不動産業者として成功を収めるためには「如何に物件の売却依頼を数多く引き受けるか(元付け業者となるか)」という点が非常に重要となってきます。

もちろん、流通している物件に買主を付ける「客付け」も非常に重要な業務ではありますが、元付け業者となれば『他の不動産会社に出し抜かれることなく、確実に仲介手数料を得ることが可能』となりますから、売却依頼を多数確保することこそが成功への近道となる訳です。

そこで本日は「不動産の物上げ方法をご紹介いたします!」と題して、売却依頼を多数獲得するために必須となる「物上げのテクニック」について解説したいと思います!

不動産の物上げ方法

 

物上げ(ぶつあげ)とは?

売買の営業をされている方にはすっかりお馴染みの「物上げ(ぶつあげ)」という言葉ですが、『聞いたこともない』という一般の方も多いかと思いますので、まずは用語の解説から始めたいと思います。

「物上げ」とは不動産の業界用語の一つであり、『本来は売りものではない土地や建物を、売物件に仕立て上げる』ことを意味する言葉です。

ちなみに売買の仕事をしていれば、何かの切っ掛けで「売却依頼の問い合わせ」が舞い込んで来ることもなくはありませんが、これはあくまでも『お客様発生の売り情報』となりますから、正確には「物上げした」とは言えません。

そして、これとは反対に相続の相談などを受けながら「この土地を売ってしまわれては?」などの提案を行い、「0」の状態から新たな売り物件を生み出すことができれば、これは正に「物上げした」と言える訳です。

もちろん売買仲介を行うに当たっては、「物件を買いたい」「お客様発生で物件を売りたい」といった案件も『貴重な情報』ではありますが、既に「買いたい」「売りたい」という意思が固まっているお客様は『他の不動産業者で成約してしまう可能性が高い』のも事実でしょう。

また、売却希望のお客様を逃がさないためには専任媒介契約を結ぶという手段もありますが、素早く買い手が現れなければ「3ヶ月であっという間に媒介契約を解除されてしまう」ことも珍しくありません。

これに対して「物上げされた物件」は、売りに出すという動機の部分から特定の不動産屋さんが係って行くことになりますから、他の情報に比べて飛躍的に成約率が高くなるという訳です。

よって、売買仲介をメインとする不動産屋さんや、建売屋さんにとっては「自分で物上げした物件」こそが最も確度が高く、魅力のある情報ということになります。

但し、「美味しい情報は、得るのも難しい」というのが世の常ですから、多くの業者さんが物上げを行うために血眼になっているのが現実なのです。

そこで次項では、具体的な「物上げの方法」について解説をしてみたいと思います。

物上げの手法をご紹介!

では早速、物上げの手法について解説して行きたいと思います。

なお、今回ご紹介する方法は、昔ながらに行われている「ベタなもの」から、私の知り合いの不動産屋さんが行っている「少々奇抜な方法」まで取り揃えてみましたので、是非皆様の営業活動のご参考にしていただければと思います。

広告・ダイレクトメールを利用した物上げ

広告やDM(ダイレクトメール)での勧誘は、不動産をお持ちの方にはすっかりお馴染みの手法であり、物上げの方法としても最も基本的な手段となります。

なお、ただ単に「売り物件募集」「無料査定承ります」などと書かれた広告もよく目にしますが、物上げを成功させたいのであればより具体的な情報を掲載した広告を用いるべきです。

例えば、分譲マンションなどの成約事例を元に「このマンションの5階のお部屋が▲▲▲▲万円で成約しました!あなたも売却してはみませんか?」というタイプのものや、「●●町■丁目限定で、30坪の土地を■■■■万円で探しておられるお客様がいらっしゃいます」などと言ったパターンが一般的なものとなるでしょう。

