競売物件購入の流れと注意点|入札前の調査から明渡しまで解説

競売物件は、一般の売買よりも安く購入できる可能性がある一方、入札前に確認できる情報や、取得後の引渡しについて通常の不動産購入とは異なる注意点があります。

落札できたとしても、すぐに鍵を受け取って使い始められるとは限りません。室内の修繕や残置物の処理、占有者との明渡しの調整などに、追加の費用や時間が必要になることもあります。

そこで今回は、競売物件購入の流れを整理するとともに、入札前の調査から代金納付、明渡しまでの注意点を解説していきます。

この記事のポイント

競売物件は、落札価格だけで購入の有利・不利を判断しないことが重要です。物件の状態や引き継ぐ権利を調べ、修繕費・明渡し費用・利用開始までの期間を含めて入札額を検討しましょう。

競売物件購入の流れと注意点を表す住宅模型と調査書類

目次

競売物件とは?通常の不動産購入との違い

裁判所の手続きによって売却される不動産

不動産の競売とは、債権者の申立てにより、裁判所が不動産を売却し、その代金を債権の回収に充てる手続きです。不動産取引の実務では、一般に「けいばい」と呼ばれています。

例えば、住宅ローンの返済が滞った場合には、金融機関が抵当権を実行し、担保となっている住宅が競売に掛けられることがあります。

買う側は、裁判所が公告する物件情報を確認し、定められた方法で買受けを申し出ます。この記事では、一定の期間内に入札書を提出する「期間入札」による購入を中心に説明します。

物件の確認や引渡しを自分で進める場面が多い

通常の仲介による不動産購入では、売主や仲介会社を通じて内覧や契約条件の調整を行い、決済時には鍵などの引渡しを受けるのが一般的です。

これに対して競売では、通常の売買と同じような内覧や条件交渉ができるとは限りません。また、裁判所が建物の品質や、購入後すぐに利用できることを保証するわけでもありません。

競売には安く購入できる可能性がありますが、人気のある物件では入札が競合します。「競売だから相場の何割で買える」と決めつけず、取得後に必要な対応まで含めて判断することが重要です。

競売物件を購入するまでの流れ

期間入札による競売物件の購入は、おおむね次のように進みます。

  1. 物件情報と売却スケジュールを確認する
  2. 3点セットを読み、現地や権利関係を調査する
  3. 資金調達と入札上限額を決める
  4. 保証金を納付し、入札書類を提出する
  5. 開札・売却許可決定を経て、代金を納付する
  6. 登記手続きと物件の引渡し・明渡しを進める

物件情報と売却スケジュールを確認する

競売物件の情報は、裁判所の不動産競売物件情報サイト「BIT」などで確認できます。所在地や物件種別などから検索し、候補となる物件を探していきましょう。

確認したいのは価格や間取りだけではありません。担当裁判所、事件番号、物件番号、入札期間、開札期日、売却決定期日なども整理しておく必要があります。

また、競売は途中で取り下げられたり、日程が変更されたりすることもありますので、検討を始めたときだけでなく、入札前にも最新の情報を確認してください。

3点セットと追加調査で物件を確認する

候補が見つかったら、「物件明細書」「現況調査報告書」「評価書」という3つの資料を確認します。これらは一般に「3点セット」と呼ばれ、競売物件を検討する際の基本資料となります。

ただし、3点セットだけですべての問題が分かるわけではありません。現地の状況、登記、道路や建築に関する制限、周辺相場なども調べ、購入目的に合う物件か判断する必要があります。

資金調達と入札上限額を決める

物件の調査と並行して、購入資金を準備します。融資を利用したい場合には、競売物件への融資に対応しているか、必要書類や審査の進め方、代金納付期限までの実行が可能かを、入札前に金融機関へ確認しておきましょう。

競売では、通常の売買契約にあるような「住宅ローンが通らなかった場合に白紙解除できる特約」を、自分の都合で付けることはできません。融資の見通しが曖昧なまま入札するのは避けるべきです。

また、入札上限額は物件価格だけでなく、税金、修繕費、明渡しに必要な費用などを見込んだ上で決めます。

保証金を納付し、入札書類を提出する

入札には、公告で定められた買受申出保証額を提供する必要があります。通常は売却基準価額の20%ですが、異なる場合もありますので、必ず対象物件の公告を確認してください。

