賃貸マンションやアパートを経営する大家さんにとって、管理会社選びは物件の収益性を左右する非常に重要なポイントです。
入居者募集、家賃管理、滞納督促、クレーム対応、設備故障、契約更新、退去立会い、敷金精算など、賃貸経営では実にさまざまな業務が発生します。
これらを安心して任せられる管理会社であれば大家さんの負担は大幅に軽減されますが、反対に管理会社選びを誤ると、空室が長期化したり、トラブルへの対応が遅れたり、余計な修繕費用が発生したりすることもあります。
管理会社は「管理料が安い」「会社が大きい」「管理戸数が多い」といった一つの条件だけで選ぶものではありません。
募集力、担当者の業務量、滞納への対応、クレーム処理、退去精算、修繕の発注方法など、実際の管理業務まで確認することが重要です。
そこで本記事では、長年賃貸管理の実務に携わってきた経験をもとに、賃貸管理会社を選ぶ際に確認しておきたいポイントを詳しく解説していきます。
現場を知るから、本当に役立つ。

賃貸管理会社選びが重要な理由
賃貸管理会社の仕事は、単に毎月の家賃を集金するだけではありません。
一般的には、次のような業務を行います。
- 空室の入居者募集
- 入居申込みの受付・審査補助
- 賃貸借契約の締結
- 家賃の入金管理
- 家賃滞納への督促
- 入居者からの問い合わせやクレームへの対応
- 設備故障や漏水などの対応
- 契約更新
- 解約受付
- 退去立会い
- 原状回復工事の手配
- 敷金・退去費用の精算
- 建物の巡回や共用部分の確認
つまり管理会社は、大家さんに代わって賃貸経営の実務を担う存在です。
管理会社の仕事について詳しく知りたい方は、当サイトの「賃貸管理会社の仕事内容」に関する記事も参考にしてください。
管理戸数だけで管理会社を判断しない
管理会社の実績を見る際、まず確認しておきたいのが管理戸数です。
ある程度の管理戸数を抱えている会社であれば、それだけ多くの大家さんから管理を任されてきた実績があると考えることができます。
ただし、「管理戸数が多い会社=必ず良い管理会社」というわけではありません。
例えば1,000戸を管理している会社でも、管理担当者が数人しかいなければ、一人ひとりの担当者が大量の物件を抱えている可能性があります。
反対に、300戸程度の管理でも十分な人数を配置し、一棟一棟を丁寧に管理している会社もあります。
私の実務経験上、担当者1人で100戸を超えるあたりから業務量はかなり多くなります。
さらに200戸以上を実質的に1人で担当しているような状態では、入居者対応や建物巡回など細かな部分まで目が届きにくくなることがあります。
もちろん会社のシステムや分業体制によって大きく異なるため、これはあくまで私自身の経験に基づく目安です。
管理会社へ相談する際には、管理戸数だけではなく、
「管理担当者1人あたり何戸くらい担当していますか?」
と質問してみるのもよいでしょう。
賃貸住宅管理業の登録も確認する
管理会社を確認する際には、賃貸住宅管理業者としての登録についても確認しておきましょう。
賃貸住宅管理業法では、一定の管理業務を行う事業者について、管理戸数200戸以上の場合は国土交通大臣への登録が必要とされています。
200戸未満の事業者については任意登録となっています。
そのため、小規模な会社が登録されていないからといって、それだけで問題のある会社という意味ではありません。
大切なのは、会社の規模、管理体制、実際の業務内容などを総合的に確認することです。
空室募集の方法を確認する
管理会社を選ぶうえで、特に重要なのが空室募集の方法です。
いくら建物を丁寧に管理していても、空室が長期間埋まらなければ大家さんの収入は減少してしまいます。
そこで確認しておきたいのが、
- 業者間の物件情報システムへ掲載するか
- 他の仲介会社にも広く紹介してもらえるか
- 一般消費者向けの不動産ポータルサイトへ掲載するか
- 募集図面や写真の内容は充実しているか
- 空室が長期化した場合にどのような提案をしてくれるか
といった点です。
管理会社自身で入居者を見つける力も大切ですが、それ以上に重要なのは、地域の仲介会社にも広く物件情報を提供し、多くの入居希望者の目に触れる状態をつくることです。
空室になるたびに「家賃を下げましょう」と提案してくる会社には少し注意が必要です。
もちろん賃料設定が相場から大きく外れている場合には値下げも必要ですが、設備の追加、募集条件の見直し、広告方法の改善など、家賃を下げる以外にも検討できる空室対策はあります。
入居審査の方法を確認する
入居希望者から申込みが入った後は、入居審査を行います。
現在では賃貸保証会社を利用する契約も一般的になっていますが、「保証会社の審査に通過した=絶対に問題のない入居者」というわけではありません。
