近年、すっかり世間で市民権を得ることになったのが「民泊」なるワードであり、この記事を読んでおられる多くの方々が「民泊とは自宅の一部や空き家に外国人旅行客などを宿泊させること」といった程度の認識をお持ちのことと思います。

しかしながら、「民泊は大家さんにとって、大きなビジネスチャンスである!」などという意見を聞いても、今一つピンッと来ない方も多いはずですし、その法律的な根拠や実際の運用方法などについては『全く知らない』という方も少なくないことでしょう。

そこで本日は「民泊とは?簡単にその法律や仕組みについて解説します!」と題して、賃貸物件オーナー様や不動産投資家さんに是非知っておいていただきたい民泊の基礎知識を解説してまいりたいと思います。

民泊とは

 

そもそも民泊って何だろう?

ではまず最初に「そもそも民泊とは何なのか?」という点から、お話を始めてまいりましょう。

実は民泊という言葉は広く世間に広まっているものの、その定義は非常に曖昧であり、これと言った正解が無いのが実情なのですが、本記事においては

「民間人が運営する、ホテルや旅館以外の宿泊施設」

という括りでお話を進めて行きましょう。

そしてこのよう定義の仕方を耳にすると「本当に民泊なんて必要なの?」「ホテルに泊まればいいじゃん」といった意見も聞こえて来そうですよね。

確かに我が国には、一流のホテルから旅館、ビジネスホテルにカプセルホテル、果てはマンガ喫茶やDVD鑑賞ルームなど、数多くの宿泊可能な施設が存在しています。

しかしながら京都などの一大観光地で、正月や桜のシーズンともなれば、これらの施設はアッという間に埋まってしまうものですし、人気アイドルグループのコンサートとスポーツの大会などの開催地がバッティングしてしまうと、多くの「宿泊場所難民」が発生してしまうことは想像に難くないですよね。

ましてや我が国はインバウンド需要を確保するために、国を挙げて観光による立国を目指していますから、こうした「宿泊施設不足の現状」を打破したいとの思惑が各方面で囁かれていました。

また、海外などでは一般家庭で外国人旅行客を受け入れるスタイルが古くから定着しているといいますから、我が国でもこうしたサービスをスタートさせるべく政府も動き出すこととなったのです。

但し、日本人は他の国の人々と比べて「安全管理の意識が極めて低いと言われる民族」ですし、近年では近隣トラブルなども数多く報告されていますから、「では民泊スタート!」などということを軽々しく言える状況ではありませんよね。

そこで政府は段階的に民泊制度を解禁して行くこととし、2018年に大幅な規制緩和を行うこととしたのです。

民泊解禁へのハードル

さて前項にて「2018年に大幅な緩和が行わた」とお話しした民泊ですが、それまではどのような制限が掛けられていたのでしょう。

ちなみに、「自宅の一部」や「空いている賃貸アパートの一室」を外国人旅行客に貸し出すだけならば、民間人が勝手に民泊を始めることもできそうなものですが、ここで問題となっていたのが「旅館業法」という法律との兼ね合いです。

旅館業法はホテルや旅館などの経営を規制する法令であり、宿泊施設を営む者は原則として、この法律に基づく営業許可を行政から得る必要がありました。

また、「単に申請さえ行えば許可がもらえる」という訳ではなく、部屋の設備やペッドの数などに細かな制限があり、専門的な知識のない者が旅館業法上の許可を取得するのは非常に高いハードルが存在していたのです。

※但し、民泊経営者の中にはこの許可(簡易宿泊所の許可)を取得していち早く民泊をスタートさせた猛者もいましたし、不動産業者の中にはウィークリーマンションのノウハウを利用して民泊を経営する者もいました。

こうした状況の中、政府が民泊解禁の第一歩として始めたのが

  • 特区法による民泊
  • イベント民泊

という2種類の民泊の形態となります。

「特区法による民泊」は国家戦略特別区域法という法律に基づいた民泊制度であり、その内容は「国が特定の地域に対して旅館業法上の許可を得ずに民泊運営を許可する」というものでした。

一方、「イベント民泊」は万博などの公共性の高いイベントが開催される地域にて、限定的に民泊を解禁するという制度となります。

そして、これらの実験的な解禁によりノウハウを蓄積した政府は2018年6月に「住宅宿泊事業法(通称・民泊新法)」を施行することとし、本格的な民泊解禁を行うこととしたのです。

