不動産投資というと、アパートやマンションを購入して家賃収入を得る方法を思い浮かべる方が多いと思います。しかし、不動産から利益を得る方法は賃料収入だけではなく、購入した物件を売却して利益を得る「不動産転売」という方法もあります。
ただし、不動産は購入価格より高く売れれば、その差額がそのまま利益になるわけではありません。購入時には仲介手数料や登記費用、不動産取得税などが発生し、保有中には税金や管理費、ローン利息などがかかります。さらに売却時にも仲介手数料や税金などを考える必要があります。
また、転売を目的として宅地や建物を仕入れ、継続的に売買する場合には、宅地建物取引業の免許が必要になる可能性もあります。
そこでこの記事では、不動産転売で利益が生まれる仕組みから、仕入れ価格の考え方、転売向きの物件、リフォームや収益物件を利用する方法、必要な費用、税金や宅建業法上の注意点まで、実務の視点から解説していきます。
不動産転売では、物件を見つけてから「いくらで売ろう」と考えるのではなく、先に想定売却価格を考え、そこから諸費用と確保したい利益を差し引いて仕入れ価格の上限を決めることが重要です。

不動産転売で利益が出る仕組み
不動産転売の基本は、購入した不動産を購入価格より高い価格で売却することです。しかし、購入価格と売却価格の差だけを見て「利益が出た」と判断することはできません。
たとえば2,000万円で購入した物件を2,300万円で売却できた場合、価格だけを見れば300万円の差があります。しかし、購入と売却の双方で仲介手数料が発生することもありますし、登記費用や税金、リフォーム費用、保有中の経費などもかかります。
安く仕入れて高く売るのが基本
転売で利益を得る最もわかりやすい方法は、相場より安く物件を購入し、適正な市場価格で売却する方法です。
しかし現在は、不動産ポータルサイトなどを利用すれば一般の方でも多くの物件情報を見ることができます。そのため、誰が見ても明らかに割安な優良物件を継続して仕入れることは簡単ではありません。
そこで実際の転売では、単に安い物件を探すだけではなく、「なぜ安いのか」「購入後にその原因を解消できるのか」という視点が重要になります。
価値を高めてから売却する方法もある
中古マンションをリフォームする、空室の多い収益物件の稼働率を改善する、適切な修繕を行う、複雑な権利関係を整理するなど、購入後に物件の問題を改善することで価値が高まる場合があります。
つまり不動産転売では、単なる値上がりを待つだけではなく、購入時には十分に発揮されていなかった価値を引き出して売却するという考え方も重要になります。
価格差ではなく最終的な利益で考える
転売を検討するときには、購入価格と売却価格だけではなく、購入から売却までに必要となる費用を含めて収支を計算しましょう。
売却代金-購入代金-購入諸費用-保有中の費用-リフォーム等の費用-売却諸費用-税金等=最終的に残る利益
これは税務上の所得を計算するための式ではなく、あくまで投資判断をする際の考え方です。不動産転売では「いくら高く売れたか」よりも、最終的にいくら残ったのかを見る必要があります。
不動産転売では仕入れが重要
不動産転売の成否を大きく左右するのが仕入れです。売却活動やリフォームを工夫することも重要ですが、購入時点で高く仕入れてしまえば、その後に十分な利益を確保することは難しくなります。
まず想定売却価格を考える
転売を前提として物件を購入する場合には、「この物件をいくらで買えるか」よりも先に、「最終的にいくらで売却できるのか」を考えます。
周辺の売出物件だけではなく、できれば実際の成約事例も確認し、築年数、面積、間取り、駅からの距離、接道条件、建物の状態などを比較して売却可能な価格帯を判断します。
売主の希望価格を基準に考えるのではなく、自分が売主になったときに買主がいくらなら購入するのかという視点が必要です。
売却価格から仕入れ上限を逆算する
想定売却価格を決めたら、そこから必要となる費用と確保したい利益を差し引き、購入価格の上限を考えます。
たとえば3,000万円程度で売却できると予想する物件について、購入から売却までの諸費用やリフォーム費用などを400万円、最低でも300万円の利益を確保したいと考えたとします。
想定売却価格3,000万円-諸費用等400万円-確保したい利益300万円=仕入れ価格の上限2,300万円
もちろん実際には、売却価格が予想を下回ることもありますし、購入後に想定外の修繕が必要になることもあります。そのため、計算上の上限価格いっぱいで購入するのではなく、ある程度の余裕を持って判断する必要があります。
安い物件ほど「安い理由」を確認する
相場より安い物件を見つけると、転売向きに感じるかもしれません。しかし、不動産が安い場合には何らかの理由があることも少なくありません。