保証会社の審査と、大家さんが入居を承諾するための判断は別のものです。
申込内容、勤務状況、入居理由、保証会社の審査結果などを踏まえ、大家さんが判断できる材料をきちんと提示してくれる管理会社が理想的でしょう。
一方で、申込書だけを大家さんへ送り、
「保証会社の審査が通っていますので承認してください」
というだけでは、管理会社の審査サポートとしては少々物足りません。
家賃滞納への対応を確認する
賃貸経営では、家賃滞納が発生することもあります。
この際に管理会社によって大きな差が出るのが、初動の早さです。
家賃滞納は放置するほど未収金が積み上がり、解決が難しくなる傾向があります。
そのため管理会社へは、
- 何日滞納したら連絡するのか
- 電話・SMS・書面など、どのような方法で督促するのか
- 保証会社を利用している場合の事故報告は誰が行うのか
- 連帯保証人への連絡はどの段階で行うのか
- 長期滞納になった場合にどこまで対応するのか
などを確認しておくとよいでしょう。
特に保証会社を利用している場合には、事故報告の期限などが設けられていることもあるため、管理会社側の処理体制は非常に重要です。
クレームや入居者トラブルへの対応を見る
賃貸管理では、騒音、漏水、設備故障、近隣トラブルなど、さまざまな相談が管理会社へ寄せられます。
ここで重要なのは、単純に「大家さん側」「入居者側」のどちらか一方に立つことではありません。
事実関係を確認し、契約内容や責任関係を整理したうえで、適切な落としどころを探せる管理会社であることが大切です。
入居者から強い要求があった場合には、まず管理会社が窓口となって話を聞き、大家さんの防波堤になる必要があります。
一方で、設備故障や建物の不具合など、貸主側で対応すべき問題であれば、その点を大家さんへきちんと説明するのも管理会社の仕事です。
クレーム対応では、入居者の話を最後まで聞くだけで落ち着くケースも少なくありません。
最初から対立するのではなく、まず事実関係を確認し、必要に応じて大家さん・入居者双方と調整する能力が管理担当者には求められます。
賃貸借契約書の内容も確認する
管理会社へ契約業務まで任せる場合には、どのような賃貸借契約書を使用しているかも確認しておきたいところです。
賃貸借契約では、更新、解約、修繕、禁止事項、原状回復、特約など、後々トラブルとなりやすい事項が数多く存在します。
もちろん借主に一方的に不利な条項を盛り込めばよいというものではありません。
重要なのは、法令や実務に沿いながら、トラブルを未然に防止できる契約内容になっているかという点です。
建物巡回を行っているか
意外と見落とされやすいのが、日常的な建物管理です。
実際に物件を巡回してみると、
- 共用灯が切れている
- ゴミ置場が荒れている
- 共用廊下に私物が置かれている
- 放置自転車が増えている
- 掲示物が古くなっている
- 空室から異臭がする
といった問題が見つかることがあります。
特に長期間空室になっている部屋では、排水トラップの水が蒸発して室内に下水臭が上がったり、害虫が入り込んだりすることもあります。
定期巡回を行っている会社なのか、巡回頻度はどの程度なのかについても確認しておきましょう。
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夜間・緊急対応を確認する
漏水、オートロック故障、給湯器の故障など、賃貸物件のトラブルは営業時間内だけに発生するとは限りません。
そこで確認しておきたいのが、夜間や休日の緊急連絡体制です。
管理会社自身が24時間対応していなくても、現在では緊急対応を専門会社へ委託しているケースもあります。
重要なのは、
「夜中に漏水が発生した場合、入居者はどこへ電話し、その後誰が動くのか」
まで確認しておくことです。
退去立会い・敷金精算の能力を見る
管理会社の実力がよく表れる業務の一つが退去精算です。
退去時には、
- 入居前から存在した傷なのか
- 通常損耗なのか
- 借主の故意・過失による損傷なのか
- どのような補修が必要なのか
- 借主へどこまで請求できるのか
などを整理する必要があります。
単にリフォーム会社の見積書を借主へ送るだけでは、適切な精算とはいえません。
入居時の写真や契約内容などと照合しながら、大家さんと入居者の双方へ説明できる管理会社を選びたいところです。
修繕工事の発注方法を確認する
管理会社へ管理を任せると、エアコン、給湯器、水栓、排水設備などの修繕工事を管理会社経由で発注することも多くなります。
そのため、修繕工事についても事前に確認しておきましょう。
- いくら以上の修繕なら大家さんへ事前確認するのか
- 緊急時はどこまで管理会社の判断で発注するのか