入札価格は、公告に記載された「買受可能価額」以上とします。買受可能価額は売却基準価額の80%ですが、その金額で必ず購入できるという意味ではありません。

提出書類には、入札書、保証金に関する書類、住民票などのほか、「暴力団員等に該当しない旨の陳述書」などがあります。個人・法人・代理人による入札などで必要書類が異なるため、担当裁判所の最新の案内に従って準備しましょう。

提出後の入札書は訂正・取消しができない

物件の取り違えや金額の桁間違いを防ぐため、事件番号・物件番号・入札金額・添付書類を提出前に確認してください。郵送する場合は、入札期間内に到着するよう余裕を持って発送する必要があります。

開札・売却許可決定を経て代金を納付する

開札では、有効な入札の中から最高価買受申出人が定められ、その後、裁判所が売却の許否を判断します。最も高い金額を入札したからといって、その場で所有権を取得するわけではありません。

売却許可決定が確定すると、代金納付期限などが通知されます。買受人は、入札金額から既に納めた保証金を差し引いた残代金を、指定された期限までに一括して納付します。

期限までに代金を納付しなければ、保証金は返還されません。「落札後に資金を用意すればよい」と考えず、入札前に資金計画を固めておくことが重要です。

登記手続きと物件の引渡し・明渡しを進める

買受人が所有権を取得するのは、売却代金を納付した時点です。所有権移転などの登記は裁判所の嘱託により進められますが、買受人による必要書類の提出や登録免許税などの負担がありますので、裁判所の案内に従って準備してください。

ただし、所有権を取得することと、物件を実際に使える状態で引き渡してもらうことは別です。占有者がいる場合には、その人の権利関係を確認し、必要に応じて明渡しの調整や法的手続きを進めることになります。

入札前に確認したい3点セットの読み方

物件明細書|引き継ぐ権利などを確認する

物件明細書は、買受人が負担することとなる他人の権利や、占有状況に関する特記事項などを確認する重要な資料です。

例えば、賃借人の権利を引き継ぐ必要があるのか、土地と建物の所有者が分かれることで法定地上権が成立するのかといった点は、購入後の利用方法に大きく影響します。

価格が安く見えても、自分が想定した使い方をできなければ購入目的を達成できません。記載内容の意味が分からない場合には、そのまま入札せず、弁護士などに確認することが必要です。

現況調査報告書|占有者と使用状況を確認する

現況調査報告書には、執行官が調査した物件の状況や、占有者、関係者の陳述などが記載されています。室内写真なども、建物の状態を知るための手掛かりになります。

特に確認したいのは、「誰が、どのような理由で物件を使っているか」という点です。旧所有者が住んでいる場合と、賃借人が住んでいる場合とでは、取得後の対応が異なります。

また、室内に荷物が多い、建物の一部を確認できていないなど、調査の限界にも目を向けましょう。写真に写っていない場所まで、問題がないと判断することはできません。

評価書|評価の根拠と物件の問題点を確認する

評価書には、物件の評価額だけでなく、周辺環境、道路、法令上の制限、建物の状態などに関する情報が記載されています。

大切なのは金額だけを見るのではなく、「なぜその評価になっているのか」を読むことです。接道条件や権利関係、建物の傷みなどが評価に影響している場合には、その内容を購入判断に反映させる必要があります。

なお、評価額と実際の市場価格が一致するとは限りません。周辺の売買事例や売出物件、投資用であれば賃料相場なども別途確認しましょう。

資料の調査時点と現在の状況は異なる場合がある

3点セットは、調査・作成された時点の情報です。その後に建物の状態や占有状況が変わっている場合もあります。

マンションの管理費等の滞納額についても、資料に記載された金額から増えていることがあります。資料の作成日や調査日を確認し、追加で確認できる事項は入札前に調べておきましょう。

スポンサーリンク

競売物件の購入で注意したいこと

室内の状態を十分に確認できないことがある

競売では、一般の中古住宅のように、買受希望者が自由に内覧を申し込めるわけではありません。法律上の内覧制度はありますが、一定の条件があり、すべての物件で実施されるものではありません。

そのため、十分な室内確認ができないことを前提に検討する必要があります。写真ではきれいに見えても、給排水管の不具合や設備の故障、床下の腐食などが、取得後に分かる可能性があります。