なお住宅宿泊事業法施行の裏には、社会問題となりつつある「空き家問題の解決」や「賃貸物件の空室率減少」などの狙いもあったようです。

住宅宿泊事業法について

こうして2018年に民泊の規制緩和が行われた訳ですが、もちろん誰でも自由に民泊を営める訳ではありません。

そこで、より皆さんのご理解を深めていただくために「住宅宿泊事業法の概要」について解説してまいりましょう。

※物件が所在する自治体の条例により、住宅宿泊事業法以上に厳しいルールが定められているケースがありますのでご注意ください。

民泊営業期間の制限と届出制

まず前提として、住宅宿泊事業法においては

民泊として営業ができる期間を年間180日に制限

しています。

そして民泊を営む者を

「住宅宿泊事業者」と定義して、営業を行う場合には行政への届出

を義務付けることとしました。

民泊として使用できる物件の制限

続いて法律は、民泊として利用できる物件についても一定のルールを定めました。

まず民泊には、

  • キッチン
  • 風呂(シャワールームでも可)
  • トイレ
  • 洗面台

が必要となるのがルールですから、倉庫や事務所は民泊としての利用が不可(建築基準法上の用途が「住宅」や「共同住宅」であること)となります。

なお、物件の面積や所在地(用途地域)などには制限がないものの、

  • 現在、人が住んでいる物件
  • 入居者を募集中の物件
  • 別荘などでも年に1回は人が訪れている物件

という条件がありますのでご注意ください。

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民泊のスタイルを定義

また住宅宿泊事業法では、民泊のスタイルによるルール分けも行っています。

そして民泊のスタイルには

  • 家主居住型/自宅の一部を貸し出すタイプ
  • 家主不在型/空室となっているアパートなど完全な個室を貸し出すタイプ

上記の2つのタイプが定義されています。

家主居住型のルール

一つ屋根の下に観光客と家主が住まうことになる家主居住型では、住宅宿泊事業者(家主)に対して、

  • 物件への標識の掲示(民泊であることが識別できる標識)
  • 宿泊名簿の作成
  • 宿泊者への安全上の説明の実施
  • 近隣からのクレームに対応できる体制作り

などが義務付けられています。

家主不在型

一方、家主不在型では家主居住型以上に厳しい、以下のルールが定められています。

  • 標識の掲示、宿泊名簿の作成など、家主居住型で定められたルールの遵守
  • 住宅宿泊管理業者の資格取得
  • 住宅宿泊管理業者としての登録、登録の更新

基本的に行うべきことは家主居住型と同様なのですが、自分が一つ屋根の下に住んでいない分、住宅宿泊管理業者という資格を取得しなければならないのです。

なお住宅宿泊管理業者は、住宅宿泊事業者の届出制とは異なり「登録制」となっていますから、国土交通大臣への申請や5年ごとの登録更新が必要になります。

ちなみに「登録を行いたくない」という賃貸物件オーナー様などは、外部の業者に住宅宿泊管理業者の委託を行うこともできますから、こちらを利用する方がスムーズかもしれません。

民泊利用者の募集

そして最後にご説明するのが、民泊利用者の募集についてとなります。

もちろん、SNSなどを利用して物件オーナーが自力でお客様を募集することは許されていますが、民泊物件のポータルサイトなどを運営するには住宅宿泊管理業者と同様に登録を行わなければなりません。(登録申請は観光庁長官)

よって、スムーズにお客様を募集したいのであれば、この登録を行っている業者に依頼をしなければならないでしょう。

実際に民泊を運営するには

これまでの解説にて、民泊運営の概要はおおよそご理解いただけたことと思いますが、実際に民泊運営にチャレンジするには「もう少し具体的なノウハウが欲しいところ」ですよね。

そこで本項では、よりリアルに民泊運営スタートまでの手順をお話しして行きたいと思います。

民泊運営開始の手順
  1. 行政への事前相談
  2. 申請書類の作成
  3. 物件のリフォーム、設備品の調達
  4. 行政への届出、または登録の完了
  5. 民泊事業開始

民泊運営の開始を決心したならば、まず行うべきは行政への事前相談に赴くことでしょう。

実は住宅宿泊事業法では、前項でお話しした以外にも「地方自治体独自の民泊ルール」を条例で定めることを許可していますから、地域によっては「更に厳しい開業の条件」が存在する可能性もあり得ます。(用途地域が住居系のエリアでは民泊営業が不可など)

よって住宅宿泊事業法上の問題がないだけでは申請を受理して貰えないこともありますので、事前の打ち合わせが必須となって来るのです。

また事前相談では、物件の間取りなども具体的に示しながらの打ち合わせをすることとなりますから、「事前相談において如何なる資料が必要か」もしっかり確認しておくべきでしょう。

なお、事前相談においては厳しい消防法上のチェックなどもありますので、場合によっては消火器の設置や火災報知機の増設などを求められる可能性もあります。

こうして事前打ち合わせが完了したなら、登記事項証明書などの必要書類の準備を行うことになります。

民泊開始の申請書類(家主居住型の届出の場合)
  • 建物の登記事項証明書
  • 物件の間取り図
  • 身分証明書
  • 登記されていないことの証明書
  • 誓約書
  • 申請書(届出書)

一方、事前の打ち合わせにおいて物件のリフォーム等が必要となれば、申請を行う前に施工を完了しておく必要があるでしょう。

そして、これらの準備が整った段階で届出や登録の申請を行うことになります。

ちなみに家主不在型では、当然ながら住宅宿泊管理業者の擁立が大前提となりますが、これをプロの業者に委託しているのであれば『大家さんが自ら事前相談に行くよりもスムーズに民泊開業まで漕ぎ着けることができる』はずです。

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民泊とは?まとめ

さてここまで、「民泊って何だろう?」というテーマでお話をしてまいりました。

そして解説をお読みになって『何だか面倒くさそう・・・』という印象をお持ちの方もおられるかもしれませんが、実際に挑戦してみると『実はそれ程には手間が掛からない』ものとなりますから、まずは第一歩を踏み出してみることが大切でしょう。

また受け入れる宿泊客を英語圏の方のみとしたり、国籍を限定することで「生活習慣上のトラブル」を回避することができますし、優秀な住宅宿泊管理業者に委託すれば空室率もなかり圧縮可能となりますから、リスクも限定的なものとなるはずです。

更に通常の不動産投資とは異なり、宿泊費用はかなり高額に設定することができますですから、利回り面でも民泊は非常に大きな成果を上げられる可能性を秘めていると言えるでしょう。

何事も初めてチャレンジする際には非常に不安で面倒なものですが、それだけに得られるメリットも大きくなるのが常ですから、是非とも積極的に民泊運営にチャレンジしていただければ幸いです。

ではこれにて、「民泊とは?簡単にその法律や仕組みについて解説します!」の知恵袋を閉じさせていただきたいと思います。