賃貸物件の管理では、家賃の入金状況に問題がなくても、入居者の生活が立ち行かなくなっていることがあります。水道代の滞納による給水停止も、その一つです。
私が以前管理を担当していた賃貸マンションでも、家賃は毎月支払われているのに、水道と携帯電話が止まってしまった入居者がいました。真夏の出来事だったこともあり、管理する側としては落ち着かない日々が続いたものです。
この記事では、水道料金の滞納から給水停止に至る流れを整理したうえで、当時の体験談と、大家・管理会社が対応する際の注意点を解説します。
- 水道料金を滞納すると、督促や給水停止予告を経て水道を止められることがあります。
- 給水停止の時期や再開の条件は、水道事業者によって異なります。
- 賃貸物件では、入居者が水道局へ直接支払う方式か、貸主側が徴収する方式かを確認します。
- 家賃の滞納がなくても、本人への状況確認や相談先の案内など、管理側にできる対応があります。

水道代を滞納するとどうなる?給水停止までの流れ
督促や給水停止予告を経て、水道を止められることがある
水道料金を納期限までに支払わない場合、一般的には督促状や催告書などによる支払いの案内が行われます。それでも未払いが解消されないと、給水停止の予告を経て、水道を止められることがあります。
水道法第15条第3項には、料金を支払わない場合などに、水道事業者が供給規程に従って給水を停止できる旨が定められています。ただし、何か月の滞納で停止するか、どのような通知を行うかといった具体的な運用は、全国一律ではありません。
「まだ数か月だから大丈夫」と考えず、届いた通知に記載された納期限や連絡先を確認することが大切です。給水停止が予告されている場合は、通知を放置せず、担当窓口へ連絡しましょう。
支払いが難しい場合は、給水停止前に相談する
失業や病気などで水道料金を支払えない場合は、できるだけ早く水道事業者へ事情を説明します。一括払いが難しいことを伝え、分割納付などの相談ができるか、どのような対応が必要かを確認しましょう。
その際には、未払いの金額、支払いが難しくなった事情、支払える時期や金額を整理しておくと、話を進めやすくなります。ただし、相談すれば必ず給水停止が見送られる、分割払いが認められるというわけではありません。
生活費全体が不足している場合には、自治体の生活困窮者向け相談窓口や福祉担当窓口への相談も考えられます。水道料金の減免制度がある地域でも対象要件が決まっているため、生活が苦しいことだけで滞納額が免除されるとは考えないようにしましょう。
給水再開の条件と手続きも確認する
すでに水道が止まっている場合は、支払いに必要な金額や方法とあわせて、給水再開の手続きを確認します。支払っただけで直ちに水が出るとは限らないため、入金の連絡が必要か、再開までどの程度かかるかも尋ねておきましょう。
給水停止中のバルブやメーターを自分で操作して、水を使うことは避けてください。給水再開は、水道事業者の案内に従って行う必要があります。
一緒に請求されることの多い水道料金と下水道使用料ですが、滞納時の法的な取扱いは同じではありません。水道料金は、原則として支払督促や訴訟など裁判所を通じた手続きを経て、強制執行による回収が図られます。
一方、下水道使用料には、法令に基づく滞納処分として差押えなどが行われる場合があります。「水道代は税金と同じ手続きで差し押さえられる」と一括りにしないことが大切です。
賃貸物件では、水道料金の契約・請求先を確認する
入居者が水道局などと直接契約している場合
賃貸物件では、建物全体の水道料金を貸主側がまとめて支払う方式もありますが、ここでは、入居者自身が水道事業者と契約し、水道料金を直接支払う一般的なケースから見ていきましょう。この場合、未払いについての相談や支払いは、基本的に入居者と水道事業者との間で進めることになります。
大家や管理会社は、水道料金の債権者ではないため、自分たちに支払うよう請求したり、給水再開の条件を独自に決めたりする立場にはありません。ただし、本人に状況を確認し、水道事業者の担当窓口への相談を促すことはできます。
また、管理会社だからといって、入居者の契約内容や滞納額を当然に教えてもらえるわけではありません。詳しい確認が必要な場合は、本人から問い合わせてもらうか、本人の同意を得たうえで、水道事業者所定の手続きを確認しましょう。
貸主・管理会社が水道料金を徴収している場合
