これからマイホームを購入しようとお考えの方にとって、非常に気になるのが「新築と中古の物件では、どちらがお得なのか?」という問題なのではないでしょうか。

新築物件は「価格が高額とはなるものの、まだ誰の手垢もついていない美しい建物とプレミア感が非常に魅力的」ですし、もう一方の中古物件は「建物は少々古いが価格はリーズナブル」となりますから、『どちらも捨て難い魅力がある』というのが本音でしょう。

また、不動産売買の営業をしていると、お客様から『新築にするべきか、中古にするべきか』というお悩み相談を受けることも多いのですが、熟練の営業マンであっても簡単にその答えを出すことはできないはずですから、この問いは『不動産取引における究極の選択』といっても過言ではないはずです。

そして、このような事情を鑑みれば「新築と中古どちらがお得?」というテーマは、管理人としても『できれば触れたくない部分』であることは間違いがないのですが、本日は敢えてこの問題について解説を行ってみたいと思います。

では、新築・中古どっちが得か?の知恵袋を開いてみましょう!

※本記事では「戸建ての場合」「分譲マンションの場合」と物件種別ごとに解説を行っていきます。

新築・中古どっちが得

 

戸建ての新築VS中古

「家を買うならやっぱり戸建て!」という方も少なくないかと思いますので、まずは「戸建ての新築・中古比較」からお話を始めましょう。

価格の問題

冒頭でもお話ししたとおり、「新築は高い、中古は安い」というイメージをお持ちの方も多いことと思いますが、これは確かに『間違いのない事実』です。

但し、新築物件が高額であるとは言っても、これを販売する戸建て分譲業者は過去の取引事例などを参考に値付けを行っていますので、周辺の取引相場を逸脱するような高額物件は殆ど存在しないのが実情でしょう。

これに対して一般の方が売主となる中古物件については、「安売りはしたくない!」「住宅ローンを返すのにいくら必要だ!」といった個人的な事情から、相場より高い値段が設定されている可能性がありますので、この点には注意が必要となります。

よって、中古戸建てを選択する際には周辺の相場観をしっかりと把握した上で、土地の大きさ地形、建物の状態などを精査し、『値付けが適正であるのか?』という判断を行う必要があるのです。

リフォーム費用

そして中古戸建てと新築戸建ての売買において、『最大の違い』となるのが入居に際してリフォーム費用が発生するか否かという点となります。

中古戸建てのリフォームにおいては、マンションにはない「廊下」や「階段」といった部分の存在により、クロスやフローリングの張替えに際して施工面積が大きくなり、これに伴って工事費用も高額となるケースが少なくありません。

また、これらの工事に加えて「ユニットバスの交換」や「システムキッチンの入替え」などを行うとなれば『リフォーム費用は数百万円単位の出費』となりますし、

床を剥がしてみたら「腐食やシロアリの被害が発覚した」となれば、想定外の膨大な工事費用が発生することになりますから、中古物件の購入にあたっては「どれくらいのリフォーム費用が掛かるかを正確に見極めること」が非常に重要なポイントとなるでしょう。

更にこれらのリフォームを行うには、それなりの工事期間が必要となりますから、買換えの場合(現在保有する物件を売却して、新たな物件を購入する場合)には「引っ越し先の工事が完了できず、住む場所がない」といった状態にならないように充分な注意が必要です。

これに対して、新築物件ではリフォーム費用についての心配は一切不要となりますから、この点は大きな魅力と言えるでしょう。

但し、中古物件でも不動産業者が売主の場合(中古再販売物件)にはリフォーム済(リノベーション済)となっている場合が殆どですから、リフォーム費用について不安を感じる方は、この手の物件を選択するべきです。

瑕疵担保の問題

戸建ての中古物件を購入する際に「最も注意するべき」なのが、この瑕疵担保の問題についてとなるでしょう。

瑕疵については、別記事「瑕疵担保責任について考えてみます!」にて詳細な解説を行っていますが、簡単にご説明するならば、雨漏りや建物の傾きなど、目に見えない土地や建物の欠陥(キズ)を指す言葉となります。

確かに、折角高いお金を払って購入した自宅が「雨漏りだらけ」では泣くに泣けませんよね。

もちろん売買契約書の中には、こうした物件の傷(瑕疵)を売主に保証させるための「瑕疵担保責任」という条項が記されていますが、個人間取引の中古物件売買における瑕疵担保保証期間は長くて6ヶ月、短い場合には3ヶ月程度が通常ですし、瑕疵が認められたとしても、相手に支払うお金が無ければ泣き寝入りするしかないのが現実です。

