不動産投資ブームと言われて久しい昨今ですが、「これから収益物件を購入する!」という方も少なからずおられるはずです。
そして、マイホームなどの購入経験があったとしても『中古アパートなどの購入は初めて』という方にとっては、様々な不安が頭をよぎっておられることと思います。
そこで本日は「投資物件購入の流れを解説いたします!」と題して、収益物件の買付けから運用開始までのポイントや注意点のご説明、そして管理人が実際に経験した中古アパート購入の体験記をお届けしたいと思います!
投資物件購入の流れ
さて、今回のテーマである投資物件購入の流れは
- 購入物件情報の収集
- 物件の下見
- 収益性・市場の調査
- 物件自体の調査
- 融資の相談
- 売買契約締結、決済(引渡し)
- 前所有者からの引継ぎ作業
- 運用の開始
という順序で進んで行くのが一般的です。
物件情報の収集については、
などの方法が考えられますが、取引の安全性を考えるのであればプロの不動産業者から情報提供を受け、仲介に入ってもらうのがおすすめとなります。
そして、入手した情報の中に気になる物件があれば、まずは現地に足を運んで物件をじっくりと下見することが重要です。
但し、マイホーム物件などとは異なり、収益物件は室内の様子を見ることができないケースが殆どとなりますから、
- 入居者に関する資料(賃貸借契約やレントロール)
- 建物図面や間取り図
- エントランスや廊下等の共用部分の状態
- 建物の修繕状況
などをしっかりと確認しながら下見を行う必要があるでしょう。
なお、この段階で「物件が気に入った!」ということになれば物件の収益性を調べるために
- 地域の近傍同種収益物件との利回りの比較
- 周辺物件の賃料相場の確認
- 賃貸中、募集中のお部屋の賃料設定に問題がないかの確認
- 地元の不動産業者への聞き込み(賃貸物件のニーズなどについて)
等の市場調査を行った上、物件自体の問題点の有無を確認するべく
を経て、購入意思の決定へと進んでいきます。
一方、購入の意思が固まったなら資金計画についても準備を進めておく必要がありますから、購入に際して融資を利用するのであれば、金融機関との事前打ち合わせも行っておくべきです。
こうして諸々の準備が整えば、売主に対して買付証明書を送付した上で購入条件の擦り合わせを行い、お話がまとまれば売買契約の締結、決済(引渡し)へとステージは進んでいきます。
ちなみに引渡し時には、物件の鍵や資料一式、敷金などの精算も行われることになりますが、
- 入居者への貸主変更通知の送付
- 誤って旧所有者へ賃料振込が行われた場合の処理
- 引渡し後に判明した物件の問題点についての相談
など、収益物件ついては決済後にも売主(旧所有者)と連絡を取り合うシーンが意外に多いのも取引の特色の一つに挙げられるでしょう。
また、この段階からいよいよ買主(新所有者)による物件の運用が開始されることになりますが、
- 管理会社の見直し
- 募集条件の見直し
- 共用部分清掃やエレベーター点検などの業者の精査
- 必要な修繕の実施
といった「行うべき仕事」は山積みの状態であるはずですから、ここからが新オーナーの腕の見せ所となる訳です。
さてここまでの解説にて、投資物件購入の流れはご理解いただけたことと思いますので、次項からは私が実際に経験した収益物件購入から運用開始までの業務体験記をお届けしていくことにいたしましょう。
収益アパート購入の流れをレポート
では早速、私が実際に経験した中古アパートの購入から運用開始までの流れを見て行きましょう。
なお、今回は会社名義での収益物件の購入となりますので、若干個人の場合とは異なる部分もありますので、その点はご容赦いただければ幸いです。
中古アパートを買う!