建物の老朽化、接道や再建築の問題、借地権などの権利関係、賃借人の存在、管理状態、周辺環境など、価格が低くなっている原因を確認する必要があります。
その原因を自分で解決できるのであれば利益につながる可能性がありますが、解決できない問題であれば、自分が売却するときにも同じ理由で価格を下げざるを得ません。
転売物件を探していると、「この価格なら安い」と感じる物件に出会うことがあります。しかし大切なのは、単に安いことではなく、なぜ安いのかを自分で説明できることです。
そして、その原因を解消できるのか、解消するためにいくら必要なのか、解消後はいくらで売却できるのかまで確認してから購入を判断しましょう。
転売向きの物件を見極めるポイント
転売では購入価格だけでなく、購入後の売却しやすさも重要です。計算上は利益が出る物件であっても、買主がなかなか見つからなければ資金を回収できません。
周辺の相場を確認する
中古マンションであれば同じマンションや周辺の類似物件、戸建てであれば土地面積、建物面積、築年数、駅距離などが近い物件を比較します。
なお、売出価格はあくまで売主の希望価格です。売出価格だけを見て「この価格で売れる」と考えるのではなく、できる限り成約価格も確認して売却価格を予測しましょう。
次に誰が買うのかを考える
転売では、自分が気に入る物件かどうかよりも、「次に誰がこの物件を買うのか」を考えることが重要です。
ファミリー層向けなのか、単身者向けなのか、投資家が購入する物件なのかによって、求められる立地、間取り、設備、価格帯は変わります。
対象となる買主が極端に少ない物件は、想定価格で売却できるまで時間がかかる可能性があります。
複数の出口を選べる物件は強い
転売だけを出口にすると、市況が悪化した場合や予定価格で売れなかった場合に身動きが取れなくなることがあります。
価格を下げれば売却できるのか、しばらく賃貸して保有できるのか、居住用だけではなく投資家へも売却できるのかなど、複数の出口を持てる物件はリスクを抑えやすくなります。
リフォームして転売する方法
中古マンションや中古戸建てでは、購入後にリフォームを行い、商品価値を高めてから売却する方法があります。
古い設備を交換し、クロスや床をきれいにすれば物件の印象は大きく変わります。ただし、リフォーム費用をかけた分だけ売却価格が上昇するとは限りません。
リフォーム費用と値上がり幅を比較する
たとえば300万円のリフォームを行っても、売却価格が150万円しか上がらなければ、転売の利益という意味では工事をやり過ぎた可能性があります。
反対に、比較的少ない費用で物件の印象を大きく改善できれば、転売には有効です。
大切なのは、設備を新しくすること自体を目的にするのではなく、その工事によって販売価格や売却のしやすさがどれだけ変わるのかを考えることです。
リフォームでは、一度工事を始めると「あそこも直したい」「ここも交換したい」と工事範囲が広がりやすくなります。水回り、床、クロス、建具などをすべて交換しているうちに、当初の予算を大きく超えることもあります。
工事前に「現状のまま売却する場合」「最低限の工事をする場合」「全面的に改修する場合」を比較し、最終的に利益が残る方法を選びましょう。
収益物件を利用した転売
アパートや賃貸マンションなどの収益物件では、保有中に家賃収入を得ながら、将来的な売却を狙う方法もあります。
収益物件の価格は、土地や建物自体の価値だけではなく、賃料、稼働率、経費、利回りなどの影響を受けます。そのため、空室を減らしたり、適正な賃料設定に見直したりすることで、購入時より評価が高まる可能性があります。
空室を改善してから売却する
同じ建物でも、空室が多い状態と満室に近い状態では、投資家から見た印象が大きく異なります。
募集条件を見直し、必要な修繕を行い、入居率を改善して収益を安定させた後に売却することで、購入時より良い条件で売れることがあります。
ただし、入居率を上げるために極端な賃料値下げや高額な広告費を使えば、かえって物件評価や収支を悪化させることもあります。売却時の評価まで考えて運営することが大切です。
ローン残高が減った分を「転売利益」と考えない
収益物件をローンで購入し、家賃収入から返済を続ければ、時間の経過とともにローン残高は減っていきます。売却時の残債が少なくなれば、売却代金からローンを返済した後に手元へ残る現金は増えます。
しかし、売却価格からローン残高を差し引いた金額が、そのまま利益になるわけではありません。
購入時に投入した自己資金、購入諸費用、保有期間中の収支、売却費用、税金などを含め、物件を取得してから売却するまでの全体で利益を判断する必要があります。
オーナーチェンジ物件を利用する方法
賃借人が入居しているマンションなどをオーナーチェンジ物件として購入し、賃料収入を得ながら保有し、将来空室になった段階で居住用として売却する方法も考えられます。