ちなみに、私の知り合いの中には『週に3件』など件数を定めて、ターゲットに選んだ物件に直接「個別の査定報告書」を送り付け、売却を促しているという業者も存在します。

賃貸管理業務で売却の糸口を見付ける

こちらも昔ながらの手法となりますが、アパートや駐車場などの管理業務を引き受けて、これを糸口として物上げを行っていく方法も非常に有効です。

そして管理会社と大家さんという信頼関係を長年掛けて築いていけば、土地利用などに際して様々な相談を受けることになりますし、状況によっては「土地の売却などを勧める」ことだってできるでしょう。

なお、ここでまず重要となるのが「焦って売却を勧め過ぎない」という点です。

地主からそれ程の信頼を得ていないのに、あまり商売気を見せてしまうとこれまでの努力が水の泡になってしまうこともあるでしょう。

また、近年では賃貸管理は地元の不動産業者に任すが、売却に際しては大手不動産仲介会社に依頼を掛ける地主も増えつつあります。

こうした事態を防ぐためには、賃貸管理を行いながらも「売買について高いスキルと知見を有している」ことを普段から地主へアピールしておくことが重要でしょう。

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有力な買取先を確保する

さて、苦労して物上げに成功したとしても、思うように買い手が現れないようでは成約を勝ち取ることはできません。

また、売主が売却の意思を固める過程においても、「対象の物件を●●●●万円で購入したがっている者がいる」といった情報は考えをまとめる上で大きな後押しとなるはずです。

よって、物上げを成功させたいのであれば売却の話が具体的になる前から、取引の出口(物件の購入先)に目途を付けておくことが重要となるでしょう。

なお近年では建売業者や収益物件買取業者が、一般の方以上の価格で物件を購入する時代となっていますから、こうした業者とのリレーションを普段から強化しておき、売却の話が出た際に素早く買取価格の提示が行える環境を整備しておくのがおすすめです。

地域の情報を元に飛び込み営業

こちらも昔ながらに行われている手法ですが、地域に密着した営業活動をしていると「●●さんの家でお爺さんが亡くなった」などの情報が入って来るものです。

相続が発生した場合などは、それに伴う売却案件が生じる可能性も高くなりますから、こうしたお宅に直接営業を掛けるという方法となります。

もちろん、全く面識のない不動産業者が突然訪問すれば「門前払いを喰らう可能性が高い」でしょうから、大切なのはお話の持って行き方です。

例えば「ターゲットのお宅の知人の紹介」などという形がベストなのでしょうが、これを行うには地域で余程顔が広くない限り、目的のお宅まで辿り着くのは困難でしょう。

そこで不動産屋さんの中には、こうした機会を逃さないために町内会の活動に積極的に参加したり、地域の野球チーム、消防団などに所属している方も多いようです。

こうした活動を続けていれば、自ずと地元の知り合いが増えて来ますから、ターゲットとなるお宅とのパイプも作りやすくなることと思います。

なお、私の知り合いにはお店の看板に「相続相談専門」などの謳い文句掲げた上、相続が発生したお宅に「無料相続相談承ります」などのチラシやDMを散々投げ込んでから、飛び込み営業を行っている方もいらっしゃいます。

確かにこうした切り口であれば、たとえ面識のないお宅でも案外すんなり切り込んで行けるかもしれません。(突然訪問しても「何処かで聞いたことのある不動産屋」というイメージを持ってもらえる可能性があります)

売却可能な土地を見つけ出して、アプローチを掛ける

さて、街中を歩いていると明らかに利用されていない「空地」や「古屋」を目にすることも珍しくありません。

こうした物件の登記事項を調べて、物件所有者へダイレクトに売却を持ち掛けるのも、物上げにおける常套手段となります。

但し、かなり使い古された手法となりますし、突然名前も聞いたことのない業者が連絡しても色よい返事をもらえる可能性は決して高くありません。

また、近年では所有者不明の空き家などが増えていますので、登記簿上の所有者を調べても連絡が使いないケースも多いでしょう。

そこで重要になってくるのが前項でもご紹介した地元の情報網となります。

お付き合いのある地域の方の紹介であれば、不動産業者として信頼を得られる可能性が高まりますし、登記簿に記載されていない所有者の居所を知っている近所の方もいるかもしれません。

