賃貸マンションやアパートの管理を行っている不動産会社の中には、「賃貸住宅管理業者の登録は必要なのだろうか」と疑問に感じている方も多いのではないでしょうか。
現在、一定規模以上の賃貸住宅管理業者については、「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」に基づき、国土交通大臣への登録が義務付けられています。
また、登録業者には業務管理者の配置や、管理受託契約締結前の重要事項説明、オーナーへの定期報告など、さまざまな義務が課されています。
そこで今回は、賃貸住宅管理業者の登録制度について、登録が必要となる管理戸数や業務管理者の要件、登録業者に課される主な義務などを分かりやすく解説します。
- 管理戸数200戸以上の賃貸住宅管理業者は原則として登録が必要
- 200戸未満の場合は任意登録
- 登録業者は営業所・事務所ごとに業務管理者を配置する
- 管理受託契約締結前の説明や財産の分別管理などの義務がある
- 登録の有効期間は5年間

賃貸住宅管理業者の登録制度とは
賃貸住宅管理業者の登録制度は、2021年6月15日に全面施行された「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」によって設けられた制度です。
それ以前にも賃貸住宅管理業者の登録制度は存在していましたが、旧制度は基本的に任意登録でした。
現在の制度では、一定規模以上の賃貸住宅管理業者について登録が義務化されています。
制度が設けられた背景には、賃貸住宅の管理をめぐるオーナーと管理会社とのトラブルや、サブリース契約をめぐる問題などがあります。
そのため法律では、大きく分けて次の2つについてルールが定められています。
- 賃貸住宅管理業者の登録制度
- サブリース事業に対する規制
この記事では、主に「賃貸住宅管理業者の登録制度」について解説していきます。
管理戸数200戸以上は登録が必要
賃貸住宅管理業を営む事業者のうち、管理戸数が200戸以上となる場合には、原則として国土交通大臣への登録が必要です。
一方、管理戸数が200戸未満の事業者については登録義務はなく、任意で登録することができます。
| 管理戸数 | 登録 |
|---|---|
| 200戸以上 | 原則として義務 |
| 200戸未満 | 任意 |
小規模な管理会社や、自社所有物件を中心に管理している会社では「200戸」という基準を意識する機会がそれほど多くないかもしれません。
しかし、管理受託戸数が増えていけば登録対象となる可能性がありますので、自社が行っている業務が法律上の「賃貸住宅管理業」に該当するかどうかは確認しておく必要があります。
賃貸住宅管理業とは何をする業者なのか
ここで注意したいのが、単に賃貸物件に関係する仕事をしているだけで、すべて「賃貸住宅管理業」に該当するわけではないという点です。
法律上の賃貸住宅管理業とは、オーナーから委託を受けて、主に次のような業務を行う事業を指します。
- 賃貸住宅の維持保全を行う業務
- 維持保全業務と併せて家賃・敷金・共益費などの金銭管理を行う業務
例えば、建物や設備の維持管理、修繕手配、入居者からの設備不具合への対応などは、典型的な賃貸管理業務といえるでしょう。
一方、家賃の入金確認だけを行っており、維持保全業務をまったく行っていない場合などは、法律上の賃貸住宅管理業に該当しないケースもあります。
実際の業務内容によって判断されますので、単純に「管理会社という名称を使っているかどうか」で決まるものではありません。
登録業者に課せられる主な義務
賃貸住宅管理業者として登録を受けると、さまざまな義務が課されます。
特に重要なのが次の項目です。
- 業務管理者の配置
- 管理受託契約締結前の重要事項説明
- 管理受託契約締結時の書面交付
- 財産の分別管理
- オーナーへの定期報告
- 標識の掲示
それぞれ見ていきましょう。
業務管理者の配置
登録を受けた賃貸住宅管理業者は、営業所または事務所ごとに1名以上の業務管理者を配置しなければなりません。
業務管理者になるためには、一定の実務経験と資格等の要件を満たす必要があります。
代表的なのが、次のようなケースです。
- 賃貸不動産経営管理士の登録試験合格者で、管理業務について2年以上の実務経験がある者
- 宅地建物取引士で、管理業務について2年以上の実務経験があり、国土交通大臣指定の講習を修了した者
なお、実務経験については、一定の講習を修了することで代替できる制度もあります。
「宅建士だからそのまま業務管理者になれる」というわけではありません。
宅建士の場合には、実務経験等に加えて指定講習の修了が必要となります。
管理受託契約締結前の重要事項説明
登録業者がオーナーから新たに物件管理を受託する場合には、管理受託契約を締結する前に、契約内容について説明を行わなければなりません。
主な説明事項には、次のようなものがあります。
- 管理を行う賃貸住宅
- 管理業務の内容
- 管理業務の実施方法
- 管理報酬
- 管理業務の再委託に関する事項
- 契約期間
- 契約更新・解除に関する事項
管理会社とオーナーとの間では、「どこまで管理会社がやってくれると思っていたのか」という認識の違いからトラブルになることがあります。
そのため、管理委託契約では業務範囲や報酬、費用負担などを明確にしておくことが非常に重要です。
管理委託契約の内容については、関連記事「賃貸管理の管理委託契約とは?契約内容や確認すべきポイントを解説」でも詳しく解説しています。
財産の分別管理
管理会社がオーナーに代わって家賃などを受け取る場合には、預かった金銭と管理会社自身の財産を適切に区分して管理する必要があります。