現地調査では、道路など立ち入ることのできる場所から外観や周辺環境を確認し、許可なく敷地や建物に入らないようにしてください。

雨漏りや設備故障などの修繕費を見込む

競売では、雨漏りやシロアリ被害、給湯器の故障など、建物の種類・品質に関する不具合について、通常の売買と同じように売主へ契約不適合責任を追及できるわけではありません。

取得後に不具合が見つかった場合には、自分で修繕することを基本に資金を見込んでおく必要があります。特に築年数の経過した建物では、内装を整える費用だけでなく、給排水設備や電気設備などの更新も検討しましょう。

ただし、競売に関する法律上の救済があらゆる場合に否定されるという意味ではありません。権利関係などに問題がある場合には、建物の不具合とは分けて専門家に確認する必要があります。

競売物件であっても、通常の不動産購入と同じように、道路への接し方、再建築の可否、用途地域、境界、越境、給排水設備などを調べることが重要です。

「古い建物だから解体して建て直せばよい」と考えていても、接道条件などによって希望する建替えができない場合があります。土地についても、過去の利用状況や地中埋設物などが問題になることがありますので、現在の外観だけでは判断できません。

調査の基本については、不動産の現地調査で確認するポイントと、不動産の役所調査について解説した記事も参考にしてください。

マンションでは管理費等の滞納額を確認する

区分所有マンションを競売で購入する場合には、旧所有者が滞納していた管理費や修繕積立金などについて、買受人が支払いを求められることがあります。

3点セットに滞納額が記載されていても、その後の未払いによって金額が増えている可能性があります。管理組合や管理会社に確認できる範囲で、最新の滞納額とその内訳、取得後に負担する範囲を調べておきましょう。

また、毎月の管理費・修繕積立金に加え、大規模修繕の予定や一時金の有無なども、取得後の支出に影響します。

土地・建物・共有持分などの売却対象を確認する

物件情報を見る際には、土地と建物の両方が対象なのか、建物だけなのか、共有持分だけなのかを確認してください。

例えば、共有持分の取得では、不動産全体を単独で自由に使えるようになるわけではありません。また、敷地の権利が所有権ではなく借地権である場合には、地代や契約内容、必要となる手続きの確認も重要です。

一見すると極端に安い物件でも、購入する権利の範囲や利用上の制約が価格に反映されている場合があります。所在地や写真だけで判断せず、物件目録と権利関係を照合しましょう。

占有者と残置物がある場合の対応

旧所有者と賃借人では対応が異なる

物件に人が住んでいる場合には、まず、その人が旧所有者なのか、賃借人なのか、その他の立場で使用しているのかを確認します。

旧所有者が任意に引き渡さない場合などには、引渡命令の利用を検討できます。一方、賃借人には買受人に対しても賃借権を主張できる人と、そうではない人がいるため、入居者がいるという事実だけでは対応を決められません。

特に自分が住むために購入する場合には、予定どおりに明渡しを受けられる物件かどうかが重要です。賃貸中の物件を取得する場合には、賃貸借を引き継いで運用するのかも含めて検討しましょう。

賃借権の承継や明渡猶予の有無を確認する

賃借人の権利関係を判断するには、抵当権の設定時期、賃貸借の成立や建物の引渡しの時期、対抗要件などを確認する必要があります。「抵当権より前に契約している」「後から入居した」という一つの情報だけで判断しないことが大切です。

買受人に対抗できない賃借人であっても、法律上の要件を満たす建物使用者には、代金納付の日から6か月間の明渡猶予が認められます。ただし、すべての賃借人に一律で6か月の猶予があるわけではありません。

また、賃貸借を引き継ぐかどうかは、敷金返還債務の扱いにも関係します。「競売なら敷金を返さなくてよい」と一括りにせず、承継する契約内容と負担を確認してください。

任意の明渡しでは合意内容を明確にする

任意に明渡しを受ける場合には、退去日、鍵の引渡し方法、残置物の扱い、費用負担などを具体的に取り決めます。

引っ越し費用などを買受人が負担することで合意に至る場合もありますが、支払いが当然に必要となるわけではありません。相手の権利関係や、法的手続きに必要な費用・期間を踏まえて検討することになります。

金銭を支払う場合には、支払条件と明渡しの履行を結び付け、内容を書面に残しておきましょう。交渉が難しい場合や権利関係に争いがある場合には、早い段階で弁護士へ相談することが重要です。

明渡しが進まない場合は引渡命令などを検討する

引渡命令とは、一定の要件の下で、裁判所が占有者に不動産の引渡しを命じる手続きです。対象となる相手であれば、通常の明渡訴訟を経ずに、引渡命令に基づく強制執行を進められます。

