マイホームを購入する際、最も気になることの一つが「この物件は本当に適正な価格が付けられているのだろうか?」という点であるかと思います。

なお、通常のお買い物であればネットを検索することで価格の比較を一瞬で終えることができますが、不動産については全く同じ商品はまず存在しない上、たとえ隣り同士の物件でも「道路幅員」や「方位」などの違いにより、価格が大きく変わってくるのが現実ですから、これは非常に悩ましいところです。

そこで本日は「不動産相場の調べ方を解説いたします!」と題して、売買相場の見極め方をお教えしたいと思います。

不動産相場の調べ方

 

一般的な不動産の相場の調べ方

ではまず最初に、一般的な不動産の相場の調べ方をご紹介していきましょう。

路線価、地価公示

不動産の相場を知る上で広く認知されているのが、

  • 路線価
  • 地価公示

という2つの公的な不動産評価となります。

路線価は固定資産税等の課税標準額を算出するために国税庁が発表する不動産評価額であり、一般的に実勢価格の70%程度の価格になっていると言われています。

一方、地価公示は国が定期的に発表する公的評価額であり、こちらは実勢価格の90%程度の価格とされています。

このように路線価、地価公示は共に公的な評価額である上に、実勢価格との差異についても一定の基準が見出せるため、不動産を評価する上では非常に信ぴょう性の高いデータとなります。

但し、現在のように地価がグングン上昇しているような時期においては、実勢価格と大きな乖離が見られる傾向にあり、あまり参考にならないのが実情です。

REINS Market Information

REINS Market Information(レインズ マーケットインフォメーション)は、不動産業者間の情報共有ツールである「レインズ」を運営している公益法人「指定流通機構」が提供する情報サイトとなります。

不動産業者のみが閲覧できるレインズにおいては、地域ごとの売り物件の情報はもちろん、成約事例についても詳細な情報を得ることができますが、これを一般に公開することは不動産を売却、購入した方の個人情報の漏洩に繋がる危険性があります。

但し、一般の方からの「不動産の相場を知りたい」という要望は非常に強く、これに応えるべくスタートしたのがREINS Market Informationなのです。

このサイトにおいては無料で全国の土地やマンションの成約情報を閲覧できますが、個人の特定に繋がる情報は全てカットされているため、「相場観を掴む」という意味では『少々物足りない印象』を受けるかもしれません。

不動産情報ライブラリ

2024年に国土交通省が不動産情報の開示を目的にスタートさせたのが不動産情報ライブラリというサイトになります。

このサイトにおいては既にご紹介した路線価や地価公示、そしてREINS Market Informationの情報に加えて、国土交通省がアンケートにより収集した不動産売買価格の情報まで閲覧することが可能です。

更には防災、都市計画、周辺施設に関する情報まで掲載されていますので、「国が運営するマルチ不動産情報サイト」とでも言うべき代物となっています。

但し、レインズが閲覧できる不動産業者の立場からすると「それでも相場観を見極めるには情報量が不足している」といった感は否めません。

不動産の値付けに関する基礎知識

さてここまで、不動産の相場観を養う上で参考になりそうなデータやサイトのご紹介を行ってまいりましたが、これらを閲覧するだけでは「購入しようとしている物件が適正な価格であるのか、否か」という判断を行うのは困難です。

そこでここからは『相場を見極める独自のテクニック』をご紹介していきたいと思いますが、より理解を深めていただくための予備知識として「不動産の値付けに関する基礎知識」についてお話ししておきたいと思います。

まず知っておくべきなのは、分譲マンションにしろ、土地・戸建てにしろ、

個人が売主の「中古」と銘打たれている物件の価格は、相場から逸脱した価格が付けられている可能性がある

という点です。

このお話を聞いて「えっ!そうなの?」と驚かれた方も多いでしょうが、これにはしっかりとした理由があります。

個人が売主である場合には、未だローンを返済中という物件も多いでしょうし、買い替えともなれば「現在の家をいくらで以上で売却しなければならない」といった事情も出て来るものです。

もちろん不動産会社が売却依頼を受ける際には「この値段は高過ぎます」と言ったアドバイスは行うものの、所詮は「売主あっての売却案件」ですので、相場よりも割高な価格でも販売活動を始めるしかないのが実情であり、相場よりも高値の物件が市場に流通することになる訳です。