管理会社の運転資金と、オーナーへ送金すべき家賃が混在した状態では、万一管理会社の経営状態が悪化した場合に大きな問題となりかねません。
そのため、実務では家賃管理用の口座を設けるなどして、管理会社自身の財産とは区別して管理することが一般的です。
オーナーへの定期報告
登録業者は、管理を委託しているオーナーに対し、管理業務の実施状況について定期的に報告しなければなりません。
報告内容としては、例えば次のような事項があります。
- 管理業務の対象期間
- 家賃などの収支状況
- 建物や設備の維持管理状況
- 修繕等の実施状況
- 入居者からの問い合わせや苦情への対応状況
管理会社としては特別な仕事に感じないかもしれませんが、オーナーからすれば、自分の物件がどのように管理されているのかを把握するための重要な情報です。
法律上の報告義務とは別に、実務では毎月の家賃送金明細や修繕報告などを通じて、かなり頻繁にオーナーと情報共有を行う管理会社も多いと思います。
管理業務では、問題が発生したときだけ連絡するのではなく、普段から情報を共有しておくことがオーナーとの信頼関係につながります。
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登録の有効期間は5年間
賃貸住宅管理業者の登録には有効期間があり、5年間となっています。
登録期間満了後も引き続き賃貸住宅管理業を行う場合には、更新申請が必要です。
特に制度開始直後に登録した事業者については、順次最初の更新時期を迎えていますので、有効期限を確認しておく必要があります。
なお、登録にかかる主な費用は次のとおりです。
| 手続き | 費用 |
|---|---|
| 新規登録 | 登録免許税9万円 |
| 更新・電子申請 | 18,000円 |
| 更新・書面申請 | 18,700円 |
200戸未満でも任意登録は可能
管理戸数が200戸未満であれば登録義務はありませんが、希望すれば任意で登録することができます。
ただし、任意登録した場合には、管理戸数が200戸未満であっても登録業者として法律上の義務を負うことになります。
つまり、「登録だけしておけば信用が上がるから、とりあえず登録しておこう」というほど単純な制度ではありません。
業務管理者の配置や契約時の手続き、分別管理、定期報告などを適切に行える体制を整えたうえで登録する必要があります。
サブリースについても規制がある
賃貸住宅管理業法では、管理会社の登録制度だけでなく、サブリース事業についてもさまざまな規制が設けられています。
例えば、サブリース業者や勧誘者には、次のような規制があります。
- 誇大広告の禁止
- 不当な勧誘の禁止
- 重要事項を故意に説明しない行為の禁止
- 契約締結前の重要事項説明
- 契約締結時の書面交付
特に問題となりやすいのが、「長期間家賃が保証される」といった説明です。
サブリース契約では、契約内容によって借上げ賃料が将来減額される可能性がありますし、オーナー側から契約を解除する際には借地借家法上の制限を受けることもあります。
そのため、メリットだけではなく、賃料減額や修繕費負担、契約解除などのリスクについても適切に説明する必要があります。
賃貸住宅管理業者の登録制度についてよくある質問
管理戸数が200戸を超えたら登録が必要ですか?
法律上の賃貸住宅管理業に該当する業務を行っており、管理戸数が200戸以上となる場合には、原則として国土交通大臣への登録が必要です。
ただし、自社所有物件の管理など、業務内容によっては登録制度の対象外となる場合があります。
200戸未満なら何も規制を受けませんか?
200戸未満で登録をしていなければ、賃貸住宅管理業者としての登録義務はありません。
ただし、宅地建物取引業法や借地借家法、民法など、賃貸業務に関係するその他の法律まで適用されなくなるわけではありません。
宅建業免許があれば登録は不要ですか?
宅地建物取引業と賃貸住宅管理業は別の制度です。
宅建業免許を持っている会社であっても、法律上の賃貸住宅管理業を行い、管理戸数が基準以上となれば賃貸住宅管理業者としての登録が必要となります。
業務管理者は宅建士でもなれますか?
一定の要件を満たせば宅建士も業務管理者になることができます。
ただし、宅建士資格だけで足りるわけではなく、管理業務に関する実務経験等に加えて、国土交通大臣指定の講習を修了する必要があります。
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賃貸住宅管理業者の登録制度まとめ
今回は、賃貸住宅管理業者の登録制度について解説しました。
現在、賃貸住宅管理業を営み、管理戸数が200戸以上となる事業者については、原則として国土交通大臣への登録が必要です。
そして登録業者には、業務管理者の配置、管理受託契約締結前の説明、財産の分別管理、オーナーへの定期報告など、さまざまな義務が課されています。
一見すると手続きが増えただけのようにも感じますが、賃貸管理という仕事はオーナーの大切な資産と、入居者の生活の双方に関わる仕事です。
特に家賃や敷金など多額の金銭を預かり、建物の維持管理まで任される管理会社には、一定の業務体制が求められるのは当然ともいえるでしょう。
賃貸管理の仕事は、資格や登録制度だけでは測れない部分が非常に多い仕事です。
設備が壊れれば業者を手配し、家賃を滞納する入居者がいれば対応し、近隣トラブルが発生すれば双方の話を聞きながら落とし所を探す。
こうした日々の積み重ねこそが管理会社の仕事なのですが、その土台として「どのような業務を受託し、どのようにお金を管理し、オーナーへどう報告するのか」という基本的なルールを明確にすることは非常に重要です。
登録制度は、その最低限のルールを定めた制度と考えると分かりやすいかもしれません。
現場を知るから、本当に役立つ。







