現場を知るから、本当に役立つ。
不動産管理の実務経験をもとに、実際の現場で役立つ知識を分かりやすく解説します。
賃貸物件を管理していると、設備の故障や騒音、家賃滞納など、さまざまなトラブルが発生します。
その中でも、意外に対応が難しいのがゴキブリなどの害虫問題です。
一般的なクロゴキブリが一匹室内に入り込んだ程度であれば、市販の殺虫剤や侵入防止対策で対応できることも少なくありません。
しかし、建物内で繁殖するタイプのゴキブリが大量発生すると、話はまったく違ってきます。
私は過去に、管理していた木造アパートでチャバネゴキブリが一室から建物全体へ広がってしまった事例を経験しました。
何度駆除しても再発し、専門業者へ依頼して一旦は姿を消したものの、別の部屋から再び発見されるという非常に厄介なケースでした。
この記事では、賃貸物件で見掛ける代表的なゴキブリの特徴や基本的な対策、そして私が実際に経験した大量発生事例についてご紹介します。
この記事のポイント
- 賃貸住宅で見掛ける代表的なゴキブリの特徴
- ゴキブリを室内へ侵入させないための基本対策
- チャバネゴキブリが大量発生した実際の管理事例
- 一室だけの駆除では解決できないケースがある
- 害虫問題が発生した際の貸主・管理会社の対応

賃貸住宅で見掛ける代表的なゴキブリ
日本の住宅や建物では複数の種類のゴキブリが確認されますが、一般住宅や建物内で問題になりやすい種類として、クロゴキブリやチャバネゴキブリなどが挙げられます。
大阪市でも、市内でよく見られる種類としてクロゴキブリとチャバネゴキブリなどを挙げています。
クロゴキブリ
一般家庭で「ゴキブリ」と聞いて多くの方が思い浮かべるのがクロゴキブリでしょう。
- 体長:約3cm前後
- 色:黒褐色
- 一般住宅でも見掛けることが多い
- 暖かく湿った場所を好む
クロゴキブリは屋外にも生息しているため、玄関や窓、配管まわりなどから住宅内へ侵入することがあります。
そのため、一匹見掛けたからといって、必ずしも室内で大量繁殖しているとは限りません。
ただし、室内に餌や水分、潜伏しやすい場所があれば、そのまま住み着く可能性もあります。
チャバネゴキブリ
一方、賃貸管理の現場で特に注意したいのがチャバネゴキブリです。
- 体長:約1~1.5cm
- 色:黄褐色
- 飲食店やビルなどで多く見られる
- 暖かい場所を好む
- 荷物や段ボールなどに紛れて持ち込まれることがある
チャバネゴキブリはクロゴキブリより小型で、家具や設備、壁の隙間などにも入り込みやすいのが特徴です。
一度建物内部で繁殖してしまうと、一室だけではなく隣室や上下階へ広がる可能性もあります。
注意
「小さいゴキブリ=すべてチャバネゴキブリ」とは限りません。クロゴキブリの幼虫などの場合もあるため、大量発生している場合には専門業者へ種類の判定を依頼した方が確実です。
賃貸物件でできるゴキブリ対策
ゴキブリ対策では、目の前にいる個体を駆除するだけでは十分ではありません。
基本となるのは、
- 侵入させない
- 餌や水分を与えない
- 潜伏場所を減らす
- 発生している個体を駆除する
という複数の対策を組み合わせることです。
侵入経路を確認する
ゴキブリは、わずかな隙間からでも室内へ入り込むことがあります。
例えば、次のような場所は確認しておきたいポイントです。
- 玄関ドアや窓まわり
- 配管が壁や床を貫通している部分
- キッチンや洗面台の配管まわり
- エアコン配管の貫通部
- 換気口など建物外部とつながる部分
配管まわりなどに大きな隙間がある場合には、建物の構造や設備に支障が出ない方法で塞ぐことを検討します。
なお、エアコンのドレンホースなどに市販の防虫部材を使用する場合には、排水を妨げないよう注意が必要です。
排水トラップを乾燥させない
長期間使用していない洗面台やキッチン、洗濯機置場などでは、排水トラップの水が蒸発することがあります。
排水トラップには下水からの臭気や虫などの侵入を抑える役割がありますので、長期間空室となっている物件では定期的に水を流しておくことも大切です。
餌になるものを残さない
ゴキブリは食べ残しだけではなく、油汚れや食品くずなども餌にします。
大量発生を防ぐためには、
- 生ゴミを放置しない
- 食品を密閉して保管する
- コンロ周辺の油汚れを清掃する
- 段ボールなど不要な物を溜め込まない
といった日常的な清掃も重要です。
ゴキブリには集団で潜伏する習性があり、糞などに含まれる集合フェロモンによって潜伏場所へ集まることも知られています。
そのため、個体を駆除した後も、糞や汚れを残さず清掃することが重要になります。
大量発生している場合は専門業者への相談を検討する
数匹程度の発生であれば、市販のベイト剤などで改善する場合もあります。
しかし、
- 毎日のようにゴキブリを見掛ける
