現場を知るから、本当に役立つ。
不動産管理の実務経験をもとに、実際の現場で役立つ賃貸管理の知識を分かりやすく解説します。
賃貸物件の空室対策を考える際、設備を充実させて物件の魅力を高めることは非常に有効な方法です。
しかし、設備は多ければ多いほど良いというものではありません。
入居者に喜ばれる設備であっても、故障した際に高額な修理費が掛かったり、交換する製品が見つからなかったり、清掃やメンテナンスに手間が掛かったりするものもあります。
つまり大家さんにとって重要なのは、
なのです。
この記事では、賃貸管理の実務経験をもとに、賃貸物件への導入を慎重に考えたい設備と、その理由について解説します。

賃貸物件の設備は「付けた後」の管理まで考える
賃貸住宅では、エアコンや給湯器、温水洗浄便座、インターホンなど、様々な設備が設置されています。
こうした設備を充実させれば、募集時のアピールポイントになることは間違いありません。
一方で、貸室の設備として設置したものについて不具合が発生した場合には、貸主側で修理や交換などの対応が必要になるケースがあります。
民法では、貸主は原則として賃貸物を使用・収益するために必要な修繕を行う義務を負うとされています。
もちろん、借主の故意・過失によって壊れた場合などは別ですが、通常使用の中で設備が故障した場合には、管理会社や大家さんが対応することになるのが一般的です。
設備を選ぶ際には「設置価格」だけを見るのではなく、修理費、交換費、部品供給期間、清掃費まで含めて考えることが重要です。
また、設備の故障などによって部屋の一部が使用できなくなった場合には、状況によって賃料減額の問題が生じることもあります。
そのため、賃貸物件では「豪華な設備をたくさん付ける」という発想よりも、
シンプルで壊れにくく、交換しやすい設備を選ぶ
という考え方が非常に重要になります。
なお、空室対策として設備投資を行う場合の考え方については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
▶ 賃貸物件の空室対策とは?管理会社が実践する募集改善と満室までの実例を解説
「設備」と「残置物」は契約時に扱いを明確にする
賃貸住宅では、室内に置かれている物品について「設備」と「残置物」という言葉が使われることがあります。
例えば、前の入居者が置いていったエアコンや照明器具などを、そのまま次の入居者が使用するケースがあります。
このような場合に「残置物」として募集することもありますが、単に募集図面へ「残置物」と記載すれば、どのような故障についても当然に貸主が責任を負わなくなる、と単純に考えるのは避けた方がよいでしょう。
実務上は、
- 誰が所有しているのか
- 故障した場合に修理するのか
- 撤去する場合は誰が行うのか
- 費用を誰が負担するのか
- 入居者が自由に処分してよいのか
などを、募集条件や賃貸借契約書等で明確にしておくことが重要です。
「残置物だから貸主は一切関係ない」と一律に考えるのではなく、その物品の所有関係や契約内容を確認した上で取り扱う必要があります。
設備と残置物の扱いについては、こちらの記事でも詳しく解説しています。
賃貸物件への導入を慎重に考えたい設備
それではここから、私自身の管理経験も踏まえながら、導入後の維持管理に注意したい設備を見ていきましょう。
なお、ここで紹介する設備について「絶対に設置してはいけない」という意味ではありません。
物件のグレードや入居者層によっては、十分に導入価値があるものもあります。
大切なのは、
募集上のメリットと、将来の修理・交換コストを比較して判断すること
です。
食洗機
分譲マンションや戸建住宅ではすっかり一般的になった食器洗い乾燥機ですが、賃貸住宅では少し慎重に考えたい設備です。
食洗機には、
- 給水
- 排水
- ヒーター
- ポンプ
- センサー
- 電子基板
など複数の部品が使われています。
そのため年数が経過すると、様々な部分に不具合が生じる可能性があります。
特にビルトインタイプの場合、単純に壊れた製品を取り外して別の商品を置けばよいわけではありません。
既存キッチンとの寸法や配管、電源なども確認する必要があります。
私が以前管理していた物件にもビルトイン式の食洗機が設置されていましたが、1年間に何度も修理を手配した末、最終的には本体交換となったケースがありました。
もちろん、ファミリー向けや比較的グレードの高い物件では食洗機が募集上の強みになることもあります。
ただし、新たに設置する場合には「何年使えるか」だけではなく、将来交換するときの費用まで考えておきたいところです。
