土地や建物といった不動産をお持ちの方にとって、大いに気になるのが固定資産税という税金です。

マイホームの購入や不動産の相続等に際しては避けて通ることができない税制となりますので、これは是非とも正しい知識を備えておきたいところでしょう。

そこで本日は「固定資産税の計算方法や課税の仕組みについて解説いたします!」と題して、この固定資産税という税金について研究してみたいと思います。

固定資産税の計算方法

 

固定資産税とは

そもそも固定資産税とは、その年の1月1日現在で土地や建物を保有している所有者に対して課せられる税金であり、税金の支払先は物件が所在する地域の市区町村となりますので、分類上は地方税とされる税金となります。(工場などが保有する工作機械等<償却資産>も固定資産税の課税対象です)

なお課税の方法としては、総務大臣が定めた「固定資産評価基準」を元に各市町村等が土地や建物の固定資産評価額を決定した上で、この評価額に対して定められた税率を掛けたものが、物件の所有者に課税されるという仕組みになっています。(税率についても各市町村等が定める)

また、土地の価格などは経済状況などにより変動するものですから3年に1度「評価替え」という作業が行われ、固定資産評価額に変更が加えらることになるのです。

さて、このようにお話しすると『行政に一方的に土地の価値を決めらるのは納得いかない!』と思われる方もおられるかもしれませんが、実は固定資産評価審査委員会に対して異議を申し立てることも可能となります。

但し、しっかりとした根拠が示せなければ、評価を変更させるのは困難でしょうから、異議が認められるのは非常にレアなケースとなるでしょう。

固定資産税の税率

そして既に申し上げた通り、税率についても各地方自治体が独自に定めることができるルールにはなっていますが、実際には多くの地域で地方税法の標準税率とされる「1.4%」が採用されています。

一方、固定資産税と共に納付を求めらる税金として「都市計画税」というものがありますが、こちらは都市計画区域における街造りの予算とするべく徴収される税金であり、税率については固定資産税と同じく標準税率である「0.3%」を採用している地域が殆どです。

固定資産税の納付について

なお、こうして税額が決定された固定資産税は年度の始めに各物件の所有者に対して納付が求められることになり、「1年分の一括払い」「4期の分納」のどちらかの方法で支払われることになります。(一括払いの方が若干お安くなります)

但し、固定資産税の納付を拒んだり、支払いができない場合には、地方自治体からの督促を経て最悪は「物件の差押え」を受け、最終的には「対象物件を公売に掛ける」という方法で処理されることになりますので、この点については充分な注意が必要です。

ちなみに、土地・建物に共有者が存在する場合は地方自治体が決めた「代表所有者」にのみ固定資産税の請求が届くことになりますので、共有者同士での精算作業が必要となるでしょう。

自分でできる固定資産税の計算

ここまで固定資産税の制度についての解説をしてまいりましたが、意外に多くの方々から「教えて欲しい」と言われるのが固定資産税の計算方法についてです。

もちろん自宅の固定資産税については市町村から送られて来る固定資産税の課税明細書に税額が記載されていますが、「これからマイホームを購入しようと思っている方」や「アパートや賃貸マンションなどの収益物件の取得を検討している投資家様」にとっては、これは大いに必要な情報となるでしょう。

そこでまず用意すべきは、物件が所在する地域を管轄する役所などで取得できる土地と建物の「公課証明書」または「評価証明書」となります。

これらの書類は原則、物件の所有者しか取得できないルールになっていますが、世帯を同じにする家族ならば身分証の提示で取得することが可能ですし、第三者でも所有者から「土地・建物の公課証明書・評価証明書取得に関する一切の件」を任せる内容の委任状をもらっておけば、簡単に入手することが可能です。

ちなみに公課証明書を取得すれば物件の評価額はもちろんのこと、実際の税額まで記載されていますから、難なく固定資産税の額を知ることができます。

但し、評価証明書の場合には評価額のみの記載となりますから、こちらしか手に入らない場合は自分で計算する必要が出てくるのです。

では、評価額から固定資産税の税額を求める計算方法を具体的に見ていきましょう。

 

