これまで本ブログでは不動産投資家様に向けて、「訳あり物件購入で稼ぐ不動産投資法」「分譲マンションのオーナーチェンジ賃貸物件で稼ぐ方法」などをご紹介してまいりました。

しかしながら、如何に奇抜な投資手法であっても一旦世間に知られてしまえば、あっという間に広まってしまうものですから、収益物件の市場では慢性的な物件不足が続く結果となってしまっています。

そこで本日は、「なかなか収益物件の仕入れができない」という方に向けて『建物切断(減築)』という驚きの手法を用いた投資法をご紹介いたしましょう。

建物を切断

 

意外に知られていない物件切断(減築)という手法

冒頭でのお話を聞いて「建物切断って一体なに?」と思われた方も多いでしょうが、これはその言葉通り、

建物を部分的にカットして取り壊し、残った建物を使用できる状態に修復する作業

となります。

このようなお話をすると『そんなことが可能なの?』というお声も聞えて来そうですが、こうした工事は「減築」と呼ばれ、建築の世界では当たり前に行われているのです。

もちろん、鉄骨造や鉄筋コンクリート造の建物を切断しようとすれば工事に莫大な経費が掛かってしまいますが、木造建築の場合には「解体費プラスアルファ」くらいのコストで施工が可能となります。

ちなみに「減築の工程」を簡単にご説明すれば、

  1. 建物の不要部分の取り壊し
  2. 破壊された面に外壁の再構築
  3. 建物の内装の復旧

といった流れで工事は完了となります。

また以前にお届けした記事では、建築基準法における新築、増築時の建築確認や検査済証の取得などについてご説明いたしましたので、『そもそも法令上、減築などという工事が許されるの?』という疑問をお持ちの方も多いでしょうが、結論から申し上げれば「問題なし」というのが答えとなります。

新築はもちろん、増改築についても非常に厳しい制限を加える建築基準法ですが、減築(建物をカットする工事)については『ほぼ規制が無い』というのが実情なのです。

但し、以下のケースに当てはまる場合には、

  • 建物の主要構造部分が大幅にカットされる
  • 3階建て以上の建物等
  • 今後、建物を売却する可能性がある

建築確認の申請を行なっておいた方が良いケースもあります。

「あまりに規模の大きな減築」は建物の耐震性等に影響を及ぼす可能性がありますし、「建築に際して構造計算を要する3階建ての建物等」を減築する際には慎重に作業を進める必要があるでしょう。

そして対象の建物を売却する際には、建築確認を取得せずに減築を行なっていることが「売買価格減額の要因」となりますのでお気を付けください。

ちなみに実際に減築工事が行われる理由としては

  • 建物が広すぎて維持管理が困難になった
  • 地震等の災害で建物の一部が破損した場合の対処として
  • 耐震補強工事の一環として

以上のようなケースが考えられます。

「若い頃は広い家が必要と考えていたが、年齢を重ねる内に掃除が面倒になって来た」といった理由で減築工事が実行に移されるパターンも多いようですし、「台風や地震などで建物の一部が損壊したのを切っ掛けに、建物をコンパクトにする」という決断をされる方も少なくありません。

なお、「減築」と「耐震補強」というのは一見相反する作業にも思えますが、地震発生時に建物が倒壊する原因には「そもそも建物自体のバランスが悪い(L字型の建物など)がために、屋根瓦の重みに耐えられず斜めに潰されるパターン」も多いですから、建物を切り取ることよって『より倒れ辛い建物の形状(直方体に近付ける)』のは有効な対策となるでしょう。

このように「建物を切断する」と聞くと、思わず『ギョッ』としてしまう方も多いことと思いますが、実は意外に「世間では一般的に行われて工事内容」となっているのです。

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建物を切断(減築)して投資を有利に進めよう

前項の解説にて「減築工事が如何なるものなのか」はご理解いただけたことと思いますので、ここからはこの工事を利用して不動産投資を有利に進める手法についてご紹介して行きたいと思います。

そして、まず前提として申し上げたいのが減築工事投資法は別記事「土地の分割売却で収益を上げるよう!」にてご紹介した手法と併用することで、その真価を発揮する投資法であるということです。

土地の分割売却投資法についての詳細は上記のリンク先をご参照いただければと思いますが、この投資法においては

現在建てられて建築物に付属した『建築確認上不要な残地』を第三者に売却することによって、売却収益を手に入れることが「投資の肝」

となります。

つまり、通常の不動産投資が「毎月上がって来る賃料収入で少しずつ利益を上げて行く」のに対して、この手法では『土地の一部を転売して、その利益を物件購入価格に充当することで、物件の利回りを一気に向上させる手法』となるのです。

