不動産屋さんに勤めていると、お客様たちから必ず聞かれるのが「掘り出し物の物件はありませんか?」というお言葉です。

商売の世界では、お値打ち品・掘り出し物などと呼ばれる「相場より明らかに価格が安い、お得な商品」があるものですが、正直申し上げて「不動産業界には何の理由もなく安くなっている物件は存在しない」というのが現実でしょう。

このようお話をしてしまうと「それじゃ身も蓋もない!」とお叱りを受けてしまいそうですが、これを反対に解釈すれば「訳さえあれば安くなる」という考え方もできるはずです。

もちろん「訳あり」の中には、物件の価値を著しく低下させる事故物件等の『訳』もありますが、時には処理の仕方次第で『通常の物件以上の収益を生み出すことのできる訳あり』も確実に存在しています。

そこで本日は訳あり物件購入により、通常以上の収益を上げる不動産投資法について、お話ししてみたいと思います。

では、奥深い「不動産の訳ありの世界」を垣間見てみましょう。

訳あり物件購入

 

事故物件だけが訳あり物件ではない

不動産の世界において「訳あり物件」というと、『人の命が奪われた』『居住者が自ら命を絶った』、あるいは『孤独死』などの事件があった物件をイメージされる方が多いことと思います。

もちろん、市場には膨大な数の物件が流通しておりますので、こうした曰く付きの物件が存在しているのは事実ですし、こうした過去を背負う物件が相場より割安で売買されていることも間違いありません。(事故物件の詳細については別記事「事故物件の告知義務と、不動産投資での活用法!」をご参照ください)

しかしながら、不動産業界に置ける「訳あり」が必ずしも『事故絡みであるか』といえば、それは完全に間違った認識と言わざるを得ません。

むしろ、訳あり物件の大多数は事故以外の事情により「訳あり」のレッテルを貼られてしまっているに過ぎないのです。

では、一体どんな「訳」があるのか、代表的な例を見て行きましょう。

①耐震基準の問題

耐震基準の問題などと申し上げると、以前に話題となった「某マンションデベロッパーの耐震偽装問題」を想像してしまいそうですが、「耐震の問題による訳あり」は事件性のあるものばかりではありません。

我が国の法律の中で、建物の構造や建築制限等を定めているものと言えば建築基準法となりますが、こちらの法律はこれまでに何度も改正が行われてきました。

その中でも、特に大きな改正とされるのが昭和56年の耐震基準に関する改正です。

この改正では、これまでの耐震基準を大幅に厳しくする内容が盛り込まれており、昭和56年以降の基準を「新耐震」、改正以前の基準を「旧耐震」と呼んで区別しています。

そして、この「旧耐震」で建てられた建築物については、銀行の融資が受け辛かったり、一般の方からの人気が低いといった理由から「訳あり物件の扱い」を受けているです。

②検査済証未取得物件

こちらも建築基準法絡みの「訳あり」となりますが、建物を建てる際には行政からの「建築確認」の取得と、「検査済証」の交付を受けることが義務付けられています。(詳細は過去記事「建築確認・確認済証等について知っておくべきこと」を参照ください)

現在では違反建築に対する取り締まりも厳しくなっていますから、有り得ないことなのですが、過去には「建築確認は取得したものの、その出来栄えを確認する完了検査を受けずに、勝手に建物を改造してしまう」というケースが横行していたのです。

そして当然ながら、こうした物件は検査済証がもらえる訳もありませんし、酷いケースでは違法建築物というレッテルを貼られることになります。

そうとなれば、旧耐震の物件と同じく金融機関も融資を行い辛くなりますし、一般の購入希望者からも敬遠されがちになってしまうため、「訳あり物件」の烙印を押さる結果となってしまう訳です。

③売主等の事情により訳ありとなっている物件

物件自体に何も問題がなくとも、売主などの都合により「訳あり扱い」を受ける物件も存在しています。

例えば、「近隣との申し合せで3階以上の物件を建てないで欲しい」という取引上の条件が存在する物件や、建売不可(一般の方が購入するなら問題ないが、分譲業者が事業を行うのは不可)といった物件などがこれに当たるでしょう。

また、価格は安いが半月以内に決済を完了することが取引の必須条件であるなど、一般の買主では対応できない物件も「訳あり」とされてしまいます。

④物件自体に問題があるケース

市場に流通している売却物件の中には、明らかに重大な問題を抱えている売り物も少なくありません。

例えば隣地がゴミ屋敷であったり、土地の持分の一部を他人が保有しているなどのケースです。

当然、こうした物件は利用する当たって様々な問題が発生する可能性が高いですから、訳あり物件として価格も低く抑えられることとなります。

 

