どのような買い物をするのにしても、「本体価格以外に如何なる諸費用が掛かるのか?」は非常に気になるところですよね。

自動車を買うのにも、旅行に行くのにも、イザとなったら「意外に費用が掛かる」ことが判明し、焦った経験をお持ちの方も少なくないことと思います。

そしてその対象が、マイホームという一生に一度の大きな買い物(売り物)となれば、不安な気持ちは『さらに増大してくる』はずです。

そこで本日は、不動産売買の諸費用計算について、お話ししてみたいと思います。

では、マイホームの購入と売却における諸費用に関する知恵袋を開いてみましょう。

不動産売買の諸費用計算

 

物件の売買に掛かる費用

不動産の営業マンをしていると、お客様から「マイホームの購入や売却にはどれくらいの諸経費が掛かるの?」という質問を頂くことがよくあります。

そして、マイホームの購入であれば「物件価格の8%~10%くらい」などの目安はあるものの、これでは少々『ザックリ過ぎる』という印象ですよね。

そこでまずは、必要になってくる諸費用の項目を挙げながら、ご説明を加えて行くことにいたしましょう。

①仲介手数料(購入・売却共に必要)

不動産売買に際して、最も高額な経費とされるのが「仲介手数料」であり、物件価格の3%+6万円×消費税という計算にてその価格を算出できます。

なお、物件価格が400万円以下~200万円超の場合は「物件価格の4%+2万円×消費税」、物件価格が200万円以下の場合は「物件価格の5%×消費税」と、購入(売却)対象の価格よって計算方法が異なりますので注意が必要です。

②契約書印紙代(購入・売却共に必要)

不動産の売買契約書には当然ながら「売買価格」が記されていますが、金銭の授受を証する書類には印紙を貼るのがルール(印紙税を収めるのが義務)です。

そして不動産売買については、以下のような税制が売買価格に応じて定められていますので、売買価格に応じた印紙を契約書に貼付することになります。(令和元年現在の軽減措置適用時)

  • 500万円超~1000万円以下 ・・・5000円
  • 1000万円超~5000万円以下・・・1万円
  • 5000万円超~1億円以下 ・・・3万円

なお、印紙税に関する詳細は別記事「不動産の印紙税について解説いたします!」をご参照ください。

③ローン諸費用(購入の場合のみ)

そしてマイホーム購入に際して住宅ローンを利用するとなれば、様々な諸費用が必要となって来ます。

銀行へ支払う事務手数料に火災保険料、保証料などが主なものとなるでしょう。

これらの費用は「住宅ローンをいくら借り入れるか」によって必要な金額も変わって来ますが、本項では3000万円は30年返済で借り入れた場合の試算をしてみます。

  • 銀行手数料3.5万円
  • 火災保険(契約内容によりますが)25万円
  • 保証料(30年借入)60万円

※この他にも団体信用生命保険(返済義務者が死亡した際に支払われる保険であり、この保険金によってローンの完済が可能となる)の保険料が必要ですが、通常こちらは月々の返済額に上乗せする形で支払われますので、本項では計算に加えません。

※保証料についても月々の返済に上乗せすることが可能ですが、本記事では一括払いを前提に解説を行います。

④登記費用(購入・売却共に必要)

物件売買を行う際の「権利の移動」に伴って生じる登記費用となります。

登記費用の中には、登記に要する税金(登録免許税)に加え、登記手続きを行う司法書士土地家屋調査士の報酬なども含まれます。(登録免許税の詳細は「不動産の登録免許税について解説いたします!」の記事をご参照ください)

  • 所有権移転登記費用(購入時のみ)・・・土地、建物の固定資産税評価額の2%(マイホーム購入の場合は軽減税率0.15%が適用される)
  • ※所有権移転登記費用は原則買主の負担となります。

    ※新築建物を売買する場合には、通常建物の所有権移転登記は行われず、後述する表示登記と所有権保存登記をすることになります。

  • 新築建物の表示登記(購入時)・・・新築建物を購入する際に必要となる登記であり原則無税ですが、担当する土地家屋調査士に10万円程度の報酬を支払う必要があります。
  • 新築建物の所有権保存登記(購入時)・・・・・・建物の固定資産税評価額の0.4%(マイホーム購入の場合は軽減税率0.1%が適用される)
  • ※新築建物の売買に際しては、表示登記と所有権保存登記がセットで必要となります。

  • 抵当権設定登記費用(購入時)・・・抵当権設定価格の0.4%(マイホーム購入の場合は軽減税率0.1%が適用される)
  • 抵当権抹消登記費用(売却時)・・・抵当権が設定されている場合のみ必要となる登記であり、登録免許税は1物件につき2000円となります。(土地・建物の2物件なら4000円)
  • 司法書士報酬10万円・・・土地家屋調査士が担当する「表示登記」以外の登記を行う場合には、別途こちらの司法書士報酬が発生します。

