『そろそろマイホームを購入しようか・・・』、私たちは人生の様々なシーンでこうした想いに駆られるものです。
結婚や出産、就職や昇進をきっかけになど、そのタイミングは様々でしょうが、その決意を固めた時には「分譲マンションを買うべきか、戸建てを買うべきか?」、そして「新築にするか、中古にするか?」という選択を迫られることになるでしょう。
ちなみに『マンションと戸建ての選択』については、過去記事「マンション購入の注意点について!」にて既に解説をいたしましたし、
『新築と中古の選択』に関しても「新築・中古どっちが得か?について解説します!」という記事の中でご説明をさせていただきました。
そして、これらの記事をご一読いただければ、実は中古の戸建てを購入するのが「最もリスクの高い選択肢」であることに気付かされるはずです。
しかしながら、家庭の事情などにより「たとえリスクが高くとも、中古戸建しか購入の対象となり得ない!」という方も少なくないでしょうから、本日は中古売買をより安全に行うための知識をご紹介させていただきたいと思います。
では、中古戸建て購入の注意点について!の知恵袋を開いてみましょう。

中古住宅潜むリスク
冒頭にて「中古戸建の購入には多くのリスクが潜んでいる旨」をお話しいたしましたが、まずはその危険性について例を挙げながらご説明をして行きたいと思います。
瑕疵担保責任
中古住宅の購入で最もリスキーな事柄に挙げられるのが、建物の隠れたキズによって引き起こされる「瑕疵担保責任」の問題です。
不動産の売買においては、土地や建物に瑕疵(雨漏りや建物の傾きなどの欠陥)があった場合に備えて、その責任の所在(責任の取り方)に関する取り決めが行われます。
そして一般の方同士の売買であれば、通常は6ヶ月から3ヶ月くらいの期間を設け、この期間内に発見された瑕疵については「売主が責任を負う」と定められるのが通常です。
但し、状況(建物が極端に古い場合など)によってはこの期間を一切設けない「瑕疵担保免責」という契約形態も存在しますので、このパターンですと引渡し後にどのような問題が発覚しても、売主に責任を負わせることができません。
また、たとえ瑕疵担保責任を負う期間が設けられていたとしても、欠陥がその短期間内に明らかになるとは限りませんし、仮に瑕疵に気付いたとしても、売主に賠償能力が無ければ、結局買主が自腹でその補修に当たらなければならなくなってしまうのです。
リフォーム費用の問題
中古住宅購入の最大のメリットは、何といっても『新築と比べた場合の価格のお手頃さ』であるかと思います。
しかしながら、中古住宅の値付けは「土地の価格」と「建物に残された価値」によって決定されますから、価格が安いということはそれだけ建物が傷んでいる可能性があるということでもあるのです。
また、「前所有者が住んでいたそのままの状態で当面暮らす」というのであればまだしも、リフォームを完了してから入居しようとお考えなら、更なる注意が必要となります。
リフォームの内容が「クロスの貼り替え」や「ルームクリーニング」くらいであれば、施工費用も安価に抑えることができるでしょうが、「フローリングの貼り替え」や「ユニットバス・システムキッチンの交換」などを行うとなれば、100万、200万という高額な工事費用が必要となりますから、当初考えていた資金計画に『大きなズレ』が生じる可能性があるのです。
更に不動産の売買においては、給湯器や床暖房などの「建物の付帯設備」が取引対象に含まれていることも珍しくありません。
そして、こうした建物付帯設備については、先に述べた建物の瑕疵担保責任とは別に、独自の保証期間が設けられるのが通常ですが、その保証期間は短いと数日、長くても数週間となるケースが殆どなのです。
※売買契約に際しては付帯設備表という書面を取り交わし、この書面の中で「故障無し」と謳われた設備については保証期間の取り決めが行われる。(付帯設備表において「故障あり」となっている場合は、当然保証期間は定められない)
よって、保障期間終了後に湯沸かし器や食洗器などが故障すれば、売主からの保証を受けることができないことはもちろん、交換・修理にかなりの費用を要することになります。
更に外壁や屋根の状態によっては、購入して数年後にはメンテナンスのための塗り替えや葺き替えが必要になりますから、中古戸建てのリフォーム計画を立てる際には、不動産会社や建築会社からのアドバイスを聞きながら慎重にプランを練り込んでいくことが重要です。
実は割高な買い物である可能性
中古住宅の購入に際しては、設定されている売買価格についても「適正であるか否かを確認する必要」があります。
新築戸建て(建売物件)の場合には、周辺に競合物件が多いため、分譲主も充分な市場調査を経て、周辺の不動産相場に基づいた値付けを行わなければなりません。(高額な値付けをすれば売れ残ることになります)
これに対して中古住宅の場合には「売主の希望」や「住宅ローンの残高」が価格に反映され、相場より割高な値段で売りに出されていることも珍しくありません。
そして、このようなお話をすると「それは中古分譲マンションも同じなのでは?」というお声も聞えて来そうですが、マンションの場合には少々事情が異なる側面もあります。
分譲マンションの場合ですと、戸数が圧倒的に多いため売買事例の調査も大変に容易であり、場合によっては少しネットで検索するだけでも、分譲当時の販売価格や取引事例を調べることができるため、購入希望者が容易に『割高であること』に気付くことが可能です。
しかしながら、中古戸建ての場合には同じ築年数の建物でも、土地の大きさや形状、道路に接する向きや道路幅によって価格が大きく変動しますから、素人が適正価格を判断するのは非常に困難な作業となるでしょう。
こうした理由から、中古戸建てでは「割高な物件であるのを知らずに購入してしまうケース」が少なくないのです。
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リスク回避の手法をご紹介!
