マイホームや別荘などの不動産を取得する際には印紙税や登録免許税、固定資産税など様々な税金の納付を求められるものです。
なお、これらの税金の内訳を見ていくと非常に低額なものもあれば、数十万円、時には100万円以上にも達する大変にヘヴィな税金も存在していることに気づかされますが、その中でも特に大きなボリュームを占めているのが不動産取得税と呼ばれる税金なのです。
そこで本日は「不動産取得税とは?わかりやすく解説いたします!」と題して、この取得税について詳しくご説明していきたいと思います。
取得税とは
さて、具体的な不動産取得税に関する解説を始める前に、まずはこの税金の主旨や支払先に関するご説明から始めることにいたしましょう。
不動産取得税は、その名の通り
不動産(土地、建物)を取得する際(有償無償、登記の有無を問わない)に課税される税金
となり、納付先は物件が所在する都道府県となっていますから分類としては地方税ということになります。
また「不動産取得に係る地方税」と言えば、固定資産税や都市計画税が真っ先に頭に浮かぶ方も多いでしょうが、固定資産税等が毎年納付を求められるのに対して、
不動産取得税は物件を入手した際の一回コッキリの税金
となるのが特徴です。
そして、こうした特性のある税制であるが故に転売においてたった一日、あるいは数時間物件を所有しただけでも、その所有者に納税義務が生じることになります。
ちなみに課税対象となる物件取得の方法は売買だけとは限らず、
贈与や増築であっても、不動産取得税の対象となる
のがルールです。
不動産所得税の概要
では本項では、更に詳しく不動産取得税の概要をご説明して行くことにいたしましょう。
不動産所得税の課税標準
税金と言えば、まず気になるのが「一体何を基準に税が課税されるか?」という点になるかと思いますが、
不動産取得税では「固定資産税の評価額が課税標準」
となります。
不動産所得税の税率
そして課税標準となる固定資産税評価額に対して所定の税率が乗じられて(税率を掛けて)「税額」が計算されることとなりますが、不動産取得税の税率は以下の通りとなります。
- 住宅・・・住宅取得の負担軽減税率により3%(住宅以外は4%)
- 土地・・・3%
※住宅取得の負担軽減税率は2027年3月31日が適用期限となります。
申告と納付
なお、不動産を取得したことを行政に報告する「申告」の時期については地方自治体ごとに期限が異なりますが、
早いところで物件取得から10日以内、遅いところでも30日以内
というのが多いようです。
さて、このようにお話しすると「自分は家を買ったけど、申告などしていない!」とドキッとされた方も多いかもしれませんが、申告期限は定められているものの、これを過ぎたからと言って特に罰則がある訳ではありません。
また、申告をしなくとも登記を基に自治体から納付書が送られて来ますから、その納付期限を守れば特に問題はないでしょう。
なお、この納付書が届くタイミングは物件を購入した「翌年の春から夏に掛けて」というのが一般的です。
さてここまで、不動産取得税の概要を見てまいりました。
ちなみに、ここまでご説明した内容で税額の計算のシュミレーションを行ってみると、
評価額2000万円×土地税率3%=60万円
との計算となりますので取得の翌年には60万円もの税金が課せられることになります。
そして、このようなお話を聞くと「それは流石に高過ぎるのでは・・・」と思われるでしょうが、実は不動産取得税には様々な減税措置が用意されていますので次項ではその内容を解説してまいりましょう。
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取得税の軽減措置
では具体的に、不動産取得税の減税制度の概要を見て行くことにいたします。
宅地等の減税措置
まず土地に関しては、対象物件が「宅地」又は「宅地価格を基に評価される土地」である場合に、課税標準額を1/2とする減税措置があります。
つまり、マイホームを建てる為に評価額2000万円の土地を購入したのならば、実際の税額計算は
評価額1000万(2000万円の1/2)×3%(土地の税率)=30万円
となる訳です。(この優遇の適用が受けられるのは2027年3月31日までとなっていますが、これまで何度も延長されています)
また、「宅地」又は「宅地価格を基に評価される土地」といってもマイホーム用地という意味ではありませんから、別荘用地やアパート用地もこの減税措置の対象となります。
なお、これからマイホームを建てるための用地(更地)を取得した場合などには、不動産取得税の徴収猶予期間が設けられている市区町村もありますから、お住いの地域の税制をしっかりとチェックしてみるのがお勧めです。
住宅に関する建物と敷地の減税措置
また、建てられている建物が「住宅」と判断される場合には、建物本体はもちろん、その敷地にも前項とは別の減税措置を受けることができます。