税額計算に必要となるのは評価額証明書の記載事項の内、土地の場合には「固定資産税課税標準額」や「都市計画税課税標準額」建物の場合には単に「価格」と記されている部分に記された数字です。

そしてこの数字を紙に書き出して、まずは「千円未満の端数を切り捨て」ます。

さて、この切り捨て作業が完了したら、続いては固定資産税と都市計画税の税率である「1.4%」と「0.3%」をそれぞれの評価額に掛け算し、出た結果の百円未満を切り捨てれば、これだけで税額を求めることができるのです。

なお、より皆様にご理解を深めていただくために、以下に具体的な計算例を示しておきましょう。

 

土地の評価が「固定資産税課税標準額 19,754,862円」「都市計画税課税標準額 19,754,862円」、建物(家屋)の価格が「価格 8,975,845円」だった場合なら、

固定資産税の計算
  1. 土地評価額19,754,862円+建物価格8,975,845円=28,730,000円(千円未満切り捨て)
  2. 28,730,000円×1.4%=402,200円(百円未満切捨て)
都市計画税の計算
  1. 土地評価額19,754,862円+建物価格8,975,845円=28,730,000円(千円未満切り捨て)
  2. 28,730,000円×0.3%=86,100円(百円未満切捨て)

という計算になり、この2つの計算結果を合計した488,300円が年間の固定資産税・都市計画税の税額となるのです。

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固定資産税の軽減措置

さて固定資産税の概要、課税の仕組みなどをご理解いただけたところで、本項では固定資産税の軽減措置についてお話ししてみたいと思います。

固定資産税の住宅用地における軽減措置

「固定資産税課税明細書」や「土地・建物の評価証明書」などを見ると、基本となる土地や建物の評価額とは別に「固定資産税課税標準額」や「都市計画税課税標準額」という欄があることに気が付かれるはずです。

実は固定資産や都市計画税の税額算出にあっては、住宅用地を所有する方々の税負担を軽減するために「評価額を減額する措置」が執られており、この軽減を受けた後の評価額が『固定資産税課税標準額』や『都市計画税課税標準額』となります。

なお軽減の幅に関しては国の政策などにより変動しますが、現行では土地の評価額が本来の「1/6(200㎡までの部分〈小規模住宅用地〉について、200㎡超の部分については1/3)」となります。

※都市計画税については200㎡以下の小規模住宅用地について評価額を1/3に、これを超過する部分については2/3の評価額です。

新築住宅等における固定資産税の軽減措置

前項においては土地(宅地)における固定資産税の軽減措置についてご説明いたしましたが、住宅を新築した場合にも建物を対象にした軽減措置が用意されています。

なお、対象となるのは居住部分の床面積が50㎡以上~280㎡以下で、2024年(令和6年)3月31日までに新築された住宅について、下記の期間限定で税額が1/2となります。

  • 新築戸建て/期間3年
  • 新築マンション/期間5年

また、新築する建物が長期優良住宅の認定を受けている場合には

  • 新築戸建て/期間5年
  • 新築マンション/期間7年

となります。

※併用住宅については建物全体の1/2以上が住居であることが条件となります。

※建物の固定資産税の軽減措置を受けるためには申告手続きを行う必要があります。

耐震改修、省エネ改修等のリフォーム工事に関する軽減

ここまで新築住宅について解説を行ってまいりましたが、中古住宅についてはリフォーム工事を行った際に固定資産税の軽減措置を受けることができます。

なお、軽減措置の対象となる工事内容と軽減率は下記の通りで、2024年3月31日までに行われた工事に関して翌年度の税額が軽減されることとなります。

  • 耐震リフォーム・・・軽減率1/2
  • バリアフリーリフォーム・・・軽減率1/3
  • 省エネ住宅リフォーム・・・軽減率1/3
  • 長期優良住宅リフォーム・・・軽減率2/3

不動産売買における固定資産税等の精算

ではここからは、不動産取引の際に行われる固定資産税や都市計画税の精算についてご説明していきましょう。

既にお話しした通り、固定資産税等の支払義務があるのはその年の1月1日に、登記簿謄本において所有者として記載されている者ですから、不動産の売買が完了しても、当該年度の固定資産税等は売主が行わなければならないのが通常です。

