「働かずとも上がって来る収入で悠々自適な生活を送る」、これは誰もが夢見る理想の生活像でしょう。

そして、こうした理想を叶えるべく株式投資やFX、仮想通貨の売買にネットビジネスなど、世間には様々な不労所得獲得のメソッドが存在していますが、今なお「夢を叶える近道」とされているのが不動産投資となります。

確かにアパートや賃貸マンションを購入して賃料収入を得るという手法は非常に堅実ですし、社会情勢による影響も受け辛いですから「いつかは不動産投資に参入したい」という方々のお気持ちも良く判ります。

しかしながら、実際に収益物件の運用を開始すると様々な経費が収益を圧迫してくるものですから、物件購入後に「どんな経費が、どれだけ掛かるか?」を正確に予測できなければ、成功を勝ち取ることは困難でしょう。

また更に言えば、物件を運用する上で最も高いウェイトを占めるのが修繕費となりますから、「メンテナンス費用を如何に予測できるか?」が、不動産投資の勝敗をわける鍵ともなるのです。

そこで本日は「アパートの修繕工事ついて解説いたします!」と題して、収益物件のメンテナンスについてお話ししてみたいと思います。

アパート修繕

 

収益物件はメンテナンスが重要

冒頭にて、収益物件運用成功の鍵は「建物のメンテナンス費用を如何に予想するかである」とのお話を致しましたが、必要な修繕を怠った場合には成功が遠のくどころか、オーナー様自身の身を破滅させる事態に発展する可能性だってあります。

そこで本項では、長年メンテナンスをサボっていると如何なるリスクが降り懸かって来るのかについて解説してみましょう。

まず修繕の代表例とも言える「外壁や屋根の修繕」を怠った場合に何が起こるかと言えば、当然ながら雨漏り等の被害です。

もちろん雨漏りなどが発生した際には直ぐに必要な処置を行えば問題はありませんが、これを放置すれば賃借人からの賃料減額請求等を受ける可能性も出て来るでしょう。

また民法上では賃借人が大家に代わって必要な修繕を行い、その経費を請求できるルールになっていますから、故意に過剰な修繕が行われ、目玉の飛び出るような金額を請求される場合だってあるのです。

そして運営が厳しくなったことを理由に物件を売却をすることになっても、雨漏りだらけのアパートを購入する物好きはまず現れないでしょうし、たとえ売却できたとしても瑕疵担保責任(契約不適合責任)を負わされ、高額な賠償金を買主から請求されることもあり得ます。

一方、水道配管や下水配管のメンテナンスを怠っていれば、漏水などの被害が発生して損害を受けた入居者から賠償請求を受ける場合もあるはずです。

更に配管の場合、早い時期に適切な修繕を行っていれば「ある程度の出費」で改善が見込めたにも係わらず、放置したばかりに数千万円にも及ぶ費用負担が発生する可能性もあります。

例えば水道管が少々錆びているくらいなら「錆止めの装置」を取り付けるだけで、その後数十年間に渡って配管を持たせることが可能ですが、

配管が錆で詰まってしまうまで放置すれば「全ての配管を新品に交換する必要」が出て来ますから、その必要経費の差は『天と地ほどの開き』が出て来るという訳です。

このように収益物件の修繕は投資の成功を左右するばかりか、多額の出費を招いたり、訴訟に発展したりと、「投資家の人生そのものにも大きな影響を及ぼす事態を引き起こす可能性」があるのです。

 

不動産投資物件に必要な修繕

前項にて、収益物件のメンテナンスの必要性をご理解いただけたかと思いますので、ここでは修繕のジャンルごとにその方法などについて解説を加えて行きたいと思います。

屋根・外壁

先程も申し上げた通り、収益物件の屋根や外壁のメンテナンスは建物を長持ちさせる上で、非常に重要な作業となります。

そして、木造アパートなどの規模の小さな物件であれば、屋根の葺き替えや外壁の修繕(サイディングのメンテナンス・モルタルの補修)は、戸建てと同じ感覚の出費にて工事を行うことが可能です。

一方、これが重量鉄骨造、鉄筋コンクリート造(RC造)などで3階建て以上の大型物件ともなれば、足場代だけでも数百万円、塗装などの費用を含めると千万単位の出費を生じさせることとなりますから、購入当初からしっかりと修繕計画を立てておく必要があるでしょう。

また鉄筋コンクリート造の場合に注意しなければならないのは、外壁の傷などから侵入した雨水による鉄筋の爆裂現象です。

爆裂現象とは雨水が躯体の内部に侵入することによって鉄筋が錆て膨らみ、コンクリートを内部から破裂させる現象を指しますが、価格重視で施工業者を選ぶと、こうした爆裂現象のケアをしないまま上から塗装が行われてしまうことも少なくありません。

こうしたケースでは新たに施された塗装の下で爆裂現象が日々進行し続けることとなり、「ある日突然、コンクリートの固まりが崩落して来る」といった事態にもなりかねないのです。

よって費用の負担は決して楽ではありませんが、打診などの調査を行い、爆裂箇所の錆止めを万全にした上での外壁工事がお勧めとなるでしょう。

※外壁工事の詳細については、過去記事「マンション外壁塗装工事の流れや注意点を解説いたします!」をご参照ください。

共用部分

さて、直に雨水や直射日光に晒される屋根や外壁に比べると、廊下や階段などの共用部分のメンテナンスは優先順位が低い気も致しますが、これはこれで重要な修繕項目となります。

物件に空室が発生した際には当然ながら新規の入居者募集を掛けることとなりますが、お部屋をどんなに美しくリフォームしても、廊下や階段がボロボロでは入居希望者のハートをキャッチするのは非常に困難となるでしょう。