都内の片隅(かなりの辺境)に店を構える某不動産業者に勤務している管理人。
会社の方針で、お金になることは仲介から建売まで「何でもやるスタイル」なのですが、この当時(今から数年前)は特に収益物件の買取を強化している時期でした。
それ以前は、物件をお探しのお客様に向けて未公開の建売物件の情報を集めたり、建売用地の情報を漁ることをメインにしていましたが、『収益物件情報を集めよ』との会社の方針に従い、「買えそうな収益物件ないっすか?」と聞きながら営業先を回ることが多くなっていました。
そして、こうした営業活動の中、ある賃貸管理専門の不動産屋さんより「購入を検討して欲しい」というアパートの案件が浮上します。
対象となる物件のスペックは最寄駅まで徒歩10分、土地の大きさは40坪弱で、軽量鉄骨造の築22年という建物に2Kのお部屋が8戸備えられた小規模な物件です。
お話を持って来てくれた不動産屋さんは、長年に渡ってこの物件の賃貸管理を任されていたそうなのですが、大家さんの家計が苦しくなり、この度売却をする運びとなったといいます。
こうした売却の経緯であるため、入居者から預かっている「敷金の受け渡しは無し」というのが売買条件となるそうですが、その分の価格の相談ができるとのことなので、決して悪い話ではないでしょう。
早速、我が社の社長に物件の概要を説明した上で、共に下見へと出発します。
実は管理人、これまでそれなりの不動産取引の経験は積んで来たものの、投資物件の買取りを行うのは初めてのことでした。
生来の「トラブルに巻き込まれやすい体質」と「うっかり気質」の持ち主であるため、この時は『慣れない収益物件の売買で失敗をしてはならない・・・』とかなり緊張していたのを憶えています。
なお、会社から車で1時間ほどの場所にある物件までは道に迷うこともなく、スムーズに到着することができましたが、問題は物件に空室が無いという点になります。
事前に建築図面などの資料は頂いていましたが、お部屋の中身を見ずに購入の意思決定をしなければならないため、これは少々ハードルの高い作業となりそうです。
とりあえずは、社長と共にウロウロと物件の周りをうろついてみますが、これといった情報は得られそうにありません。
『困ったものだ・・・』と内心悩んでいると、社長の口から「これは外壁がかなり傷んでいるから、近い内に修繕工事が必要だな・・・」とのお言葉が漏れます。
言われて初めて気付いたのですが、確かに外壁の塗装は「かなりくたびれて」おり、そんなに長持ちはしそうにない雰囲気です。
またこれに加え、社長から「入居者もあまり属性(勤め先などのプロフィール)が良くなさそうだなぁ」との指摘も受けます。
改めて物件の様子を観察してみると、共用部分には入居者のものと思われる備品が雑多に放置されており、バルコニーの洗濯ものを見ても、作業服やニッカポッカなどが目に付きます。
更に自転車置き場を見れば、子供用の自転車や三輪車などが多数置かれていますから、30㎡そこそこの部屋に夫婦と子供数人で住んでいる世帯が多い様子であり、こうした状況を見た上での社長お言葉だったのでしょう。
『なるほど、なるほど、こういう感じで内部が見られない物件でも、読み取れる情報はかなりあるものなのだな・・・』と、社長の洞察力に思わず感心させられます。
そして下見を終えた帰り道の車内で改めて価格の相談をしますが、外壁工事の費用や購入後の滞納リスクなどを考え、現在提示されている売却希望価格から値引き交渉を行うことに決まりました。
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大切なのは物件調査
社長のお蔭で、現地である程度の情報は得ることができましたが、購入の意思を決定する前に『まだまだ行っておくべきこと』が残っています。
まずは物件自体の調査をすることになりますが、こちらは通常の現地調査や役所調査で充分でしょう。
調査の結果、今回の物件にはそれ程のクセ(厳しい法令上の制限や近隣との紛争に発展しそうな問題等)は無いようでしたが、隣地との境界線上に跨る古いブロック塀がありましたので、土地境界の確定に加え、このブロック塀の所有権者を明らかにすることを契約条件に加えます。
なお、収益物件の購入において一番大切なのは「アパートの収益性をしっかりと検討すること」です。
現在この物件は満室であり、現状の賃料から計算すれば15%もの利回りが取れますが、部屋が空き、新たな入居者が入った際に同じレベルの賃料が確保できるとは限りません。
そこで物件周辺の不動産屋さんを巡って、賃料相場と2K間取りのニーズがどの程度をあるかを調べて行きます。
そして聞き込みの結果、実際の相場よりもかなり高額な賃料で部屋が貸し出されていることが発覚しました。(入居者の殆どが長年住んでいるため、「現行の賃料」と「賃料相場」の間に乖離が生じている)
よって、空室が発生した際には「今より一世帯あたり5000円以上は安い値段で募集を掛けなければならない状況」となりそうです。
さて、賃料相場の調査に続いては、物件情報を提供してくれた管理会社さんにお願いして、入居者全員の賃貸借契約書と重要事項説明書、そして判る範囲での建物の修繕記録を提出してもらいます。
