近年、マスコミなどで頻りに報じられているのが「各地で発生する未曽有の震災被害の状況」と「発生リスクが高まる大地震への注意喚起」となります。
こうした状況を受け、不動産業界においては契約に際して「ハザードマップについて説明を行う」などの試みが行われていますが、お客様の中には『地震に強い地域で物件を買いたい』とご要望される方も少なくありません。
そこで本日は、「地震に強い地域の選び方をお教えいたします!」と題して、防災に適した物件の立地について考えてみたいと思います。
防災対策は土地選びから
マイホームを選ぶ際には土地の広さに形状、駅からの距離など「検討しなければならない問題」が数多く存在するものです。
しかしながら、物件を購入する地域が「地震などの災害に強いか否か」については、『あまり考えない』という方もまだまだいらっしゃるのが実情でしょう。
なお、このようなお話をすると『今どきの建物はある程度耐震性が高いのだから、そんなに神経質になる必要はないのでは・・・』と思われる方も少なくないかもしれませんが、地割れや液状化現象が発生した場合には、どんなに建物を補強していても「殆ど意味が無い」のが現実なのです。
また、「とりあえず山坂のあるエリアなら地盤は強固である」などという説も囁かれていますが、こうした地域には「急傾斜地崩壊危険区域」や「土砂災害警戒区域」といったむしろ危険なエリアも存在しますし、
整然と区割りされた分譲地であっても、土止めとして設置されている「擁壁」が古いものであれば『地震の際に倒壊する可能性』も充分にあり得ますので決して安心はできません。
このように小高いエリアであるならば何処でも安全という訳ではありませんし、お仕事などの関係で『どうしても海に近い場所に住まざるを得ない』という方や、『長年海辺に住むことが夢だった』という人にとっては、地震に備えるという理由だけ物件購入エリアの変更を余儀なくされるのは、なかなか「酷なこと」となるでしょう。
そして不動産屋さん的に言わせていただければ、どこの地域でにも「安全な場所」と「危険な場所」は存在するものですから、
住みたいエリアでより安全な場所を選ぶことこそが、地震に強い物件をスマートに選ぶコツである
ように思えます。
では実際に、どうように地震に強い土地を見分ければ良いのでしょうか。
次の項では、その具体的な判断方法についてお話ししてみたいと思います。
地震に強い土地の見分け方
では、実際に自分でできる地震に強い土地の見分け方をご説明して行きましょう。
ハザードマップを確認する
不動産の契約に伴う重要事項説明書において、必ず説明されることになるのが地方自治体の発行するハザードマップの内容です。
過去に発生した災害のデータを基に90年代から作成が開始されたこのマップは、「地域のどのエリアが災害発生時に如何なる被害を受けるか」を予想した被害想定図となりますので、
ここに記された情報は防災対策を行う上で非常に重要なものとなりますが、これを知るのが「様々な物件を比較検討し、ようやく契約に漕ぎ着けた時」というのではタイミング的にあまりに遅過ぎるのではないでしょうか。(重要事項説明が行われるのは売買契約締結の直前です)
そこでおすすめなのが、
家探しを始める前からハザードマップに目を通して「防災ありき」で物件選びをすること
となります。
ハザードマップは役所などで無料配布されていることが殆どですし、地方自治体のホームページなどからも気軽に閲覧できますから、これを利用しない手はありません。
ちなみに、ハザードマップには「洪水被害」や「土砂災害」など想定される災害によって様々なタイプのものが存在しており、地域によって用意されている地図の種類は大きく異なりますので、入手漏れがないように情報収集は念入りに行いたいところです。
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地盤調査の結果
「土地売り物件」の場合、事前に地盤調査を行うことは困難ですが、新築の建売であれば建築に先立って地盤調査が行われているはずですから、その結果を確認した上で購入の意思決定を行うことが可能となります。
ちなみに、この地盤調査の結果を基に地盤改良が行われ、万が一地盤沈下が発生した場合には保険金が支払われる(地盤沈下の保険に加入している物件であれば)ことになりますが、
ここでチェックすべきは「地盤調査のデータの中身」
となります。
確かに「地盤の改良」も「沈下に対する保険」も非常に頼もしいものではありますが、「購入する土地自体の地盤がどの程度強いのか」を確認することができれば、来たるべき大震災に対しても安心感が高まりますよね。
地盤調査報告書は素人が見ても判り易いように丁寧な説明書きも付けられていますので、気に入った物件が見付かった際には、これを売主に請求して契約前に必ず目を通すように心掛けましょう。
盛土について
