「注文住宅」を建築する際や、「建築条件付きの売地」「未完成の建売物件」を購入した際には、建物の外壁を「サイディング」にするべきか、「モルタル」にするべきか?という選択を迫られる場合があるかと思います。

『そもそもサイディングとモルタルって何?』という方もおられるかと思いますが、これは建物の外壁の種類を指す言葉であり、「サイディング」は耐水・防火性優れた板状(パネル状)の外壁材を貼った仕上げを指し、

「モルタル」はコンクリートと砂を練ったものを外壁に塗り付ける工法のことです。

なお一戸建てにおいては、どちらも『非常にポピュラーな仕様』として知られているのですが、それぞれに一長一短があるのも事実ですから、建築に際して「どちらかを選択するか」となれば、これは大い迷ってしまいますよね。

そこで本日は「外壁のモルタル・サイディングを比較!どちらを選択するべきか!」と題して、一戸建ての外壁の問題を考えてみたいと思います。

外壁のモルタル・サイディングを比較

 

サイディングの特徴

まずは『板状のパネル』を貼り付けて仕上げるサイディングについてのご説明から始めたいと思います。

一口にサイディングといっても

  • 窯業系サイディング/セメントベースのサイディング(最もオーソドックスな部材)
  • 金属系サイディング/金属板とアルミ箔の間に断熱材を挟み込んだサイディング(軽量で寒さに強い)
  • 樹脂系サイディング/樹脂素材で作られたサイディング(軽量化且つ耐久性に優れる)
  • 木質系サイディング/天然木を加工したサイディング(デザイン性が抜群)

以上の4種類が存在しています。

なお、この中でも窯業系サイディングは我が国の一戸建て住宅においてシェア80%以上を占めていますので、本記事ではこの「窯業系サイディング」について解説してまいります。

窯業系サイディングはセメントや繊維質原料などをクッキーの生地のように練り上げ、高温の窯で焼き上げることで完成する耐水・防火性優れた外壁材です。

ちなみに、その見た目は『強固なコンクリートの板』とでもいうべき代物となりますが、表面にはレンガ調や石目調、そして木目調などの様々な「柄」と「彩色」が施されており、これを建物に貼り付けて外壁を構築していきます。

なお、一種類のサイディングのみを用いても、それなりの外観に仕上げることができますが、通常は何種類かを組み合わせることで、建物のデザインを作り出していくことになるでしょう。

また、柄や色以外にも「部材の厚み」によるクラス分けがなされており、14mm~18mmが一般的に用いられる厚みとなっています。

そして当然のことながら、「厚みのあるもの」の方が丈夫であり、性能も高いものが多いのですが、問題はそのお値段です。

単価については、「厚いもの」と「薄いもの」との間にそれ程大きな違いはないのですが、これを建物の全面に貼るとなると工事費用にかなりの差額が発生してしまうのが現実でしょう。

更に『デザイン性』においても、厚いものであればある程に「重厚で質感のクオリティーが高いもの」となるのに対して、薄手の商品はタイル調・木目調と称していても「造り物感が強くなる(安っぽくなる)傾向」にあります。

一方、施工については建物に下地処理をした後、このサイディング材を隙間なく並べ、釘で打ち付けて行くという方法にて工事が進められます。

そして、サイディング材同士の隙間に関してはコーキング材(接着剤のようなもの)で埋めることで防水を行い、施工は完了となるのです。

こうした工法である故、サイディング材同士の継ぎ目のコーキングは5年から10年で打ちかえる(コーキングをし直す)のが望ましいとされています。

但し、サイディング自体は非常に丈夫な素材となっていますから、施工から20年程度の経過を目安に「張り替え」か「既存のサイディング材の塗装」、または「現在の外壁の上から更にサイディングを上張りする」などの工法で、メンテナンスを行うのが通常です。

なお、基本的にはタイルなどを模した建材であるため、デザイン性が今ひとつなどと言われることが多いですが、厚みのある素材を使えばかなりオシャレな建物となりますし、

窓のまわりだけにアクセント的なサイディング材を用いたり、1階、2階といったフロアーごとに柄を変えるなどの『自在な貼り分け』が可能ですから、「サイディングの外壁は見た目が悪い」という先入観は不要であるかと思います。

モルタルの特徴

これに対してモルタルは、建物に下地処理を終えた後、直接セメントを塗って行く工法となります。

モルタルの色(カラー)はある程度選択することができますし、左官仕事の仕上げの際に敢えて表面に凹凸を残すことにより、模様を描くことも可能ですから、デザインの部分でも様々な楽しみ方が可能です。

ちなみにデザインのバリエーションとしては

  • リシン仕上げ/セメントに極小の石を混ぜた仕上げであり、粒々の表面が特徴
  • スタッコ仕上げ/リシン仕上げよりもより大きな粒々を作り、高級感と重厚感を演出
  • 吹付けタイル仕上げ/塗料を吹き付けて凹凸を表現する仕上げ、タイルを貼ったように平坦な表面にランダムな浅い溝ができるのが特徴
  • 塗り壁/左官職人がコテでアーティスティックな模様を描いていく手法

などが主なものとなるでしょう。

但し、あまりに凝った模様を施すとなれば、それなりのコストが掛かることも覚悟しなければなりません。

またこのモルタル仕上げは、サイディング材のように部材を貼り付けるのではなく、直接建物に塗り付ける工法であるため「物件自体に高級感が出る」というのが最大のメリットと言えるでしょう。

ただ、あくまでもセメントを塗り付ける作業となるため、モルタルの乾燥や建物自体の木部が伸縮することにより、ヘアークラックと呼ばれる細い亀裂が入ることも少なくありません。

また、こうしたクラックの割れ目が徐々に開いていけば、「隙間から雨水が浸透してくる」などの被害を及ぼすこともあるのです。

こうした場合には、亀裂の入った箇所に「モルタルの上塗り」をして補修するのが通常ですが、長年の劣化であまりにクラックが増えた際には、外壁の洗浄と下地の補修を行い、最終的に全体の塗装をやり直すことになるでしょう。

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モルタルとサイディング、どちらを選択するべきなのか?