賃貸借契約書に関しては、たとえプロの不動産屋さんが作成したものでも、そのクオリティーはまちまちですから決して油断はできません。(通常、契約書に盛り込んでおくべき条項が記されていない場合などがあります)
ちなみに今回の案件でも、退去の際にクリーニング費用を敷金から差し引く特約は入っていませんでしたし、連帯保証人を擁立しておらず、賃貸保証会社にも加入していない入居者が存在する等の問題点が明らかになりました。
また賃料の入金記録を確認したところ、時折家賃の支払いが遅れる入居者がいるようです。
更に修繕記録を見て行くと、下水の詰まりに関する工事が異常に多いことにも気付かされます。
単に高圧洗浄をサボっているために生じた下水の詰まりであれば、それ程の問題ではありませんが、配管の勾配が取れていなかったりすると大問題なので、この辺りの事情についても詳細を管理会社へ問い合わせしなければなりません。
こうした慎重な調査を経て、ようやく購入希望価格を決定することができましたので、早速、相手方の不動産屋さんへ金額を打診してみると、後日「この価格でOK」とのお返事が返って来ます。
中古アパートの契約・引渡し
そして売買価格の合意が取れ、契約条件の擦り合わせが完了すれば、売買契約の日時を設定して、手付金の授受に、契約書の署名捺印等を行うことになります。
ちなみに私の会社は不動産業者ですが、物件を購入する以上は契約前に仲介業者から重要事項の説明を受けなければまりませんので、こちらもしっかりと済ませました。(平成29年の宅建業法改正により、現在では不動産屋さんが買主の場合は書面交付のみでOKです)
さて契約が完了したならば、決済日までに売主さんの名義で、入居者たちへ「オーナーが代わる旨の通知」を出していただき、「敷地の境界確定」や「持ち主不明のブロック塀について隣地と覚書を交わす」などの処理を終え、いよいよ引渡し(決済)の時を迎えます。
引渡しの当日は、通常の決済の流れに加え、「各部屋の鍵の引渡し」や「賃貸借契約書の原本の交付」を受けて取引は完了です。
本来であれば、敷金の精算を売買代金から差し引いて行うのが通常ですが、今回は『敷金の精算を行わないのが条件』なので、固定資産税・都市計画税、月額賃料の日割り精算のみを済ませます。
こうして私の初めての収益物件の購入作業(仕入れ)は無事に終了しましたが、最も大切なのは買った物件をしっかり運用していくこととなりますので、物件を買えた喜び以上に「身が引き締まる思いがした」ことを今でのはっきりと覚えています。
購入したアパートの運用を開始!
こうして築22年の軽量鉄骨造、8世帯(間取りは2K)の投資アパートを無事に購入できた管理人。(あくまで「会社で業務として購入しているだけ」ですが)
そして引渡しも問題なく済ませることができましたから、ここからいよいよ運用と管理を始めて行かなければなりません。
そもそもこの物件を紹介(仲介)してくれたのは、このアパートを長年管理している不動産業者さんだったのですが、「売買の後も引き続き管理をお願いしたい・・・」という私の申し出に対しては『かなり消極的』なご様子でした。
賃貸をメインにしている不動産業者にしてみれば、管理物件を増やすことそこが安定した収入を得る一番の近道ですから、管理の依頼に乗り気でないということは「何かある」と考えるのが自然でしょう。
仕入担当者である私としては、この件に『薄々気付いていた』のですが、我が社の社長は完全に利回りの高さに心を奪われており、全く意に介しておられないご様子です。
但し、行うべき業務はまだまだありますので、不安な気持ちをねじ伏せて実務をこなしていきます。
収益物件を購入に際して、まず気になるのが「賃料の振込先の変更について、混乱が生じないか?」という点になるかと思いますが、所有権の移転を行う前に旧所有者と管理会社の連名で『大家が代わる旨』を入居者全員に通知してもらっていますから、「基本的にトラブルはない」と信じてその他の手続きを進めて行きます。
そこでまずは共用部分の電気に関して、使用料の請求先を我が社に変更する手続きを行いました。
次いで給水装置(水道メーター)の所有者変更を行います。
もちろん、水道料金自体は各部屋を借りている人間が個別に契約して支払っていますが、水道メーターの権利はアパート所有者のものとなりますので、旧所有者からしっかり変更しておかなければなりません。(戸建でも同様)。
なお今回の物件は千葉に所在しているのですが、東京都には「メーターの所有権」という制度自体がありませんので、都内での取引では不要の手続きとなります。
そして、こうした事務系の手続きの後は、より具体的な維持管理についての段取りを進めて行きます。
まずは共用部分の定期清掃の手配をしなければなりません。
この規模のアパートならば、2週間に1度くらいの掃除で充分かと思われますので、見積もりをとった上で業者への依頼を行います。
また、旧所有者からもらった修繕記録を見ると下水の高圧洗浄や、消防点検を長年やっていない様子なので、こちらも順次手配を掛けねばなりません。
