自主管理マンション

 

現在、市場に流通する中古マンションの価格は「大変に高騰している」と言われています。

私も不動産屋さんの端くれですから、こうしたトレンドは日々肌で感じ取って感じており、『耐震偽装や地盤改良の問題、高層マンションの水害に対する脆弱性などが発覚しても、分譲マンションはやはり人気なんだぁ・・・』などと考えておりました。

また以前、「マンション購入の注意点について!」という記事でも書かせていただきましたが、メンテナンスに手が掛からず、価格もお手頃、現金化も容易というマンションの特性は、現代人のニーズにガッチリとマッチしていますから、こした点も人気の一因なのかもしれません。

しかしながら、分譲マンションが潜在的に持つ、「老朽化の問題」や「組合運営の難しさ」といった問題からは決して逃れられないのもまた事実です。

そこで本日は管理人が以前経験した、組合の運営に完全に失敗し内部崩壊を起こした分譲マンションの組合再建プロジェクトの顛末をレポートしてみたいと思います。

この記事を通して、組合運営の難しさやリスク、そして不動産投資における新たな可能性を見出していただければ幸いです。

では自主管理マンション再生プロジェクトのお話を始めましょう!

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朽ち行くマンション

私がこの分譲マンションの話を初めて耳にしたのは、今から数年前の真冬の出来事でした。

これまで仲介という形で何度か取引をしたことがある建売屋さん(戸建て分譲を生業とする不動産業者)から連絡が入り、「かなり利回りの回る投資物件があるんのだけど・・・」とのお話をいただいたのです。

以前、他の記事でも書きましたが、私が勤める会社のコンセプトは「儲かる話なら何でも首を突っ込め」というもので、売買の仲介から交換借地の更新に至るまで、様々な案件を扱っていました。

特にこの頃は、収益物件の買取りに力を入れていた時期であり、分譲マンションの一室から、アパート、商業ビルまで、あらゆる投資用物件の買取りを行っていたのです。

そして「これは美味しそうなお話の臭いがする」と、早速詳細の説明を聞きにその業者さんを訪ねます。

今回紹介を受けた物件は、世帯数20世帯程の小ぶりな分譲マンションであり、築年数は30年以上というスペックでした。

なお、私にこの話を持って来てくれた建売屋さんが、このマンションを5部屋程所有しており、それをまとめて売却したいというのです。

また驚くべきはその破格の値段であり、全室空室ながら利回りに換算すると表面で30%を超える高利回りとなっています。

「これは何か訳があるのでは・・・?」と思い、更に細かい事情を聴き出したところ、以下の事実が浮上して来ました。

  • 現在の所有者である建売屋さんは、このマンションを競売で取得した(但し占有者は居なかった)
  • マンションを分譲した会社は既に倒産している
  • 管理会社への委託は行っておらず、一応自主管理という形態となっている
  • 但し、管理組合自体は既に機能しておらず、内部の荒れ方はかなりのものらしい
  • 転売を目的に購入したが、こうした条件から買い手が付かず、出血大サービスで販売中

以上のような内容でした。

「うーん、これはどうしたものか・・・」、これまで聞いたこともないようなレア案件に頭を悩ませながら会社に戻り、とりあえずは社長に詳細を報告してみます。

社長「よし!買おう!」

『マジか・・・』(心の声)

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自主管理とは

社長の「竹を割り過ぎた決断力」には毎回驚かされますが、この物件にはかなりの問題が山積しています。

自主管理の分譲マンションとは、外部の管理会社に委託をすることなく、管理組合が自力で管理を行っているマンションのことです。

その件数は少ないものの世間には確実に存在しているタイプのマンションであり、修繕積立金や管理費の徴収から、共用部分の清掃・修理、大規模修繕などの業務を管理組合が自力で行うこととなります。

ちなみに分譲マンション黎明期の日本では、こうした自主管理のマンションは決して珍しいものではなかったようですが、やはり素人が分譲マンションの管理を全てを行うのはかなり困難であるため、

時代の流れと共に管理費などから予算を捻出し、プロの管理会社に委託を行う「委託管理」へ移行していくマンション(管理組合)が増えて行きました。

但し、この物件においては、建築された当初から投資目的で作られたこともあり、所有者(組合員)同士の繋がりは皆無な上、管理組合自体が立ち上げられないまま放置されて来たようですから、「通常の自主管理のマンションとは根本的に異なるもの」と考えるべきでしょう。