賃貸中の区分マンションは主に投資家が購入対象となりますが、空室になれば自宅として購入する人も対象になります。そのため、物件によっては購入者層が広がり、売却価格が変わる可能性があります。
入居者の退去時期はコントロールできない
ここで注意したいのが、賃借人がいつ退去するかは所有者が自由に決められないという点です。
「来年には空室になるだろう」という予想だけで購入すると、入居が何年も続く可能性があります。貸主側から契約を終了させる場合にも借地借家法や契約内容の確認が必要です。
したがって、空室になったら高く売却できる物件でも、それまで長期間保有する可能性を考えて収支を確認しておきましょう。
借地権や底地を利用した転売
借地権や底地など、単独では流通性が低い権利を取得し、権利関係を整理することで価値を高める方法もあります。
たとえば借地権付き建物を購入した後、地主から底地を取得することができれば、借地権と底地が一体となり、完全所有権として売却できる可能性があります。
反対に、底地を所有している場合に借地権を取得し、一体化する方法も考えられます。
借地権投資については、借地権投資法について解説した記事でも詳しく紹介しています。
借地権と底地の一体化は、相手方が売却に応じてくれることが前提です。「将来必ず底地を買える」「必ず借地権を取得できる」と考えて購入するのは危険です。
交渉が成立しなかった場合でも保有できるのか、借地権または底地のまま売却できるのかなど、別の出口も考えておきましょう。
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不動産転売に必要となる主な費用
不動産の転売では、購入・保有・売却のそれぞれの段階で費用が発生します。利益を計算するときには、これらを漏れなく見込んでおくことが重要です。
購入時の主な費用
- 物件購入代金
- 仲介手数料
- 売買契約書の印紙税
- 所有権移転登記などの登記費用
- 不動産取得税
- 固定資産税・都市計画税等の精算金
- ローンを利用する場合の融資関係費用
- マンションの場合は管理費・修繕積立金等の精算金
購入時に必要となる費用については、不動産売買の諸費用について解説した記事も参考にしてください。
保有中の主な費用
- 固定資産税・都市計画税
- マンションの管理費・修繕積立金
- 建物や設備の修繕費
- 火災保険料等
- ローンの利息
- 空室物件の電気・水道などの維持費
半年で売る予定だった物件が1年、2年と売れなければ、その間も保有コストは発生します。転売では売却までの期間も収支に大きく影響します。
売却時の主な費用
- 仲介手数料
- 売買契約書の印紙税
- 抵当権抹消などの登記関係費用
- 売却のために必要となる工事や測量等の費用
- 売却によって生じた所得に対する税金
仲介手数料は購入時・売却時の双方で大きな負担になることがあります。仲介手数料の仕組みについては、不動産売買の仲介手数料について解説した記事をご覧ください。
不動産転売と税金の注意点
個人が土地や建物を売却して利益が生じた場合、一般的には譲渡所得として税金を計算します。
譲渡所得の基本的な計算では、売却による収入金額から取得費や譲渡費用などを差し引きます。そのため、単純に「購入価格より500万円高く売れたから500万円に税金がかかる」と考えるわけではありません。
短期間で売却すると税率が高くなることがある
土地や建物の譲渡所得は、所有期間によって長期譲渡所得と短期譲渡所得に区分されます。
一般的な個人の不動産売却では、売却した年の1月1日時点で所有期間が5年以下の場合は短期譲渡所得、5年を超える場合は長期譲渡所得となります。
短期譲渡所得の場合、原則として課税短期譲渡所得金額に対して所得税30%、住民税9%が課され、さらに所得税には復興特別所得税も加わります。
「購入してから丸5年経ったから長期譲渡所得になる」とは限りません。判定するのは売却した日ではなく、売却した年の1月1日現在の所有期間です。
転売時期を検討するときには、この判定方法を間違えないようにしましょう。
転売を事業として行う場合は扱いが異なることがある
ここまでの短期譲渡所得・長期譲渡所得の説明は、一般的な個人による土地や建物の譲渡を前提としています。
一方、不動産を販売すること自体を事業として行い、販売目的で取得した不動産を商品として取り扱う場合などには、通常の土地・建物の譲渡所得とは異なる税務上の扱いになることがあります。
継続的に転売を行う場合や、転売を事業として開始する場合には、自分の判断だけで所得区分を決めず、税理士などの専門家へ確認しましょう。
不動産を繰り返し転売する場合は宅建業法に注意
自宅や保有していた投資物件を売却するだけで、直ちに宅地建物取引業の免許が必要になるわけではありません。