- 幼虫を大量に見掛ける
- 空室なのに繰り返し発生する
- 複数の部屋から苦情が出ている
- 一度駆除してもすぐに再発する
といった状況であれば、建物内部で繁殖している可能性も考えた方がよいでしょう。
特にチャバネゴキブリの場合には、一室だけ対策しても隣接住戸や壁内などから再び侵入することがあります。
こうしたケースでは、早い段階で害虫駆除の専門業者へ相談することをおすすめします。
管理会社の現場メモ|「見えなくなった=駆除完了」とは限りません
害虫対応で怖いのは、一時的に姿を見掛けなくなることです。
私自身、約1か月まったく見掛けなくなったことで「これで駆除できた」と判断したことがあります。
しかし実際には、建物の別の場所に生息していた個体が後になって再び姿を現しました。
大量発生している物件では、ある程度の期間を設けて再発の有無を確認することが重要です。
管理物件でチャバネゴキブリが大量発生した実例
ここからは、私が実際に管理物件で経験した事例をご紹介します。
なお、以下はあくまで私が経験した一事例です。建物の構造や発生状況によって適切な対応は異なります。
退去した部屋から大量の小さなゴキブリを発見
舞台となったのは、木造2階建て、1DKが6戸ほどの比較的小さなアパートでした。
私が管理を引き受けた当時は満室でしたが、その後1階の一室が退去することになりました。
退去立会いそのものは特に問題なく終了しましたが、最後に入居者へ、
「住んでいて何か気になったことはありませんでしたか?」
と聞いたところ、
「この部屋、虫が多いんです」
という話が出てきました。
小さなゴキブリのような虫を時々見掛け、それも退去理由の一つだったというのです。
数日後、リフォーム業者と室内を確認するために再訪すると、床には小さな虫の死骸が多数落ちていました。
普段家庭で見掛けるクロゴキブリとは明らかに違うため、オーナーへ状況を報告し、リフォーム工事と同時に害虫駆除を行うことになりました。
何度薬剤処理をしても再発する
ところが、駆除をしても数日後には再びゴキブリが現れます。
再度薬剤処理を行っても状況は改善せず、当時依頼していた業者から、
「これはチャバネゴキブリで、かなり繁殖している可能性があります」
との説明を受けました。
そこで、市販のベイト剤なども使用しながら対応を続けたところ、一時的には発生数がかなり減りました。
しかし、この段階で私は大きな判断ミスをします。
「もうほとんど駆除できたのではないか」と考えて、新しい入居者を募集してしまったのです。
新しい入居者が決まりましたが、入居後も「虫が出る」という連絡が続き、結果として早期退去となってしまいました。
スポンサーリンク
原因と思われる以前の入居状況が判明
そこで改めてオーナーから過去の入居状況を聞いたところ、問題の部屋には以前、飲食店を経営していた方が住んでいたことが分かりました。
その入居者は退去前に室内をかなり荒れた状態にしていたとのことでした。
もちろん、チャバネゴキブリがその入居者によって持ち込まれたと断定することはできません。
ただ、荷物などに紛れて建物内へ持ち込まれる可能性があることから、その時期に発生が始まった可能性も考えられました。
隙間を塞いだところ一時的に姿を消した
その後は、天井裏や床下なども確認しながら駆除を続け、壁や設備周辺の隙間についても可能な範囲で塞いでいきました。
すると徐々に出現数が減り、最終的には約1か月間まったく姿を見掛けなくなりました。
「今度こそ駆除できた」
そう考え、新たな入居者を迎えました。
しかし、問題は解決していませんでした。
1年半後、大量発生が再び判明
それから約1年半後、その入居者が退去することになりました。
退去立会いで室内を確認すると、キッチン収納などから多数のゴキブリの死骸が見つかりました。
入居者へ退去理由を確認すると、
「この部屋は変な虫が多かった」
という話が出てきます。
つまり、完全に駆除できたと思っていたゴキブリは、その後も室内や建物のどこかで生息していたのです。
ゴキブリ駆除を得意とする専門業者へ依頼
ここで初めて、知り合いの不動産業者から紹介してもらった、ゴキブリ駆除を得意とする専門業者へ調査を依頼しました。
専門業者が室内を確認すると、複数の場所にゴキブリが潜伏している形跡がありました。
そこでベイト剤などを使用した本格的な駆除を複数回実施。
施工後には大量の死骸が確認され、その後しばらくの間、問題の部屋ではゴキブリを見掛けなくなりました。
今度こそ解決したと思ったのですが――。
別の部屋でも大量の死骸を発見
しばらくして、問題の部屋から離れた別の住戸が退去することになりました。
室内を確認すると、そこでも多数のゴキブリの死骸が見つかりました。
さらに、階の異なる別の部屋でも同じような状況が確認されたのです。
