アパートなどの収益物件の運用を行っていると、実に様々な問題が頭をもたげて来るものです。
「賃料の不払い」に「住民同士のトラブル」、些細なことに苦情を入れて来る「クレーマー入居者」など、その枚挙には暇がありませんが中でも深刻なのは『賃借人と連絡が付かないという事態』でしょう。
そこで本日は「賃貸失踪問題の解決法をご教授いたします!」と題して、行方不明の入居者からお部屋を取り戻すテクニックをご紹介したいと思います。
頭を悩ませられる賃借人の失踪
冒頭でも申し上げた通り、アパートや賃貸マンションの経営を行っていて、非常に頭を悩ませるのが「賃借人の失踪問題」となります。
なお、「連絡は付かないが賃料だけを支払ってくれる」などという殊勝な賃借人はまず居ませんから、音信不通の段階で滞納も発生していることでしょうし、最悪の場合には賃借人が室内で息絶えている可能性だってあるはずです。(「夜逃げをした」というケースも考えられます)
また賃料の滞納が始まれば、未納家賃はあっという間に山のように累積して行きますし、たとえこのような状態となっても
無断で部屋の荷物を撤去すれば、戻ってきた入居者から法的責任を問われる可能性もあります
から、これは非常に厄介な状況となります。
更に、室内に食べ物などが放置されていれば腐敗による悪臭や虫害が発生しますので、これは何としても早期に解決すべき問題となる訳です。
入居者の失踪を確認する方法
ここまでお話ししてきたように非常に厄介な「入居者の失踪問題」ですが、如何なる対策を行うにしても『まずは賃借人が失踪した』という事実の確認を行わなければなりませんので、本項ではその手順についてお話ししてまいります。
- 「賃料支払い」「ポストの郵便物」の状況から失踪を疑う
- 入居者、連帯保証人、緊急時連絡先への連絡
- お部屋への出入りをチェック
- 警察立ち合いでの室内の確認
- 入居者失踪の確定
収益物件のオーナー様が入居者の異変に気付く切っ掛けは、殆どのケースで「賃料の不払い」や「郵便受けの中身が溢れ返っている」といった状況を受けてのこととなるはずです。
そして、このような事態が発生した場合にはまずは賃借人、続いて連帯保証人や緊急時の連絡先となっている方に電話連絡等を入れてみましょう。
ここで賃借人と連絡が取れず、連帯保証人などもその所在を知らないとなれば、いよいよ事件の可能性が高まって来ます。
そこで次に行うのが、賃借人が部屋への出入りを行っているかの確認です。
エントランスに防犯カメラなどが付いていれば、そのデータをチェックするのも有効な方法ですし、非常にアナログな方法ではありますが対象の部屋の玄関ドアの隙間に小さな紙を挟んで、「紙の落下の有無」で出入りを確認することもできるでしょう。
なお、こうした方法を試しても「入居者のお部屋への出入りが確認できない」となれば、次は警察への連絡です。
この段階にくれば事前の調査によって「少なくとも何日以上出入りがない」という情報も得られているはずですから、警官に「お部屋の開錠立会い(安否確認の立会い)」をお願いする際にも状況をスムーズに説明できることでしょう。(この際に連帯保証人から「開錠の許可」を得られれば更に盤石です)
そして、警察と共にお部屋に踏み込んでそこに入居者の姿が無ければ、ここでようやく「賃借人の失踪」が確定することになります。
ちなみに、ここで「賃借人が室内で亡くなっていたというケース」については、その後事故物件として問題の対処にあたることになるでしょう。(事故物件に関する取扱いの詳細は過去記事「事故物件の告知義務と、不動産投資での活用法!」をご参照ください)
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賃借人失踪問題の解決方法
こうして賃借人の失踪が確認できたなら、その後は「如何に素早く問題解決を図るか」という点が重要となって来ます。
なお、失踪案件の解決には大きく分けて2つの方法がありますので、それぞれの方法を解説して行くことにいたしましょう。
法的な解決方法
最も確実で後々のトラブルを回避できる方法が、こちらの法的な解決方法となります。
なお、具体的には