更に、築年数の古い物件では「瑕疵担保責任は免責」ということもありますから、この点については契約までにしっかりと条件を確認する必要があるでしょう。

これに対して新築物件であれば、雨漏りなど重大な瑕疵については10年間売主が責任を負うルールとなっていますし、売主は不動産業者となりますから保証も万全な上、近年では建売業者の倒産に備えた瑕疵保険への加入も義務化されていますから、『取引に対して抜群の安心感』を得ることができるはずです。

ちなみに、中古物件であっても売主が不動産業者となっている場合には、引渡し後2年間は瑕疵担保責任を負うものとされていますから、中古を選択する場合にはこのタイプの物件がおすすめとなります。

※近年では中古戸建ての個人間売買に際して、インスペクション(住宅検査)の実施や瑕疵保険へ加入するケースが増えつつありますので、こうした物件を選ぶこともトラブルを回避するための有効な手段となります。

近隣住民の問題

また、物件を購入する際に気になるのが、「お隣や周囲に妙な方が居ないか?」という近隣関係の問題です。

最近では「騒音おばさん」などのニュースも耳にいたしますので、マイホームの購入に当たってはやはり注意すべき点となるでしょう。

なお、中古戸建てを購入するのであれば、近隣への聞き込みなどの方法である程度は「周辺住民の情報」を得ることが可能となりますから、危険人物の存在などを事前に察知することができるはずです。

一方、新築戸建てで10棟、20棟という大型の分譲地ともなれば、隣近所にどのような人間が引っ越して来るかが全く予想できない状態となってしまいますので、この点には注意が必要でしょう。(隣接住宅が全て新規購入者であるため、事前調査ができない)

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マンションの新築VS中古

ここまで、戸建てに関する新築物件と中古物件の比較を行ってまいりましたが、本項では分譲マンションにおける新築と中古を比べてみることにいたしましょう。

そしてこのようなお話をすると、「戸建てと分譲マンションでそんなに違いがあるの?」という声も聞こえて来そうですが、実はかなりの違いがあるものです。

①価格の問題

分譲マンションも当然ながら、中古よりも新築が割高となる点には違いがありません。(中古物件の価格に「個人売主の願望」が含まれている点も同様です)

ただ戸建てと異なるのは、築2年、3年などの築浅物件が数多く流通している点です。(マンションの販売個数は、戸建てとは比較にならない程多いため売物件も発生しやすい)

また、こうした築浅物件の販売価格は、新築時に比べ10%以上下落している(地域によっても異なります)ケースも多いため、「プレミア感に惹かれて、新築を買うのではなかった!」と後悔される方も少なくありません。

更に、こうした超築浅中古物件を購入するのであればリフォーム費用も最低限で済むはずですから、「新築」という言葉にこだわりが無いのであれば、この手の物件は非常にお得な出物であると言えるでしょう。

※新築戸建ての場合でも「新築プレミアム価格」とでもいうべき価格は付加されているものですが、築浅物件が売りに出されること自体が非常に稀であるため、マンションのみに当てはまるケースとさせていただきました。

ちなみに、マンションは分譲当時の価格をネットなどで手軽に調べることができるため、苦労して相場観を身に付けずとも「割高な物件を簡単に見分けることができる」という点も、中古マンションならではの特色といえるでしょう。

②リフォーム費用

中古マンションのリフォーム費用については、戸建てと比べて「施工面積が小さい」ため、築浅で綺麗に使用されている物件を選べば、工事費用をかなり安価に抑えることが可能です。

また、分譲マンションにおいては外壁やバルコニーなどが共用部分(管理組合が管理すべきエリア)となっているため、個人で修繕費用を負担せずに済みますから、この点も中古マンション物件を買う際の大きなメリットとなります。

③瑕疵の問題

中古戸建ての場合には「瑕疵の問題が非常に深刻である」とお話ししましたが、分譲マンションにおいては『中古であっても、瑕疵についてのリスクはそれ程高くない』というのが現実です。

「②リフォーム費用」の項でも解説いたしましたが、分譲マンションでは雨漏りの原因となる外壁や、建物の基礎・躯体に係る部分は共用部分(管理組合が管轄する箇所)となりますから、

何か問題が生じた場合でも、個人で修繕費用負担を行ったり、問題解決にあたる必要はありません。(但し、室内【専有部分】の床下の配管などは購入者の責任で管理する必要がある)

よって戸建てよりも、「中古物件が気軽に購入できる」という点もマンションの特徴となっています。

④近隣住民の問題

近隣住民の問題については、原則として「戸建てとほぼ同じご説明」となりますが、マンションの場合には『部屋の両隣りに加えて、上の階と下の階にも住人がいる』ため、「厄介な方」と遭遇する可能性は更に高まるはずです。