このように「どちらも一長一短」があるモルタルとサイディングによる外壁の仕上げですが、不動産屋さん的には選択に際して以下のポイントにご注目いただければと思います。

外壁材としての性能比較

ではまず、サイディングとモルタルの外壁材としての性能を比較してみましょう。

耐水性
  • 外壁材の素材という意味では、モルタルはセメントを塗り付けたものであるため、防水性ではプレートを貼り付けたサイディングに及びません。
  • 但し、サイディングはプレート同士の継ぎ目をコーキングで保護しているため、経年劣化による目地からの浸水には非常に弱いため、定期的なメンテナンスが必須となります。
耐火性能
  • 一般的にはモルタルの方が耐火性に優れると言われています。
  • 但し、サイディングの技術革新は目覚ましく、製品によってはモルタルの耐火性能を上回るものも少なくありません。
断熱性能
  • モルタルはコンクリートを塗り付けたものなので、断熱性は高いと言われています。
  • サイディングはプレートであるが故に、断熱性においてはモルタルに及びません。
防音性
  • 塗り付けたコンクリートが吸音材と遮音材の役割を果たすため、モルタルは防音性が高いとされています。
  • サイディングもある程度の防音性は備えていますが、モルタルには及ばないでしょう。

部材の品質

モルタルとは異なり、サイディングは大手の建材メーカーにて、工場で大量生産された資材が使用されます。

よって、サイディングには品質にバラつきがないのが特徴なのですが、モルタルは職人により現地で作られる(モルタルを練る)のが通常です。

これにより、施工された際の天候や季節の影響で部材のクオリティーに差が出る可能性が否めません。

もちろん熟練した職人さんが、適格な状況判断の下でモルタルの調合を行っていれば問題はないのですが、経験値の足りない方が工事を行う場合には注意が必要となるでしょう。

工事の難易度

また、モルタルとサイディングでは「工事の難易度」にも大きな違いがあります。

サイディングについては既製品の建材を釘でバンバン張り付ける作業となりますが、これに対してモルタルは職人が手仕事で塗って行くことになりますので、難易度が高いのがモルタル、失敗が少ないのはサイディングということになるでしょう。

また、工期についてもモルタルの方が長期におよぶのが通常です。

新築時の工事費用

工事の難易度が高ければ、工事費用も高額となるのが建築業界の常です。

よって、モルタルと比較した場合、サイディングのコストは安価となることが多いでしょう。

但し、18mm以上の厚みのあるサイディングを使用した場合などは、モルタルの方が割安となるケースもあります。

メンテナンスの簡便さ

サイディングの場合、雨漏りなどが発生した際には「サイディングの割れ」や「隙間の開き」、「コーキングの劣化具合」など様々な原因が考えられます。

よって、メンテナンス際しては状況に応じて

  • サイディング自体の張替え
  • 古いサイディングに重ねて上張り
  • 表面の塗装

上記の3つの方法で工事を行うことになりますが、張替えや上張りについてはかなりの出費を覚悟しなければなりません。

また、サイディング同士の継ぎ目のコーキングは「一定のスパンでの打ち直し(5~10年程度が推奨されます)」が必須となります。

これに対してモルタルの主な雨漏りの原因は「クラック」ということになりますから、メンテナンス工事の簡便さはモルタルに軍配が上りそうです。

但し、クラックが異常に多い場合には「全体の補修が必要」となってしまうので、この点には注意したいところです。

なお、モルタルで凝った仕上げをした場合、表面の凹凸に汚れが溜まりやすくなるため、「汚れが目立たない」という意味ではサイディングがおすすめとなります。

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モルタル・サイディング比較まとめ

さて、ここまで一戸建て住宅の外壁として双璧を成す、モルタルとサイディングという仕様について、様々な角度からの比較を行ってまいりました。

どちらも、それぞれにメリットとデメリットが存在しますから、「結局、どちらを選ぶべきなのだろう・・・」と今まで以上に頭を悩ませてしまった方も少なくないことでしょう。

そしてここで、ご注目いただきたいのが施工する職人の腕前の問題であるかと思います。

実は建売屋さん(住宅分譲をメインの仕事とする不動産業者)の多くは建物の外壁にサイディングを使用しているのですが、これは技術の未熟な大工さんが工事を行っても、事故に繋がる可能性が低いからというのが最大の理由です。

また、サイディングの方が『コーキングの打ち直しなどの頻繁なメンテナンスが必要』とはされているものの、メンテナンスを行わなくとも結構長持ちすることが多いため、クラックの発生しやすいモルタルよりも「結局は維持管理が容易である」ともいえます。(もちろん、技術力の高い職人が施行すれば、モルタルもかなり長持ちしますが)

よって、「その腕前に絶対の信頼が置ける大工さんに頼むのであればモルタルでも問題はないが、価格重視のハウスメーカーなどに施工の依頼をするのであれば、サイディングの方がより安全(雨漏り等が発生する可能性が低い)である」というのが不動産屋さん的な結論となるでしょう。

一生に一度の買い物である「マイホーム」を長持ちさせるのに、絶対に無視することができないのが外壁工事ですから、後になって後悔しないためにも賢い選択を行いたいものですよね。

ではこれにて、「外壁のモルタル・サイディングを比較!どちらを選択するべきか!」の知恵袋を閉じさせていただきたいと思います。