特にエントランスなどは「物件の顔」とも言える場所ですから、折角仲介業者が入居者希望者を連れて来てくれても、お部屋に行く前に『借りる気が萎えてしまう』というケースさえあるのです。

また、外部に露出した階段や廊下(外階段・外廊下)がある物件においては安全上の問題も発生して来ます。

収益物件を見て回っていると時折「塗装が剥げて錆々になっている外階段」等を見掛けますが、万が一住人がステップが踏み抜いてしまったり、階段自体が崩落してしまった場合には、その責任は物件オーナー様へと降り懸かって来るのです。

これは民法に定められた「工作物責任」という概念であり、建物の欠陥(瑕疵)が原因で発生した事故については、大家さんの故意や過失の有無に関係なく賠償義務を負わされることになります。

そして万が一、被害者が亡くなったり、大怪我を負った場合には、1億円以上の賠償命令が下ることも少なくありませんから、決して修繕工事は疎かにしてはならないのです。

ちなみに、錆々になった外階段や外廊下を修繕する場合には、錆を除去した後に塗装を行うことになりますが、あまりに劣化が激しいケースでは階段を丸々新品に交換してしまう工事が必要となるでしょう。

なお「外階段の交換工事」と聞くと非常に高額な費用が掛かりそうなイメージがありますが、階段設備一式をセットにした商品も販売されておりますので『数十万円程の予算で交換が可能』な場合もます。(2階建てアパートの場合)

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エレベーターの更新工事

続いてご紹介するのが、エレベーターの更新工事についてとなります。

2、3階の低層アパートであればエレベーターが付いている物件は殆どないでしょうが、4階以上の物件となれば条例において設置が義務付けられている地域も珍しくありません。

ちなみにエレベーターについては法定点検に加えて、任意の点検も行われるのが通常となりますから「気が付いたら動かなくなっていた・・・」などということはあり得ないでしょうが、油圧式の古い型の器機を利用している場合などでは頻繁にメンテナンスを行っても異音や振動等の症状が収まらないケースも珍しくありません。

もちろん安全性にさえ問題がなければ、そのまま使用し続けるのも一つの方法ではありますが、居住中の住人が不安を感じることは避けられないでしょうし、空室を見に来た入居希望者の心証も決して良いものとはならないはずです。

そうとなれば、いよいよエレベーターの更新工事を検討する段階となりますが「新たな器機への入れ替えに際しては最低でも1000万円程度の予算が必要」となりますし、工事期間が1ヶ月以上にも及ぶケースもありますから、

大家さんのお財布と入居者の生活への負担は「かなりのもの」となることでしょう。

なお最近では、各エレベーター会社が住人への負担(エレベーターが使えない期間)を極力減らしたプランを打ち出してはいるようですが、その分『施工費用は高額になる』ことは避けられませんので、エレベーターの更新工事を行うにはそれなりの覚悟をもって臨むべきです。

*投資用物件のエレベーターについては別記事「エレベーター付き収益物件について解説いたします!」にて更に詳細な解説を行っております。

水道管のメンテナンス

建物が老朽化すればする程に、発生のリスクが高まって行くのが「水道管の錆に関する問題」です。

なお、近年では鉄を完全に使用していない配管設備が主流となっていますが、1998年以前に建築された建物においては鉄管(鉄管の内部がビニールコーティングされた配管もありますが、配管同士の接続部分は錆の発生が避けられない)が使用されている可能性が高いため対策を講じる必要があるでしょう。

錆対策の手段としては、古い配管をそのまま放置して新たな配管を露出で設置する工法がメジャーですが、建物の廊下などに配管がウネウネと走っているのは決して見栄えの良い物ではありませんし、専有部分については「見た目が悪い」との入居者のクレームになってしまうこともあるはずです。

また、古い配管をそのまま活かすのであればライニング工法と呼ばれる水道管の内部を樹脂でコーティングしてしまう工法もありますが、1000万円以上の高額な工事費を覚悟する必要があります。

なお、管内の錆がそれ程進行していない段階ならば、錆を硬化させてしまう「黒錆化工法」が有効となるでしょう。

*黒錆化工法についての詳細は過去記事「水道管のサビ対策について解説致します!」をご参照ください。

下水管のメンテナンス

水道管が劣化するのであれば、「下水管だけは例外」などということがあるはずもありません。

また万が一下水管に亀裂などが生じれば、内部を流れているモノがモノだけにその被害が甚大なものとなることは自明の理ですよね。

さて、下水管の修繕工事についても水道と同様に「露出で新たな配管を敷いて行く」か、「ライニング工法」にて配管の亀裂を樹脂でコーティングしてしまう工法が主なものとなります。

但し、どちらもかなり費用が掛かる工事となりますから、古い建物をお持ちの方におかれましては「事が起こる前に充分な予算を確保しておく」のがおすすめです。

なお、水道とは異なり高圧洗浄など日々のメンテナンスも必要不可欠なものとなりますから、この点にも是非ご注意いただければと思います。(高圧洗浄は1年に1回程度行うのが目安です)

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アパートの修繕工事まとめ

さてここまで、アパートや賃貸マンションを維持して上で欠かすことのできない建物のメンテナンスについてお話ししてまいりました。

改めて記事の内容を見返してみると、建物の修繕工事は人間の身体のメンテナンスと非常に似たものがあるように思えて来ます。

建物の躯体が肉や骨、それを覆う屋根や外壁が皮膚であるならば、その内部を走る血管や内臓が水道や下水という訳です。

そしてそのどれもが建物の命を維持していく上で必要不可欠なものとなりますから、自分の身体を気遣うように日々のケアを行いないがら、小さな異常にも目を光らせていくことが何よりも大切なのではないでしょうか。

ではこれにて、「アパートの修繕工事ついて解説致します!」の記事を閉じさせていただきたいと思います。