但し、「必要以上に土地が余っている物件」は意外に少ないため、「分割売却投資法のやり方を知っていても、なかなか実行に移せない」という弱点がありました。

その点、この建物切断を行えば、

建物を小さくすることで意図的に不要な土地を生み出すことができますから、分割売却が行えるチャンスが大幅に増えることになる

という訳なのです。

ではここで、具体的な例を挙げて減築と土地分割を用いた投資手法のご説明を行っていきましょう。

現実にはあり得ない面積の物件ではありますが、仮に

  • 土地/面積100㎡
  • 建物/建築面積100㎡、延べ床面積200㎡の総2階(1、2階が同じ面積)の木造建築
  • 間取り/1・2階共に貸室が4部屋(合計8部屋)
  • 物件取得価格/1億円
  • 空室率/50%
  • 月額賃料収入/40万円(4部屋分)
  • 表面利回り/4.8%

という中古アパートを購入したとしましょう。

そして、このアパートを半分の大きさまで減築して、更地となった50㎡の土地を切り売りするのが今回の計画となりますので、以下の手順で物件の加工を進めていきます。

  1. 取り壊す側のお部屋の入居者に、残す側のお部屋への移動をお願いする
  2. 減築工事の開始
  3. 工事完了後、土地の分筆を行う
  4. 分筆した土地を売却する

さて、この物件加工の手順をご覧になって『そんなに簡単に入居者のお部屋の移動が可能なのか?』という疑問を持たれた方も多いことでしょう。

もちろん「移動先のお部屋の間取りが全く違う場合」は問題となりますし、「無料で移動しろ」とも言えないでしょうが、

移動先のお部屋をある程度リフォームした上で、引っ越し代なども支払えば、喜んで移動してくれる入居者も多いはずです。(私が挑戦した時はあっさり受け入れてもらえました)

※解体する側の壁に面するお部屋の入居者には仮住まいを用意する必要があります。

また、減築が完了した後の土地の買い手については「建売屋さん」と呼ばれる戸建て分譲業者が最適となるしょう。

こうした業者は減築を行う前の段階で価格を提示してくれますし、近年では一般の方の土地購入価格に勝るとも劣らない高値で買取りを行ってくれるケースも珍しくありません。

その上、不動産業者への売却であれば物件の瑕疵(隠れた欠陥/契約不適合責任)も免責にすることができますので、取引を非常にスムーズに終えることができるでしょう。

こうして買い手を見付けることができたなら、土地家屋調査士に土地の分筆を依頼して、後は売買契約の締結と決済・引渡しを行うのみとなるでしょう。

こうして土地全体の半分に当たる50㎡の土地を5000万円で売却できたとすれば、

  • 土地/面積50㎡
  • 建物/建築面積50㎡、延べ床面積100㎡の総2階(1、2階が同じ面積)の木造建築
  • 間取り/1・2階共に貸室が4部屋
  • 物件取得価格/5000万円
  • 空室率/0%(満室)
  • 月額賃料収入/40万円(4部屋分)
  • 表面利回り/9.6%

というスペックの物件を購入したのと同じこととなる訳です。(工事費用や土地の譲渡所得税等は発生しますが)

ちなみに、建物切断投資法で成功を収めるには立退きやお部屋の移動に手間の掛からない「空室率の高い物件」を選ぶのがポイントとなります。(当然ながら空室がなければ部分解体もできませんし)

そして投資物件の市場においては「空室率が高い物件は、そうでない物件と比べて割安な価格設定が行われることが多い」ですから、『安価で物件を取得して、空室部分をカットした上で余剰地は売りに出す』という非常に効率の良い投資が行えるという訳なのです。

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建物切断(減築)投資法まとめ

さて、ここまで見て来たのが建物切断工事と、それを利用しての不動産投資テクニックとなります。

なお、実際にこの投資法を実行される場合には下記の点にご注意をいただければと思います。

  • 「確定測量(隣接する土地との境界確定)」が完了していない土地では分筆(土地の切り取り)が行えないため、『確定測量が可能な物件』を選ぶ
  • 分割完了後に、「残す方土地にどの程度の大きさの建物が建築可能か」を事前に設計士に確認しておくこと(分割によって「まともな建物」の建てられない土地になってしまうことを防ぐため)
  • 減築後の建物が「違反建築物ならないか」の確認を設計士に依頼する
  • 分割後に売却する土地に新たな建物が建つことによって、減築した物件の日照条件に問題が生じないかをチェックする
  • 分割売買を連続して行うには「不動産業の免許」が必要となるため、無免許の場合は継続・反復した取引をしないようにする
  • 分割売却によって得た利益には「譲渡所得が課税される」ので事前に税額を確認する

以上の点につきましては、是非ご注意いただければと思います。

なお、この減築投資法については、プロの不動産業者の方でも「そんな荒業があったのか・・・」と驚かれる方も多いはずですから、未だ『知る人ぞ知るテクニック』であるのは間違いないでしょう。

但し、不動産業界はあっと言う間にこうしたテクニックが一般的なものとなってしまいますから、試すのであればお早めの方がよろしいかもしれません。

普段、何げなく行われている取引の手法や工事も、「使い方」「考え方」次第で大きな収益を生み出すこともありますので、投資家たる者は常にお金儲けのアンテナを張り巡らせておく必要があるのかもしれません。

ではこれにて、「建物を切断(減築)して収益を上げよう!」の知恵袋を閉じさせていただきたいと思います。