アパート等の収益物件を運用していると、実に様々な問題に直面するものです。

そして、こうした問題の中でも「なかなか空室が埋まらない」といった事態は、物件オーナーにとって非常に大きなストレスとなることでしょう。

そこで本日は「コンセプト賃貸物件の運用について解説いたします!」と題して、近隣物件との差別化を図り、収益性を向上させる不動産投資手法についてお話ししてみたいと思います!

コンセプト賃貸マンション

 

コンセプト物件の発祥と現在の状況

さて、「そもそもコンセプト住宅って何?」という方も多いかと思いますので、まずはその基本的な概念からご説明を始めていきたいと思います。

「コンセプト(concept)」とは、英語で「意図」「テーマ」「構想」などを意味する言葉です。

この用語が不動産業界で使わるようになったのは、一時期流行った「コンセプト分譲マンション」という物件群が『その走り』であったように記憶しています。

当時のコンセプトマンションについては、例えば「ゴルフ好きの方々が集う物件」であれば『屋上に打ちっぱなし練習場』が整備されている上、練習場には『レッスンプロが常駐』しているなど、『同じ趣向を持つ方々が住みやすい環境を得られる』という方向性が主流となっていました。

やがてこのトレンドは分譲マンション業界全体に広がることとなり、「動物好きが集まるペットマンション」や「ご高齢者が住みやすいバリアフリーマンション」等、様々な方向性を持って枝分かれをしていくことになります。

一方、不動産投資においては収益物件の建築において「コスト削減が最優先、デザイン・オリジナリティーは度外視」という風潮が長年続いていましたが、物件の供給量が増えるに従い他の物件との差別化を図るために『賃貸物件にコンセプト化の需要』が生じ始めることとなったのです。

そして、コンセプト化に成功した賃貸物件においては

  • 入居希望者が順番待ちの状態となっている
  • 相場以上の賃料収入が見込める
  • 空室が発生し辛い

といった効果が期待できるとして、徐々にその物件数を増やしつつあるのです。

こうして現在では様々なコンセプト賃貸物件が流通し始めていますが、まだまだその数は少なく、多くのビジネスチャンスが眠る投資ジャンルとして注目を集めています。

コンセプト賃貸物件運用のポイントと注意点

では、コンセプト賃貸物件の運用を成功させるポイント、そして運用に際して注意すべき点についてお話ししていきましょう。

物件のコンセプト化を図るに当たっては

  • 入居希望者のニーズをしっかりと把握する
  • 中途半端なコンセプト化は行わない
  • 費用対効果をしっかりと検討する
  • コンセプト化失敗のリスクに備える

以上の点が非常に重要になってきます。

コンセプト賃貸物件には、先程ご紹介したように同じ趣味を持つ者を集める「趣味系」や、特殊な内装を施した「デザイン系」といったジャンルがありますが、何を行うにしても入居希望者に『どうしてもこの部屋に住みたい!』と思わせるような付加価値を与えなければなりません。

よって、入居希望者のニーズをしっかりと調査した上で、十分に勝算が見込めるコンセプト化を行うことが何よりも重要となるのです。

また、是非ご注意いただきたいのが「中途半端なコンセプト化による運用の失敗」となります。

デザイン系の物件を作る場合には、使用する壁紙や建具などについてかなり奇抜なものを選択しなければならない場合もありますが『流石にこれはやり過ぎなのでは・・・』という思いから、ついつい無難な部材を選んでしまうケースも多いでしょう。

しかしながら、こうした躊躇は結果として「中途半端な物件を生み出すだけ」となりますから、コンセプト化をする以上は覚悟を決めて『しっかりと印象に残る物件』に仕上げていく必要があります。

なお、こうして物件造りをしている過程においては「もっと費用を掛けたリフォームをすれば、更に本格的なカスタマイズができるのに・・・」という思いに駆られるはずですが、必ずしも費用を掛けた分が賃料収入として還元される訳ではありませんので、設備投資に対する費用対効果をしっかりと検討した上で判断を下していくことが大切でしょう。

ちなみに既にお話しした通り、賃貸物件のコンセプト化に成功した場合には賃料収入の増加など様々なメリットを享受することができますが、もちろん『失敗に終わるケース』もあるものです。

