マイホームを購入するに当たっては、建物に関して様々な打ち合わせを行わねばなりません。

そして注文住宅ともなれば、外壁をサイディングにするかモルタル仕上げにするかの選択から、内装部材、キッチンやユニットバス、壁紙など全てを決めなければなりませんので、その労力は膨大なものとなるはずです。

一方、建売住宅の場合には「既に完成済み」というケースも多いので、『色々と選ぶのは面倒だ』という方には打って付けですが、未完成の物件を購入してしまうと外壁材の柄や外構工事などについて選択を求められることも少なくありません。

なお、外壁に関してはあまり選択の余地がないのが通常ですし、売主のおすすめなどを参考にすれば意外と決めやすいものですが、「外構」に関しては『何をどうしてよいものやら?』という方も多いようです。

そこで本日は不動産屋さん的におすすめな外構デザインや、部材の選び方などについて、ご提案をさせていただければと思います。

では、戸建て外構工事に関する知恵袋を開いてみましょう。

戸建て外構工事

 

外構工事ってどんなもの

冒頭ではサラリと「外構工事」と述べてお話を進めてしまいましたが、『外構って、何のことだろう?』とお思いの方のために、簡単にご説明をさせていただきます。

外構工事とは、別名「エクステリア」などと呼ばれる建物の外回りの工事を指す言葉です。

通常、ハウスメーカーや工務店が「戸建ての工事」として請け負うのは建物本体のみとなりますから、建物が完成した段階では土の上に基礎が剥き出しの戸建てが建築されているのみの状態となってしまいます。

よってオプション工事として、建物周りの工事(外構工事)を発注しなければならないのですが、建材メーカーのエクステリアカタログなどには、様々な商品がドバっと並べられている上、辞書の様に分厚いものが殆どですから、「選べと言われても困惑してしまう」という方も少なくないようです。

なお、主な工事内容としては、土地の周囲を近隣の土地から囲むための「ブロック塀とフェンス」、そして駐車スペースを含めた「コンクリートの土間」

また必要があるならばポストやインターフォン、表札・照明の機能を一括で担う「機能ポール」と呼ばれるものの設置が一般的なものとなるでしょう。

但し、「どのような工事が必要か」が判っても、選べる部材の数は膨大ですし、ブロックなどは「何段積むか?」なども決めなければならない上、良かれと思って選んだものが『後々使い勝手が悪い』なんてこともありますから、これは大いに不安ですよね。

工事内容に別におすすめの外構をご提案

そこで本項では、個々の工事項目ごとに「不動産屋さん目線でおすすめしたい工事」や「これはやめた方が良い!」という工事内容についてお話ししてみたいと思います。

ブロック塀とフェンス

ではまず、建物が建つ敷地の周りをグルリと囲むブック塀とフェンスのお話から始めましょう。

街で見かける古い建物などには、見上げる程の高さまでブロックが積み上げられた塀を目にすることがありますが、現在では建築基準法の関係で自由な高さにブロック塀を積むことができないルールとなっています。

ちなみに通常の工法でブロックを積むことができる高さは120cmまでとされており、高さの足りない分はメッシュフェンス(アルミ等で作られた網状・格子状のフェンス)などで補うのが通常です。(控え壁がある場合には塀の厚み10cmで高さ2mまで、厚み15cm以上なら高さ2.2mまでのブロック塀の設置が可能)

控え壁

 

※控え壁を作るにはスペースが必要となるため、土地の面積にある程度の余裕がないと設置ができない場合があります。

なお、積み上げるブロックには様々な種類のものがありますが、一個当たりの高さは20cmという規格が通常ですから、3段積めば60cm、6段積めば120cmのブロック塀となります。

但し、1段目のブロックはその半分の高さにあたる10cm程が基礎として地中に埋まることになりますから、この埋没部分の高さを考えてブロックの段数を指示しなければなりません。(現場の状態によってはブロックまるまる一個分の20cm程が埋まる場合もあります)

なお、ブロックの上に設置されるフェンスの高さは60cm又は80cmが通常の規格となります。

ブロック

塀に使用されるブロックについては、昔ながらの無地でコンクリートの質感剥き出しのものから、表面にデザイン柄を施したものや、建物の外壁の色と合わせやすいように彩色がされたものまで、様々な種類を選ぶことができます。

但し、物によっては非常に単価が高いものもありますから、建売などの場合には使える部材と積み上げられる高さに制約があるはずです。

なお近年では「大地震への備え」として、また「近隣のお宅に圧迫感を与えないようにとの配慮」から、ブロック3段~4段積み程度の現場が殆どとなっています。

また、土地の境界線上には隣地との敷地境を示す「境界標(石杭やプレート、鋲などの種類がある)」が設置されていますので、石杭がある場合にはカッターでブロックに切り込みを入れ、境界標を見えやすくするのが通常です。(プレートや鋲についてはブロック塀に直接設置されるケースもある)

フェンス

こちらも多くの種類がカタログには並んでいますが、建売物件の場合ですと「非常に細い鉄線を細かく編み込んだフェンス」が一般的でしょう。

フェンス

 