このようなお話をすると「そんなことまでしなくとも」とお思いになられるかもしれませんが、高圧洗浄は建物を長持ちさせるためには重要な作業ですし、消防法の違反は大きなペナルティーを受ける可能性がありますので、充分注意しておきたいところです。
なお、このどちらの作業もお部屋に入って行うものとなりますから、住人のたちの暮らしぶりを確認するチャンスという意味も含んでいたりします。
様々なトラブルの発生
こうして「新しい大家さんが行うべき手続き」を進めている内に時間は流れ、いよいよ初めての賃料収入が入って来る時期を迎えます。
そこで我が社の経理担当者へ賃料の入金状況を確認してもらいますが、「本来の収入予定額には程遠い金額しか振込まれていない」とのことです。
そこで慌てて、金額の内訳を調べてみると3部屋分の賃料が未納となっています。
まずは購入の際に仲介に入った不動産屋さんを通して、旧所有者(旧大家)に「入居者からの誤った入金が無かったか」を確認してもらうことにしました。
すると案の定、2部屋分の賃料が旧大家さんの口座に振り込まれていましたので、振替の手続きをお願いしました。
やはり、一度だけの通知で全員に周知を行き渡らせることは不可能だった様子なので、今後の収益物件の取引では大いに注意すべきでしょう。
しかし最大の問題は、純粋に滞納をしている一部屋に関してです。
早速、入居者へ電話を掛けてみますが応答はありませんでしたので、手紙や訪問を繰り返します。
その後、数回目のチャレンジでようやく入居者に会うことができたので、「以後、賃料が遅れれば連帯保証人へ即座に請求する旨」を伝えました。
もしも彼が常習的な滞納者であれば、この程度の対応で滞納が解消されるはずもないのですが、互いに初対面となりますのでまずはライトな忠告をした上で様子を見ることにしたのです。
また、現在の滞納分については「3日以内に振り込む」とのことなので、ここはおとなしく入金を待つことにします。
ところが、この入金を待つ間に別の問題が発生します。
この物件の一階を借りている住人から、雨漏りがあったとのクレームが入ったのです。
そこで普段から仕事を依頼しているリフォーム屋さんと現場の確認に行きますが、どうやら二階にある部屋のバルコニーの排水口が詰まり、プール状態となったバルコニーから行き場を失った雨水が一階の部屋の天井に流れ込んだのが雨漏りの原因であるようです。
そこで配管を洗浄して、二階のバルコニーの水を抜いてみたところ、漏水は完全に収まりました。
ちなみにこの件について、「それって契約不適合責任として、旧所有者に費用を請求することはできないの?」と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、今回の場合は配管のトラブル、それも詰まりが原因ですから売主の責任が認められることはないでしょう。
また、今回の取引は「契約不適合責任免責」が契約書に謳われていますので、たとえ建物が傾いたとしても旧所有者へ責任を追及することはできないのです。
とりあえず雨漏りに関しては『大事に至らずに済んだ』と安心していると、例の滞納者と約束した3日間が既に過ぎていることに気付きます。
慌てて、入居者・連帯保証人共に連絡を入れてみますが、二人とも音信不通の状態です。
ただ、このまま放置すれば舐められるだけですので、とりあえず両者に内容証明を送り付けたところ、即座に滞納分は振り込まれ、翌月以降はしっかり賃料が入金されるようになりました。
その後も様々なトラブルを引き起こし、非常に手を焼かされるとになるこちらの物件ですが、会社的には毎月固定収入が入るのは非常に有り難いらしく、私の苦労を尻目に、社長の「収益物件買いたい欲」は益々過熱していくのでした。
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投資物件購入の流れを解説!まとめ
こうして今現在も社有物件として運用されているのが、私の「収益物件買取一号」となったこのアパートです。
また、この仕入れを通して思い知らされたのが、投資物件の購入は「買うまで」より「買った後の方が遥かに面倒である」という教訓でした。
よって購入の段階から、将来的に発生するリスクを充分に把握し、それに見合った価格で購入することが、投資物件を購入する上で何よりも大切なこととなるでしょう。
また、今回の物件は購入後に管理会社が管理を継続しなかったため、「何かあるな・・・」と思っていたのですが、実は数年後にその心配が現実のものとなります。
その顛末については、また改めて記事に致しますが、既存の管理会社の動向(管理を引き続き行うか、否か)も物件のリスクを計るバロメーターとなりますので、この点にも充分にご注意ください。
また、年数が経過している中古物件であればある程に、多くのトラブルが発生する可能性が高まりますから、目先の利回りに囚われることなく、正確な物件の価値を見極めることが非常に重要といえるでしょう。
ではこれにて、投資物件購入の流れを解説する知恵袋を閉じさせていただきたいと思います。