そして、コンセプト化に際してあまり大掛かりな改築等を行っていると、通常の物件に戻すことができない場合もあり得ますので、この点には注意が必要であるかと思います。

※大掛かりな建物の改築には建築確認の申請や用途の変更等が必要となるケースがあります。

このようにコンセプト賃貸物件運用のポイントや注意点を見て行くと、

中途半端なコンセプト化は絶対にNGであるが、失敗した場合に備えた「資金計画」と「原状回復」は念頭において計画を立てるべきである

という「コンセプト化のコツ」が見えてくるはずです。

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コンセプト賃貸物件の具体例

ではここからは、具体的なコンセプト化の事例について解説してまいりましょう。

施設型のコンセプト賃貸物件

施設型のコンセプト賃貸物件は、建物やお部屋に一定の施設や設備を設置するタイプのコンセプト化であり、

  • 完全防音のお部屋にリフォームを行っての「楽器演奏大歓迎アパート」
  • 室内にキャットウォークなどを備えた「ペット型賃貸物件」
  • バイク好きのために室内駐輪場や整備スペースを完備した「バイカーアパート」

などが事例として挙げられるでしょう。

もちろん、こうした物件を作るには建築やリフォームなどに相当な経費が掛かりますが、賃貸住宅でこうした設備を備えた物件は非常に数が限られるため、間違いなく需要はあるはずです。

なお、このタイプのコンセプト物件を成功させるためのコツとしては「物件所在地と如何に合致したコンセプト賃貸物件をプロデュースできるか」という点が挙げられます。

例えば、音大や音楽の専門学校の近隣であれば「防音物件」、近隣に住宅が少なく騒音でクレームが出辛い地域であれば「バイク物件」など、地域性と展開するコンセプト物件の選択を誤らないことが肝心となるでしょう。

デザイン型のコンセプト賃貸物件

デザイン型のコンセプト賃貸物件の事例としては

  • デザイナーを起用したおしゃれな内装(デザイナーズルーム)
  • 素材の風合いが生きるシンプルモダンな内装
  • 今や外国人からも人気のある「カワイイ」を追及したド派手な内装
  • 昭和をイメージしたレトロな内装
  • カフェやバー風の内装
  • 壁紙の貼替や塗装が自由に行えるDIYルーム

以上のようなものが挙げられるでしょう。

ちなみに、先にお話した施設型に比べてお部屋ごとのアレンジが可能な上、リフォーム費用も安価で済みます(壁紙・クッションフロアー・建具・家具の交換程度でコンセプト化が実現できる)から、失敗が怖いという賃貸物件オーナー様にはこのデザイン型からコンセプト化をスタートさせるのがおすすめでしょう。

趣味・実益型のコンセプト賃貸物件

同じ趣味や職業、近しいライフスタイルを有する方々をターゲットしたスタイルであり

  • 「サーフィン」「ゴルフ」「釣り」などの趣味人が集まるアパート
  • 「女性専用」「子育て世代専用」といったライフスタイル型アパート
  • 「SOHO」の方向けのビジネスパーソン用アパート

などが、事例として挙げられるでしょう。

なお、同じ趣味やライフスタイルの方同士が壁を隔てて住んでいるだけでは全く面白みがありませんので、集会場や談話室などを設けて、活発に情報交換や交流が行える場を提供することが重要となります。

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コンセプト賃貸物件の運用について解説!まとめ

さて、ここまで見て来たように、コンセプト賃貸マンションには実に様々な方向性が存在しているものです。

なお、自分で企画しておきながら「こんな部屋で本当に大丈夫なのか?」と不安になることがあることかと思いますが、こうして迷いながら造った物件に相場よりもかなりの高額な賃料で借り手が付くことも実際にありますから、腹を決めてコンセプト化にチャレンジしていただければと思います。

もちろん、コンセプト化に当たってデザイナーなどに依頼することができれば「それに越したことはない」のですが、当然「それなりの費用」も掛かるため、私などは自分のセンスで物件のプロデュースしてしまっております。

また、あまり偉そうなことは言えませんが、自分でデザインを行う際のポイントは「これはやり過ぎでは?」と思った時にも中途半端な妥協をしないことが重要であるかと思います。

住宅供給過多と言われて久しい世の中だからこそ、人気物件をプロデュースするために勇気を振り絞ってみては如何でしょうか。

ではこれにて、「コンセプト賃貸物件の運用について解説いたします!」の知恵袋を閉じさせていただきたいと思います。