専門業者へ相談したところ、
「すでに建物内の複数箇所へ生息範囲が広がっている可能性がある」
との見解でした。
つまり、一室だけを駆除しても、他の部屋や建物内部に生息している個体が再び入り込む可能性がある状態です。
本格的に解決するのであれば、入居中の住戸も含めて建物全体で駆除を行う必要があるとの説明を受けました。
建物全体の駆除が難しい理由
理屈だけで考えれば、全室を同時に施工するのが最も確実でしょう。
しかし、実際の賃貸管理では簡単ではありません。
- 入居中のすべての部屋へ入室する必要がある
- 施工への協力を得られない入居者がいる可能性がある
- 家具や荷物が多く施工しづらい部屋がある
- 害虫問題を知った入居者が退去を希望する可能性がある
- 施工後も継続的な確認や再処理が必要になる場合がある
一室だけ対応すれば済む問題とは、まったく性質が違います。
私が経験した物件でも、オーナーと相談した結果、建物全体を一斉施工するには至りませんでした。
その後は、発生が確認された部屋について専門業者へ駆除を依頼し、状況を確認しながら対応を続ける形となりました。
管理会社の現場メモ|この案件で最も反省したこと
この事例で私が一番反省しているのは、「しばらく姿を見掛けなくなった」という理由だけで、問題が解決したと判断してしまったことです。
大量発生した害虫は、目に見えている個体だけを駆除しても解決しないことがあります。
特に複数住戸のある建物では、一室だけではなく建物全体の問題として考える必要があります。
賃貸物件でゴキブリが発生した場合、貸主の責任はどうなる?
賃貸物件でゴキブリが発生したからといって、必ず貸主が損害賠償責任を負うわけではありません。
反対に、「駆除業者を手配したから貸主には責任がない」と一律に判断できるものでもありません。
実際の裁判では、
- 害虫の発生状況
- 入居者が通常の生活を送れる状態だったか
- 貸主や管理会社がどのような対応を行ったか
- 駆除を依頼してからどの程度の期間で対応したか
- その後も被害が継続していたか
など、個別の事情を踏まえて判断されています。
そのため、管理会社として重要なのは、害虫の相談を受けた際に「虫だから入居者側の問題」と決めつけるのではなく、まず状況を確認することです。
必要に応じて専門業者へ調査・駆除を依頼し、対応内容や入居者とのやり取りを記録しておくことも重要になります。
法律上の責任について
害虫発生時の賃貸人・賃借人の責任は、発生原因や建物の状態、契約内容、対応経過などによって異なります。損害賠償や賃料減額、契約解除などが問題になる場合には、弁護士などの専門家へ相談してください。
管理会社として害虫相談を受けたときの対応
実務では、入居者から「ゴキブリが出た」と連絡を受けたからといって、すぐに大規模な駆除を行うわけではありません。
まずは、
- どの程度の頻度で出ているのか
- 大きさや色など、どのような虫なのか
- 一匹だけなのか、大量に発生しているのか
- 他の部屋でも同様の相談が出ていないか
- 共用部分でも確認されていないか
などを確認します。
一匹だけであれば偶発的な侵入という可能性もあります。
しかし、小型の個体を頻繁に見掛けたり、複数の部屋から同じ相談が出ている場合には、建物内部で繁殖している可能性も考えなくてはなりません。
この段階で早めに専門業者へつなぐことが、被害拡大を防ぐうえでは非常に重要です。
管理会社がどこまで対応するのかについては、こちらの記事でも詳しく解説しています。
賃貸の管理会社はどこまで対応してくれる?仕事内容と対応できないことを実務目線で解説
スポンサーリンク
賃貸物件のゴキブリ対策まとめ
今回は、賃貸物件におけるゴキブリ対策と、私が実際に経験したチャバネゴキブリの大量発生事例についてご紹介しました。
通常の住宅で一匹ゴキブリを見掛けた程度であれば、それほど深刻な問題ではないケースもあります。
しかし、
- 何度駆除しても再発する
- 小さな個体を大量に見掛ける
- 複数住戸で発生している
- 空室でも発生が続いている
といった場合には、単なる「一匹の侵入」ではなく、建物内部で繁殖している可能性も考える必要があります。
そして、私がこの事例から学んだ最大の教訓は、
「姿が見えなくなったこと」と「問題が解決したこと」は同じではない
ということでした。
害虫トラブルは初動を誤ると、一室の問題が建物全体の問題へ発展する可能性があります。
大量発生が疑われる場合には、できるだけ早く専門業者へ相談し、状況によっては建物全体を視野に入れて対応することが大切です。
私自身、この案件を経験して以来、小さなゴキブリを見ると今でも少し身構えてしまいます。
賃貸管理の仕事にはさまざまなトラブルがありますが、これほど「早期対応の重要性」を痛感した案件はありませんでした。