以上が、事故物件以外の「訳あり物件」とされるものの代表例となります。

この他にも、土壌が汚染されているなどの明らかな瑕疵物件や、お稲荷さん・塚が敷地内にある場合などもありますが、前者は絶対に手を出すべき物件ではありませんし、後者は少々特殊なケースとなりますので今回は解説を割愛させていただきます。

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訳あり物件を投資に利用する

さて、このように様々なパターンのある「訳あり物件」ですが、そのどれもが「絶対に購入してはならない」という類のものではありません。

それどころか、これらの物件を上手に利用すれば、不動産投資において多くの収益を獲得できるチャンスだってあるのです。

では、具体的に「どのような物件を選び、如何なる物件を避けるべきなのか」を考えて行きしょう。

旧耐震の物件

①耐震基準の問題については、「耐震性に問題がある」と聞くと購入するのが怖くなってしまいそうですが、一概にそうとばかりは言い切れません。

私の経験上、旧耐震の建物ではあるものの、当時の許可基準を遥かに凌いだ強度を備えており、新耐震の基準でも充分にクリアーできそうな建物をこれまでに何度も目にしています。

また近年では、耐震診断を受けることも当たり前の時代となっていますから、建築に詳しくない方でも地震に強い建物と、そうでない建物の違いを見抜くことができるはずです。

なお旧耐震の建物を貸し出す際も、古い耐震基準である旨をお客様に告知し、承諾を得られれば、何も問題なく貸し出すことができます。

私の会社も旧耐震の物件を保有していますが、「旧耐震だから」という理由で、賃貸借契約を断られたことは一度もありませんし、

中には「机上の理論のみで建てられた建物より、東日本大震災などを経験して、今なお建っていることの方が説得力がある」とおっしゃるお客様までいらっしゃいました。

よって旧耐震の建物については、物件の耐久性を確認することさえできれば、購入へのハードルは「銀行の融資が組み辛いという点」のみになるはずです。

検査済証のない物件

なお②検査済証未取得物件についても、「①耐震基準の問題」に通じるものがあります。

もちろん検査済証を取得せず、大幅な違反建築となっている物件は安全上の問題などがありますので購入を控えるべきですが、建物の耐久性などに影響を及ぼさない軽微な変更しかされていない物件は何も心配する必要はありません。

融資が組める銀行が見付かり、転売が困難であっても構わないというのであれば、こうした物件は積極的に「買い」に走るべきかと思います。

売主等の事情による訳あり物件

「近隣との建築制限の申し合わせがある物件」は正直扱い辛いと思いますが、売主が決済を急ぐ等の事情については「こちらが売主の要望に合わせられるか、否か」が全てになるでしょう。

但し注意が必要なのは、やたらと決済を急いでいるケースでは「売主が借金まみれ」などの特殊な事情があることが殆どです。

こうした相手の場合には、手付金を持ち逃げされるなどのリスクも存在しますから、仲介業者や司法書士などと万全の打ち合わせをしつつ、取引に臨みましょう。

問題のある物件の購入

「④物件自体に問題があるケース」でご紹介した類の訳あり物件については、『たとえ価格が安くとも原則として手を出すべきものではない』というのが私の意見ですが、中には購入後に問題を解決できる可能性があるものも含まれています。

例えば、別記事「自主管理マンションを復活させろ!(管理組合再生プロジェクト・前編)」でご紹介した、管理組合が崩壊している分譲マンションや、「アパート立ち退き交渉の現場をレポート!(合意退去・前編)」の記事でお話した要立退き物件などがこれに当たるでしょう。

但し、『問題が解決できる』と判断して購入したのは良いが、結局ダメだったというのではシャレにもなりませんから、この手の物件を買うのには相当なスキルと経験が必要になるはずです。

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訳あり物件購入で稼ぐ不動産投資まとめ

さてここまで、様々な種類の「訳あり物件」を見てまいりました。

「訳がある」と聞くと、直ぐに事故物件を想像してしまいがちですが、実は多種多様な訳あり物件が存在し、その中には大きな可能性を秘めたものもあることをご理解いただけたことと思います。

そして、敢えて訳あり物件を購入するのであれば、物件をじっくりと吟味して、そのリスクを正確に把握するスキルを身に付けることが、成功を掴む近道となるはずです。

「正しい知識」と「物件を見る目」を養い、ライバルに差を付ける最高の収益物件を手に入れていただければ幸いです。

ではこれにて、「訳あり物件購入で稼ぐ不動産投資をご提案!」の知恵袋を閉じさせていただきたいと思います。