ちなみに空き家や空き地以外にも、広い庭や月極駐車場を敷地内に有しているお宅は「庭先売り」が可能なケースもありますので、こうした『売却可能な土地』の存在に普段からアンテナを張り巡らせておくことも物上げの重要なテクニックとなるでしょう。

不動産の無料相談会開催

不動産業者の協会などでは時折こうした相談会のイベントを開催していますし、個々の企業においてもホームページ上や、店頭にて相談会を行っておられるところが多いでしょうが、今回ご紹介する手法は自らが特定の場所に出向いて相談会を行うのが「肝」となります。

そして、出向く先は地域のフリーマーケットやお祭り、町内会のイベントなどがおすすめです。

この方法であれば他の出店(でみせ)に紛れて机と椅子だけを並べておくのみですから、準備があまり必要がないのも魅力となります。

もちろん勝手に出店はできませんので、主催者に許可を得る必要がありますが、私の知り合いはこの方法でかなりの数の物上げに成功しているといいます。

特定の団体の顧問不動産屋さん的な立場を獲得する

これも私の知り合いが実践している方法ですが、地域には様々な「団体」や「交流会」などが存在しているものです。

そして、こうした組織に加わって「不動産に関する相談は、自分が窓口になる」といった立場を獲得してしまうのが『この手法のポイント』となります。

なお、飛び込みでこうした「会」や「集まり」に参加して『初っ端から商売気を出す』のはむしろ逆効果となるはずですから、組織内である程度顔を売った後に「不動産に関する相談があれば声を掛けてください」などとアピールしていくのが良いでしょう。

また不動産業者の中には、自ら地域の異業種交流会などを企画し、仕事の糸口にしていおられる方もいらっしゃいます。

そして、この方法ならば団体内に他の不動産屋さんが入り込むことも防げますので、それなりの効果が上げられそうですよね。

但し、自分で立ち上げた団体を長期に渡って維持していくのはかなりの労力と、本人の資質が問われる部分ですから、「誰にでもできるという方法ではない」こともご理解ください。

アルバイトを使って営業活動を行う

「自分も不動産屋さんに勤めている身なのに、人なんか雇えないよ」というお声も聞えて来そうですが、実際にこの方法で多くの仕事を獲得している業者さんもいらっしゃいます。

なおここでは、私の知る「ある営業マン」が行っている方法を例に取ってご説明させていただきますが、まずは販売物件の広告などに「主婦のアルバイト募集」などの文言を載せ、営業活動を行う人員を確保するところから作戦はスタートすることになるでしょう。

そして、ここで集まった者たちに与える仕事は「不動産を売却しそうなお客様との顔つなぎをする」という内容になります。

また報酬については顔つなぎをしてもらい、具体的な売却依頼を受けることができれば「●万円」という取り決め方をしますが、この営業マンの場合には「成約したら更に●万円」など、売買のフェーズをクリアーするごとに追加の報酬を設定しているそうです。

これならばランニングコストが掛かりませんから、エージェントを無限に増やすことが可能となりますよね。

また、同様の手法を用いている他の不動産業者さんでは

  • 生命保険会社の外交員
  • ヤ●ルトの社員さん
  • 地域の工務店
  • リフォーム業者

にも同様のアルバイトを持ち掛け、成功を収めておられるそうですから、この方法もなかなか効率的なのではないでしょう。

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不動産の物上げ方法をご紹介まとめ

このように、物上げの関しては様々な手法が存在しており、今なお「新たな手法」が編み出され続けています。

なお、物上げにおいては闇雲に努力を続けるのではなく、「効率良く情報を得るためには、どのような行動をとるべきか」という視点で仕事を進めることが成功への近道となるのではないでしょうか。

優秀な営業マンも、そうでない営業マンも与えらた条件は同じなのですから、限られた時間で可能な限り効率的な動きを心掛けたいものですよね。

ではこれにて、「不動産の物上げ方法をご紹介いたします!」の知恵袋を閉じさせていただきたいと思います。