建物全体の水道料金を貸主側がまとめて支払い、子メーターの使用量や契約上の定額料金に基づいて、各入居者へ請求する物件もあります。この方式では、貸主側への水道料金の未払いとして対応を進めることになります。
まずは賃貸借契約書や水道料金に関する取り決めを確認し、請求期間、検針値、計算方法、入金履歴に誤りがないかを調べます。家賃とまとめて請求している場合も、何がいくら未払いなのかを明確にしておくことが大切です。
保証会社を利用している場合は、水道料金が保証対象に含まれるかも確認しましょう。家賃が保証されていても、水道料金まで自動的に保証されるとは限らず、対象となる場合も請求方法や事故報告期限などの条件に注意が必要です。
水道事業者による法令・供給規程に基づく給水停止と、貸主側が支払いを迫るために水道を止める行為は、分けて考える必要があります。滞納を解消させる目的で一方的に止水すると、違法な自力救済として損害賠償などの問題になるおそれがあります。
契約書に給水停止に関する条項があっても、それだけで適法になるとは限りません。督促や保証会社への請求など、契約と法令に沿った方法で対応しましょう。
【実体験】家賃は払っているのに、水道を止められた入居者
保証会社の審査を経て入居した男性
ここからは、私が以前、賃貸管理を担当していた頃の体験談です。舞台となったのは、当時築18年ほどの鉄筋コンクリート造4階建てマンションにある、1Kの一室でした。
前の入居者が退去したのは、賃貸の繁忙期が過ぎたゴールデンウィーク明けの頃です。募集を始めても問い合わせが少なく、長期の空室になるかもしれないと心配していたところ、顔見知りの不動産業者から入居申込みが入りました。
申込者は、建築関係の会社に勤める30代の男性でした。申告された収入に対して家賃の負担がやや大きいと感じたため、その点は大家さんにも伝えましたが、保証会社の審査が通れば契約を進めてほしいとの意向を受けます。
その後、保証会社の審査も通過し、契約と引渡しは無事に完了しました。入居後もしばらくは問題がなく、家賃も毎月支払われていました。
巡回中に知った、水道料金の滞納
状況を知ったのは、定期巡回の際に、共用部分で作業をしている水道局の担当者と出会ったことがきっかけです。声を掛けたところ、その入居者の水道料金が未払いとなっており、給水停止の作業に来たという話でした。
慌てて会社へ連絡し、家賃の入金状況を確認しましたが、こちらに滞納はありません。最初は水道料金の払い忘れかもしれないと思ったものの、その後もメーターには停水中を示す札が付いたままでした。
季節はすでに真夏です。水道が止まった状態で生活を続けていることが気になり、大家さんへ報告したうえで、本人に電話を入れました。
本人への連絡で分かった失職と生活苦
電話に出た男性から聞かされたのは、入居後ほどなくして勤務先を解雇され、再就職先を探しているという事情でした。生活が苦しくなり、水道料金を支払えなくなっていたのです。
暑い時期でもあり、生活に支障がないのかと尋ねましたが、本人は「もう少しの辛抱なので」と話していました。家賃は支払われている一方、水道のない暮らしを続けている状況に、管理する側としては不安が残ります。
当時の私は、家賃に滞納がない以上、どこまで踏み込んでよいのか迷っていました。今振り返れば、支払いを迫ることと、生活状況を確認して相談先を案内することは、分けて考える必要があったと思います。
メーターが撤去され、携帯電話もつながらなくなった
その後も巡回の際に様子を気にしていたところ、この事例では、やがて水道メーター自体が取り外されました。さらに本人へ電話を掛けても応答がなくなり、後には携帯電話も利用停止を知らせる音声が流れるようになったのです。
水道だけでなく連絡手段まで失われたことで、室内で体調を崩していないかと心配になりました。訪問して残した手紙は受け取られている様子があり、家賃も引き続き支払われていましたが、本人と直接話ができない状態は落ち着かないものでした。
なお、ここで紹介しているメーター撤去などの経過は、当時、その物件で実際に起きた出来事です。現在のすべての地域で、同じ順番や方法による対応が行われるという意味ではありません。
水タンクを運ぶ姿を見掛け、やがて生活が戻った
ある日、訪問した際に、マンションのエントランスで男性と会うことができました。大きな水タンクを部屋へ運び込んでいるところで、話を聞くと、近所の公園で水を汲んで生活していたようです。
改めて状況を尋ねると、すでに再就職先が決まり、月末には普段の生活へ戻れる見込みだと話してくれました。その言葉どおり、翌月には水道メーターが戻り、携帯電話も再びつながるようになります。