⑤その他の費用

そして最後に、不動産売買に際して必要となる「雑費的な費用」を挙げて行きます。

  • 固定資産税等清算金(購入時のみ)・・・土地の評価額に応じて固定資産税と都市計画税の精算金が発生します。
  • ※固定資産税等は売主に請求が行きますので、1年分の税額を引渡し日に応じて日割り精算することになるでしょう。

    ※固定資産税等についての詳細は別記事「固定資産税の計算方法や課税の仕組みについて解説いたします!」をご参照ください。

  • 管理費、修繕積立金の精算金(購入時のみ)・・・分譲マンションの売買にはおいては管理費や修繕積立金についても日割り精算が行われます。
  • 不動産取得税(購入時のみ)・・・土地の場合は評価額の1/2に対して3%、建物については住居で評価額の3%、それ以外の建物で評価額の4%が課税されます。
  • ※但し、一定の条件を満たす建物が建つ物件については、土地(【土地1㎡の評価額×1/2×建物床面積の2倍×3%の金額】または【4.5万円】の内、より高額の方を税額から控除)、建物(1997年以前の物件であれば評価額から1200万円の控除)と、それぞれに減税措置が用意されています。

    ※不動産取得税に関する詳細は別記事「不動産取得税とは?という疑問にお答えします!」をご参照ください。

  • 引っ越し費用(購入・売却)・・・プランや業者にもよりますが20万円~30万円
  • 中古住宅のインスペクション、瑕疵保険料(売却)・・・20万円(建物の欠陥など調べる調査費用と、引渡し後に欠陥が見付かった場合に支払われる保険の料金となります)

※インスペクションについては別記事「インスペクションとは?不動産取引の新たな潮流を解説します!」、瑕疵保険については「インスペクションと瑕疵保険について解説いたします!」の記事をご参照ください。

ちなみに購入対象が中古物件の場合には、リフォーム費用も必要となります。

仮に、床面積が100㎡(30坪)くらいの戸建てにおいてクロス全面張り替えとルームクリーニングを行うと、通常50万円程度が必要となるでしょう。

これにシステムキッチン入替え、ユニットバス交換を入れれば、更に250万円程度は必要になる点も注意したいところです。

 

以上が不動産売買に際して必要となってくる主な費用となります。

 

諸費用計算のケーススタディー

前項では、不動産売買に必要な諸経費の概略についてお話ししましたが、本項ではより理解を深めていただくために、具体的な物件の例を挙げて諸費用の計算を見ていきしましょう。

新築建売住宅購入時の諸費用計算

では、まず最初に新築建売住宅購入時の諸費用計算をシュミレーションしてみます。

なお、諸費用計算の対象となる物件は

  • 売買価格5000万円
  • 土地面積100㎡(30坪)
  • 建物面積95㎡(28.7坪)
  • 土地固定資産税評価額3500万円
  • 建物固定資産税評価額1000万円
  • ローン借入れ額4000万円(期間35年)

とします。

  • 仲介手数料・・・171.6万円(5000万円×3%+6万円+消費税)
  • 印紙代・・・1万円
  • ローン諸費用・・・116.5万円
  • ※事務手数料3.5万円+保証料83万円+火災保険30万円=合計116.5万円

  • 登記費用・・・30.25万円
  • ※土地所有権移転登記5.25万円+建物表示登記10万円+建物所有権保存登記1万円+抵当権設定登記4万円+司法書士報酬10万円=合計30.25万円

  • 不動産取得税・・・0円
  • ※土地の不動産取得税(税額52.5万円-【土地評価額3500万円×1/2×床面積の2倍190㎡×3%】=0円)、建物の不動産取得税(建物評価額1000万円-1997年以降の建物控除額1200万円=0円)、共に減税措置により「課税なし」となる。

  • 固定資産税等清算金・・・6万円
  • 引っ越し費用・・・30万円

よって表記物件の購入時諸費用合計は約355万円となります。

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中古マンション購入時の諸費用計算

続いては、中古マンション購入時の諸費用計算をシュミレーションしてみます。

シュミレーションの対象となる物件は

  • 売買価格3000万円
  • 築年1990年
  • 建物面積66㎡(20坪)
  • 土地固定資産税評価額500万円
  • 建物固定資産税評価額600万円
  • ローン借入れ額2000万円(期間10年)

とします。

  • 仲介手数料・・・105.6万円(3000万円×3%+6万円+消費税)
  • 印紙代・・・1万円
  • ローン諸費用・・・40.5万円
  • ※事務手数料3.5万円+保証料17万円+火災保険20万円=合計40.5万円

  • 登記費用・・・13.65万円
  • ※土地所有権移転登記0.75万円+建物所有権移転登記0.9万円+抵当権設定登記2万円+司法書士報酬10万円=合計13.65万円

