今、世間を最も騒がせているのが、言わずと知れた「新型コロナの感染拡大に係わる問題」です。

我が国では2020年1月に国内で初めての感染者が確認されて以来、既に1年以上渡って「コロナ禍」による不自由な生活を強いられています。

また、この新型コロナの問題は不動産業界にも大きな影響を及ぼしており、テレワークの普及によるワンルーム物件の空室増加などによって打撃を受けている不動産投資家様も多いことでしょう。

更に、度重なる緊急事態宣言の発出によって営業自粛を余儀なくされた飲食店、そしてリモートワークのためにオフィスが不要となった企業も多いため、保有する事業用物件の空室率の高さに悩まされているオーナー様も少なくないことと思われます。

そして、こうした時流の中で増えつつあるのが「借主からの賃料減額や支払いの猶予についての相談」なのではないでしょうか。

そこで本日は「新型コロナ感染拡大と賃料減額等の問題について考えます!」と題して、借主からこうした要望を突き付けられた場合の対処法や覚書の作成方法等についてお話しさせていただきたいと思います。

新型コロナ 賃料減額

 

賃料の減額は他人事ではない

さて冒頭にて、「借主から賃料の減額や支払いの猶予を求められる」というお話をいたしましたが、投資家様の中には『毎月のローンの支払いが厳しいので、そんな要望が飲めるはずがない!』とお考えの方も多いことでしょう。

しかしながら法的な側面から考えれば、「営業自粛を求めらている状況は、民法における物件の一部滅失と同様に扱われるべき事態だ」と主張される可能性もありますし、「借地借家法における賃料の減額請求が可能な要件を満たしたいる」と主張する法律家もいるようです。

※こうした主張が認められれば、物件オーナーは賃料を減額せざるを得ません。

そうとなれば、物件オーナー様としても「減額等を求められても、応じる必要はない」と強気に要望を突っぱねる訳には行かなくなりますし、訴訟に発展するくらいであれば『ある程度のところで妥協点を見付ける方が得策である』という気もして来ますよね。

そこでここからは、具体的な「賃料減額」や「賃料の支払い猶予」の取り決め方や覚書の作成方法などについて解説してまいりたいと思います。

賃料の減額について

ではまず最初に、賃料の減額についてお話しして行きましょう。

「賃料の減額」と聞くと、『賃貸借契約書に定められた賃料の額を将来に渡って減額する』とったイメージをお持ちになる方も多いかもしれませんが、今回のお話はあくまでもコロナ禍に対する応急的な措置ということになりますので、極限られた期間の賃料減額で問題はないはずです。

具体的な期間については、借主の状況によっても様々でしょうが、私の周辺では数か月から1年程度の期間を設定してケースが多いようです。

一方、減額の幅については30%~50%としているオーナー様が多いように思われます。

そして、賃料の減額という重要な取り決めを行うに当たっては「覚書」等の文書を作成する必要あり、記載すべき内容は下記の通りとなります。

  • タイトル/賃料減額に関する覚書(確認書)
  • 今回の賃料減額は新型コロナの感染拡大に伴い、貸主が借主を支援する目的のものであり、あくまでも一時的な措置である旨
  • 具体的な賃料の減額期間(例/●●年●月~▲▲年▲月分まで)や合意した減額賃料の金額
  • 減額期間経過後は本来の賃貸借契約に定めらた賃料を支払うこと
  • この文書に定めらていない事柄については、原契約や関係法令に従うものとする

最低でも、表記の内容は覚書に盛り込んでおき、借主・貸主共に署名・捺印を行うようにしましょう。

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家賃の支払い猶予について

続いては、家賃の支払い猶予に関する取り決めについて考えて行きましょう。

当然ながら賃料の支払い猶予はあくまでも「猶予」となりますので、一定の期間が経過した後には猶予した賃料を支払ってもらわなければなりません。

よって、1年などといった長期で支払いを猶予すると、その返済の負担も長大なものとなりますので、最大でも6ヵ月程度の短い期間を設定するべきです。

また、返済の方法としては猶予期間終了後の毎月の賃料支払いに返済分を上乗せする方法が一般的となりますが、あまり厳しい設定を行うと滞納リスクが高まりますので、「猶予は短期間、返済は長期間で設定する」のがポイントとなります。

また、滞納リスクに備えて遅延損害金の設定も行っておくべきですし、連帯保証人を擁立している場合には、保証人にも支払い猶予の内容を把握・承諾してもらう必要があるでしょう。

では、こうしたポイントを踏まえながら具体的に文書に盛り込んでおくべき内容を見て行きましょう。

  • タイトル/賃料支払い猶予に関する覚書(確認書)
  • 今回の賃料支払い猶予は新型コロナの感染拡大に伴い、貸主が借主を支援する目的のものである旨
  • 具体的な賃料支払い猶予期間(例/●●年●月~▲▲年▲月分まで)
  • 猶予期間完了後の支払いスケジュール(●月分●●万円、▲月分▲▲万円、■月分■■万円を支払うこと)
  • 定めらて支払いスケジュールに違反した場合には遅延損害金(年利●%)が発生する旨
  • 一定期間、返済の遅延が生じた場合には猶予分を一括返済しなければならない旨
  • これらの取り決めを連帯保証人も承諾する旨
  • この文書に定めらていない事柄については、原契約や関係法令に従うものとする

覚書には少なくとも以上の内容を盛り込んだ上で、借主・貸主・連帯保証人の3者で署名・捺印を行うべきかと思います。

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新型コロナ感染拡大と賃料減額等の問題について!まとめ

さてここまで、コロナ禍における賃料の減額や支払い免除というテーマで解説を行ってまいりました。

ワクチンの接種が順当に進めば、いずれはこの危機的な状況も改善に向かうものと思われますが、それでも経済が正常化するまでにはまだまだ時間を要するはずです。

なお、こうした現状を鑑みれば「賃料が払えないテナントを救うよりは、この厳しい市況の中で業績を伸ばしているテナントに物件を貸し出すべきだ」とお考えになる方も少なくないことと思いますが、この異常な社会情勢の中で勝ち組となっている企業がアフターコロナ後もその状態を維持できるという保証は一切ありません。

よって、入居中のテナントから賃料減額等の相談を受けた際には無下に突っぱねるのではなく、じっくりとその会社の業績や将来の展望を精査することが大切でしょう。

そして、「新型コロナの流行さえ収まれば、このテナントは必ず再生できるはずだ」という感触が得られた場合には、是非とも救いの手を差し伸べていただければ幸いです。

収益物件の運用を行っていると、ついつい目先の賃料収入にばかりに意識が向いてしまいがちですが、将来性のあるテナントに対しての賃料減額等の措置は「先行投資」という意味合いもありますから、これは正に「投資家としての腕の見せ所」なのではないでしょうか。

ちなみに、賃貸保証会社を利用しているテナントに対して賃料等の減額や支払い猶予を行う際には、賃貸保証会社にしっかりとその旨を報告し、承諾を得た上で計画を実行に移すことが重要です。

※賃貸保証会社の承諾なしに賃料等の減額を行った場合、保証契約に定められた通りの保証を受けられない可能性があります。

どんなに将来性のある企業でも、今の状況は相当厳しいものであるはずですから、最低限のリスクヘッジを行った上で、支援の手を差し伸べるべきでしょう。

ではこれにて、「新型コロナ感染拡大と賃料減額等の問題について考えます!」の知恵袋を閉じさせていただきたいと思います。