申立期限は原則として代金納付の日から6か月以内です。ただし、代金納付時に法律上の明渡猶予が認められる建物使用者が占有していた場合には、9か月以内となる例外があります。

買受人に対抗できる権利を持つ占有者など、引渡命令では対応できない場合もあります。また、申立てから実際の明渡しまでの期間や費用は事情によって異なるため、入居や工事の予定には余裕を持たせておく必要があります。

鍵交換や残置物処分を独断で進めない

不動産の所有権を取得しても、室内に残された家具や家電などの所有権まで当然に取得するわけではありません。

また、人が見当たらないからといって、占有が終了しているとは限りません。使用状況を確かめずに鍵を交換したり、残置物を勝手に処分したりすると、トラブルにつながるおそれがあります。

任意の引渡しを受ける際には、残置物の所有者と処分権限を確認し、処分への同意や費用負担などを書面で明確にしましょう。合意が得られない場合には、弁護士に相談し、必要な法的手続きを検討してください。

現場メモ|「空室」と「すぐに使える状態」は違う

住んでいる人がいなくても、鍵の受領、残置物の処理、設備の安全確認、清掃や修繕が必要になることがあります。明渡しと室内確認が済む前に、入居日や工事開始日を確定してしまわないよう注意しましょう。

入札額は落札後に必要となる総費用から逆算する

税金・修繕費・明渡し費用を加える

競売物件の取得を検討するときは、落札価格に加えて、必要に応じて次のような費用を見込みます。

  • 登録免許税や登記手続きに関する費用
  • 不動産取得税
  • 融資を利用する場合の手数料や登記費用
  • 管理費・修繕積立金などの承継する滞納額
  • 明渡し交渉や法的手続きに必要な費用
  • 残置物の搬出・保管・処分に必要な費用
  • 鍵交換、清掃、設備修理、リフォーム費用
  • 取得後の税金・管理費・保険料などの維持費

すべての物件でこれらが発生するわけではありませんが、調査で分かった問題は、できるだけ金額に置き換えておきたいところです。なお、納付した保証金は売却代金に充当されるため、落札価格とは別の取得費用として二重に加算しないようにしてください。

価格差が取得後の費用で小さくなることもある

例えば、一般の売買で購入する候補物件が2,000万円、競売物件の落札予定額が1,500万円であれば、表面上は500万円の差があります。

しかし、競売物件で修繕費300万円、承継する管理費等の滞納額50万円、明渡しや残置物対応に100万円が必要なら、それだけで合計1,950万円になります。さらに税金や登記費用、利用開始までの維持費なども検討しなければなりません。

もちろん、通常の売買でも諸費用や修繕費は掛かります。そのため、比較するときは双方について、物件の状態と取得後の支出をそろえて判断することが大切です。

利用開始までの期間と予備費も織り込む

投資用物件では、取得してもすぐに賃料収入が入るとは限りません。明渡しや修繕に時間が掛かれば、その間も借入金の返済や管理費などの支出が続きます。

自宅として購入する場合にも、現在の住まいの家賃や仮住まい費用などが増える可能性があります。入札額を決める際には、費用だけでなく、利用開始が遅れた場合の負担も見込んでおきましょう。

また、室内を十分に確認できない物件では、見積もれる費用とは別に予備費を確保することが重要です。不明点が多く、費用や期間の見通しが立たない場合には、入札を見送ることも必要な判断となります。

スポンサーリンク

まとめ|競売では入札前の調査と資金計画が重要

競売物件の購入は、物件探し、調査、入札、代金納付、引渡し・明渡しという流れで進みます。ただし、一般の不動産購入と異なり、物件の状態や権利関係を自分で確認し、取得後の対応まで準備することが重要です。

特に、3点セットの読み取り、資金調達、占有者の権利、残置物、管理費等の滞納については、入札前に確認しておきたいところです。提出後の入札書は訂正・取消しができませんので、不明点を残したまま手続きを進めないようにしましょう。

落札価格に修繕費や明渡し費用、利用開始までの負担を加え、それでも購入する価値があるかを検討することが、競売物件購入の基本となります。

手続きの詳細や必要書類は担当裁判所の最新の案内を確認し、権利関係や明渡しに不安がある場合には、入札前に弁護士などの専門家へ相談してください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次