ディスポーザー
ディスポーザーは、キッチンの排水口部分で生ごみを細かく砕く設備です。
便利な設備ではありますが、異物を投入したことによる故障や、排水設備を含めた維持管理が必要になる場合があります。
また、ディスポーザーについては自治体によって設置に関する考え方やルールが異なる場合があります。
例えば、排水処理システムと組み合わせることを前提としている地域もありますので、新規導入する際には自治体や専門業者へ確認する必要があります。
ディスポーザーは本体だけの問題ではなく、排水処理設備や建物全体のシステムと関係する場合があります。既存建物へ安易に後付けする設備ではありません。
浴室テレビ
浴室テレビは、設備としてのインパクトが大きく、内見時には非常に目を引きます。
しかし、賃貸管理という視点では少々悩ましい設備でもあります。
浴室は高温多湿となる場所ですから、当然ながら専用の防水・防湿性能が求められます。
また、壁へ埋め込まれているタイプでは、故障した際の修理・交換が簡単ではありません。
古くなると同じサイズの後継機種が見つからず、壁面の補修まで必要になるケースも考えられます。
入居者募集への効果はありますが、長期間保有する賃貸物件では「将来撤去する時」のことまで考えて導入するべき設備でしょう。
お掃除機能付きエアコン
近年では、自動フィルター清掃機能などを搭載した高機能エアコンが数多く販売されています。
自宅で使用する分には便利な機能ですが、賃貸物件の場合には必ずしも高機能であることがメリットになるとは限りません。
お掃除機能付きエアコンでも、内部すべてを自動で清掃してくれるわけではありません。
長期間使用すれば、内部にカビや汚れが発生することもあります。
そして問題となるのが、専門業者へエアコンクリーニングを依頼する場合です。
一般的な壁掛けエアコンと比べて構造が複雑なため、分解洗浄費用が高くなる傾向があります。
ビルトイン・天井埋込式エアコン
ビルトイン式や天井埋込式のエアコンは、室内がすっきり見えるため、高級感を演出できる設備です。
しかし、管理コストについては一般的な壁掛けエアコンとは大きく異なります。
故障した場合には、
- 本体価格が高い
- 工事費も高くなりやすい
- 天井内の工事が必要になることがある
- 清掃費用が高い
- 後継機種の選定が難しい場合がある
といった問題が出てきます。
高級賃貸物件では必要な設備になることもありますが、一般的な賃貸物件へ新規導入するのであれば、将来の交換費用まで十分に検討した方がよいでしょう。
全館空調・セントラル空調
建物全体を一つのシステムで空調する全館空調は非常に快適な設備です。
一方で、故障した場合の影響が大きいという弱点があります。
各部屋へ個別エアコンを設置している物件であれば、1台故障しても他の部屋の空調は使用できます。
しかし全館空調では、システムの故障によって複数の部屋で同時に冷暖房が使用できなくなる可能性があります。
特に真夏や真冬の場合には迅速な対応が必要になります。
また、機器本体だけでなくダクトなどを含めた維持管理も考えなければなりません。
既に設置されている高級物件を賃貸する場合は別として、一般的な収益物件へ新たに導入する設備としては、慎重な検討が必要でしょう。
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必ずしも避ける必要がない設備もある
ここまで管理コストの高い設備をご紹介してきましたが、以前の記事では注意設備として扱っていたものの、現在では必ずしも「避けた方がよい」とは言えない設備もあります。
浴室乾燥機
浴室乾燥機は故障時の交換費用が比較的高くなる設備ではあります。
しかし現在では、
- 雨の日でも洗濯物を干せる
- 花粉の時期に室内干しができる
- 浴室の湿気対策になる
といったメリットがあり、物件によっては十分な募集効果が期待できます。
そのため「故障するから付けない」という判断ではなく、
ターゲットとなる入居者層や周辺競合物件の設備状況を見ながら判断する
のがよいでしょう。
例えば、新築や築浅のファミリータイプで周辺物件のほとんどに浴室乾燥機が付いているのであれば、設備を外すことで逆に競争力が低下する可能性があります。
節水型トイレ
現在のトイレは節水性能が非常に高くなっています。
そのため「節水型トイレだから賃貸物件には向かない」ということではありません。
ただし、古い建物で排水管の状態や勾配に問題がある場合には、便器だけを最新型へ交換したことで排水トラブルが表面化する可能性があります。