もちろん追加費用を払えば、様々なデザインの物が選べますが、視線を完全にカットするような表面積が大きな製品は非常に高額なものとなりますので注意が必要です。

また、不用意に目隠しフェンスを設置するとブロックを高く積んだ場合と同様に、近隣から圧迫感があるとの苦情が入る可能性もあるでしょう。

なお、もっと高いフェンスが必要という方には、60cm、80cmのフェンスを二枚重ねることで高さを稼ぐことが可能ですが、当然材料費も2倍かかることになります。

土間・駐車場

ブロック塀とフェンスの仕様が決まれば、次は敷地の内側の工事内容を検討しなければなりません。

ちなみに建物のみが完成した状態では、これから土間などを敷設することを前提に「玄関のレベルがかなり高い位置に設定されている」のが通常であり、そのままでは玄関ポーチに上がるのにも一苦労するはずですから、土を入れたり、砂利を敷いたりといった作業が必要になります。

但し、砂利は荷重が掛かれば沈下して行きますし、土は雨で流れてしまうため、駐車場や玄関など、「荷重が掛かる場所」や「人間が行き来きする通路」にはコンクリートの土間を作る必要があるでしょう。

ただ、土間を敷くといっても「単にコンクリートを流し込めばよい」というものではありません。

自動車などの出入りがあれば、単にコンクリート流し込んだだけの土間はドンドン自動車の荷重で沈み込んで行きますから、しっかりと配筋を張り巡らせた上から、コンクリートを流し込む必要があります。(配筋以外にも、転圧や砕石を敷く作業も必要です)

配筋

 

なお普段、人が歩くことのない物件のまわりの土地は、土のままか、砂利でも問題はないでしょう。

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土間のデザイン

さて、前項でお話しした通りの下処理を行えば、自動車の荷重に耐えられる土間が出来上がりますが、コンクリートを流し込んだだけでは、その見た目が非常にシンプル(殺風景)なものとなってしまいますので、土間にもデザイン性を加えて行くの通常です。

そこで以下に、よく見掛ける土間装飾のバリエーションについて解説して行きましょう。

スリット

スリットとは土間の中に設けられる、5cm程度の幅を持たせた切れ込み(土間の表面を走る溝)となります。

コンクリート土間はある程度の面積ごとに「切れ込み」を入れておかないと『ひび割れ』を起こしてしまいますので、スリットは施工上不可欠な「切れ込み」にデザイン性を持たせたものとも言えるでしょう。

但し、幅5cm程度とは言っても通行の際に足を捕られる可能性がありますので、スリット内には土か砂利を入れるのが一般的であり、土の場合なら「芝生」や「竜の髭」などの植物を植えることも少なくありません。

スリット

 

敷 石

土間の装飾で最も手軽にできるのが、敷石による装飾です。

コンクリートで打った土間が乾く前に、レンガやタイル、自然石などを埋め込んで、デザインを施して行きます。

但し、材料費がかなり高額となるため、広い範囲に敷石を施すのは資金面でそれなりの覚悟が必要です。

敷石

 

砂利敷き

敷石と同じ要領で、「砂利を土間に埋め込む」という装飾もしばしば見受けられる手法です。

但し、大きめの砂利を敷くのは少し古臭い印象となってしまうので、近年は粒の細かい明るい色の砂利をビッチリ敷き詰めるのが主流となっています。

この手法のメリットは「工事費用を安く上げられ、見栄えも悪くない」という点になりますが、施工業者の腕が悪いと、時間の経過と共にポロポロと砂利が剥離してしまう場合がありますので、この点には注意が必要です。

機能ポール

玄関が前面道路から直ぐの位置にある場合には、建物の外壁に直接「郵便ポスト」や「インターホン」を取付けるのが通常ですが、道路まである程度の距離が空いている物件では、「機能ポール」を設置することが多いでしょう。

機能ポール

 

機能ポールは柱状の本体に、郵便ポストやインターフォン、照明や表札などの機能を加えたものであり、来訪者がわざわざ玄関まで歩かずとも、敷地の入り口で郵便物の投かんや、家人の呼び出しが可能となる設備です。

なお価格が高くなればなる程に、重厚で見栄えの良い商品となって行きますが、高額なものでは30万円以上の値段となりますから、建売の場合には追加料金を支払わない限りあまり立派なものは設置できないでしょう。

ちなみに、電灯やインターフォンに使用する電気配管はコンクリート土間の下を通すのが通常となりますので、土間を打つ前に設置位置を指示する必要があります。

また、地中にある程度埋め込まなければならないので、水道管や散水栓などがある場所には設置ができませんし、完成してみたら「自動車のドアの開け閉めに邪魔だった」というケースもありますので、取り付け位置の決定には少々考慮が必要です。

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外構工事についてまとめ

さてここまで、一戸建ての外構工事についての解説を行ってまいりました。

建物本体に係る工事ではありませんが、外観という意味では大きな意味を持つ工事となりますから、出来る限りの配慮と工夫は施したいところですよね。

またブロック塀の設置などについては、防犯に係る要素も加わって来ますので、後々後悔しないためにも、じっくり考え抜いた上でプランを決定するべきだと思います。

外壁と並んで建物の「顔」を決定付ける外構工事に、本記事をお役立ていただければ望外の喜びです。

ではこれにて、「戸建て外構工事について考えてみたいと思います!」の知恵袋を閉じさせていただきたいと思います!