  • 不動産取得税・・・0円
  • ※土地の不動産取得税(税額15万円-【土地評価額500万円×1/2×床面積の2倍132㎡×3%】=0円)、建物の不動産取得税(建物評価額600万円-1989年~1997年までの建物控除額1000万円=0円)共に減税措置により「課税なし」となる。

  • 固定資産税等清算金・・・5万円
  • 管理費、修繕積立金精算金・・・2万円
  • リフォーム費用・・・100万円
  • 引っ越し費用・・・20万円

よって表記中古マンションの購入時諸費用合計額は約288万円となります。

中古戸建て売却時の諸費用計算

そして最後に、中古戸建てを売却した際の諸費用計算をシュミレーションしてみます。

シュミレーションの対象となる物件は

  • 売買価格4000万円
  • 築年2000年
  • 土地面積60㎡(18坪)
  • 建物面積98㎡(29坪)
  • 土地固定資産税評価額1500万円
  • 建物固定資産税評価額800万円
  • ローン残債額1000万円

とします。

  • 仲介手数料・・・138.6万円(3000万円×3%+6万円+消費税)
  • 印紙代・・・1万円
  • 登記費用・・・13.65万円
  • ※抵当権抹消費用0.4万円+司法書士報酬10万円=合計10.4万円

  • インスペクション、瑕疵保険料・・・20万円
  • 引っ越し費用・・・30万円

よって、表記中古戸建て売却時の諸費用合計額は約203万円となります。

※不動産の売却に当たって、利益が生じた場合には別途「不動産譲渡所得税」が課税されます。

 

そして次の項では、「如何にこれらの諸費用を圧縮するか」について考えてみたいと思います。

 

諸費用を如何に安く上げるか

これまで見て来た通り、不動産の売買には「かなり高額な諸費用」が発生します。

その中でも特に大きなウェイトを占めているのが、仲介手数料・ローン諸費用・リフォーム費用の3点となりますから、これらを圧縮する方法について解説してまいりましょう。

仲介手数料

物件の購入において仲介手数料を圧縮する一番の方法は、不動産業者が売主の物件を探し、売主から仲介業者を介さずに直接物件を購入することです。

但し、「建売会社の仕事」の記事でもお話しましたが、自分が分譲している物件について積極的な販売活動を行わない建売屋さんも多いため、こうした物件を探すのには少々労力を要するかもしれません。

このタイプの物件を見つけ出すコツとしては、街で見かける建売メインの不動産屋さんに問い合わせをしまくるか、建築途中の現場を見付け出して、「建築確認の表示」に記載された施主の不動産会社に問い合わせを入れてみるというのが有効な方法となるしょう。

また、最近の仲介業者の中には、売主が不動産業者の場合は買主の手数料不要を謳っている会社や、お客が自分で見つけた物件は仲介手数料半額などのサービスを行っているところもありますから、こうした業者を利用するという手もあります。

一方、不動産の売却に当たっても「売却依頼のお客様については仲介手数料半額」などを謳っている業者も多いですし、自分自身で購入者を発見して「仲介業者に契約関係書類だけを作成してもらう」のであれば、仲介手数料を大幅に値引きしてもらえる可能性があるでしょう。

ローン諸費用

以前、住宅ローンに関する記事でも書きましたが、失敗しないローンの組み方のコツは「とにかく借入額を少なくすること」です。

今回のローン諸費用計算を見てみても、「借入額が少なければ、それに比例して諸費用も安くなる」ことがお解りいただけたことと思いますので、あらゆる手段を用いて借入額の圧縮を目指しましょう。

リフォーム費用

中古物件最大のネックが、このリフォーム費用となります。

内覧した時はあまり気にならなかった箇所も、「いざ住む」となった段階や、リフォーム業者に見積もりを取った段階で、「やっぱり工事をしたくなる」のはよくあることです。

こうした状況を回避するためには、売買契約締結前にリフォーム業者同伴でしっかりと物件の下調べをしておくか、不動産業者が売主となっているフルリフォーム済みの物件を購入するのが一番の解決策でしょう。

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売買の諸費用計算まとめ

さて以上が、不動産売買の諸費用計算についての解説となります。

不動産の購入にあたっては、どんぶり勘定で契約へ突き進むことなく、綿密な計算を行った上で無理のない取引を目指したいものです。

一方、売却にあたっては、購入の時ほどは費用が発生しないものの、譲渡所得に対する課税に対して充分な注意を払う必要があるでしょう。

また物件によっては、売却に際して土地の分筆・合筆登記、地積更正登記等、建物については解体や滅失登記などを売主の費用負担で行わなければならないケースもありますので、こうした場合には更に出費がかさむことになります。

ではこれにて、売買諸費用の知恵袋を閉じさせていただきます。