわけではありません。
- 会計や総会の資料から、管理の実態を確認できるか
- 必要な修繕と、その費用の見通しが立っているか
- 役員の交代や業務の引継ぎができるか
- 購入後の値上げや一時金を負担できるか
- 自分が役員や管理業務を担う場合にも対応できるか
投資目的であれば、管理費等や室内修繕費を差し引いた収支に加え、空室期間や将来の追加負担も考える必要があります。収益物件の検討から購入までの流れについては、投資物件購入の流れを解説した記事も参考にしてください。
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まとめ|安さだけでなく管理を続けられるかを確認しよう
自主管理マンションの購入では、管理会社の有無よりも、会計・修繕・意思決定の仕組みが実際に機能しているかが重要です。管理費が安い場合にも、効率よく運営できているのか、必要な費用を先送りしているのかで意味は大きく変わります。
今回ご紹介した物件では、管理運営を立て直し、時間をかけて修繕を進めることができました。しかし、その過程には所有者との交渉や資金不足、滞納、雨漏り対応など、多くの苦労がありました。
購入価格の安さに魅力を感じたときほど、「この建物を誰が、どの資金で、どのように維持していくのか」を確認してください。自分の部屋だけでなく、マンション全体の管理を見て判断することが、購入後の負担を見誤らないための大切なポイントです。