- 見積書を提示してもらえるのか
- 大家さん指定の業者を利用できるのか
- 高額工事の場合に相見積もりを取れるのか
このルールが曖昧なまま管理を始めると、「知らない間に工事が発注されていた」といったトラブルにつながることがあります。
管理料の安さだけで選ばない
管理会社を比較するとき、どうしても気になるのが管理料です。
例えば同じ物件について、管理料3%の会社と5%の会社があれば、3%の会社を選びたくなるかもしれません。
しかし、管理料だけで判断するのはおすすめできません。
仮に管理料が安くても、
- 空室期間が長い
- 滞納への対応が遅い
- 修繕工事の費用が高い
- 退去精算が雑
- 大家さんへの報告が遅い
という状態では、年間収支ではむしろ損をしてしまう可能性があります。
管理料が月数千円安くても、空室期間が1か月長くなれば、その差額以上の損失が発生することがあります。
管理料だけではなく、募集力・対応力・修繕費・滞納管理などを含めて総合的に判断しましょう。
管理委託契約の内容を確認する
管理を正式に依頼する前には、管理委託契約の内容もしっかり確認しましょう。
特に確認しておきたいのは、
- 管理業務の範囲
- 管理報酬
- 管理料とは別に発生する費用
- 修繕工事の発注方法
- 家賃の送金日
- 管理報告の方法
- 契約期間
- 解約方法
- 再委託の有無
などです。
「管理料○%」という数字だけを見て契約すると、後から別料金の業務が多数あることに気付く場合もあります。
どこまでが基本管理料に含まれているのかを確認しておきましょう。
管理会社に聞いておきたい10の質問
最後に、管理会社との面談時に確認しておきたい質問をまとめておきます。
- 現在の管理戸数は何戸ですか?
- 担当者1人あたり何戸くらい担当していますか?
- 空室情報は他社の仲介会社にも公開しますか?
- 空室が長期化した場合、どのような提案をしますか?
- 家賃滞納が発生した場合、いつから督促しますか?
- 夜間や休日の設備トラブルにはどのように対応しますか?
- 建物巡回はどのくらいの頻度で行いますか?
- 退去立会いは誰が行いますか?
- 修繕工事はいくら以上なら事前に大家へ確認しますか?
- 毎月どのような管理報告をしてもらえますか?
こうした質問をすると、パンフレットやホームページを見るだけでは分からない、その会社の実際の管理体制が見えてきます。
こんな管理会社には注意
これまでの内容を踏まえると、次のような管理会社については契約前に慎重に確認した方がよいでしょう。
- 管理業務の説明が曖昧
- 担当者1人あたりの管理戸数を教えてくれない
- 空室募集の方法を説明してくれない
- 滞納発生時の対応ルールが決まっていない
- 修繕工事の発注ルールが曖昧
- 管理報告がほとんどない
- 質問しても「大丈夫です」だけで具体的な説明がない
反対に、質問に対して具体的な業務フローまで説明してくれる会社であれば、管理を任せた後の姿も想像しやすくなります。
現在の管理会社に不満があるなら変更も選択肢
すでに管理会社へ物件を任せている大家さんでも、対応に強い不満があるのであれば管理会社の変更を検討することは可能です。
ただし管理会社を変更する場合には、
- 現在の管理委託契約の解約条件
- 入居者への通知
- 家賃振込先の変更
- 敷金などの引継ぎ
- 契約書・入居者情報の引継ぎ
- 鍵の引継ぎ
- 保証会社などへの連絡
などが必要になります。
不満があるからといって勢いで変更するのではなく、新しい管理会社と十分に打ち合わせをしたうえで進めましょう。
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賃貸管理会社の選び方まとめ
今回は、賃貸管理会社の選び方について実務経験をもとに解説してきました。
管理会社を選ぶ際に重要なのは、単純に「大手だから安心」「管理戸数が多いから安心」「管理料が安いからお得」と判断しないことです。
確認したいのは、
- 管理実績と人員体制
- 担当者1人あたりの管理戸数
- 空室募集の方法
- 入居審査
- 家賃滞納への対応
- クレーム処理
- 建物巡回
- 緊急対応
- 退去立会い・敷金精算
- 修繕工事の発注方法
- 管理委託契約の内容
といった、実際の管理業務です。
管理会社は、大家さんに代わって入居者や工事業者、保証会社、仲介会社など多くの関係者とやり取りをする、賃貸経営の重要なパートナーです。
だからこそ、会社の知名度や管理料だけではなく、「実際にこの会社へ物件を任せたら、どのように動いてくれるのか」という視点で選ぶことをおすすめします。
この記事が、管理会社選びに悩む大家さんの参考になれば幸いです。