例えば、2月に買主へ物件の引き渡しが行われても、その年の固定資産税は1月1日現在所有者であった売主に請求が行ってしまう(通常は4月頃、納入通知書が売主に届く)という訳です。

そこで不動産売買においては、物件引渡し時に1年分の固定資産税・都市計画税を日割りで精算するのが慣例となっています。

*固定資産税の精算については特に法令上の定めがある訳ではありませんので、売買契約書の条文により精算の方法等を定めます。

そして、実際の精算方法としては物件の引渡し日をもって、税額を日割りで精算することになるでしょう。

売買時の固定資産税等の精算例
  • 当該年度の固定資産税等の税額/120,000円
  • 物件引渡し日/2月27日
  • 売主の負担額 税額120,000円 × 58日/365日 = 19,068円
  • 買主の負担額 税額120,000円 × 307日/365日 = 100,932円
  • 買主は引渡し時に19,068円を売主へ支払うことで精算が完了する

ちなみに上記の計算例では1月1日を起算日としていますが、これは関東圏における商慣例であり、関西では4月1日を起算日とするのが一般的ですので、、地域によって日割り精算額に違い出る可能性がある点には注意が必要です。

ところで、固定資産税等の精算を行う際の基準となる税額については、春先に売主の手元に納付書が届けられますし、4月1日以降なら役所で公課証明などを取得することで、その税額を確認することができますが、問題となるのは1月~3月末に行われる物件の引渡しです。

この期間は、その年に課税される固定資産税・都市計画税の税額を知る術がありません。

こうした場合には、

  1. 一旦前年の税額で固定資産税等の精算を行い、後日税額が確定した段階で再精算をする。
  2. 売主・買主合意の上で「前年の税額を精算額」とし、当年の税額との間に差があっても互いに異議を申し立てない取り決めを行う。

というどちらかのパターンで処理されることとなります。

 

また、新築の建物についても、少々独特な処理の方法が執られます。

引渡しの年の1月1日に建築中(未完成)の物件は、非課税となりますから、このパターンの場合には建物についての固定資産税等の精算は不要です。

但し、税金の支払いを逃れるため、完成しているのに故意に登記を行っていない場合などには、課税の対象となってしまうこともありますから、こうしたケースで4月までに引渡しを行わなければならない際には、

  1. 予想に基ずく税額で精算を行い、税額確定後に改めて精算をする。
  2. 予想に基ずいた税額で精算を行い、以後の再精算は行わない。
  3. 引渡し時には精算を行わず、税額確定を待ってから精算を行う。

以上のいずれかのパターンで処理されることとなります。

なお「予想に基ずく税額」の算出に際しては、物件が所在する地域を管轄する法務局のホームページなどを見ると、木造新築建物1㎡/●万円、鉄筋コンクリート新築建物1㎡/●●万円といった具体に「計算の基準となる単価」が示されていますので、この基準単価を基に税額の計算を行うのが通常です。

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固定資産税まとめ

さてここまで、固定資産税という税制の概要や特徴、そして評価額から税額を求める計算方法などを解説してまいりました。

もちろんマイホームとして戸建てを一棟、マンションを一部屋というのであれば、それ程に固定資産税を負担に感じることはないかもしれませんが、

複数のアパートや賃貸マンションを保有していたり、先祖代々広大な土地を相続して来たという方にとっては、この税金は正に大問題となることでしょう。

また、彼の高級住宅街「田園調布」などに家を持っていれば、一般的な広さの戸建てでも法外な金額の固定資産税を課せられることになりますから、その負担は大変なものとなるはずです。

なお、このようなお話しすると「そんな地価の高い場所に家を買うのがいけない!」などと思われるかもしれませんが、

『先祖代々その地で暮らし、極普通のサラリーマンをしているのに毎年何百万円も税金を払わせられている』という方も多いですから、決して自業自得などとは言えませんよね。

固定資産税に関する知識は身に着けておいて決して損はないものですし、多くの不動産をお持ちの方には必須の情報となりますから、是非この機会に固定資産税への理解を深めていただければと思います。

ではこれにて、「固定資産税の計算方法や課税の仕組みについて解説いたします!」の知恵袋を締め括らせていただきます。