そして戸建ての場合と同様に、新築マンションでは「事前の近隣住人についての調査」が不可能となりますから、ヤバイ方のお宅に接する物件を購入してしまう確率も高まるでしょう。

なお中古物件であれば、聞き込み調査等でヤバイ人の存在を事前に察知できますので、この点については「中古マンションの方が安全である」といえそうです。

⑤管理費・修繕積立金の問題

戸建てには無かった問題点ですが、マンションではこの管理費や修繕積立金にも注意が必要です。

新築マンションは確かに管理費等が割安ですが、数年で値上がりをしてしまうケースは珍しくありません。

こうしたリスクを考えれば、組合の運営が軌道に乗っている中古物件の方が、不要なストレス(これから値上がりするかもというストレス)を感じずに済むかもしれません。

但し、あまりに築年数の古いマンションは管理費、修繕積立金共に割高となる上、大規模修繕や建替えに際して「修繕積立一時金」などの名目で出費を迫られることもありますので注意が必要です。

⑥建物の構造や設備、サービスについて

分譲マンションの新築と中古を比較する場合に、避けては通れないのが建物の構造や設備、サービスについての問題となります。

近年の新築マンションでは床暖房やディスポーザーなど、様々な設備が付加されているものですし、床についてもスラブ(コンクリートの躯体)を分厚くしたり、2重構造の床にするなどの工夫をして『上階からの騒音を軽減するための努力』を行っていますが、築年数の古い中古物件ではこうした設備や建物の構造を備えていることはまずあり得ないでしょう。

また、古い分譲マンションでは室内の水道管に鉄管を使用している建物が多い上、コンクリートの躯体の中を通過して配管の切り回しを行っているところも少なくありません。

当然、鉄製の配管は錆で腐食しますから、時間が経過すれば交換等の必要が出てくるのですが、躯体の中を通過した水道管の工事には高額な費用が発生することになります。(躯体等を破壊しなければならない場合などには、交換工事ができないケースもあります)

これに対して、新築や築浅の物件では水道管自体も腐食し辛い素材(ステンレスなど)を使用している上、将来的な配管の交換に備えて「躯体の中を通過しない配管の切り回し」を行っている建物が多いため、メンテナンスを考えると、古い分譲マンションは非常に不利と言わざるを得ません。

また、近年の分譲マンションでは(衣服の)クリーニングやゲストルームなどのサービスや施設が充実していますが、築年の古いマンションではこれらのサービスはおろか、戸数分の駐車場さえ確保されていないケースもありますので、新築と中古ではサービス面でも大きな差があります。

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新築と中古どちらを買うべきかのまとめ

さてここまで、「新築と中古はどちらお得?」というテーマにて、戸建てと分譲マンションのケースに分けて解説を行ってまいりました。

なお物件の種別に係わらず、不動産取得税住宅ローン控除などの税制面においては、新築の方がより手厚い優遇を受けることができますし、築年数の古い物件で住宅ローンを組む場合にも35年、30年などの長期借入れができない場合がありますのでご注意ください。

そして、ここまでの解説をお読みいただいた読者の方々が最も知りたいのは「結局、新築と中古ならどちらがお得なの?」という点かと思いますので、最後にこの点についてお話ししておきましょう。

まず、戸建てについては「新築にするべき」というのが管理人の見解となります。

現在ではインスペクションと呼ばれる住宅検査の普及や、瑕疵保険に加入した上での物件販売が主流ですから、以前よりは遥かに「中古戸建て購入のリスクは下落」していますが、決してリスクが「0」になった訳ではありません。

インスペクションで全ての瑕疵が明らかになる訳ではありませんし、たとえ保険によって瑕疵の問題が解決できても、買ったばかりのマイホームで大掛かりな工事が必要となれば、その負担は決して小さくないはずです。

また越境や私道の通行権などの「権利関係の問題」に、建替え時に降り懸かってくる「法令上の制限に関する問題」等については、やはり新築よりも中古物件の方がリスクが大きいですから、筆者としては新築をおすすめしたいと思います。

これに対して分譲マンションの場合には「築10年以内であれば、中古物件がおすすめ」となるでしょう。

本文中でもお話しした通り、分譲マンションの場合には建物の重要な部分の多くが「共有部分」であるため瑕疵に関するリスクが低いことに加え、築10年以内ならば建物の構造や設備等の部分でも殆ど問題はないはずです。

更に、一度売りに出されれば「新築時に付加されるプレミアム的な価格」を差し引いた値段で購入することができますし、築浅であればリフォーム費用も最小限に抑えられるでしょう。

よって、戸建てであれば「新築」、分譲マンションであれば「築10年以内の中古」というのが、本記事の結論となります。

ではこれにて、新築・中古どっちが得か?について知恵袋を閉じさせていただきたいと思います!