賃料の不払いを理由に訴訟を起して「明け渡し請求」を行い、最終的には強制執行にて空室に戻す
という方法です。
さて、このようにお話しすると「賃借人の居所が判らないのに、どうやって裁判をするの?」という疑問の声が聞こえて来そうですが、こうしたケースでは「公示送達」という方法が可能となります。
これは訴訟を起こす相手方と連絡が付かない時に行われる方法であり、裁判所に訴状を一定期間掲示することで、相手方に通告したのと同じ効果を得ることができるのです。
そして、相手方が名乗り出て来ない場合でも裁判は粛々と進んで行き、ここで勝訴することができれば、最終的に強制執行の申し立てを行なって堂々と部屋の荷物を撤去できることになります。
ちなみにこの一連の手続きは、大家さんが自力で行うことも「できなくはありません」が、可能であれば弁護士や司法書士に依頼するのが無難でしょう。
但し、強制執行に漕ぎ着けるには最低でも3ヶ月分以上の賃料滞納が必要ですし、手続き開始から最短でも4~5ヶ月は時間が掛かる上、荷物の撤去費用や裁判費用は大家さんの負担となりますから、正直「可能であれば避けたい方法」とも言えます。
※失踪問題に対処する方法として「賃貸保証会社を利用する」という手段もありますが、未払い賃料や裁判費用の保証を受けることはできるものの、結局は大家が原告となって訴訟を起こすことに変わりはありません。
連帯保証人や緊急時の連絡先を利用しての解決方法
これに対して、よりスピィーディーで手軽な手段となるのが連帯保証人や緊急時の連絡先を利用しての解決方法となります。
なお、具体的には
連帯保証人等と交渉を行い「賃貸借契約の解除」や「荷物の撤去」をさせてしまおう
という手法です。
確かにこの方法ならば「法的な解決方法」のように煩わしい手続きも不要ですし、より短時間で問題の解決が可能となりますが、『問題は後々のトラブルに発展しやすい』という点でしょう。
つまり、失踪したはずの賃借人が後になってひょっこりと現れ、苦情を申し立てて来ることがあり得るということです。
ちなみに、契約の解除や荷物の撤去等を「あくまでも連帯保証人の自己責任」で行わせることも可能ですが、『お部屋の鍵を手渡したこと』に対する責任を追及されるケースもありますから、この点は非常に悩ましいところでしょう。
そこでおすすめしたいのが、
賃貸借契約を締結する段階で契約書の保証人条項などに『賃借人は連帯保証人に契約の解除権、返還敷金の代理受領権、残置物の処分権などを与える』との旨を定めておく
という方法です。(詳しくは過去記事「賃貸契約書の注意点を解説いたします!(居住用)」をご参照ください)
これならば連帯保証人主導で退去を行っても、賃借人はクレームを付けることができませんから、スムーズにお部屋の明け渡しが完了できますよね。
※「連帯保証人による契約解除の特約」の有効性は契約の状況により異なりますので、実際に契約解除を行う前に必ず弁護士等へご相談ください。
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賃借人失踪問題まとめ
さてここまで、アパート経営における賃借人の失踪問題についての解決方法をご説明してまいりました。
もちろん、こうした事態が起きないに越したことはありませんが「何が起こるか判らない現在の社会情勢」を考えれば、いざという時の備えは万全にしておくべきでしょう。
なお、ご紹介して来た「法的な解決方法」「連帯保証人や緊急時の連絡先を利用しての解決方法」のどちらを行うにしても、最も大切なのは『失踪』という事実をより早く察知することです。
いくら対処方法を知っていても、初動が遅れれば被害はますます拡大するでしょうし、失踪ではなく室内で入居者が意識を失っている場合には素早い対処によって最悪の事態を回避できる可能性もあります。
よって、運用している賃貸物件がたとえ遠方にあっても、定期的に足を運び、ポストの郵便物の状況などに常に注意を払っておくことが重要となるでしょう。
トラブルを回避するためには「常に意識のアンテナを張り巡らせ、労を惜しまずに行動することが何よりも大切」という訳です。
ではこれにて、「賃貸失踪問題の解決法をご教授いたします!」の知恵袋を閉じさせていただきたいと思います。