そしてこのマンションを分譲した会社も「売れれば良い」的な考えであったらしく、分譲が完了して間もなく廃業し、後は荒れるに任されていたとのことです。

とりあえずは社長を連れて、物件を内覧に行ったのですが、廊下はゴミだらけな上、壁などにも無数の爆裂現象(コンクリートの隙間から侵入した雨水が鉄筋が腐食させ、壁が崩れ落ちる現象)が確認できます。

そして肝心なお部屋の内部についても、何年人が住んでいないのか判らない程の荒れ具合であり、『これは流石に無理なのでは・・・』というのが、当初の印象でした。

ところが、この「凄まじい有り様」を見ても社長のヤル気は衰えず、話はドンドン進んで行きます。

確かに自主管理のマンションでも、組合さえしっかり機能していれば売却すること自体は不可能ではありません。(委託管理の物件にと比べて価格はかなり落ちますが)

しかし、ここまで荒れ果て、建物の修繕計画も皆無のマンションとなると、正直買い手はまず居ないはずです。

事実、今回の売主さんも「転売先に困って格安で売りつけようとしている」のですから、敢えてこの物件を購入する必要は無いように感じます。

そこで、この旨を社長に進言して、購入を諦めるよう説得したのですが、ボスの口からは驚愕の言葉が飛び出します。

社長「お前が新たに管理組合を立ち上げれば、問題はないだろう」

つまり、「所有者全員に声を掛け、規約を制定し、総会を開て管理費や修繕積立金を取り決め、このボロマンションを再生させろ」と言うのです。

『そんなの無理に決まってるじゃん!』という言葉が口元まで出掛りますが、サラリーマンとしては頷く他はありません。

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そしてプロジェクトは始まった

こうして我が社の「購入意思」は決定され、お話は契約・決済とトントン拍子に進んでいきます。

そして、誰もがそうであるとは思いますが、嫌な予定を控えている時ほど時の流れは速いもの。

あっと言う間に引渡しが完了してしまいます。

なお、社長からは「しばらく固定給にするから、このマンションの面倒を全力で見ろ」との仰せもあり、早速滅びゆく分譲マンションの再生プロジェクトが始動されることになりました。

そこでまずは、分譲マンションの管理を専門に請け負う管理会社に問い合わせをし、「委託管理の見積もり」を取りまくることにします。

もしも可能であるならば、管理を請け負ってくれる会社を見付け出し、組合の再生から日々の業務までを「丸投げしたい」と考えた訳です。

例えば月額10万円で委託管理を請け負ってもらえるなら、10万÷20世帯で、1世帯あたりの月額負担は5000円ということになります。

これくらいであれば「新たに設定する管理費の中からでも捻出できるのでは?」と思ったのですが、各管理会社から提示された月額管理費は、お話にならない程に高額なものでした。

これは最早、自分で組合を再生させ、自主管理行って行く以外に道は無さそうです。

そこで次に考えるべきは、「一体どれくらいの管理費と修繕積立金を組合員から徴収するば、マンションの運営を続けられるのか?」という点となります。

月々の共用部分の掃除代や電気代、急ぎで対処しなければならない補修工事、外壁の塗り替えなど長期で計画すべき修繕工事の見積もりを集めて検討を続けます。

もちろん、各組合員から充分な管理費・修繕積立金を徴収することができれば、より行き届いた管理を行うことができますが、彼らからの合意が得られなければ意味がありませんので、「一世帯月額5000円の管理費と、8000円の修繕積立金」というギリギリ運営が可能なラインの案を作り、区分所有者に相談して回ることにしました。

ちなみに各部屋の所有者は、登記簿謄本(登記事項証明書)を取得することにより住所までは判明しますので、まずはお手紙を出して「管理組合再生プロジェクト」の立上げとご協力のお願いを打診してみます。

ちなみに、今回のマンションは投資用の間取りとなっているため、購入して自宅として利用している方は意外に少ない上、オーナーの中には1人で複数の部屋を所有してる方もおられるようです。

実際に持ち主の内訳を見てみると、

  • 私の会社/5部屋
  • 投資家Aさん/3部屋
  • 投資家Bさん/5部屋
  • 自己居住所有者/7部屋

といった具合です。

よってまずは、大口の所有者AとBに当たりを付けた後、自己居住所有者を各個撃破する作戦で話を進めて行くことにします。

さてさて、いよいよ本格的なプロジェクトの始動となりますが、ページの関係で今回の記事はここまでとさせていただきたいと思います。

なお、この続きは次回「マンション自主管理に挑む!管理組合再生プロジェクト後編」にてご紹介する予定です。