新しい勤務先についても本人から申告があり、この件は結果として、本人の再就職をきっかけに解決へ向かいました。ひとまず安心しましたが、管理側として何ができたのかを考えさせられる経験でした。
この事例では、男性は水道や携帯電話が止まっても、家賃を支払い続けていました。家賃の入金確認は大切ですが、それだけで生活に問題がないと判断することはできません。
管理業務の中で異変に気付いたときは、滞納の有無だけで判断せず、本人と連絡が取れるか、生活上の困りごとがないかを確認する視点も必要だと感じました。
水道代の滞納を知った大家・管理会社が取れる対応
本人に連絡し、給水停止の状況と生活への影響を確認する
水道が止まっていると分かったら、まずは本人に連絡し、事情を確認します。料金の支払い忘れなのか、失業などで支払えないのか、すでに水道事業者へ相談しているのかによって、その後の案内も変わります。
最初から責めるような聞き方をすると、本人が連絡を避けるようになり、状況を把握しにくくなることがあります。「水道が止まっているようですが、生活に支障はありませんか」「担当窓口には相談できていますか」など、確認したい点を落ち着いて伝えましょう。
管理側がすべての家計事情を聞き出す必要はありません。給水再開へ向けた相談ができているか、当面の生活に重大な支障がないか、今後どの方法で連絡できるかを中心に確認します。
相談先を案内し、貸主への報告と記録を残す
本人が支払いに困っている場合は、まず水道事業者の料金担当窓口へ相談するよう案内します。生活費全体に問題が及んでいる場合には、自治体の生活困窮者向け相談窓口や福祉担当窓口も選択肢になります。
そのうえで、管理会社は貸主へ必要な範囲で状況を報告し、連絡した日時、本人から聞いた内容、案内した相談先、次回の連絡予定などを記録します。再就職や収入回復が見込まれるという話があった場合も、本人の説明として残し、確定した事実と混同しないことが大切です。
水道料金を立て替えることを検討する場合は、誰が負担するのか、返済方法をどうするのかを曖昧にしないようにしましょう。管理会社が貸主の了解なく立替えを約束したり、当然に回収できるものとして扱ったりすることは避ける必要があります。
連絡が取れない場合は、安否確認の必要性を判断する
電話に出ないだけで、直ちに室内へ入ってよいわけではありません。電話やSMS、書面、訪問時の呼び掛けなどを通じて連絡を試み、これまでの状況とあわせて判断します。
給水停止が続いているうえに、普段と異なる様子が見られる場合は、単なる料金未払いとして扱わず、安否確認の必要性を考えます。室内から助けを求める声がするなど、生命・身体への危険が疑われるときは、状況に応じて警察や消防へ相談・通報します。
合鍵があることだけを理由に、管理側の判断で安易に立ち入らないことも大切です。本人の同意や緊急性、契約内容などを踏まえ、必要な対応を検討しましょう。
入居者と連絡が取れなくなった場合の対応については、賃貸物件で入居者が失踪した場合の対応を解説した記事でも紹介しています。
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まとめ|水道代の滞納は、入居者の生活状況を確認するきっかけになる
水道料金の滞納は、放置すると給水停止につながることがあります。支払いが難しい場合は、通知を無視せず、水道事業者へ早めに相談することが重要です。
賃貸管理では、誰が水道料金を請求しているのかによって、管理側の立場や対応が変わります。入居者が水道事業者と直接契約している場合でも、本人への状況確認や相談先の案内など、できることはあります。
私が経験した事例では、家賃の支払いが続いていたため、入居者の生活がそこまで苦しくなっているとは、当初は分かりませんでした。無事に生活が戻ったことには安心しましたが、家賃の入金だけでは見えない問題があると実感した出来事です。
入居者の私生活へ必要以上に踏み込むことは避けつつ、管理業務の中で気付いた異変には目を向ける。そのうえで、本人との連絡を保ち、必要に応じて相談窓口につなぐことが、管理する側の大切な対応だと考えています。
このほかの管理現場での出来事は、賃貸トラブルの実例と対応を紹介した記事も参考にしてください。
参考資料
※給水停止や給水再開、納付相談、減免制度などの取扱いは、水道事業者や個別の事情によって異なります。具体的な手続きは、契約先の水道事業者へ確認してください。