平坦な地域では目にしませんが山などを削りとった造成現場では、盛土・切土という工事が行われます。
切土は元々あった山を削って「平地を作る作業」であり、盛土は反対に「土を積んで平地を作る作業」となりますが、
地震には圧倒的に「切土がなされた土地」の方が強い
とされているのです。
もちろん「盛り土」がされた土地には、崖崩れを防ぐための「擁壁」と呼ばれる土止めも整備されているでしょうが、古い基準で作られた擁壁は強度に問題がある場合もありますから、なるべく切土で造られた土地を選ぶべきとなります。
なお、古い年代の造成現場などでは資料が存在しないケースも少なくありませんが、新たに行われた造成工事であれば、売主が盛土・切土の施工状況を把握しているはずですので、契約前に施工方法を確認すると良いでしょう。
擁壁について
「盛土」の項でも少々触れましたが、造成地には「崖崩れ」や「土砂災害」を防ぐための「擁壁(ようへき)」と呼ばれる土止めが設置されているものです。
そして新たに開発が行われた造成地では「最新の建築基準で許可を受けた強固な擁壁」が使用されていますが、古い時代に開発が行われた場所では
「許可基準が時代遅れのものとなっている擁壁」や「経年劣化によって当初の強度を有していない擁壁」が設置されている可能性があります
ので注意が必要となります。
また、同じ擁壁であっても
- 開発行為等によって造られた擁壁
- 宅地造成規制法の許可を得て作られた擁壁
- 工作物申請がなされた擁壁
については『その構造について行政が検査を行っている』のが通常ですが、これらの手続きを経ていない擁壁については「どのような工法で造られているか判らないもの」が殆どですから、中古物件を買う際には土地に備えられた擁壁のプロフィールをしっかりとチェックするようにしましょう。
周辺施設・通勤通学経路の確認
ここまでは「購入する物件に関するチェックポイント」を見てまいりましたが、先の東日本大震災では、高台に住んでいたお宅のお子様が「海沿いの学校に通っていたがために津波の被害に遭われたケース」も報告されています。
そしてこの事例からは「たとえ自宅に万全の災害対策が施されていたとしても、決して家族の安全が保障されている訳ではない」ことがご理解いただけるはずです。
そこで重要になって来るのが、
子供たちが通う学校や塾、そして遊び場となる公園、そして通勤通学に利用する駅やバス停までの経路についても「災害に巻き込まれる可能性のある危険区域が存在していないか」をしっかりと確認しておくこと
となります。
よって、ハザードマップを確認する場合にはマイホームの場所だけではなく、家人が行き来する経路や施設についてもチエックしておく必要があるでしょう。
地域の名称について
冒頭にて「ハザードマップを確認することの重要性」についてはご説明いたしましたが、行政がマップを発行しているからといってその情報に絶対の信頼を置いてしまうのも少々危険な行為であるように思えます。
現に、行政からは警戒情報が出ていない地域で大きな災害が発生することは珍しくありませんし、災害の後で「実は古来より危険な場所であるとの言い伝えがあった」などの情報が入って来ることもあるものです。
もちろん各地域に伝わる「言い伝え」まで調査した上で物件を購入するのは困難でしょうが、
実は地名からある程度「地域の特性」を見抜く
こともできます。
例えば「渋谷」なら、以前に「谷」があったことが判りますし、赤坂なら昔から「岡(坂がある地域)」だったことが推測できますよね。
そして、「水に係る文字」が使われている地名の地域では、水害や地盤の軟弱を予測することができますから、気になる物件を見付けた場合には地名の由来についても調べておくのが賢明でしょう。
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地震に強い土地まとめ
さて、ここまで見て来た通り「地震に強い物件や地域を選ぶ方法」は意外に数多くあるものです。
そして、本日ご紹介して来た知識を駆使して物件選びを行えば、潜在的に災害に強い物件を見付け出すことが可能になりますから、「これからマイホーム探しを始める」という方には是非ご参考にしていただきたいと思います。
また、本ブログでは過去にも「家庭でできる防災対策をご紹介いたします!」や「耐震補強工事の種類について解説いたします!」などの記事をお届けしてまいりましたので、これらも併せてご一読いただければ、『災害に対する備えは更に盤石なものとなる』はずです。
なお、これから皆様が購入される不動産はご自身の資産であると同時にいつかは愛する子供達に相続され、受け継がれていく財産となりますから、少しでも安全な物件を選んで上げることが、親としての愛情なのではないでしょうか。
ではこれにて、「地震に強い地域の選び方をお教えいたします!」の知恵袋を閉じさせていただきたいと思います。