古い建物でトイレを交換する場合には、便器だけを見るのではなく、
- 排水管の状態
- 排水勾配
- 過去の詰まり履歴
なども確認しておくと安心です。
設備交換をきっかけに、それまで表面化していなかった建物側の問題が分かることがあります。古い建物では「新品を付ければすべて解決」とは限りません。
専用庭や花壇は「設備」より管理ルールが重要
庭や花壇は設備とは少し性質が異なりますが、賃貸管理では意外にトラブルになりやすい部分です。
戸建賃貸やアパート1階の専用庭などでは、
- 雑草を誰が抜くのか
- 植木を誰が剪定するのか
- 入居者が植物を植えてよいのか
- 退去時に植えた植物をどうするのか
- 害虫が発生した場合は誰が対応するのか
といった問題が発生します。
そのため、専用庭がある物件では契約時に管理方法を決めておくことが重要です。
例えば、日常的な除草や清掃は借主が行うこととし、大きな樹木の剪定や専門的な管理は貸主側で行うなど、役割を明確にしておく方法があります。
一方で、建物全体の植栽や共用部分についてまで一律に借主負担とするのではなく、専用使用部分と共用部分を分けて考える必要があります。
賃貸物件では「シンプルな設備」が強い
長年賃貸管理に携わっていると感じることがあります。
それは、
賃貸住宅では高機能な設備よりも、シンプルで交換しやすい設備の方が管理しやすい
ということです。
例えばエアコンひとつをとっても、高機能な最上位モデルと一般的なモデルでは購入価格だけでなく、
- 修理費
- 交換費
- クリーニング費
- 部品点数
などにも違いがあります。
入居者が実際に求めている機能が「冷房と暖房」であれば、それ以上の機能に掛けた費用が家賃へ反映できるとは限りません。
設備投資では、
まで考える必要があります。
設備は「10年間でいくら掛かるか」で考える
設備投資を検討するとき、つい「いくらで設置できるか」という初期費用ばかりに目が行きがちです。
しかし、賃貸経営では長期間使用することになります。
例えば10万円の設備を設置したとしても、その後10年間で、
- 修理2回
- クリーニング数回
- 最終的に本体交換
となれば、実際に掛かる費用は導入価格だけではありません。
反対に、多少購入価格が高くても、部品供給が安定しており、修理しやすく、交換も容易な設備であれば、結果的に安く済むこともあります。
私なら賃貸物件の設備を選ぶ際、「これが10年後に壊れたとき、普通の設備屋さんですぐ交換できるか」という点をかなり重視します。
設備選びは管理会社にも相談する
大家さんがリフォームや設備交換を検討する際には、施工業者だけでなく管理会社へ相談するのも有効です。
工事会社は当然ながら設備や施工について詳しいですが、管理会社は、
- どの設備がよく故障するのか
- どの設備について入居者から問い合わせが多いのか
- どの設備が募集で評価されるのか
- 交換時にどの程度の費用が掛かるのか
といった「設置した後」の情報を持っています。
設備投資を考える際には、施工費だけでなく賃貸管理まで含めて判断すると失敗を減らせます。
管理会社が実際にどこまで対応するのかについては、こちらの記事でも詳しく解説しています。
▶ 賃貸の管理会社はどこまで対応してくれる?仕事内容と対応できないことを実務目線で解説
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まとめ|設備は「豪華さ」より管理しやすさも重要
賃貸物件では、設備を充実させることで物件の魅力を高めることができます。
しかし、設備が増えれば、それだけ将来故障する可能性のあるものも増えます。
特に、
- 食洗機
- ディスポーザー
- 浴室テレビ
- お掃除機能付きエアコン
- ビルトイン・天井埋込式エアコン
- 全館空調
などは、物件のグレードや入居者層によっては魅力的な設備となる一方、修理・交換・清掃などの管理コストについても十分に検討しておく必要があります。
また、浴室乾燥機や節水型トイレのように、現在では一般的になっている設備については、単純に「壊れるから付けない」のではなく、周辺物件との競争力や建物との相性を見ながら判断することが大切です。
そして何より重要なのは、
賃貸住宅では、豪華で複雑な設備より、シンプルで丈夫、そして故障してもすぐ交換できる設備の方が結果として大家さんにとって扱いやすいケースも少なくありません。
空室対策と維持管理コストのバランスを考えながら、その物件に本当に必要な設備を選んでいただければと思います。