さてここまで、「中古戸建ての購入に伴って生じるリスク」を検証してまいりました。
そして本項では、こうしたリスクを上手に回避する手段について、ご説明して行きたいと思います。
不動産業者売主の中古戸建を購入する
過去の記事おいて分譲マンションのリノベーション販売のお話をさせていただきましたが、近年では「その戸建て版」ともいうべきリノベーション戸建ての販売も増えて来ています。
こうした物件を選択すれば、「リフォーム費用も込みの価格」で物件を購入することができますし、不動産業者が売主の場合には『瑕疵担保責任を引渡しから2年間は負わねばならないルール』となっていますから、非常に安心感のある取引が可能となるはずです。
また万一の場合にも、瑕疵担保責任を負うのが不動産業者であれば、手厚い保証を受けられる可能性も高まるでしょう。
信頼の置ける建築屋さんや設計士と物件の確認を行う
中古戸建ての購入に際して、もしも建築業界にお知り合いが居るようなら、売買契約を締結する前の段階で「建物の総合的な診断を受けておく」のも、取引の安全性を確保するのに非常に有効な方法となります。
もちろん契約締結後でも建物の調査は可能ですが、瑕疵が明らかになった場合に「売買価格の調整」などを行うのはの非常煩わしい作業となりますから、タイミング的にはやはり「契約前」がおすすめです。
なお調査をお願いする業者さんは、経験豊かな「建築屋さん」か「設計士」、若しくはその両方が適当だと思いますが、知り合いがいないという方には、有料で建物診断を請け負う業者もおりますので、これらを利用してみるのも良いでしょう。
瑕疵保険に加入した物件を購入する
既にお話しした通り、「不動産売買において最も取引上のリスクが高い」と言われるのが中古戸建てとなりますが、このような状況を放置すれば不動産市場の活性化が望めるはずもありません。
そこで国土交通省はインスペクションと呼ばれる住宅検査制度を整備し、この検査に合格した住宅については瑕疵担保責任に対する保険(欠陥が明らかになった際に保険金が受け取れる)に加入することのできる制度を立ち上げました。
また、この制度を世間に広く浸透するために宅地建物取引業法を改正し、中古物件の売買に際して、仲介業者は売主に対して「インスペクションを受けるように勧める」ことを義務付けた上、瑕疵保険に加入した物件については税制面の優遇を行うルールを定めたのです。
もちろん、売主にはインスペクションを受ける義務も、瑕疵保険への加入を強制されることもありませんが、国土交通省は「瑕疵保険に入っていない物件は選ぶべきではないという風潮」を作り出そうしているのでしょう。
また、こうした背景の下で徐々に「住宅検査に合格し、瑕疵保険に加入した中古戸建て」が増え始めておりますので、こうした物件を選べば安全に中古戸建てを購入できる可能性は高まるはずです。
ちなみに、売主の意向で瑕疵保険に加入していない物件については、購入の条件として「瑕疵保険に加入して欲しい」などの要望を出すこともできますし、インスペクションの料金や瑕疵保険の加入料はそれ程高額ではありません(二つ合わせても20万円以下であることが殆ど)ので、どうしても売主が拒否する場合には『費用は買主が持つ』という条件を提示してみるという方法もあるでしょう。
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中古戸建の注意点まとめ
さて、これまでご紹介して来た手法を用いれば、非常にリスクが高いと言われる中古戸建の購入も、かなり安全なものとなるはずです。
「どうしても中古戸建を購入しなければならない」というご事情がある方には、是非ご紹介した手法をお試しいただければと思います。
但し、取引対象が木造の戸建てである場合には、その建物の価値はおよそ30年で償却される(税務上の価値ではなく不動産取引における価値)ものとなりますし、どんなに大切に住んでも50年住み続けるのはかなり厳しいのが現実です。
よって築20年以上の中古住宅ともなれば、価値のある期間は残り10年ということになりますし、しっかりと修繕工事を行っても住めるのは30年程度となるのを覚悟した上で、購入の決断をするべきでしょう。
なお戸建ての購入を有利に進めるには、土地の面積や地形、接する道路の種類や水道・下水の引込み状況など様々な知識が必要となりますが、これらの詳細については管理人が出版しているアマゾン・Kindleの電子書籍にてガッチリと解説しておりますので、是非ご一読いただければ幸いです。
ではこれにて、「中古戸建て購入の注意点について!」の知恵袋を閉じさせていただきたいと思います。