よって、売主が個人である中古物件を購入する際には、より慎重に相場を確かめる必要が生じて来ることになるでしょう。

これに対して、

不動産会社が売主の物件には、個人売主のような事情で「盛られた値付けがされるケース」は殆どない

のが実情です。

なお、このようなお話をすると「不動産屋さんだって高く売りたいのは一緒でしょ?」と思われるかもしれませんが、皆さんが想像するよりも『プロの値付けは遥かにシビア』です。

当然ながら不動産業者も「売りに出す物件の仕入れ(物件の買取り)」を行う必要がありますが、殆どの業者はその仕入れの資金を金融機関からの借入れに頼っているのが実情となります。

よって、プロジェクトを行なう際には金融機関に融資の申込みをすることになりますが、この際には「いくらで物件を仕入れ、これをいくらで売却してどれだけの利益を見込んでいるのか」という事業計画を銀行に対して示さなければなりませんから、相場から逸脱した価格設定をした場合には『金融機関から融資を断られる可能性もある』のです。

更には、多くの銀行の借入金返済期限は1年以内となっていますので、この期間内に物件の販売を終了しなければなりませんから「高値を付け過ぎて売れ残った」という事態は許されないのです。(返済期限を超過した場合には一括返済を求められることになります)

また、相場から逸脱した価格の物件は他の不動産業者から絶好の「当て物(あてぶつ)」として扱われ、晒しものになってしまう可能性もあります。

「当て物」とは、他の物件をお客様に勧めるために『捨て駒的に扱われる物件』を指す言葉であり、こうした物件を不動産業者が見付けると、まずは物件購入希望者に当て物をご紹介して「自分が本当に売りたい物件が如何に割安であるかをアピールする材料」にされてしまうという訳です。

折角の商品がそのような扱いを受けるのは「全ての不動産業者が避けたいところ」ですから、相場より極端に高い値付けは基本的に行わないこととなります。

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分譲マンションの相場の調べ方

では、物件値付けの基礎知識を身に付けていただいたところで、具体的な相場の調べ方について見て行くことにしましょう。

なお戸建てとマンションでは「考え方」が少々変わりますので、まずは中古マンションの相場の判断方法からご説明を始めます。

そして、ここでまず申し上げておきたいのが「戸建てや土地売り物件に比べて、分譲マンションは相場を見極めやすい物件である」という点です。

その理由としてまず挙げられるのが「同じ建物内に複数の物件が存在しているため、世帯が多いマンションでは同じ時期に複数の部屋が売りに出ている可能性がある」からとなります。

こうしたケースでは販売価格の比較が容易となりますし、たとえ同じマンション内に売り物がない場合でも、築年数や立地、間取りが同等クラスの物件を探すのは意外に容易であるはずです。

また、インターネットなどを駆使すれば、築浅の物件については分譲当時の価格を調べられる可能性も高いですし、既に成約済みのお部屋についてもネット上に過去の販売情報が残されていることが少なくありません。

更には、不動産業者だけが閲覧できるレインズやアットホーム業者版などには、過去の成約事例が掲載されている可能性が高いですから、購入の仲介に入っている業者にお願いすればこうした資料も入手することができるでしょう。

こうした下調べをしっかりと行っていれば「売主が個人の中古物件」でも、極端に高い買い物をさせられる可能性はグッと低くなるはずです。

但し、ここで注意すべきなのは「お部屋の内部の状態」や「物件が所在する階数」などについてとなります。

たとえ相場に見合った価格の物件であっても、極端にお部屋の内部が荒れていれば『入居に際して必要となるリフォーム費用が高額』となりますし、『最上階と一階、角部屋とそうでないお部屋では価格に差が生じてしまう』ものです。

こうしたポイントをしっかり勘案して、相場を見極めることもマイホーム購入に際して失敗を避けるための重要なファクターとなるでしょう。

ちなみに、近年では「不動産者が中古分譲マンションの内装をまるまる入れ替えたリノベーション物件」も増えていますが、こうした物件の相場についても、

過去の取引事例などから相場を割り出せば、リノベーション工事にいくら費用が掛かっているかを知ることができますから、購入の意思決定を行う際には是非ご参考にしていただければと思います。