しかし、転売によって利益を得る目的で宅地や建物を仕入れ、反復継続して売却するなど、取引が宅地建物取引業としての「業」に当たる場合には、宅地建物取引業の免許が必要になります。
「年間○件までなら大丈夫」とは限らない
宅地建物取引業に該当するかどうかは、単純に年間の売却件数だけで判断されるものではありません。
取引の目的、物件を取得した経緯、販売方法、取引の反復継続性などを踏まえて総合的に判断されます。
また、一度の取引に見えても、一つの土地を区画分けして複数の買主に販売するような場合には、反復継続的な取引に当たる可能性があります。
「自分名義の不動産なら何度転売しても問題ない」「年に○件までなら宅建業免許はいらない」などと単純に考えるのは危険です。
転売目的で物件の仕入れと販売を継続する計画であれば、事業を始める前に宅建業免許の必要性を確認しましょう。
不動産転売で失敗しやすいケース
不動産は取引金額が大きいため、一つの判断ミスで数百万円単位の収支差が生じることがあります。特に次のようなケースには注意が必要です。
相場より高く仕入れてしまう
転売では購入時の価格が非常に重要です。購入時に高く仕入れてしまえば、リフォームや販売方法を工夫しても利益を確保することが難しくなります。
気に入った物件だからといって購入価格を上げるのではなく、想定売却価格から逆算した仕入れ価格の上限を守ることが大切です。
諸費用を少なく見積もる
購入価格と売却価格だけを比較していると、仲介手数料、登記費用、税金、融資費用、リフォーム費用などによって予定していた利益がなくなることがあります。
また、購入後に給排水設備や建物などの不具合が判明し、予定外の工事が必要になる可能性もあります。一定の予備費を見込んでおきましょう。
リフォームに費用をかけすぎる
物件をきれいにすることと、転売利益を増やすことは同じではありません。
高級な設備を入れたとしても、その地域の購入者がその価値を評価しなければ販売価格には十分反映されません。想定する買主と地域の価格帯に合った工事内容を考えましょう。
すぐ売れることを前提にする
不動産は売りに出せばすぐに売れるとは限りません。市況、金利、競合物件、価格設定、物件固有の条件などによって売却期間は変わります。
売却期間が長くなれば、固定資産税や管理費、ローン利息などの負担も増加します。短期間で売却できなかった場合でも資金繰りに問題がないか確認しておきましょう。
出口を一つしか考えていない
「3,000万円で転売する」という出口しか考えていなければ、その価格で売れなかったときに計画が崩れてしまいます。
2,800万円まで値下げしても利益が残るのか、賃貸に切り替えられるのか、投資家向けとして売却できるのかなど、複数のシナリオを考えておくことが重要です。
転売目的で物件を購入する前のチェックポイント
- 想定売却価格に客観的な根拠があるか
- 周辺の売出物件だけでなく成約相場も確認したか
- 相場より安い場合、その理由を説明できるか
- 安い原因を購入後に解消できるか
- 購入時・保有中・売却時の費用を計算したか
- リフォームや修繕に予備費を見込んでいるか
- 予定価格より値下げしても利益が残るか
- 売却まで長期化しても資金繰りに問題がないか
- 売れない場合に賃貸など別の出口を選べるか
- 税金を含めた最終的な手取りを確認したか
- 継続的に売買する場合の宅建業免許について確認したか
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不動産転売のノウハウまとめ
不動産転売というと、「安く買って高く売る」という単純な方法に見えるかもしれません。しかし実際には、誰でも分かる割安物件を見つけて購入し、すぐに高値で売却することは簡単ではありません。
重要なのは、購入後にいくらで売却できるのかを予測し、そこから購入・保有・改修・売却に必要となる費用と、確保したい利益を差し引いて仕入れ価格を決めることです。
さらに、リフォームによる価値向上、収益物件の空室改善、借地権と底地の権利整理など、物件ごとの問題を解決することによって利益を生み出せる場合もあります。
転売では「安い物件を見つけること」以上に、出口から逆算して仕入れることが重要です。「いくらで売れるのか」「売却までにいくら必要なのか」「想定より安くしか売れなくても利益が残るのか」を確認してから購入を判断しましょう。
また、短期間での売却では税負担が大きくなることがあり、転売を目的とした不動産売買を反復継続する場合には宅地建物取引業の免許が必要になる可能性もあります。
「買えば値上がりする」「リフォームすれば高く売れる」と考えるのではなく、予定どおりに売れなかった場合まで想定して資金計画を立てることが、不動産転売で大きな失敗を避けるためのポイントとなるでしょう。