但し、ここでいう住宅とは基本的にマイホームや賃貸住宅(賃借人が住むという意味で住宅となる)のことを指しますから、別荘や工場などは含まれません。
なお、具体的な減税制度の概要は下記の通りとなります。
新築住宅の軽減措置
新築住宅の軽減措置が受けられる建物の条件は
- 新築(増改築)された居住用の物件であること(アパート等や分譲マンションも含まれる)
- 床面積が50㎡~240㎡以下であること(一戸建て以外の賃貸住宅は40㎡以上)
以上のようになっています。
そして建物に関しては
一戸につき1200万円(長期優良住宅は1300万円)を課税標準額から控除できる
ルールとなっているのです。
一方、敷地(土地)については、
- 45,000円
- 「土地の1㎡評価額(宅地なら前項の評価額1/2の価格を適用)×建物の床面積の2倍(200㎡限度)×3%」という式で計算された金額
以上、二つのうち高い方の金額が税額から控除できます。
新耐震基準を満たした中古住宅の軽減措置
一方、新耐震基準を満たした中古住宅において軽減措置を受けられる条件は
- 自らが居住する床面積50㎡~240㎡以下の住宅であること
- 1982年(昭和57年)1月1日以後に新築された新耐震基準を満たす物件であること
- 1981年(昭和56年)12月31日以前に新築された場合は、設計士等により新耐震基準を満たすことが証明できる物件であること
以上のようになっています。
なお、新耐震中古住宅の建物の軽減措置は、新築の場合と同様に「課税標準額から一定額の控除がされる方式」となりますが、建築された年代により控除額に差があるのが特徴です。
そして建築年代による控除額は以下の通りとなります。
- 1997年(平成9年)4月以降 ・・・1200万円
- 1997年(平成9年)3月以前 ・・・1000万円
- 1989年(平成元年)3月以前 ・・・450万円
- 1985年(昭和60年)6月以前 ・・・420万円
- 1981年(昭和56年)6月以前 ・・・350万円
- 1975年(昭和50年)12月以前・・・230万円
- 1972年(昭和47年)12月以前・・・150万円
- 1963年(昭和38年)12月以前・・・100万円(1954年7月まで)
なお敷地については、新築住宅の場合と同様に「45,000円」または「土地の1㎡評価額(宅地なら前項の評価額1/2の価格を適用)×建物の床面積の2倍(200㎡限度)×3%という式で計算された金額」のどちらか高い方が、税額から控除される制度となります。
*上記の軽減措置の内容は地方自治体によって異なる場合がありますのでご注意ください。
新耐震基準を満たしていない中古住宅の軽減措置
前項では耐震基準をクリアーした物件に適用される減税制度をご紹介いたしましたが、実は新耐震基準を満たしていない建物についても一定の軽減措置が用意されています。
なお、対象となる建物の面積などについては新耐震基準をクリアーした物件と同様(床面積50㎡~240㎡以下)ですが、大きく異なるのは
評価額からの控除ではなく、税額から建築時期ごとに一定の金額が控除される
という点です。
なお、控除額については
- 1981年(昭和56年)12月以前・・・126,000円
- 1981年(昭和56年)6月以前 ・・・105,000円
- 1975年(昭和50年)12月以前・・・ 69,000円
- 1972年(昭和47年)12月以前・・・ 45,000円
- 1963年(昭和38年)12月以前・・・ 30,000円(1954年7月まで)
以上の通りです。
ちなみに敷地については、前項の耐震基準をクリアーした物件と同様の優遇が受けられます。
*本減税制度についても地方自治体によって控除額が異なる場合がありますので注意が必要です。
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不動産取得税まとめ
さてここまで、不動産取得税に関する解説を行ってまいりました。
既にお話しした通り、不動産取得税には様々な減税制度が用意されていますので、マイホームの購入などの際してはあまり大きな税負担にはならないことをご理解いただけたことと思います。
一方、店舗や倉庫を中古で購入する場合には殆ど優遇措置が受けられないことになりますから、これらの物件が取引の対象となる場合には不動産取得税の税額をしっかりと資金計画へ組み込んでおく必要があるでしょう。
不動産売買に係る税金の中でも「最もマイナーな存在」とされる不動産取得税ですが、うっかり忘れていると後で痛い目を見ることも多いですから、取引に際しては充分にご注意いただければと思います。
ではこれにて、「不動産取得税とは?わかりやすく解説いたします!」の知恵袋を閉じさせていただきます。