土地・戸建ての相場の調べ方

さて、最も問題なのが土地や中古一戸建ての相場を調べる方法となります。

分譲マンションのように同じ立地、同じ面積、同じ方位といった物件はまず存在しないでしょうから、この点は非常に頭が痛いところですよね。

そして、このような際に役立つのが

近隣の新築建売物件の価格を参考にして、相場価格を割り出す手法

となります。

先に記した「不動産の値付けに関する基礎知識」の中でも触れましたが、不動産業者が分譲する建売住宅等は相場に即した価格が設定されていますから、この特性を上手く利用する訳です。

また、ネットなどを検索しても土地や中古戸建ての販売情報は少ないですが、新築建売物件の情報はそれほど苦労することなく見付けることができますよね。

こうして目的のエリアで建売物件の情報を集めることができたなら、次に行うべきなのが周辺の土地価格の相場を算出する作業です。

一般的に新築の木造戸建てを建築するのに要する費用はおおよそ2500万円程度(床面積約100㎡の場合)とされています。(2階建ての建築費用を前提にしていますが、3階建てはもう少し高額になるケースが多いでしょう)

もちろん建物の仕様などによっても価格は変わって来ますが、東京都内の一等地で見掛ける豪邸仕様の建売や、地下室がある物件などを除けば、ほぼこの値段を見ておけば間違いはありません。

そして、建物代が明らかになれば、

新築戸建の販売価格から建物代2500万円を差し引くことで、土地の価格を割り出すことが可能ですから、これを坪数で割れば「土地1坪あたりの単価」を割り出すことができる

という訳なのです。

後は、この作業を複数の物件で繰り返せば「周辺の土地相場」が自ずと見えて来るのです。

ではここで、より具体的に例を挙げて土地単価の算出方法をご説明しましょう。

仮に土地30坪、販売価格5500万円という建売物件があれば、

販売価格5500万円-建物代2500万円=土地代3000万円

という計算が成り立ちます。

そして、土地代3000万円÷土地面積30坪=1坪単価100万円という計算をすれば、土地の単価を導き出すことができる訳です。

この計算を周辺エリアの複数の物件にて行えば、「近隣の土地がどれくらいの単価で取引されているのか」が明らかになって来ます。

もちろん冒頭でもお話しした通り、土地の形や道路に接している方向などでも価格は上下しますが、下記の一覧表に示した「値上がり率」や「値下がり率」などを参考に、微調整を行っていただければ取引相場が割り出しやすいでしょう。

  • 北側の道路 -10%
  • 南側の道路 +10%
  • 東側の道路   0%
  • 西側の道路   0%
  • 前面道路の幅員が4m以下の物件   -10%
  • 角地の物件            +10%
  • 専用通路のある物件(旗竿地)   -20%

この方法を用いれば周辺の土地相場は直ぐに見えて来るはずですし、土地の値段から逆算すれば、中古戸建に「建物代としてどれぐらいの価格が設定されいるか」の予測も可能ですから、相場から逸脱した物件を見極めることができますよね。

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不動産相場の調べ方を解説まとめ

さてここまで、不動産の相場の調べ方についてお話ししてまいりました。

これらの計算方法は、不動産屋さんが簡易的な市場調査を行う際にも用いられる方法ですから、特定のエリアの相場を把握したい場合にはお役立ていただけることと思います。(不動産屋さんによって「やり方」は若干異なるでしょうが)

なお、分譲マンションにしろ、土地・戸建てにしろ、「計算のベースになるデータが手に入らない」という時は、物件探しを依頼している不動産屋さんに情報提供を求めるのが良いでしょう。

本文中でも申し上げた通り、レインズやアットホーム業者版といったプロ用の情報媒体を利用すれば、中古マンションの取引事例や、現在売出し中の新築戸建の情報は容易に取得することができますので、気軽に教えてもらえるはずです。

マイホームの購入は、多くの方にとって一生に一度となるビックイベントですから、後から「損をした!」などという後悔をしない為にも万全の下調べを心掛けたいところですよね。

ではこれにて「不動産相場の調べ方を解説いたします!」の知恵袋を閉じさせていただきたいと思います。